大阪大学 コミュニケーションデザインセンター 「臨床コミュニケーションⅠ」 医学教育における PBLとNBM 山口大学 医学部 医学教育センター 川 勝 1 医療問題を考察するため の2大前提 医療の不確実性 医療の非対称性 2 医療の不確実性 人体の生理反応や治療の効果・副作用 には再現性は不十分であり、同じ治療 でも患者によって結果は異なる。 患者側は否応なしに「宙吊り状態」へ 医療者側はどうアプローチするのか? 3 EBM:Evidence-Based Medicine 「正しい方法論に基づいた観察や実 験」(外部のエビデンス=科学的根 拠)に基づき(批判的吟味を行い)、 目の前の患者の健康問題に適応する解 決策(治療法等)を決定する。 4 最大多数の最大幸福? EBMといえども、医療が(少なくとも 医療者側にとって)統計学的事象であ ることは不変(患者=症例:case)。 5 All or Nothing 医療者側:「5年生存率30%」 患者側:「生きているか死んでいるか」 の二者択一(絶対的相違)(依然として 「宙吊り状態」) 6 非対称性の淵源 およそ、すべての専門教育は素人と差 異を作り出す(逆に、素人との差異が なければ専門家ではない)。 7 医療の特殊性 専門家が専門家としての知識と技能を フルに発揮する現場に素人が大々的に 入り込んできて、日常的に専門家(医 療者)と素人(患者)の邂逅が生じて いる。 8 患者にとっての医療体験 日常性からの逸脱 日常性 ? 時間 9 Narrative 語るという行為(暗黙の内に聞き手の 存在を前提 語り手と聞き手の関係 性) 語られているテクストの総体 10 《物語》の誕生=意味の生成 ひとは自分自身の《物語》を生きてい る。 身体に重大な異変が生じたときは、そ のまま《物語》の大きな転機となる可 能性が高く、医療者はその転機に必然 的に関わることになる。 11 NBM:Narraive-Based Medicine 患者のNarrativeを重視しつつ医療を実 践しようとするアプローチ。 EBMと相補関係(?) 12 NBMの医学教育への適応 「病気を診て患者を見ず」 ⇐医療者の陥りやすい最大の陥穽 Narrativeに留意できる感性をいかにし て養うか? 13 PBL Tutorialという方法 PBL: Problem Based Learning Tutoral: 少人数個別指導 特に医学教育の分野では、臨床実習前のシ ナリオに基づいた課題発見・解決型のグ ループ学習を指す場合が多い 「紙上の患者 模擬患者 患者」 14 通常のシナリオ 症例報告(Case Report)に準じたスタ イル EBM型シナリオ 15 山口大学の試み シナリオにおけるNBM的要素を重視 EBM+NBM型シナリオ 山口大PBLシナリオサンプルへ 16
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