エジプト訪問レポート ~RRTC 圃場での観測-2010.3.5~3.16-~ 自然学類地球科学主専攻 福田敬広 1. 観測の目的 ・モデルに必要なパラメータを決定するため、土壌サンプルの採取 ・観測タワーを立てる予定となる圃場の視察 ・観測の補助(主にチャンバー観測・LAI の測定) 2. エジプト訪問中の大まかな日程 3月5日 エジプト到着 3月6日 富田農園訪問 3月7日 研究打ち合わせ・買出しなど(カイロ) 3月8日 研究打ち合わせ・買出しなど(カイロ) 3月9日 研究打ち合わせ・準備など(カイロ)、タンタへ移動 3 月 10 日 打ち合わせ(RRTC) 3 月 11 日 カフルシェイクへ移動、観測・準備(RRTC 圃場) 3 月 12 日 オフ 3 月 13 日 観測(RRTC 圃場) 3 月 14 日 観測(RRTC 圃場) 3 月 15 日 カイロへ移動 3 月 16 日 帰国 3. 観測対象地点 3.1 概要 今回の観測および 4 月に観測 タ ワ ー を 立 て る 予 定 の Rice Research & Training Center (RRTC)圃場は、以前予定してい 観測地点 た地点から変更された。新しく決 定した圃場は、元々予定していた 地点より北西に約 1km のところ 小道 に位置しており、図 1 のような区 画で区切られている。 今回の観測は図 1 の観測地点 (N31°05.903’ E30°55.299’) で行った。 図 1. RRTC 圃場観測対象地点(Google map より) 3.2 植生 現在の作物はエンドウ豆。図 2 に示した様に、一 様に広がっている。今後の圃場作物の遷移は以下の 通り。 ①2010 年 3 月現在:エンドウ豆 ②2010.4.20~4.25(予定) :エンドウ豆の刈り取り (刈り取り後に観測タワー設置?) ③2010.5.10~5.15(予定) :メイズの種まき ④2010.9.10~9.15(予定) :メイズの刈り取り 図 2. 圃場のエンドウ豆の様子 エンドウ豆の草丈は約 100~140cm、単一植生ごとの株間は 15~50cm であった。また、 畝の高さは 10cm 程度、畝間は 70~90cm ほどであった。これらの値は図 1 観測地点付 近で測ったものである。エンドウ豆の植えられている畝の様子は図 3 のようになってい る 図 3. 植生下の畝の様子 ※ 圃場内の小道について 図 1 を見れば分かる通り、この圃場は完全に一様となっているわけではなく、小道 が二つ通っている。この小道は図 4 のようになっており、道幅が約 3m である。それほ ど大きな道ではないが、もしこの小道をそのままにし、この小道に隣接するような地点 に観測タワーを建てれば、多少なりとも乱流測定に支障が出る可能性もあると思われる。 図 4 は、図 1 に示されている上の小道の中央付近で撮影したもの。 図 4. 圃場内の小道 5. 観測 今回の観測は、図 5 のようにエンドウ豆畑の一部を切り開いて頂いた場所で行われた。 置かれているカラーは、チャンバー観測を行う地点である。 図 5. 観測地点の様子 5.1 土壌サンプリング 土壌サンプリングは、3 月 11 日に行った。土壌サンプラーを用い、観測地点におい て深さ 1m(10 サンプル)×2 地点で採取した。この 2 つのサンプリング位置は、約 20cm 離れたほぼ同地点で行った。 図 6. 土壌サンプリングの様子 〈今後の処理・解析など〉 これら 2 地点でサンプリングした土壌は、それぞれ、土壌分析(三相計・透水試験・ pF 試験など)および同位体分析に用いる。 5.2 チャンバー観測 チャンバー観測では、ポンプで空気を流しつつ、図 7 のように密封したチャンバー 内の水蒸気濃度・二酸化炭素濃度を測定、および光量子センサー(図 8)で光量(PAR) を測定した。チャンバー観測は、密封したチャンバー内の水蒸気濃度および二酸化炭 素濃度が安定したら外し、チャンバーを外した状態でまた安定したら次の観測に移っ た。チャンバー観測は、3 月 13 日、14 日に行い、観測の時間帯は以下の通り。 3 月 13 日:9:30~13:00、15:30~16:00 3 月 14 日:7:00~13:00 ただし、14 日の 8:45~13:00 は同じ地点で行った。 〈今後の処理・解析など〉 取れた水蒸気濃度・二酸化炭素濃度の時系列変化から、蒸発量・二酸化炭素フラッ クスを算出する。 図 7. チャンバー観測の様子 図 8. 光量子センサー 5.3 キャノピーアナライザーによる LAI の観測 キャノピーアナライザーでの LAI の測定は、植生下と植生上での放射量の違いや、植 生による被植率をセンサーで測定し、これらの値から算出される。測定手順としては、 まず植生上で一回、その後植生下で六回、最後に植生上で一回測定し、これで一つの LAI が算出される。 観測は、3 月 13 日、14 日に行い、精度が高いとされている夕方の時間に行い、時間帯 は、13 日、14 日共にエジプト時間での 4 時~5 時過ぎを選んで行った。植生下での測定 は図 5 で表した地点より北側(写真では左の方向)に数メートル入っていった所で行った。 観測地点は一地点ではなく、植生の濃いところでも薄いところでもそれぞれ行い、13 日、 14 日合わせて 6 地点の LAI データが得られた。 〈結果・今後の処理・解析など〉 LAI の測定結果は以下の通りであった。 測定日時 LAI 3 月 13 日 17:18 2.63 3 月 13 日 17:24 1.76 3 月 14 日 16:19 2.64 3 月 14 日 16:47 1.89 3 月 14 日 17:28 2.19 3 月 14 日 17:33 1.18 測定した LAI は、大きいものは 2.64、小さいものは 1.18 と、植生の密度による誤差が表 れるものとなったが、平均すると LAI は 2 前後であると考えられる。 今後のデータの利用については、LAI だけでなく、計算過程で得られた放射の遮蔽率に 関しても、研究で扱っているモデルのパラメータとして直接、又は参考値として用いる予 定である。
© Copyright 2024 Paperzz