雪泥流

6.雪泥流(スラッシュフロー)堆積物の混入植物等について
雪泥流堆積物の中には、倒木等の植物の混入が見られるが、分布には偏りが見られた。
写真6~写真11
に堆積物の状況写真を、図5に写真を撮影したおよその位置と同様の
状況が分布する範囲を示す。
雪泥流の先端であるトマトの国付近では、右岸側には多くの倒木が見られるが、左岸側
では倒木は少なかった(写真6)。その原因は、はじめから堆積物を構成する材料が異なっ
ていたためか、後に地表流により流されたためかは定かでない。今後、災害発生直後の空
中写真が入手できれば判読できる可能性がある。樹種の同定には至らなかったが、倒木は
広葉樹が主体で、比較的原型を保っており根から梢端までそろっているものが多かった。
雪泥流の流下域に成立していた渓畔の樹木が根こそぎ押し流された、という印象を受けた。
また、今回の踏査ではブナの倒木は発見できなかった。当流域では、ブナは標高900m
以上に自生するとされている。
中流域より上流では倒木はまれで、礫の上に細かい褐色の泥流状の堆積物が覆っていた
(写真7、写真8)
。植物等の混入も少なかった。
所々に直径1m程度の土砂の塊が点在していた(写真9)
。塊の内容は、30cm 程度の礫
と土砂で、その中に植物が混入していた(写真10)。植物は、全長 30cm 程度で、多くは
弓状に曲がっており、端部に根がついていた。雪崩が恒常的に発生する地域に生育してい
たと推測できるが、発生源の断定にはさらなる調査が必要である。
その少し上流には、雪塊が溶けて陥没してできたと推測できる直径数mの穴が点在して
いた(写真11)。穴には水がたまっているものもあり、底にポールを刺すとブクブクと気
泡が出た。
下流域右岸に
は全木の倒木
が多い
写真6 下流域の植物の混入(トマトの国横から上流を撮影)
このあたりに
礫、砂、湾曲し
た低木の塊が
点在する。
写真1 トマトの国横の丸山から北向きに撮影
雪塊が溶けて
できた陥没
中流域の右岸
は泥流のみで
木片は少ない。
写真7 中流域の植物の混入(中流から下流に向かって撮影)
写真8 中流域右岸近景(木片の混入は少ない)
写真9 直径1m程度の土砂の塊
写真10 土の塊の内容(内容は中礫、砂、丈の低い湾曲した植物)
写真11 雪塊が溶けた陥没
植物の混入は少ない
雪塊が溶けた陥没
礫、土砂の塊
全木の倒木が多い
図5 写真撮影位置と分布