第3回 中国 ビジネスデスクレポート ~建設市場と 建設市場と日系企業の 日系企業の動向~ 動向~ 2012 年 7 月 27 日 中国は北京オリンピックと上海万博を終えたあとも鉄道や道路といったインフラ整備 は進んでいますが、主要な「箱もの」 (工場、倉庫、オフィス、住宅等)の建設状況に目を 向けてみますと、工場・倉庫については、金融危機の影響が 2010 年の着工に表面化し前年 比ダウン、一方、円高・電力供給不安を背景に 2011 年以降日系製造業者の中国への進出は 再度拡大しており、それに伴い、進出済み日系大手ゼネコンの工場建設受注は急増中です。 オフィスビルは供給不足気味の市場状況を踏まえ前年比増が続いておりますが、住宅につ きましては、住宅価格抑制の為に中央政府は各種規制を発動したのに伴い、2011 年以降は 中高級物件の開発にブレーキがかかる一方、保障性住宅(*)の供給が本格化しています。 現在、中央政府の抱える課題は「物価抑制」「格差是正」「省資源」「省エネ」と大きく 4つあり、それに対する方針・対策として、先ず「物価抑制」についてはマネーサプライ 総量規制・預金準備率調整・金利政策、 「格差是正」については高級住宅開発規制や中低所 得者向け住宅開発推進、「省資源」については税制優遇、「省エネ」については各種規制と いった方針や対策が取られています。これに伴い、量から質へのシフトが進むカテゴリー もあれば、保障性住宅のように総量拡大にシフトするカテゴリーもあり、それぞれ新しい 方向に進んでいく動きが見えます。 その中で住宅関連市場は、昨年来、不動産価格抑制政策の影響を受け、成約量は低迷し 成約価格も下落傾向にありましたが、この抑制政策は投機を抑える一方で、実需層である 一般市民に広く住宅を行き渡らせるためのものであり、一定の効果が出始めています。国 の施策としては、この量的目標の他、 「質の向上」を目標に掲げています。民間レベルでは 既に中国地場のデベロッパー(不動産開発会社)が他社との差別化として「質の向上」に 考え方を転換し始めており、その一環として日系デ ベロッパーとの提携が始まっております。中国にお いては一般の住宅市場が形成されてまだ十数年であ り日本のノウハウを求め提携を進めており、商社を 始め、大手不動産会社、大手マンション業者及び大 手ハウスメーカーも中国に進出してきております。 中国において、以前は内装無しの販売が一般的でし たが、現在では内装付きの住宅が増えつつあり、特 にこの分野での日本のノウハウへの需要が高まって います。 このような状況下、日系企業の動向として、ゼネ コンは日系工場の建設請負を中心とした業務を中心 <住友商事が 住友商事が販売する 販売する「 する「東方豪園」 東方豪園」 に展開し、最近では住宅建設請負或いは CM(コンス (上海市嘉定区) 上海市嘉定区)のモデルルーム> のモデルルーム> トラクション・マネジメント)業務への展開も表面 化しています。建材メーカーについては、衛生陶器で は中高級市場を狙い、節水機能等での市場にアピール しています。また内外壁ではサイディング・押出成型 板で進出済みメーカーもある一方、石膏ボードや ALC といったコストパフォーマンスが高く、耐火性能、断 熱機能の高い製品のニーズが工場及び商業施設向けに 急拡大中です。更に内装ではフローリング・建具生産 で数多くのメーカーが進出済みで低ホルムアルデヒド 等をアピールして展開を図っています。 購入者側も少し高くても良質な住宅を求める傾向に <外壁 ALC の施工事例> 施工事例> 移りつつあり、日系デベロッパーの進出に伴い、住宅関 連の日系メーカーとしては、これまでの「単なる製造地としての中国」から、 「良質製品の 供給地としての中国」が求められ、その移行過程においてビジネスチャンスが拡大するも のと思われます。 (*) 保障性住宅:政府が中低所得世帯に提供する、基準と賃料・価格の限定された賃貸住宅、 分譲住宅を言う。 (ビジネスデスク 住友商事株式会社)
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