科学技術振興調整費 成果報告書 開放的融合研究 事後評価 「オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成 クロックの研究」 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究計画の概要 p.1 研究成果の概要 p.5 研究成果の詳細報告 1. 中胚葉性幹細胞の成立と自己組織化のメカニズム 1.1. 中胚葉の発生と尾芽幹細胞の分化機構 p.13 1.2. 中胚葉組織再生の分子メカニズム p.26 1.3. メダカ突然変異体のスクリーニング p.32 2. 器官形成クロックの分子メカニズム 2.1. 器官形成クロックの分子実体 p.39 2.2. コンパートメント成立機構の解明と誘導系の確立 p.46 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究計画の概要 ■ 研究の趣旨 哺乳類を含む多細胞生物は,機能ドメインとしての様々な器官(臓器)の集合体として構成され,それらが互いに調和的 に機能した高次複雑系である.既に始まりつつある再生医療,細胞治療,遺伝子治療などの先端医療を有効かつ安全に 実践していく上で不可欠なことは,それらの標的である各々の器官において,(1)発生(器官形成),(2)恒常性の維持と 機能発現,(3)様々な生理的破綻に寄与するシグナル分子や下流の転写制御因子の同定とその機能,さらにはそれらの 遺伝子の相互関係(遺伝子ネットワーク)を解明することである.一般に,成体を構成する各器官は一定の大きさと構造を 持つ機能単位である組織コンパートメントの集合体である.機能を持つ器官を再生するためには,組織コンパートメント一 つの形成機構に加えて,コンパートメントの秩序ある配置を裏打ちする原理を理解する必要がある.組織コンパートメントが 形成されるために第一に必要なことは,その起源となる幹細胞が生まれ,それが維持されるための場が存在することである. 第二の重要な点は,器官原基が組織コンパートメントを単位として一定の繰り返し構造を造りだし,そしてそれが適正に配 置される過程である.本研究では,この2つの現象が連続的に起こっている初期胚の尾芽中胚葉領域に着目して,その分 子機構の解明を目指す.即ち,幹細胞システムが存在して未分化中胚葉細胞を連続的に供給するオーガンリソースとして の尾芽と供給された細胞集団が時計遺伝子の作用(器官形成クロック)により正確に一定間隔でくびれきれてできる体節 (組織コンパートメント)である.周期的な体節形成は,初期発生で起こる重要で美しいイベントである.それ故に古くから発 生生物学者の研究対象となってきた.その分子機構の一端が明らかになったきっかけは,1997 年に体節周期(30 分から 120 分程度)と連動して発現の ON/OFF を繰り返す遺伝子,hairy の発見である.しかし,器官形成クロックの実体や他のシ グナル因子との関連など残された問題は多く,その全体像の理解には程遠いのが現状であった.このような状況の下,体 節形成・分化に関連する遺伝子群の網羅的単離と新たな突然変異体の単離を目指して本プロジェクトは計画された.そし て,突然変異体の単離が比較的容易な小型魚類と強力な遺伝子解析手段を持つマウスを融合した研究体制を推進するこ ととなった.さらに,小型魚類のヒレ再生に注目した研究も同時に実施した.生体組織の大半を占める中胚葉組織(筋肉, 骨,血管,間質組織,腎など)を用いた再生医療の需要は年々高まっている.脊椎動物初期胚の尾芽領域中胚葉に存在 する幹細胞システムを再生のためのリソースとして利用していくためには,器官形成の本質を正しく理解することが不可欠 であり,本プロジェクトの社会的必要は高い. ■ 研究の概要 本研究では,中胚葉性組織における器官形成の基本原理を明らかにすることを目指す.このために,マウスの逆遺伝学, 小型魚類の順遺伝学による研究,そして両システムの特徴を生かした重要遺伝子の網羅的単離を実施する.特に融合機 関である国立遺伝学研究所(遺伝研)と国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)をそれぞれ小型魚類とマウスの研究拠点 として位置付け,国内の研究者を集めて連携した研究体制を構築した.研究対象として,中胚葉細胞が作り出される尾芽 幹細胞システム,脊椎骨などの脊椎動物の基本的分節性を支配する体節形成および安定な繰り返し構造を構築する理論, 形成された体節が脊椎骨へ分化する過程に注目した.さらに小型魚類の特徴を活かして,再生現象を遺伝学的,分子生 物学的に解析するシステムの構築も目指した.本プロジェクトでは,わが国で開発されたメダカの実験系を最大限に活用す べく,メダカを用いた突然変異体のスクリーニングを行って,器官形成,再生の研究に不可欠な変異体リソースを確立した. 上記の研究は以下の 2 つのサブテーマに分けられ,遺伝研または国立衛研で実施された. サブテーマ 1: 中胚葉性幹細胞と自己組織化のメカニズム 中胚葉の発生過程,尾芽幹細胞の分化・維持機構を小型魚類の変異体とノックアウトマウスを用いて解析した.また,メ ダカヒレ再生過程等で発現する遺伝子群の網羅的単離と選別を行った.具体的には以下の 3 つの研究を行った. (1)中胚葉の発生と尾芽幹細胞の分化機構に関する研究 1 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 尾芽幹細胞システムの分化・維持および体節形成細胞の成熟過程に異常を示す魚類変異体を用いた解析,ゼブラフィ ッシュでの実験発生生物学的アプローチによる分節ポイントを決める位置情報シグナルの解明を行った.一方,マウス尾芽 で発現する遺伝子の網羅的単離と一部の遺伝子についてノックアウトマウスを用いた機能解析も行った. (2)中胚葉組織再生のメカニズム メダカ尾ヒレは切断後約2週間で元に戻ることが知られており,再生研究の極めて優れた解析系である.メダカヒレ再生 の分子メカニズムを検討するためにヒレ再生後 3 日目,10 日目の EST を網羅的にシークエンスし,さらにマイクロアレイを作 成し,再生特異的遺伝子の同定を行った. (3)メダカを用いた突然変異体のスクリーニング 器官形成に関わる遺伝子ネットワークを明らかにするためには,未知の遺伝子を対象とする forward genetics を実施する ことが不可欠である.本研究では,尾芽形成と器官形成に注目して,メダカ変異体のスクリーニングを遺伝研で実施した. サブテーマ2: 器官形成クロックの分子メカニズム 器官形成の過程では,個々の細胞の増殖,分化,移動などが正確な時間で起こっている.そして,これを遂行する器官 形成のための分子時計(器官形成クロック)が存在していると考えられる.その器官形成クロックの働きが最も顕著に現れる のが体節形成である.我々はマウス,ニワトリ,ゼブラフィッシュの体節形成をモデルとして,組織の分離(境界形成)に関わ る特殊な細胞群の研究をおこなうことにより,器官構築の基盤となる組織コンパートメントの成立の分子機構を解析した.一 方,周期性や繰り返し構造の創出機構の理解には,理論的な考察が不可欠である.生物の周期性を裏打ちする理論を基 にしたシミュレーションとその結果の検証を in vivo で行った. (1)器官形成クロックの分子実体 繰り返しパターンを作り出す理論,Turing の反応拡散モデルや coupled oscillator モデルに基づきシミュレーションを行い, その結果をニワトリ,ゼブラフィッシュで検証した.また,空間的な周期性を形成するメカニズムの解明に関してはモデルとし てゼブラフィッシュの縞模様形成を対象として,普遍的な理論の構築を目指した.一方マウスを用いた実験では,Notch シ グナルが阻害される各種ノックアウトマウスと mesp ノックアウトマウスの交配による遺伝学的解析を行った.さらに,新規のク ロック関連遺伝子の単離を目指して,体節が形成される尾芽組織に着目したサブトラクション法を実施した. (2)コンパートメント成立機構の解明と誘導系の確立 器官形成クロックによる時間的情報が空間的な形態形成に変換されるメカニズムを明らかにした.具体的には,器官形 成クロックによる分節ポイント確定と分節・境界形成過程で起こる上皮化の機構をマウスとニワトリ胚を用いて解析した.境 界形成の誘導と間充織細胞の上皮化に関しては,主にニワトリ胚を用いて,組織及び細胞塊の移植操作と Notch および Rho ファミリー関連遺伝子の in ovo エレクトロポレーション法とを組み合わせて,その影響を解析した.一方,各種ノックアウ ト,ノックインマウスを用いて,境界形成に必須な体節内前後極性の形成機構および器官形成クロックの空間的パターンへ の翻訳機構を Notch シグナルと Mesp の関係に注目して明らかにした. 2 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 ■ 実施体制 研 究 項 目 1. 担当機関等 研究担当者 中胚葉性幹細胞の成立と自己組織化のメカニ ズム (1) 中胚葉の発生と尾芽幹細胞の分化機構 国立遺伝学研究所(現東京大学 ○武田洋幸 大学院・理学研究科) 水産庁養殖研究所 荒木和男 理化学研究所・免疫アレルギー科学 古関明彦 総合研究センター (2) 中胚葉組織再生の分子メカニズム 東京工業大学大学院生命理学研究科 工藤 明 国立遺伝学研究所 (現東京大 武田洋幸 学大学院・理学研究科) 国立医薬品食品衛生研究所(現 相賀裕美子 国立遺伝学研究所) 国立医薬品食品衛生研究所 北嶋聡 (3) 突然変異体のスクリーニングとクロック関連遺伝 国立遺伝学研究所 (現東京大 武田洋幸 子の機能解析 学大学院・理学研究科) 2. 器官形成クロックの分子メカニズム (1) 器官形成クロックの分子実体 東京工業大学大学院生命理学研究科 工藤 明 放射線総合医学研究所 石川裕二 国立医薬品食品衛生研究所 ○菅野 純 国立医薬品食品衛生研究所(現 相賀裕美子 国立遺伝学研究所) 国立遺伝学研究所(現東京大学 武田洋幸 大学院・理学研究科) (2) コンパートメント成立機構の解明と誘導系の確 名古屋大学大学院理学研究科 近藤 滋 国立医薬品食品衛生研究所 菅野 純 高橋 立 理化学研究所・発生再生科学総合 雄 高橋淑子 研究センター 国立医薬品食品衛生研究所(現 相賀裕美子 国立遺伝学研究所) ○ サブテーマ責任者 3 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 ■ 融合研究評価委員会 氏 名 ◎赤池敏宏 所 属 東京工業大学大学院生命理工学研究科・教授 山村研一 熊本大学・医学部・教授 平野俊夫 大阪大学大学院医学研究科・教授 八杉貞雄 東京都立大学・大学院理学研究科・教授 Patrick Tam シドニー大学・医学部・教授 Jacqueline Deschamps オランダ発生生物学研究所・室長 Stephen Wilson ロンドン大学・教授 ◎ 研究評価委員長 ■ 融合研究推進委員会 氏 名 ◎小原 雄治 所 属 国立遺伝学研究所・所長 長尾 拓 国立医薬品食品衛生研究所・所長 井上 達 国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・センター長 武田洋幸 国立遺伝学研究所・教授 (現東京大学・教授) 相賀裕美子 国立医薬品食品衛生研究所・毒性部・室長 (現国立遺伝学研究所・教授) ◎ 研究推進委員長 4 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の概要 ■総 括 本プロジェクトは,遺伝子ネットワークを解析する上で強力な解析手段であるマウスの逆遺伝学と小型魚類(ゼブラフィッ シュ,メダカ)の順遺伝学・実験発生学を組み合わせた融合研究として計画された.本プロジェクトでは特に,中胚葉性細 胞を産生する尾芽幹細胞システム,繰り返しパターンを創出する器官形成クロック,組織内コンパートメント形成を主な研究 対象とした.融合研究機関においては,マウスそして小型魚類のそれぞれの利点を最大限に活かした研究および必要に 応じてニワトリ胚を用いた研究が実施されて,後述のような数々の重要な結果が得られた.その結果,器官形成の各素過 程の分子メカニズムの理解が飛躍的に深まり,新しいコンセプトが生まれつつあると確信している.特筆すべきこととしては, 尾芽幹細胞システムの分化・維持及び中胚葉の成熟過程を制御する因子としての Fgf シグナルの新規機能と新規転写因 子の発見(tbx24),器官形成クロックの実体である Notch シグナルと体節形形成遺伝子 Mesp の相互作用の解明,境界形 成における誘導組織(セグメンター)の発見と上皮化の機構解明,そして器官形成クロックの時間的情報を空間的情報に 翻訳する Mesp の新規機能の解明,である.さらに我々は器官形成クロックの理論的考察と in vivo における検証も行うこと に成功しており,遺伝学,実験生物学そして理論生物学の融合も実現したと考えている.これらの成果は,小型魚類,マウ ス,ニワトリの実験系を駆使して得られたものであるが,それぞれの研究者が融合研究機関を中心に集まり,日常的に情報 やアイデアを交換し,討論を繰り返した結果といっても過言ではない. さらに,本プロジェクトで実施されたメダカ変異体スクリーニングについて総括したい.メダカは日本産の実験動物であり, 発生遺伝学の分野で先行するゼブラフィッシュと同等のポテンシャルを持っている.今回の変異体スクリーニングでは,今 後の器官形成研究に重要と思われるメダカ突然変異体を多数単離することに成功した.これらの変異体の中には,メダカ のシンプルなゲノム構成やゼブラフィッシュとの大きな進化的距離を反映して,メダカ特異的な表現型を示すものも多く含ま れていた.2002 年の秋にスタートしたメダカゲノムプロジェクト(遺伝研・小原研と東京大学・武田研,森下研を中心に実施 中)は,H16 年度末までにほぼそのドラフトが完成し,これがメダカ変異体の原因遺伝子のポジショナルクローニングを加速 している.実際に,今回の変異体スクリーニングで得られた変異体の少なくとも 5 系統は短期間にその原因遺伝子が判明し た.従って,ゲノム情報と併せることで,今回得られたメダカ変異体リソースの価値はさらに高まることは間違いない. 最後に,一般に誘発突然変異体やノックアウトマウスの解析には多大な時間と労力が必要である.本プロジェクト期間中 に蒔かれた種は現在成長段階であり,プロジェクト終了後も継続して収穫されることを付け加えたい. ■ サブテーマ毎,個別課題毎の概要 サブテーマ 1: 中胚葉性幹細胞と自己組織化のメカニズム 脊椎動物胚で中胚葉細胞を産生する尾芽幹細胞の分化・維持機構,中胚葉が体節を形成する過程および体節から軟 骨原基を形成する過程に関与する分子機構を小型魚類(ゼブラフィッシュ,メダカ)とマウスを用いて遺伝学的,分子生物 学的解析を行った.その結果,尾芽幹細胞システムの分化・維持と中胚葉が体節を形成する過程は,Fgf シグナルによって 多段階に制御されていること,体節形成直前で新規転写因子 Tbx24 が重要な働きを担っていることが判明した.また,マウ ス尾芽領域で発現する Frizzled 10 が脊椎骨形成過程に,またショウジョウバエの fringe connection に関連するマウス UGTre17 が軟骨形成過程に関与していることも明らかとなった. 中胚葉系組織である骨,歯の再生,リモデリングに関与する遺伝子の同定と機能解析を魚類とマウスの実験を用いて行 った.その結果,骨・歯の再生に機能する遺伝子としてペリオスチンが同定され,さらにノックアウトマウスの解析により,メカ ニカルストレス応答分子として機能することが証明された.一方我々は器官再生のモデルとして,小型魚類のヒレ再生を対 象とした.再生過程で発現が有意に変動する遺伝子を単離し,メダカ尾ビレ再生関連遺伝子として6種類同定することに成 功した.その中の1つはヒレ再生 1 日目と咽頭歯再生領域に発現が見られ,再生特異的に発現する遺伝子であった. 尾芽形成と器官形成に異常を示す新規変異体を単離する目的で,メダカ突然変異体のスクリーニングを大規模に実施 5 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 した.その結果,尾芽,体節,骨格,心臓血管・血球,ヒレの変異体を 196 種類得ることに成功して,そのうちの 30 系統につ いて系統化を行って,表現型の解析と原因遺伝子の同定を進めた.すでに,赤血球形成異常の変異体 who の原因遺伝 子をメダカ ENU 変異体として世界で初めて同定して発表した.その産物はヘモグロビンの合成酵素 ALAD であった.この 他にも,本研究に深く関連する変異体 5 系統についてその原因遺伝子が確定した. 以上のようにサブテーマ 1 では,尾芽幹細胞システムの分化・維持機構,分節ポイントを決める位置情報についてシグナルの 解明,再生に重要と思われる遺伝子の単離,器官形成の研究に不可欠な突然変異体リソースの確立,という成果が得られた. サブテーマ2: 器官形成クロックの分子メカニズム 本研究では,器官形成クロックの分子実体の解明にむけて,シミュレーションと実験(ゼブラフィッシュとニワトリ)を併用し た解析を行った.まず,体節形成の位置情報が反応拡散の波でできていることを示唆する結果が得られた.さらに,器官形 成クロックは細胞の同調的振動で成り立っており,その同調性は Notch シグナルを介して成立することが理論と実験の両 方で確かめられた.一方,マウス胚中胚葉組織において,Notch シグナルの活性化が周期的に起こっていることをはじめて 可視化することに成功した.これは,器官クロックによって作り出される周期性の実体が Notch シグナルの活性化であること を証明する結果である. 未分節中胚葉が分節してコンパートメントを形成する過程の分子メカニズムをマウスとニワトリを用いて解明した.その結果, 境界形成を引き起こす誘導活性が Notch シグナルと転写因子 Mesp2 によって調節されていること,体節の上皮化に Rho ファ ミリーが関与すること,そして,境界形成時には Notch シグナルが Mesp2 と協調的および拮抗的に相互作用することがはじめ て明らかになった.さらに,マウス胚より新規 cDNA や体節中胚葉での機能未知なものを単離することに成功した. 以上のようにサブテーマ 2 においては,クロックの実体が理論的に裏付けを得てその全容が明らかになった.また,コン パートメント形成に不可欠な境界形成の機構(上皮化と組織内の極性)そして,時間的なクロック情報の空間的パターンへ の翻訳機構の分子実体が明らかになった. ■ 波及効果,発展方向,改善点等 我々の研究成果は,器官形成の基本的プロセスである①幹細胞システムによる構成細胞の産生,②繰り返しパターンの 創出,③コンパートメント形成そして④構成細胞の分化,と多岐にわたっている.脊椎動物の発生機構は,種を超えて保存 されており,ゲノムに存在する遺伝情報の多くは共通である.従って,器官形成クロックと尾芽幹細胞システムに関する今 回の成果は,今後ヒトを対象とする器官形成,再生の研究に直接貢献できるものである.生体組織の大半を占める中胚葉 組織(筋肉,骨,血管,間質組織,腎など)を用いた再生医療の需要は年々高まっており,今後も中胚葉性器官の新規技 術を取り入れた研究の重要度は増す. 本プロジェクトでは,遺伝学,実験発生学そして理論生物学の融合が実現して,器官形成クロックの実体に迫ることがで きた.一方,研究の過程では,クロックや境界形成といった動的な生命現象は,live imaging の手法を取り入れた研究なく しては成り立たないことを痛感した.本プロジェクトでもマウスやゼブラフィッシュを用いた解析で,一部 live imaging の手法 が取り入れられた.しかし,30 分から 2 時間という短い周期を持つ遺伝子発現・活性の変動をリアルタイムでしかも高解像 (細胞レベル)で解析できる技術がさらに必要となっている.従って,器官形成クロックは生命科学の技術的ブレークスルー に挑戦するための実験系としても最適であると思われる. 本プロジェクトでは,メダカ突然変異体の大規模な単離に成功した.メダカドラフトゲノムと併せると,メダカは研究リソース のすべてを国内で作り出すことに成功した貴重な実験系といえる.本プロジェクトにおいても,既にその一部は利用されて 成果をあげている.本研究プロジェクトの波及効果の一つとして,今後これらのメダカリソースが日本発の貴重なリソースとし 世界中の研究者に利用され,器官形成の分野に大きく貢献することが期待される. 最後に,総括でも述べたが,誘発突然変異体やノックアウトマウスの解析は時間と労力を要するため,プロジェクト研究 期間内に必ずしも完全には成果が得られない場合がある.プロジェクト研究の評価の際には,このような状況を考慮するし くみや,研究の萌芽を正しく評価して継続してサポートできる制度が望まれる. 6 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の概要 <課題全体> 国立遺伝学研究所 国立医薬品食品研究所 メダカ 多数の突然変異体 の単離と解析 突然変異体の 原因遺伝子の同定 体節形成の最重要遺伝 子 Fss/Tbx24の発見 体節形成位置情報としての FGFシグナル発見 マウス ゼブラフィッシュ Forward genetics 変異体スクリーニング 多数のノックアウトマウス の作成 Reverse genetics 遺伝子ノックアウト 尾芽、ヒレ再生特異的 遺伝子群の単離 ペリオスチンをメカノストレス 応答蛋白質として同定 尾芽特異的遺伝子群の単離 分節直前の遺伝子 カスケードの解明 ニワトリ Reaction-Diffusionによる 周期性の制御 セグメンターの発見 分節機構の実験 発生学的解析 Notchシグナルによる 同調的振動の証明 分節境界形成機構 の解明 体節上皮化分子機構の解明 : 情報の流れ 器官形成クロック・幹細胞システムの 分子基盤の解明 器官再生の技術基盤の確立へ 7 : H12~H14年度の 主な成果 :H14~H16年度の 主な成果 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 ■ 所要経費 (単位:百万円) 研 究 項 目 1. 研 究 担当機関等 所要経費 H12 H13 H14 年度 年度 年度 170 206 201 577 器官形成クロックの分子メカニズ 国 立 医 薬 品 食 品 相賀裕美子 129 107 106 342 313 307 919 担当者 合計 中胚葉性幹細胞の成立と自己 組織化のメカニズム (1) 中胚葉の発生と尾芽幹細胞の 分化機構 国立遺伝学研究所 武田洋幸 ( 現東京大学大学 院・理学研究科) (2) 中胚葉組織再生の分子メカニ ズム (3) 突然変異体のスクリーニングとク ロック関連遺伝子の機能解析 2. 衛生研究所(現国 ム (1) 器官形成クロックの分子実体 立遺伝学研究所) (2) コンパートメント成立機構の解 明と誘導系の確立 所 要 経 費 (合 計) 299 8 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 (単位:百万円) 研 究 項 目 1. 研 究 担当機関等 所要経費 H15 H16 年度 年度 210 200 410 器官形成クロックの分子メカニズ 国 立 医 薬 品 食 品 相賀裕美子 112 100 212 300 622 担当者 合計 中胚葉性幹細胞の成立と自己 組織化のメカニズム (1) 中胚葉の発生と尾芽幹細胞の 分化機構 国立遺伝学研究所 武田洋幸 ( 現東京大学大学 院・理学研究科) (2) 中胚葉組織再生の分子メカニ ズム (3) 突然変異体のスクリーニングとク ロック関連遺伝子の機能解析 2. 衛生研究所(現国 ム (1) 器官形成クロックの分子実体 立遺伝学研究所) (2) コンパートメント成立機構の解 明と誘導系の確立 所 要 経 費 (合 計) 322 ■ 使用区分 (単位:百万円) サブテーマ1 サブテーマ2 計 人件費 222 1 223 備品費 155 49 204 消耗品費 557 482 1039 旅費 40 22 62 その他 13 計 987 13 554 1541 9 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 ■ 研究成果の発表状況 (1) 研究発表件数 国 内 国 際 合 計 原著論文による発表 左記以外の誌上発表 口頭発表 合 計 第Ⅰ期 0 件 第Ⅰ期 22 件 第Ⅰ期 20 件 第Ⅰ期 42 件 第Ⅱ期 0 件 第Ⅱ期 23 件 第Ⅱ期 22 件 第Ⅱ期 45 件 第Ⅰ期 46 件 第Ⅰ期 8 件 第Ⅰ期 18 件 第Ⅰ期 72 件 第Ⅱ期 57 件 第Ⅱ期 7 件 第Ⅱ期 15 件 第Ⅱ期 79 件 第Ⅰ期 46 件 第Ⅰ期 30 件 第Ⅰ期 38 件 第Ⅰ期 114 件 第Ⅱ期 57 件 第Ⅱ期 30 件 第Ⅱ期 37 件 第Ⅱ期 124 件 (2) 特許等出願件数 第Ⅰ期 2 件 (うち国内 2 件,国外該当なし) 第Ⅱ期 該当なし 合計 2 件 (うち国内 2 件,国外該当なし) (3) 受賞等 なし (4) 主な原著論文による発表の内訳 国内誌(国内英文誌を含む) 該当なし 海外誌 本研究に関連して発表した論文 1. Sawada A, Fritz A, Jiang Y, Yamamoto A, Yamasu K, Kuroiwa A, Saga Y, Takeda H: 「Zebrafish Mesp family genes, mesp-a and mesp-b are segmentally expressed in the presomitic mesoderm, and Mesp-b confers the anterior identity to the developing somites」, Development. 127:1691-702, (2000) 2. Takahashi Y, Koizumi K, Takagi A, Kitajima S, Inoue T, Koseki H, Saga Y : 「Mesp2 initiates somite segmentation through the Notch signalling pathway」, Nat Genet. 25:390-6, (2000) 3. Koizumi K, Nakajima M, Yuasa S, Saga Y, Sakai T, Kuriyama T, Shirasawa T, Koseki H : 「The role of Presenilin1 during somite segmentation」, Development 128:1391-1402, (2001) 4. Sawada A, Shinya M, Jiang Y.-J, Kawakami A, Kuroiwa A, Takeda H: 「Fgf/MAPK signalling is a crucial positional cue in somite boundary formation」, Development, 128, 4873-4880, (2001) 5. Sudo H, Takahashi Y, Tonegawa A, Arase Y, Aoyama H, Mizutani-Koseki Y, Moriya H, Wilting J, Christ B, Koseki H: 「Inductive signals from the somatopleure mediated by bone morphogenetic proteins are essential for the formation of the sternal component of avian ribs」, Dev. Biol, 232, 284-300, (2001) 6. Nagaya M, Inohaya K, Imai Y, Kudo A: 「Expression of zisp, a DHHC zinc finger gene, in somites and lens during zebrafish embryogenesis」, Mech. Dev. 119S,S311-S314, (2002) 7. Nikaido M, Kawakami A, Sawada A, Furutani-Seiki M, Takeda H, Araki K: 「Tbx24, encoding a T-box protein, is mutated in the zebrafish somite-segmentation mutant fused somites」, Nature Genetics, 31, 1995-199, (2002) 10 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 8. Sato Y, Yasuda K, Takahashi Y : 「Morphological boundary forms by a novel inductive event mediated by Lunatic-Fringe and Notch during somatic segmentation」, Development 129, 3633-3644, (2002) 9. Oshima A, Tanabe H, Yan T, Lowe GN, Glackin CA, Kudo A: 「A nobel mechanism for the regulation of osteoblast differentiation. Transcription of periostin, a member of the fasciclin I family, is regulated by the bHLH transcription factor, Twist」, J. Cell. Biochem. 86, 792-804, (2002) 10. Nomura-Kitabayashi A, Takahashi Y, Kitajima S, Inoue T, Takeda H, Saga Y : 「Hypomorphic Mesp allele distinguishes establishment of rostrocaudal polarity and segment border formation in somitegenesis 」 , Development, 129:2473-81, (2002) 11. Suzuki M, Mizutani-Koseki Y, Fujimura Y, Miyagishima H, Kaneko T, TakadaY, Akasaka T, Tanzawa H, Takihara Y, Nakano M, Masumoto H, Vidal M, Isono K, Koseki H: 「Involvement of the Polycomb-group gene Ring1B in the specification of the anterior-posterior axis in mice」, Development, 129, 4171-4183, (2002) 12. NishiyamaT, Kii I, Kudo A: 「Inactivation of Rho/ROCK signaling is crucial for the nuclear accumulation of FKHR and myoblast fusion」, J. Biol. Chem. 279, 47311-47319, (2004) 13. Yasutake J, Inohaya K, Kudo A: 「Twist functions in vertebral column formation in the medaka, Oryzias latipes」, Mech. Dev. 121, 883-894, (2004) 14. Kudo H, Amizuka N, Araki K, Inohaya K, Kudo A: 「Zebrafish periostin is required for the adhesion of muscle fiber bundles to the myoseptum and for the differentiation of muscle fibers」, Dev. Biol. 267,473-487 (2004) 15. Kawakami A, Fukazawa T, Takeda H: 「Early fin primordia of zebrafish larvae regenerate by a similar growth control mechanism with adult regeneration」, Developmental Dynamics 231, 693 – 699, (2004) 16. Takahashi Y, Inoue T, Gossler A, Saga Y : 「Feedback loops comprising Dll1, Dll3 and Mesp2, and differential involvement of Psen1 are essential for rostrocaudal patterning of somites」, Development. 130:4259-4268, (2003) 17. Nakaya Y, Kuroda S, Katagiri Y, Kaibuchi K, Takahashi Y: 「Mesenchymal-epithelial transition during somitic segmentation is regulated by differential roles of Cdc42 and Rac1」, Developmental Cell 7, 425-438, (2004) 18. Kimura T, Jindo T, Narita T, Naruse K, Kobayashi D, Shin-I T, Kitagawa T, Sakaguchi T, Mitani H, Shima A, Kohara Y, Takeda H: 「Large-scale isolation of ESTs from medaka embryos and its application to medaka developmental genetics」, Mechanisms of Development 121, 915-932, (2004) 19. Takahashi Y, Kitajima S. Inoue T, Kannno, J, Saga Y: 「Differential contributions of Mesp1 and Mesp2 to the epithelialization and rostro-caudal patterning of somites」, Development, 132: 787-796, (2005) 20. Morimoto M, Takahashi Y, Endo M. Saga Y: 「The transcription factor Mesp2 establishes segmental borders by suppressing Notch activity」, Nature in press, (2005) 関連して発表した論文 1. Amanuma K, Takeda H, Amanuma H, Aoki Y: 「Transgenic zebrafish for the detection of mutations caused by compounds in aquatic environments」, Nature Biotechnology, 18, 62-65, (2000) 2. Wilde J, Yokozeki M, Terai K, Kudo A, Moriyama K: 「The divergent expression of periostin mRNA in the periodontal ligament during experimental tooth movement」, Cell & Tissue Res. 312, 345-351, (2003) 3. Kawakami A, Nojima Y, Toyoda A, Ishida-Takahoko M, Satoh M, Tanaka H, Wada H, Masai I, Terasaki H, Sakaki Y, Takeda H, Okamoto H: 「The zebrafish secreted matrix protein You/Scube2 is implicated in long-range regulation of hedgehog signaling」, Curr. Biol., 15, 480–488, (2005) 4. Kawahara A, Che YS, Hanaoka R, Takeda H, Dawid IB: 「Zebrafish GADD45beta genes are involved in somite segmentation」, Proc Natl Acad Sci U S A., 102, 361-366, (2005) 5. Ohtsuka M, Kikuchi N, Yokoi H, Kinoshita M, Wakamatsu Y, Ozatod K, Takeda H, Inoko H, Kimura M: 11 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 「Possible roles of zic1 and zic4, identified within the medaka Double anal fin (Da) locus, in dorsoventral patterning of the trunk-tail region (related tophenotypes of the Da mutant)」, Mechanisms of Development 121, 873-882, (2004) 12 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 1. 中胚葉性幹細胞の成立と自己組織化のメカニズム 1.1. 中胚葉の発生と尾芽幹細胞の分化機構 国立遺伝学研究所・発生工学研究室 相賀 裕美子、武田 洋幸(現,東京大学)、荒木 和男(水産庁養殖研究所)、 古関 明彦(理化学研究所・免疫アレルギー科学総合研究センター) ■要 約 本研究では,脊椎動物胚で中胚葉細胞を産生する尾芽幹細胞の分化・維持機構,中胚葉が体節を形成する過程およ び体節から軟骨原基を形成する過程に関与する分子機構を小型魚類(ゼブラフィッシュ,メダカ)とマウスを用いて遺伝学 的,分子生物学的に解析した.その結果,尾芽幹細胞システムの分化・維持と中胚葉が体節を形成する過程は FGF シグ ナルによって多段階に制御されていること,体節形成直前で新規転写因子 Tbx24 が重要な働きを担っていることが判明し た.また,マウス尾芽領域で発現する Frizzled 10 が脊椎骨形成過程に,またショウジョウバエの fringe connection に関連 するマウス UGTre17 が軟骨形成過程に関与していることが明らかとなった. ■目 的 中胚葉細胞を継続的に供給する尾芽幹細胞システムの成立機構,そして未分化幹細胞が体節として分化する過程,体 節細胞が骨に分化する過程を魚類とマウスの特徴を活かして探る.具体的には,尾芽幹細胞システムの分化・維持機構に 異常を示すメダカ突然変異体 headfish, ゼブラフィッシュ変異体 fused somite の原因遺伝子の探索とその遺伝子の機能解 析を目指した.またマウスを用いた研究においては,胎児尾芽領域に特異的に発現する遺伝子群の同定と機能の解析さ らにNotch関連新規遺伝子の機能解析を目指した. ■ 研究方法 小型魚類の実験 ゼブラフィッシュは胚発生が早く,受精後 14 時間で体節形成期に達する.野生型および変異体は変異をヘテロに持つ 親から得られる体節形成期の胚を実験に用いた.メダカ headfish の原因遺伝子の単離には,遺伝的組み換えを指標にす るポジショナルクローニングを実施した(引用文献 1).一方ゼブラフィッシュ fused somites のクローニングには,未分節中 胚葉(分節前の中胚葉)で発現する遺伝子を候補としたクローニング(candidate cloning)法を用いた.また,細胞移植は 我々の実験室で開発された胚操作技術を用いた(引用文献 2). マウスの実験 尾芽領域特異的に発現する遺伝子を網羅的にスクリーニングするために,胎児尾芽領域の全長 cDNA ライブラリー, EST データベースを作成し,冗長性を排除したマイクロアレイを作成する(図-1).マイクロアレイおよび他のデータベースと の比較 (in silico でのサブトラクション) を行う.これらの機能については,ノックアウトマウスを作成し解析する. Notch 経路のシグナル伝達に重要な役割を果たすと想定されていたプレセニリン(引用文献 3),Nov,ショウジョウバエ Fringe connection のマウス・ホモログであり糖ヌクレオチド輸送体である UGTrel7 と UGTrel8 のノックアウトマウスを作成し, その表現型の解析を行った. 13 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 図-1 マウス尾芽領域に特異的に発現する遺伝子のスクリーニング ■ 研究成果 メダカ headfish 変異体の解析による尾芽幹細胞システムの分化・維持機構の解析 ENU を用いたメダカ突然変異体スクリーニングで単離された変異体の1つ headfish は,発生初期に中胚葉組織に異常を 示し,孵化期には胴尾部のほとんどを欠損する.一方,頭部はほぼ正常に形成されることから,headfish はメダカ胚の胴尾 部の形成に必須の遺伝子をコードしていることが示唆された.変異体ではほぼすべての中胚葉組織(中軸中胚葉と沿軸中 胚葉)が影響を受けており,特に,沿軸中胚葉が形成されないことが明らかになった.詳細な解析の結果,尾芽からの中胚 葉細胞の供給の低下,尾芽における細胞死の増加,及び細胞分裂の低下が認められ,その結果として尾芽幹細胞システ ムが維持されないことが判明した.表現型の解析と並行してポジショナルクローニングによる原因遺伝子の単離を行った. その結果,fgfr1 が原因遺伝子であることが強く示唆された.変異体の cDNA を調べたところ,エキソン6に塩基置換が存在 し,これによって細胞外のイムノグロブリンドメイン II にアミノ酸置換が生じていることが明らかになった. 14 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 headfish 変異体 野生型メダカ稚魚 受精後 9 日 図-2 メダカ headfish 変異体は Fgf 受容体1(Fgf-R1)遺伝子の変異である A-D,野生型メダカと headfish 変異体,受精後 9 日の外形―変異体では胴尾部が欠失する. E, ポジショナルクローニングによる原因遺伝子の絞込み F, Fgf 受容体1の保存されているアミノ酸に塩基置換が生じている.これによりこの受容体の機能は完全に消失する. ゼブラフィッシュ体節形成における Fgf シグナルの役割と変異体 fused somites を用いた解析 未分節中胚葉内で周期的発現変動を示す遺伝子の発現が未分節中胚葉の頭部側で停止するという事実は,何らかの 位置情報が存在することを示唆している.われわれは未分節中胚葉内で Fgf シグナルの活性化のレベルが大きく変化して いることを見出した.Fgf シグナルの活性化の指標である dp-ERK は,抗体染色の結果,未分節中胚葉内で尾芽領域から 未分節中胚葉の中間付近までは強く染まっており,前方(頭部側)で染色が急に低下していた.なお,dp-ERK の染色パタ ーンは,zebrafish fgf8 の発現パターンによく似ていた(図-3).次に,Fgf シグナルの役割を Fgf 受容体の tyrosine kinase に 対する特異的阻害剤,SU5402 を用いて調べてみた.体節期の胚を SU5402 で一過的に処理すると,her1 の発現が対照群 に比べてより尾部側で停止して,また分節直前に一過的に発現する Mesp の発現領域もより後方に移動した.従って,Fgf シグナルを一過的に阻害することにより,her1 の発現停止の位置,分節関連遺伝子の発現開始の位置そして分節形成の 位置がそれぞれ尾部側に移動し,その結果として大きな体節が形成される(図-3).さらに,Fgf8 をしみこませたビーズを未 分節中胚葉に移植すると,her1 の発現停止の位置が頭部側に移動して,一過的に小さな体節ができることも確認された. 15 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 尾部末端の胴尾部オルガナイザー領域で発現する T-box 及び forkhead 遺伝子の単離を行い,尾部領域で発現する新 規の T-box 遺伝子 tbx24 を単離した.この遺伝子の T-box 領域は tbx6 と 64%の相同性を持つが,長い 3’側を持つ新規の 遺伝子であった(図-4).tbx24 は中胚葉の誘導と共に胚体周縁部で発現を開始し,膀軸中胚葉から未分節中胚葉へと発 現領域を変え,体節の形成が終わるまで尾部末端部で発現を続ける(図-4).機能解析を行うため,tbx24 のモルフォリノア ンチセンスオリゴヌクレオチドを受精卵に注入し,翻訳を抑制したところ,体節の分節化を起こさないゼブラフィッシュの突然 変異体 fss と全く同じ表現型を示した.この fss 変異体では,分節に必須な遺伝子の発現がすべて起こらず,従って分節も まったくおこらない重篤な表現型を示す.fss の連鎖解析及び塩基配列の解析から,tbx24 遺伝子が fss の変異を起こした 遺伝子そのものであること,さらに,変異体の表現型が野生型fss遺伝子の導入により救済されることが確認された(図-4). 図-3. Fgf シグナルにより分節ポイントの制御 ゼブラフィッシュ未分節中胚葉の後方(尾側)半分では Fgf シグナルが強く活性化されている(上図中). この活性化領域は fgf8 の発現と一致する(上図右). Fgf シグナルを一過的に SU5402 で阻害すると分節ポイントが後方にずれて大きな体節が形成される(下図). 図-4 tbx24 はゼブラフィッシュ体節形成変異体 fss の原因遺伝子である (A) tbx24 の構造. (B)tbx24 の発現 (未分節中胚葉領域で発現,矢印) (C)fssと tbx24 は同じ領域にマップされた.変異体では tbx24 遺伝子に変異があった. (D)fssの表現型(中図,体節がない)は野生型 tbx24 を導入することで救済された(右図体節が誘導された) 16 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 マウス体節形成過程で特異的に発現する遺伝子の単離と遺伝子ノックアウトによる解析 マウス 11 日胚尾芽領域から,全長 cDNA ライブラリーを作成し,そこからランダムにピックアップした2万クローンについて 末端配列を決定した(図-1)(引用文献 4 - 6).その結果,8000の独立したクラスターが明らかにされた.ここから,尾芽領 域特異的に発現する遺伝子として,マイクロアレイ法により 51 クローン,他のデータベースとの系統的な比較により 54 クロ ーンを同定することに成功した(図-1).これらのうち,体節形成に先立って一過性に発現が変化するふたつのクローン,キ ネシン様モチーフを有するタンパクをコードする Kif26a および Wnt の受容体のひとつである Frizzled10 についてノックアウ トマウスの作成を行った.Kif26a ノックアウトマウスは,メンデルの法則にしたがって生まれてくるが,ホモ接合体の大半が腹 部膨満を伴いながら 1 年以内に死亡する.この死亡の原因は巨大結腸症であると考えられている.また,このマウスは震顫 などの神経症状を呈することから,神経機能に異常があると考えられ現在その原因の詳細な解析を行っている.一方, Frizzled10 欠損マウスでは,軽度の脊椎骨の変形が認められた. UGTrel7 と UGTrel8 は,ショウジョウバエ Fringe connection に高い相同性を有する 7 回膜貫通型タンパクであり,それぞ れ小胞体およびゴルジ体において糖ヌクレオチド輸送体として機能する.ショウジョウバエ Fringe connection 変異では, Notch 変異様の表現型を示し,その分子基盤は Notch の糖鎖修飾の不全であると考えられていた.これらのノックアウトマウ スを作成したところ,UGTrel8 変異マウスでは顕著な異常は観察されなかったが,UGTrel7 変異マウスは軟骨異形成症と同 様の症状を呈した(図-5).特に顕著であったのが,四肢近位部の短縮であり,これは発生過程において 15 日ぐらいから進 行性に明らかになる.この時期の軟骨原基の伸長は将来骨端線を構成する Growth plate に依存することから,Growth plate の形成を組織学的に解析した.Growth plate は,休止層,増殖層,過形成層の三層からなり,増殖層において分裂し た軟骨芽細胞は,過形成層で軟骨細胞へと分化した後死滅していく.UGTrel7 は,増殖層で強く発現している.UGTrel7 変異マウスでは,この三層とも構成されていたものの,増殖層での細胞増殖は顕著に低下し,増殖層そのものも著しく短縮 していることが明らかになった(図-6).増殖層の短縮の原因は,軟骨芽細胞数の減少ではなく,細胞間基質の量的な減少 であると考えられた.軟骨の細胞間基質の主要な構成成分は,プロテオグリカンとヒアルロン酸であり,プロテオグリカンは 強く糖鎖修飾をうけていることが知られている.そこで,軟骨原基を用いて二糖解析を行い,コンドロイチン硫酸とヘパラン 硫酸の含有量を野生型と変異マウスとで比較すると,コンドロイチン硫酸の比含量のみが変異マウスで顕著に低下してい た.プロテオグリカンのひとつであるアグリカンは,強くコンドロイチン硫酸による修飾をうけていることが知られているので, アグリカンに対する糖鎖修飾の変化を放射性標識して解析した.その結果,変異マウスでは野生型の31%しか標識されて いないことが示された.この標識量の低下が,プロテオグリカンの分子量の変化に基づくものであることを明らかにするため に,この標識された分画をさらにゲルろ過により分画した.その結果,分子量は野生型の4分の1に低下しており,糖鎖の分 子量を比較すると,それも半分程度に低下していることが示された.この糖鎖長の変化だけでは,プロテオグリカンの分子 量の変化や二糖解析で示されたコンドロイチン硫酸の比含量の低下は説明できないので,おそらく糖鎖の数も低下してい ると考えられる.このようなプロテオグリカンの糖鎖修飾の低下がプロテオグリカン複合体の形成にどのようなインパクトを持 っているのかを調べるために透過型電子顕微鏡を用いた解析を行った.その結果,プロテオグリカンを反映する凝集塊の 顕著な減少とコラーゲンファイバー密度の増加が観察された.以上の解析より,小胞体で発現する UGTrel7 は,軟骨の細 胞外基質の成分であるプロテオグリカン,特に,アグリカンへのコンドロイチン硫酸修飾に必須であり,この過程を介して軟 骨原基の成長に重要な役割を果たすことが示された. 17 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 図-5. 4UGTrel7 変異マウスで見られた典型的な軟骨異形成症 図-6 UGTrel7 変異マウスで見られた Growth plate の形態学的変化 18 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 ■考 察 Fgf−R1 を介したシグナルによる尾芽幹細胞システムの分化・維持 今回の headfish の解析により,Fgf-R1 を解した Fgf シグナルが尾芽幹細胞システムの分化と維持に必須なシグナルであ ることが判明した.Fgfシグナルは中胚葉形成全般に必須なシグナルとして,両生類やマウスで解析されてきた.headfish の 原因遺伝子である Fgf-R1 は,すでにそのノックアウトマウスの表現型が報告されている.Fgf-R1 ノックアウトマウスでは中胚 葉形成の初期段階で重篤な表現型が現れ致死となりる.今回単離したメダカ headfish 変異体では,おそらく母性からの Fgf-R1 RNA やタンパク質の供給があるため,中胚葉形成には重篤な異常は見られない.従って,メダカ headfish を用いる ことにより,より後期の尾芽幹細胞システムの分化と維持における Fgf シグナルの役割を解析することが可能となった.また, ゼブラフィッシュでは,体幹部欠失という headfish にみられるような重篤な表現型を示す変異体の報告はない.これはゼブ ラフィッシュにおいては Fgf-R 遺伝子群の冗長性が高いためと思われ,メダカの有用性を示している.Fgfシグナルは発生 の様々な場面で重要な役割をしていることが知られているが,リガンド-レセプターの特異性やシグナルの使い分けについ てはほとんど明らかになっていない.この変異体を用いた解析によって,FGF シグナルの中で Fgf-R1 がはたす役割やその 特異性について新たな知見が得られると考えている. Fgf シグナルと Tbx 遺伝子による体節細胞の成熟過程の制御 ゼブラフィッシュ胚において,Fgf シグナルは尾芽と未分節中胚葉の後半部で強く活性化されている. Fgf シグナルの活 性領域は尾芽より前方の一定の範囲だけで認められ,尾芽の伸長・後退に伴って,一定の速度で後退する.従って,Fgf シグナルが位置情報として機能して,未分節中胚葉の尾部から頭部領域で変化する分節プログラムを制御して分節ポイン トを決定していると考えられる.Fgf シグナルが位置情報として機能していることは,ゼブラフィッシュだけでなくニワトリ胚でも 確かめられている(引用文献 7). ゼブラフィッシュ fss 変異体の表現型の解析から,今回単離された新規遺伝子 tbx24 が未分節中胚葉の前方で起こる体 節形成プログラム全体を支配する重要な遺伝子であることが判明した.尾芽と未分節中胚葉の後半では,Fgf シグナルが 活性化しており,この領域では中胚葉細胞は未分化な状態に保たれている.そして,未分節中胚葉の前方においては, Fgf シグナルの活性が低下し,一方分節プログラムの開始に必須な Tbx24 が発現しているために分節形成が進行すると考 えられる (図-7). 図-7 ゼブラフィッシュの体節形成 fused somites 変異体の原因遺伝子 Tbx24 は未分節中胚葉の前方で,体節細胞の分化に必須な因子である. 一方,Fgf シグナルは未分節中胚葉の尾部側で活性化しており,体節細胞を未成熟な状態に保ち,分節形成を抑制する. 19 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 マウスの骨形成を制御する遺伝子,UGTrel7 マウスの尾芽で発現する遺伝子は尾芽領域での中胚葉細胞の産生や中胚葉細胞の成熟に関与していると予想される. しかし,今回ノックアウトマウスを作成した Kif26a や Frizzled10では,後者に軽微な脊椎骨形成異常が認められただけであ った.これらの結果は,これらの遺伝子と並行して機能する遺伝子の存在を示唆している.一方,ショウジョウバエ Fringe connection の UGTrel7 ノックアウトマウスで顕著な軟骨形成異常が観察された.詳細な解析の結果,UGTrel7 を介した糖ヌ クレオチドの小胞体への移行は,細胞外基質を制御する重要な過程であることが明らかにされた.このような遺伝子を介し た骨形成プログラムの操作が可能になる可能性が示唆された. ■ 引用文献 1. Kimura T, Jindo T, Narita T, Naruse K, Kobayashi D, Shin-I T, Kitagawa T, Sakaguchi T, Mitani H, Shima A, Kohara Y, Takeda H: 「Large-scale isolation of ESTs from medaka embryos and its application to medaka developmental genetics」, Mech. Dev., 121, 915-932, (2004) 2. Mizuno T, Shinya M, Takeda H: 「Cell and tissue transplantation in zebrafish embryos」, In Molecular Methods in Developmental Biology - Xenopus and Zebrafish. Ed. M. Guille, Humana Press Inc. p.15-28, (1999) 3. Koizumi K, Nakajima M, Yuasa S, Saga Y, Sakai T, Kuriyama T, Shirasawa T, Koseki H: 「The role of Presenilin1 during somite segmentation」, Development, 128, 1391-1402, (2001) 4. Ohara O, Nagase T, Mitsui G, Kohga H, Kikuno R, Hiraoka S, Takahashi Y, Kitajima S, Saga Y, Koseki H: 「Characterizaion of size-fractionated cDNA libraries generated by the in vitro recombination-assisted method」, DNA Research, 9, 47-57, (2002) 5. 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Sawada A, Shinya M, Jiang Y.-J, Kawakami A, Kuroiwa A, Takeda H: 「Fgf/MAPK signalling is a crucial positional cue in somite boundary formation」, Development, 128, 4873-4880, (2001) 6. Sudo H, Takahashi Y, Tonegawa A, Arase Y, Aoyama H, Mizutani-Koseki Y, Moriya H, Wilting J, Christ B, Koseki H: 「Inductive signals from the somatopleure mediated by bone morphogenetic proteins are essential for the formation of the sternal component of avian ribs」, Dev. Biol, 232, 284-300, (2001) 7. Isono K, Abe K, Tomaru Y, Okazaki Y, Hayashizaki Y, Koseki H: 「Molecular cloning, genetic mapping, and expression of the mouse Sf3b1 (SAP155) gene for the U2 snRNP component of spliceosome」, Mammalian Genome, 12, 192-198, (2001) 8. 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Yuasa S, Nakajima M, Aizawa H, Sahara N, Koizumi K, Sakai T, Usami M, Kobayashi S, Kuroyanagi H, Mori H, 21 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 Koseki H, Shirasawa T: 「Impaired cell cycle control of neuronal precursor cells in the neocortical primordium of presenilin-1-deficient mice」, J Neurosci Res, 70, 501-513, (2002) 20. Miyagishima H, Isono K, Fujimura Y, Koseki H: 「Dissociation of mammalian Polycomb-group proteins, Ring1B and Rae28/Ph1, from the chromatin correlates with configuration changes of the chromatin in mitotic and meiotic prophase」, Histochem Cell Biol, 120, 111-119, (2003) 21. Nakajima M, Yuasa S, Ueno M, Takakura N, Koseki H, Shirasawa T: 「Abnormal blood vessel development om moce lacking presenilin-1」, Mech. Dev, 120, 657-667, (2003) 22. Okazaki N, Kikuno R, Ohara R, Inamoto S, Koseki H, Hiraoka S, Saga Y, Nagase T, Ohara O, Koga H: 「Prediction of the coding sequences of mouse homologues of KIAA gene, III. the complete nucleotide sequences of 500 mouse KIAA-homologous cDNAs identified by screening of terminal sequences of cDNA clones randomly sampled from size-fractionated libraries」, DNA Res, 10, 167-80, (2003) 23. de Graaff W, Tomotsune D, Oosterveen T, Takihara Y, Koseki H, Deschamps J: 「Randomly inserted and targeted Hox/reporter fusions transcriptionally silenced in Polycomb mutants」, Proc Natl Acad Sci U S A., 100, 13362-7, (2003) 24. Kaneko T, Miyagishima H, Hasegawa T, Mizutani-Koseki Y, Isono K, Koseki H: 「The mouse YAF2 gene generates two distinct transcripts and is expressed in pre-and postimplantation embryos」, Gene, 315, 183-92, (2003) 25. Sekimizu K, Nishioka N,Sasaki N, Takeda H, Karlstrom, K. Kawakami A: 「The zebrafish iguana locus encodes Dzip1, a novel zinc finger protein required for proper regulation of hedgehog signaling」 Development, 131, 2521-2532, (2004) 26. K Araki, H Okamoto, H Nagoya: 「Tbx24, controlling the somite-segmentation, is induced with FGF signal」 Marine Biotechnology, 6, S425-S430, (2004) 27. Nakajima M, Moriizumi E, Koseki H, Shirasawa T:「Presenilin 1 is essential for Cardiac Morphogenesis」, Developmental Dynamics, l , 230, 795-799, (2004) 28. Napoles M, Mermoud J, Wakao R, Tang Y.A, Endoh M, Appanah R, Silva J, Otte A.P, Vidal M, KosekiH, and Brockdorff N: 「Polycomb-group proteins Ring1A/B link ubiquitylation of histone H2A to heritable gene silencing and X inactivation」, Dev. Cell, 5, 663-76, (2004) 29. 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Kawahara A, Che YS, Hanaoka R, Takeda H, Dawid IB: 「Zebrafish GADD45beta genes are involved in somite segmentation」 Proc Natl Acad Sci U S A., 102, 361-366, (2005) 原著論文以外による発表(レビュー等) 国内誌(国内英文誌を含む) 1. 澤田篤志,相賀裕美子,武田洋幸: 「体節の形成と分化」, 蛋白質核酸酵素 45,2766-2773,(2000) 2. 新屋みのり,武田洋幸,弥益 恭: 「神経誘導と神経組織の体軸に沿ったパターニング」, 蛋白質核酸酵素 45,2738-2744, (2000) 22 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 3. 武田洋幸,影山龍一郎: 特集「位置情報と境界形成を担うシグナル,器官形成の基本原理」“序,組織の中に コンパートメントを作る−位置情報と境界形成”, 細胞工学,21,462-463,(2002) 4. 武田洋幸: 「波と分節」, 蛋白質核酸酵素,47,2017-23,(2002) 5. 武田洋幸,相賀裕美子: 「FGF と Notch シグナルによる体節形成の制御」, 細胞工学,21,486-492,(2002) 6. 武田洋幸: 「小型魚類の初期発生-ゼブラフィッシュの中・内胚葉形成を中心として」,発生生物学がわかる (羊土社), 168-173, (2003) 7. 古関明彦: 「クロマチン修飾の生物学,個体発生および細胞分化過程における位置付け」, 細胞工学, 23, 10, (2004) 国外誌 1. Sakaguchi T, Mizuno T, Takeda H: 「Formation and patterning roles of the yolk syncytial layer」 In Pattern Formation in Zebrafish, Springer-Verlag, Ed. L. Solnica-Krezel , 1-14, (2002) 2. Holley S A, Takeda H: 「Catching a wave, the oscillator and wavefront that create the zebrafish somite」 In Seminars in Cell & Developmental Biology, 13, 481-488, (2002) 3. Takeda H, Saga Y: 「Somite segmentation, A view from fish」, In Fish Development and Genetics, the zebrafish and medaka models Ed. Zhiyuan, G. and Korzh, V ,261 - 295, (2004) 口頭発表 招待講演 1. 武田洋幸: ゼブラフィッシュ終脳の領域特異性の獲得と FGF シグナル.第 23 回日本神経科学大会・第 10 回 日本神経回路学会合同大会シンポジウム,横浜,2000. 09. 2. 武田洋幸: 分節時計を示す遺伝子発現. 第 53 回日本細胞生物学会シンポジウム,福岡,2000 年,10 月. 3. 古関明彦: 「発生と進化」, 岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所, 第 44 回基礎生物学研究所コンファレ ンス, 2000. 11. 26. 4. 古関明彦: 「脊柱管パターン形成の分子メカニズム」, 岡山大学, 第 9 回岡山脊椎外科研究会, 2000. 09. 16. 5. Sawada A, Shinya M, Jiang Y-J, Kawakami A, Kuroiwa A, Takeda H: 「FGF/MAPK sigunaling regulates maturation of the presomitic mesoderm during vertebrate segmentation」, The Second European Conference on Zebrafish Genetics and Development, London, 2001, 04. 6. Takeda H, Koshida S, Shinya M: 「Roles of Fgf signal in induction and patterning of zebrafish neural tissues」, 14th International Congress of Developomental Biology, Kyoto, 2001. 07. 7. Sawada A, Shinya M, Jiang Y-J, Kawakami A, Kuroiwa A, Takeda H: 「FGF/MAPK signaling regulates maturation of the presomitic mesoderm during vertebrate segmentation」,14th International Congress of Developmental Biology, Kyoto, 2001. 07. 8. 古関明彦: 「遺伝子発現制御におけるエピジェネティクスの展開」, 大阪大学・蛋白質研究所, 大阪大学蛋白 質研究所セミナー, 2001. 07. 27. 9. Takeda, H: 「Positional information and cell behavior during zebrafish somite segmentation, roles of Fgf signal and T-box genes」, 58th Annual Meeting of Society for Developmental Biology (Boston) 2003. 07. 10. Araki K, Okamoto H, Yoshiura Y, Nagoya H: 「Tbx24, Controlling the Somite-segmentation Is Induced with FGF Signal」, 2th International Conference of Aquatic Genomics. Tokyo 2003. 09. 23. 11. Takeda H: 「Positional information and cell behavior during zebrafish somite segment, roles of Fgf signal and T-Box genes」, Kyoto University and the 4th Oxford-Kobe Biomedical Science Joint International Symposium, Kobe, 2003. 10. 12. Takeda H: 「Positional information and cell behavior during zebrafish somite segment, roles of Fgf signal and 23 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 T-Box genes」, Kyoto University and the 4th Oxford-Kobe Biomedical Science Joint International Symposium, Kobe, 2003. 10. 13. Horikawa K, Kondo S, Takeda H: 「The segment-shift activity of Hairy-deficient cells reveals a crucial cellular mechanism that controls the segmentation clock」, Beauty in Embryology -Patterning and Shaping of the Body, Kobe, 2004. 02. 14. Takeda H: 「Fgf signaling in body and neural patterning of the fish,Symposium on Vertebrate Brain Pattern Formation」,32nd IDAC Symposium and Symposium of Brain Pattern Formation (MEXT),2004.10. 29. 応募・主催講演等 1. Koshida S, Shinya M, Takeda H: 「Antagonistic interaction between FGF and BMP signaling pathways in zebrafish posterior neural development」, Cold Spring Harbor, 2000. 04. 2. Sawada A, Shinya M, Jiang Y-J, Kawakami A, Kuroiwa A, Takeda H: 「FGF/MAPK sigunaling regulates maturation of the presomitic mesoderm during vertebrate segmentation」, The Second European Conference on Zebrafish Genetics and Development, London, 2001. 04. 3. Takeda H, Koshida S, Shinya M: 「Roles of Fgf signal in induction and patterning of zebrafish neural tissues」 14th International Congress of Developomental Biology, Kyoto,2001. 4. Sawada A, Shinya M, Jiang Y-J, Kawakami A, Kuroiwa A, Takeda H: 「FGF/MAPK signaling regulates maturation of the presomitic mesoderm during vertebrate segmentation」, 14th International Congress of Developmental Biology, Kyoto, 2001. 07. 5. 澤田篤志,二階堂昌孝,川上厚志,荒木和男,武田洋幸: 「Fgf シグナルが制御する脊椎動物の分節」, 第 24 回日本分子生物学会年会,横浜,2001. 12. 6. Nikaido M, Kawakami A, Sawai A, Furutani-Seiki M, Takeda H, Araki K: 「fused somites is a novel T-box gene required for somite segmentation」, 5th International Conference on Zebrafish Development and Genetics, 2002. 7. Takeda H, Yamasu K: 「Fgf and posterior neural development in zebrafish」, 第 25 回日本分子生物学会年会 シンポジウム,横浜, 2002.12 8. 関水康伸,西岡則幸,佐々木洋,武田洋幸,Alexander F.Schier,川上厚志: 「ヘッジホッグシグナル伝達の新 しい調節因子 iguana」, 第 36 回日本発生生物学会大会,札幌,2003. 05. 9. 古 関 明 彦 : 「 Inversely graded associations of mammalian polycomb Ring1B and acetylated HistoneH3 associations upon Hoxb7/8/9 region is involved in the maintenance of anterior boundaries of their expression」, 日本生化学会大会, 2003 05. 31. 10. 関水康伸,西岡則幸,佐々木洋,武田洋幸,川上厚志: 「ゼブラフィッシュ変異体から明らかになった新規ヘ ッジホッグシグナル伝達コンポーネント」, 第 26 回日本分子生物発生学会年会ワークショップ,神戸,2003. 12.10-13 11. 横井勇人,小林大介,高島茂雄,成田貴則,神藤智子,木村哲晃,北川忠生,景崇洋,澤田篤志,成瀬清, 浅川修一,清水信義,三谷啓志,嶋昭紘,堤美紀子,堀寛,石川裕二,相賀裕美子,武田洋幸,荒木和男: 「メダカ胴尾部欠損変異体 headfish の解析」, 第 37 回日本発生生物学会大会,名古屋,2004.6.4-6 12. 古関明彦: 「Regulation of cellular proliferation by mammalian Polycomb complex」, かずさアカデミアホール, 特定領域「細胞周期制御 」国際シンポジウム “Cell Death, Cell Cycling and Cell Senescence” -細胞死,細 胞周期と細胞老化-,2004. 11. 17. 13. 古関明彦: 「ほ乳類ポリコーム群複合体の機能発現機序」, 神戸国際会議場, 第 27 回日本分子生物学会年 会,2004. 12. 10. 14. 川上厚志,野島康弘,豊田敦,石田-鷹架美賀子,佐藤美紀,田中英臣,和田浩則,政井一郎,寺崎晴美, 24 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 武田洋幸,岡本仁: 「背側神経に発現する細胞表面タンパク Scube2 による長距離のヘッジホッグシグナル制 御機構」,第 27 回日本分子生物学会年会ワークショップ,神戸,2004. 12. 特許等出願等 1. 平成 13 年 3 月 22 日,「形質転換動物及びスクリーニング方法」,古関 明彦,白澤 卓二,特願 2001−082181 受賞等 なし 25 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 1. 中胚葉性幹細胞の成立と自己組織化のメカニズム 1.2. 中胚葉組織再生の分子メカニズム 国立遺伝学研究所・発生工学研究室 相賀 裕美子、工藤 明(東京工業大学) ■要 約 中胚葉系組織である骨,歯の再生,リモデリングに関与する遺伝子の同定と機能解析を魚類とマウスの実験を用いて行 った.その結果,骨・歯の再生に機能する遺伝子としてペリオスチンが同定され,ノックアウトマウスの解析により,メカニカ ルストレス応答分子として機能することが証明された.また器官再生のモデルとして,小型魚類のヒレ再生過程で発現が有 意に変動する遺伝子を単離し解析した結果,メダカ尾ビレ再生関連遺伝子として6種類同定することに成功した.その中の 1つはヒレ再生 1 日目と咽頭歯再生領域に発現が見られ,再生特異的に発現する遺伝子であった. ■目 的 本研究では,組織再生に関与する遺伝子プログラムを解明することを目的としてゼブラフィッシュ胚より単離された骨・歯の再 生に機能すると考えられる遺伝子ペリオスチンの解析をゼブラフィッシュとノックアウトマウスを用いて行った.また再生を研究す るのに極めて優れた系であるメダカの尾ヒレをモデルとして,再生過程で機能する遺伝子の網羅的遺伝子解析を行った. ■ 研究方法 マウスの実験 通常の方法でペリオスチンノックアウトマウスを作成し,表現型の解析を実施した. 小型魚類の実験 メダカヒレ再生の分子メカニズムを検討するためにヒレ再生後 3 日目,10 日目の EST を網羅的にシークエンスし,さらにマ イクロアレイを作成し,再生特異的遺伝子の同定を行った. ■ 研究成果 ペリオスチンの機能解析 ゼブラフィッシュで筋間中隔と筋繊維形成に機能するペリオスチン遺伝子のノックアウトマウスの作成に成功した.ペリオ スチンはマウス成体で骨膜と歯根膜に発現しており,ともにメカニカルストレスを強く受けている.ノックアウトマウスは切歯の 放出・再生不全,外骨膜の形成不全による骨への圧力に対して不応答性を示した(図-1).ゼブラフィッシュの筋間中隔も 代表的なメカニカルストレス応答組織であることも考えあわせると,ペリオスチンはメカニカルストレス応答性の蛋白であるこ とが明らかになった.さらにヒト心筋梗塞や癌組織にもペリオスチンの発現誘導が見られ,ペリオスチンが病理的診断,治療 に有用な遺伝子であることが明らかになった. ヒレ再生過程で変動する遺伝子の探索 再生芽が形成され,幹細胞が分化開始する時期であるメダカヒレ再生 3 日目と 10 日目の cDNA ライブリーを構築し,遺 26 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 伝研において 20000 個の遺伝子をシークエンスした.その結果,3日目で 3454 クラスター,10日目で 3813 クラスターが得ら れた.3454 のうち 1166 クラスター(33.8%)のみが,10 日目のシークエンスと重なっており, 計 6101 クラスターが得られた. 再生 3 日目と 10 日目のクローンからヒレ再生遺伝子として 3000 個を選択し,DNA チップを作成した.再生初期 1 日目,2 日目,3 日目,再生後期 10 日目と普通のヒレにおける発現パターンをマイクロアレイにて検討し,ヒレ再生過程における遺 伝子発現を網羅的に解析した.その結果,3000 個の EST から6個の遺伝子が単離された(図-2).特に再生1日目に特異 的発現を示す 2 個の遺伝子に関してメダカ発生過程における発現解析を行った結果,その中の1個はメダカで常に再生を 繰り返している器官である咽頭歯に特異的に発現していた. 図-1 ぺリオスチンノックアウトマウスにおける切歯の再生不全を示した.左図のように野生型ではマウスの切歯 を切断すると再生され 4 日後には元に戻るが,右図のノックアウトマウスでは再生しない. 図-2 メダカヒレ再生過程(上図)とマイクロアレイによるヒレ再生関連遺伝子の単離 27 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 ■考 察 ペリオスチンは骨のリモデリング,歯の再生に必須な遺伝子である ぺリオスチンの機能を小型魚類,ノックアウトマウス,ヒトの疾患を用いて解析した.その結果ペリオスチンはこれまでほと んど未知であったメカニカルストレス応答遺伝子であり,組織の修復,改変と器官再生に関わる分子であることが判明した. ゼブラフィッシュにおいては筋間中隔と筋肉形成,マウスでは歯根膜と骨のリモデリング,歯の再生(図-1 参照),ヒト疾患で は心筋梗塞,癌転移に関与している.開放融合型の研究の特徴を最大限に活用し,共同研究を通した機能解析の結果, ぺリオスチンは今後再生に関わるキー分子として大きな期待がかけられている. ヒレ再生特異的な遺伝子 再生のメカニズムの解明を目指して,メダカ尾ビレ再生過程を遺伝子レベルで検討してきた.その結果,再生特異的に 機能していると思われる遺伝子が得られ,さらに尾ビレ再生に異常のある変異体が得られたことにより(1.3.で詳述),再生 特異的な分子メカニズムの存在が示唆された.今後,遺伝子解析により再生を惹起するシステムの構築が期待できる. ■ 引用文献 なし ■ 成果の発表 原著論文による発表 国内誌(国内英文誌を含む) なし 国外誌 1. Takeshita S, Kaji K, Kudo A: 「Identification and characterization of the new osteoclast progenitor with macrophage phenotypes being able to differentiate into mature osteoclasts」, J. Bone Miner. Res. 15, 1477-1488, (2000) 2. Takeshita S, Kaji K, Kudo A: 「Identification and characterization of the new osteoclast progenitor with macrophage phenotypes being able to differentiate into mature osteoclasts」, J. Bone Miner. Res. 15, 1477-1488, (2000) 3. Inohaya K, Kudo A: 「Temporal and spatial patterns of cbfa1 expression during embryonic development in the teleost, Oryzias latipes」, Dev. Genes Evol. 210, 570-574, (2000) 4. Azuma Y, Kaji K, Katogi R, Takeshita S, Kudo A: 「TNF-α induces differentiation of and bone resorption by osteoclasts」, J. Biol. Chem. 275, 4858-4864, (2000) 5. 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Kudo H, Amizuka N, Araki K, Inohaya K, Kudo A: 「Zebrafish periostin is required for the adhesion of muscle fiber bundles to the myoseptum and for the differentiation of muscle fibers」, Dev. Biol. 267,473-487 (2004) 22. Koh D, Inohaya K, Imai Y, Kudo A, 「The novel medaka transglutaminase gene is expressed in developing yolk veins」, Gene Exp. Patterns 4,263-266, (2004) 23. Shimaoka H, Dohi Y, Ohagushi H, Ikeuchi M, Okamoto M, Kudo A, Kirita T, Yonemasu K: 「Recombinant growth/differentiation factor-5 (GDF-5) stimulates osteogenic differentiation of marrow mesenchymal cells in porous hydroxyapatite ceramics」, J. Biomed. Mater. Res. 68,168-176, (2004) 24. Kawakami A, Fukazawa T, Takeda H: 「Early fin primordia of zebrafish larvae regenerate by a similar growth control mechanism with adult regeneration」, Developmental Dynamics 231, 693 – 699, (2004) 29 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 25. Emoto Y, Wada H, Okamoto H, Kudo A, Imai Y: 「Retionic acid-metabolizing enzyme Cyp26a1 is essential for determining territories of hindbrain and spinal cord in zebrafish」, Dev. Biol. 278, 415-427, (2005) 26. Kii I, Amizuka N, Kitajima S, Minqi L, Takeuchi K, Oda K, Maeda T, Kanno J, Inoue T, Saga Y, Kudo A: 「Disruption of periodontal ligament remodeling caused by mechanical stress in periostin-deficient mice」, J. Bone Miner. Res. in press 27. Kanazawa K, Kudo A: 「TRAF2 is essential for TNFα-induced osteoclastogenesis」, J. Bone Miner. Res. in press 原著論文以外による発表(レビュー等) 国内誌(国内英文誌を含む) 1. 佐藤照,工藤 明: 「免疫系における転写調節と CREAB/BCP」, 医学のあゆみ,203, 8, 541-542, (2002) 2. 梶圭介,工藤 明:「貪食作用における細胞骨格のダイナミックスと FcγR,感染・炎症・免疫」, 32, 4, 28-34, (2002) 3. 工藤 明,喜井 勲: 「間葉系幹細胞と軟骨・骨・筋肉」,再生医学の基礎,名古屋大出版, (2003) 4. 佐藤 照,工藤 明: 「プレ B 細胞の分化と Pax-5」, 臨床免疫,39, 4, 371-376, (2003) 5. 喜井 勲,工藤 明: 「カドヘリンを介した細胞間相互作用」,日本臨床, 62, Suppl2,85-89, (2004) 6. 工藤 明,安武純一,藤田深里,加藤木礼: 「メダカにおける骨・心臓・ヒレ再生研究,再生医療への応用を目 指して」,細胞工学, 23, 1, 49-54, (2004) 7. 中谷友紀,工藤 明: 「魚類の再生現象―メダカのヒレ再生を中心にー」,バイオインダストリーFeb, 46-51, (2005) 国外誌 なし 口頭発表 招待講演 1. Kudo A: 「Mesoderm-derived organ formation in medaka and zebrafish」, The 1st International symposium on developmental biology and tissue engineering, Tokyo Inst. Tech. Yokohama, 2003. 03. 24. 2. 工藤 明: 「Role of NOV and periostin in bone formation」, 第 76 回日本生化学会シンポジュウム,横浜;CCN 遺伝子ファミリー,新規 matricellular 蛋白質としての意義, 2003. 10. 15. 3. 工藤 明: 「メカニカルストレスの分子メカニズムの解明を目指してーペリオスチンノックアウトマウスの解析」, 先進口腔科学シンポジウム, 九州大学歯学部,2004. 3. 15- 16. 4. 工藤 明: 「A genetic screen for mutations affecting organogenesis and fin regeneration」, 2004 World Congress on In Vitro Biology “Stem cells in aquatic organisms”, San Francisco, 2004. 05. 22-26. 応募・主催講演等 1. 工藤 明: メダカヒレ再生,発生生物学会シンポジュウム2―メダカ生物学の新展開 オーガナイザー,日本発 生生物学会第35回大会, 横浜 2002.5.21-23. 2. 工藤 明: 「骨生体制御における NOV とペリオスチンの役割」, 第 26 回日本分子生物学会 シンポジュウムオ ーガナザー,CCN 遺伝子ファミリー研究の最前線,神戸,2003. 12. 12. 3. 工藤 明:シンポジュウムオーガナザー, B cell フロンティア シンポジウム, 九州大学,2004. 3. 26-28. 4. 川上厚志,深澤太郎,武田洋幸: 「細胞の脱分化・再分化を伴わない幼若組織の修復も再生と定義できる」, 第 37 回日本発生生物学会大会,名古屋,2004. 05. 30 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 特許等出願等 1. 出願日 2000.5.15 発明の名称,ゼブラフィッシュトランスグルタミナーゼ,発明者,工藤明,出願人,バイオクエ スト 特願 2000-141526 受賞等 なし 31 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 1. 中胚葉性幹細胞の成立と自己組織化のメカニズム 1.3. メダカ突然変異体のスクリーニング 国立遺伝学研究所・発生工学研究室 相賀 裕美子、武田 洋幸(現,東京大学)、工藤 明(東京工業大学)、荒木和男(水産庁養殖研究所)、 石川 裕二(放射線医学総合研究所) ■要 約 中胚葉性器官の発生に異常を示す新規変異体を単離する目的でメダカ突然変異体のスクリーニングを大規模に実施し た.その結果,尾芽,体節,骨格,心臓血管・血球,ヒレの変異体を 196 種類得ることに成功して,そのうちの 30 系統につい てライン化を行って表現型の解析と原因遺伝子の同定を行っている.すでに,赤血球形成異常の変異体 who の原因遺伝 子をメダカの ENU 変異体としては世界で初めて同定して発表した.その産物はヘモグロビンの合成酵素 ALAD であった. この他にも,5 系統について原因遺伝子が確定した. ■目 的 器官形成に関わる遺伝子ネットワークを明らかにするためには,未知の遺伝子を対象とする forward genetics を実施する ことが不可欠である.小型魚類は,脊椎動物の中で唯一研究室レベルで forward genetics が可能な実験動物である.この 分野で先行しているゼブラフィッシュはゲノムサイズが 1,700Mb と大きく,遺伝子重複などが原因で変異体単離の効率の悪 さが指摘されている.これに対して,メダカはゲノムサイズが 700-800 Mb で比較的小さく,実験発生学,遺伝学でゼブラフィ ッシュと同等のポテンシャルを持つ.また,温帯性のメダカは発生可能な温度範囲が6℃から 40℃とゼブラフィッシュ(24℃ から 30℃)に比べてかなり広く,発生後期の解析に重要な温度感受性変異株の単離が期待される.さらにメダカでは,ゼブ ラフィッシュにはない多数の純系が国内で樹立されている.特に,北日本と南日本系統の間では,non-coding で 3%, coding 領域で 1%の塩基配列の差(ゼブラフィッシュの持つ多型の約 5 倍)が存在し,これが変異体の原因遺伝子同定(連鎖地図 へのマッピングや染色体歩行)に極めて有利な条件となる.本研究では,尾芽や中胚葉性器官に注目して,ゼブラフィッシ ュでは単離されていない新規の表現型を持つメダカの突然変異体の単離を目指す. ■ 研究方法 国立遺伝学研究所において,スクリーニングのための飼育施設が平成 12 年度末に完成した(水槽約 2,000 個,100 ㎡) (図-1).班員の石川が確立した技術を導入した.変異原として,DNA にポイント変異を誘発する化学発ガン剤,ENU を用い た.スクリーニングでは 3 世代スクリーニング法を採用し(図-1),観察は受精後 1 日から 2 週間の間に実体顕微鏡下または 各種染色の後に行った. 32 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 図-1 メダカ飼育施設(左,国立遺伝学研究所内),メダカ変異体スクリーニングのスキーム ■ 研究成果 変異体スクリーニング 突然変異体スクリーニングの結果,現在までに収集した突然変異体として,尾芽形成異常 4 系統,体節形成異常 4 系統, 器官の左右性異常 8 系統,肝臓変性7系統,甲状腺異常 4 系統,心臓・血管系の異常を示すものが 59 系統,血球異常 9 系 統,骨のパターン形成異常 19 系統,鰭の異常 25 系統,尾鰭の再生異常 16 系統などが含まれていた.特にゼブラフィッシュ では全く単離されていない椎骨形成不全や,発生は正常でヒレ再生のみ異常を示す変異体の単離に成功したことは特筆さ れる(図-2).また,突然変異体の中には,ヒトの先天的疾患と対応する表現型のものが多数含まれていた.スクリーニングの 過程では内臓や器官の左右性に異常を示す変異体が多数単離された(図-5, 6).メダカはゼブラフィッシュに較べて左右軸 が厳密に決まっており,同様に厳密に決まっている哺乳類の内臓逆位疾患モデルとして有用であることが判明した. 原因遺伝子の同定 メダカゲノムプロジェクトが武田研究室,小原研究室(国立遺伝学研究所),森下研究所(東大・新領域)の共同プロジェクト として進んでいる.これらのゲノム情報を有効に活用することにより,メダカ変異体の原因遺伝子の同定が加速した.すでに 我々は以下の5つの変異体の原因遺伝子を突き止め,さらに 5 系統の変異体については,その候補遺伝子を得ている. who, 赤血球分化異常の変異体.ヘモグロビン合成の酵素である ALAD 遺伝子がその原因遺伝子であることがわかり,ヒト のポリフィリン血症の原因遺伝子と同じことから,メダカ突然変異体が疾患モデルとしても有用であることが実証された. UT-006 , 尾芽形成異常の変異体.原因遺伝子はオーガナイザー因子の chordin であった.この変異体は温度感受性を 示し,18 度では頭がまったく形成されない(図-3).一方,30 度では正常に発生するが,尾芽の形成に一部異常がある.こ の尾芽形成異常が器官の配置の左右性異常を引き起こしており,左右性確立における尾芽の役割の解析に発展した. headfish , 体幹部,尾が欠失する.原因遺伝子は Fgf 受容体1.尾芽幹細胞システムの分化と維持における Fgf シグナル の役割が明らかになった(1.1 で詳述). tacobo , 尾の伸張異常と頭部神経系組織の形成異常が顕著な変異体である.原因遺伝子が代表的な細胞外基質である ことが判明した.尾芽伸長は Fgf シグナル,wnt シグナルなどによって制御されており,このシグナル経路と細胞外基質の関 係を解析している(図-4). 33 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 UT-016, 左右性異常の変異体.尾芽領域に存在する中胚葉性器官,Kupper’s vesicle 内の繊毛異常.原因遺伝子は繊 毛形成に関与する新規の遺伝子であることが判明した.この変異体は同時に,多数ののう胞を形成し,ヒトで高頻度に起こ る遺伝病の多発性のう胞腎のモデルとなる(図-5). 以下,代表的な変異体の写真を示す. 図-2 脊椎骨が融合する突然変異体 ki87,脊椎骨がジグザグ状に形成される突然変異体 ki69,および鰭の再生に欠損 を示す突然変異体 ki81 図-3 温度感受性を示す chordin の変異体.変異はスプライシングアクセプターの部位に起こっていた. 低温では頭部形成不全,高温では尾芽形成異常と左右軸形成異常が見られた. 34 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 図-4 尾芽伸長の異常変異体,tacobo (tab) 尾芽の伸長遅延の他に,体節縮小,ヒレ欠損,中脳領域の形成異常がある. 図-5 UT-016 心臓ループの左右性が逆になる変異体 図-6 中脳形成の左右性が異常の変異体,oot ■考 察 我々は ENU 処理による大規模突然変異体スクリーニングにより,多くのメダカ変異体の単離に成功した.その中でも,骨, 心臓血管,ヒレ等の変異体はゼブラフィッシュ変異体には見られない形態異常を示した.特に椎骨形成異常はゼブラフィッ シュでは全く得られていない変異体である.これら変異体から原因遺伝子を単離することにより,器官形成のしくみを知ると 共に,その応用が可能となる.日本の研究者が中心となって実施されているメダカゲノムプロジェクトが H16 年度末までに 終了した.これらのゲノム情報を用いることにより,変異体原因遺伝子の単離は飛躍的に容易になる.すでに,我々は 5 系 統の変異体の原因遺伝子をポジショナルクローニングにより明らかにしており,さらに,この 1 年弱で5系統の変異体の候 35 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 補遺伝子を得ることに成功している.従って,来年度以降注目する変異体の原因遺伝子は 1 年足らずでクローニングでき ることになる.本研究では 4 年がかりのスクリーニングを行って,興味深い変異体を多数単離することができた.これらの変 異体群は,今後器官形成,再生研究の重要なリソースとなることは間違いない. ■ 引用文献 なし ■ 成果の発表 原著論文による発表 国内誌(国内英文誌を含む) なし 国外誌 1. Yamauchi M, Kinoshita M, Sasanuma M, Tsuji S, Terada M, Morimyo M, Ishikawa Y: 「Introduction of a foreign gene into medakafish using the particle gun method」, Journal of Experimental Zoology, 287, 285-293, (2000) 2. Yukawa M, Ishikawa Y, Imaseki H, Aoki K: 「Elemental Distribution in organs of Medaka, Oryzias laptipes, burdened with X-ray irradiation and salty water」 , International Journal of PIXE, 10, 121-125, (2000) 3. Ishikawa Y, Yoshimoto M, Yamamoto N, Yasuda T, Tokunaga F, Iigou M, Wakamatsu Y, Ozato K: 「Brain Structures of a Medaka Mutant, el(eyeless), in Which Eye Vesicles Do Not Evaginate, Brain」, Behavior and Evolution, 58, 173-184, (2001) 4. Yokoi H, Kobayashi T, Tanaka M, Nagahama Y, Wakamatsu Y, Takeda H, Araki K, Morohashi K, Ozato K: 「 sox9 in a teleost fish, medaka (Orizias latipes), evidence for diversified function of Sox9 in gonad differentiation」, Molecular Reproduction and Development, 63, 5-16, (2002) 5. Koga A, Hori H, Ishikawa Y: 「Gamera, a family of LINE-like repetitive sequences widely distributed in medaka and related fishes」, Heredity, 89, 446-452, (2002) 6. Koga A, Iida A, Kamiya M, Hayashi R, Hori H, Y Ishikawa, Tachibana A: 「The medaka fish Tol2 transposable element can undergo excision in human and mouse cells」, Journal of Human Genetics, 48, 231-235, (2003) 7. Kinoshita M, Yamauchi M, Sasanuma M, Ishikawa Y, Osada T, Inoue K, Wakamatsu Y, Ozato K: 「A Transgene and Its Expression Profile are Stably Transmitted to Offspring in Transgenic Medaka Generated by the Particle Gun Method」, Zoological Science, 20, 869-875, (2003) 8. Sakamoto D, Kudou H, Inohaya K, Yokoi H, Narita T, Naruse K, Mitani T, Araki K, Shima A, Ishikawa Y, Imai Y, Kudou A: 「A mutation in the gene for delta-aminolevulinic acid dehydratase (ALAD) causes hypochromic anemia in the medaka, Oryzias latipes」, Mechanisms of Development, 121, 747-752, (2004) 9. Sakamoto D, Kudo H, Inohaya K, Yokoi H, Narita T, Naruse K, Mitani H, Shima A, Ishikawa Y, Imai Y, Kudo, A; 「A mutation in the gene for δ-aminolevulinic acid dehydratase (ALAD) causes hypochromic anemia in the medaka, Oryzias latipes」, Mech. Dev. 121, 747-752 (2004) 10. Katogi R, Nakatani Y, Shin-I T, Kohara Y, Inohaya K, Kudo A: 「Large-scale analysis of the genes involved in fin regeneration and blastema formation in the medaka, Oryzias latipes」, Mech. Dev. 121, 861-872 (2004) 11. Tanaka K, Ohisa S, Orihara N, Sakaguchi S, Horie K, Hibiya K, Konno S, Miyake A, Setiamarga D, Takeda H, Imai Y, Kudo A: 「Characterization of mutations affecting embryonic hematopoiesis in the medaka, Oryzias latipes」, Mech. Dev. 121, 739-746 (2004) 36 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 12. Kage T, Takeda H, Yasuda T, Maruyama K, Yamamoto N, Yoshimoto M, Araki K, Inohaya K, Okamoto H, Yasumasu S, Watanabe K, Itou H, Ishikawa Y: 「Morphogenesis and regionalization of the medaka embryonic brain」, The Journal of Comparative Neurology, 476, 219-239, (2004) 13. Ishikawa Y, Kage T, Yamamoto N, Yoshimoto M, Yasuda T, Matsumoto A, Maruyama K, Itou H: 「Axonogenesis in the medaka embryonic brain」, The Journal of Comparative Neurology, 476, 240-253, (2004) 14. Ohtsuka M, Kikuchi N, Yokoi H, Kinoshita M, Wakamatsu Y, Ozatod K, Takeda H, Inoko H, Kimura M: 「Possible roles of zic1 and zic4, identified within the medaka Double anal fin (Da) locus, in dorsoventral patterning of the trunk-tail region (related tophenotypes of the Da mutant)」, Mechanisms of Development 121, 873-882, (2004) 15. Kimura T, Jindo T, Narita T, Naruse K, Kobayashi D, Shin-I T, Kitagawa T, Sakaguchi T, Mitani H, Shima A, Kohara Y, Takeda H: 「Large-scale isolation of ESTs from medaka embryos and its application to medaka developmental genetics」 Mechanisms of Development 121, 915-932, (2004) 原著論文以外による発表(レビュー等) 国内誌(国内英文誌を含む) 1. 石川裕二: 「メダカを用いた脳発生の研究」, 比較生理生化学, 17, 126-135, (2000) 2. 石川裕二,荒木和男: 「メダカにおける ENU および X 線による誘発突然変異体スクリーニング」, 蛋白質 核酸 酵素, 45, 2820-2828, (2000) 3. 青木一子,丸山耕一,石川裕二: 「メダカ精子凍結保存マニュアル」, メダカ精子凍結保存マニュアル,(2002) 4. 石川裕二: 「メダカの脳の発生―その形態学と遺伝的制御」, 魚類のニューロサイエンス , 魚類神経科学研 究の最前線, (2002) 5. 成瀬 清,武田洋幸: 「ゲノム時代を泳ぎ抜く− 小型魚類」,細胞工学 22, 55-62, (2002) 6. 青木一子,丸山耕一,松本厚子,石川裕二: 「メダカ精子凍結保存マニュアル」, メダカ精子凍結保存マニュ アル (第 2 版), (2003) 7. 高垈経,工藤 明: 「遺伝的解析のモデル生物,ゼブラフィッシュとメダカ これだけは知っておきたい遺伝子」 医学の基礎知識・遺伝子医学別冊, (株)メデイカルドウ (2003) 8. 石川裕二: 「メダカとゼブラフィッシュとの違い」,放射線科学, 47,419−423,(2004) 9. 工藤明,武田洋幸: 「序 注目を浴びる器官形成・疾患モデル,ゼブラフィッシュ&メダカ」特集「ヒト疾患モデル としてのゼブラフィッシュ&メダカ」,細胞工学 23, 14-16, (2004) 10. 今井義幸,工藤 明: 「血球発生・疾患モデルとしてのゼブラフィッシュ&メダカ」,細胞工学 23, 1, 27-31, (2004) 11. 武田洋幸,成田貴則,小林大介: 「小型魚類における発生遺伝学とゲノミクス」 実験医学(増刷), 175 – 180, (2005) 国外誌 1. Ishikawa Y: 「medakafish as a model system for vertebrate developmental genetics」, Bioessays, 22, 487-495, (2000) 2. Yamauchi M, Sasanuma M, Tsuji S, Terada M, Ishikawa Y: 「Introduction of GFP-Construct Into Medakafish Using The Particle Gun Method, Bioluminescence and Chemiluminescence 」 , Progress and Current Applications, 513-516, (2002) 3. Naruse K, Hori H, Shimizu N, Kohara Y, Takeda H: 「Review. Medaka genomics, a bridge between mutant phenotypes and gene function」 Mechanisms of Development 121, 629-638, (2004) 37 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 口頭発表 招待講演 1. 石川裕二, 吉本正美, 山本直之, 伊藤博信, 保田隆子, 徳永史生, 飯郷雅之, 若松祐子, 尾里健二郎: 「メダカ(メなしメダカ)の脳について」,東大三崎, 第 5 回シンポジウム 「水生動物の行動と神経系」, 2001.08.25 2. 石川裕二: 「硬骨魚類(メダカ)の脳の発生」 浜松市, 第8回脳の比較解剖学懇話会, 2002.2.3 3. Yamauchi M, Sasanuma M, Tsuji S, Terada M, Ishikawa Y, 「Introduction of GFP-construct into medakafish using the particle gun method 」 , Cambridge, 12th International Sympojium on Bioluminescence and Chemiluminescence , 2002.04.05 4. 武田洋幸: 「メダカを用いた器官形成の発生遺伝学」,第 35 回日本発生生物学会大会シンポジウム,横浜, 2002. 05. 5. 石川裕二, 景崇洋, 山本直之, 吉本正美, 丸山耕一, 伊藤博信: 「メダカ胚の脳の区画化について」, 鳥羽 市, 第6回シンポジウム「水生動物の行動と神経系」, 2003.08.11 6. 武田洋幸: 「小型魚類における発生遺伝学とゲノミックス」,第 9 回静岡大学大学院理工学研究科シンポジウ ム,生物科学の最前線,ゲノム,生物発生,生物適応の観点から見た生物科学の最先端,2005. 03. 11. 応募・主催講演等 1. 工藤 明: 第7回小型魚類研究会主催 三島 2002. 8. 3-4 2. 工藤 明: 「Establishment of medaka mutants in cardiovascular and hematopoietic systems, and the positional cloning of who, a hypochromic mutant that is a model of erythropoetic porphyria」, シンポジュウム主催, Internatioal symposium on medaka genome, Tokyo,2003. 01. 15. 3. 工藤 明: 「小型硬骨魚類を用いた器官形成システムの解明」, 日本発生生物学会,ワークショップオーガナ ザー, 2004. 6. 5 4. 武田洋幸: 「メダカ突然変異体胚を用いた脊椎動物器官形成機構の解析―左右軸形成を中心に」,第 37 回日 本発生生物学会大会ワークショップ,名古屋,2004.05. 5. 工藤 明: 「Medaka mutants defective in organogenesis」, 第 27 回日本分子生物学会, シンポジュウムオーガ ナザー; ゲノムから疾患モデルまでーメダカ・ゼブラフィッシュの genetics と genomics, 神戸,2004. 12. 11, 6. Takeda H, Naruse K: 「Genomics and genetics in medaka,overview of the present status」,第 27 回日本分子 生物学会年会ワークショップ(主催),神戸,2004. 12. 7. Shimizu N, Sasaki T, Asakawa S, Shimizu A, Ishikawa SK. Imai S, Murayama Y, Mimmelbauer H, Mitani H, Furutani-Seiki M, Kondoh H, Namda I, Schmid M, Schartl M, Nonaka M, Takeda H, Hori H, Shima A: 「The Genomic DNA Sequence of Medaka Chromosome LG22」, 第 27 回日本分子生物学会年会ワークショップ(主 催),神戸,2004. 12. 特許等出願等 なし 受賞等 なし 38 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 2. 器官形成クロックの分子メカニズム 2.1. 器官形成クロックの分子実体 国立医薬品食品衛生研究所 菅野 純、相賀 裕美子(現国立遺伝学研究所:発生工学研究室)、武田 洋幸(現,東京大学)、近藤 滋(名古屋大学) ■要 約 本研究では,器官形成クロックの形成機構の解明にむけて,シミュレーションと実験(ゼブラフィッシュ,ニワトリ,マウス)を 用いて解析し,シミュレーションから想定される結果を得ることができた.まず,体節形成の位置情報が反応拡散の波でで きていることを示した.またその同調的振動が Notch シグナルを介して成立することを実験的に証明し,そのクロックによっ て形成される波の分子実体として Notch シグナルの可視化に成功した.さらにクロックが停止する機構に転写因子 Mesp2 が関与することを明らかにした.また Notch シグナルと Wnt シグナルの相互作用の可能性が示唆された. ■目 的 我々脊椎動物の繰り返し構造の基盤は発生過程で一過的に形成される体節構造であり,そのダイナミックな形態形成は, 器官形成クロックによって正確に制御されている.その器官形成クロックの分子実体及びその制御機構の解明を目指す. また空間的な周期性を形成するメカニズム解明を目指す. ■ 研究方法 理論とその実証にはニワトリ,ゼブラフィッシュの実験発生学と物理化学的実験を組み合わせて行った.またマウスを用 いた実験では Notch シグナルを可視化するために,シグナル特異抗体を用いた組織化学的解析を行った.また Mesp2 転 写因子の可視化するために GFP ノックインマウスを作成するとともに,抗体を作成しを組織レベルでの詳細な発現解析を 行った.さらにクロック関連遺伝子の探索にむけて,体節が形成される尾芽組織に着目したサブトラクション法により尾芽に 発現する新規遺伝子を探索した.空間的な周期性を形成するメカニズム解明に関してはモデルとしてゼブラフィッシュの縞 模様形成を用いた. ■ 研究成果 ゼブラフィッシュの実験発生学とシミュレーションによる同調振動の形成機構の解明 尾芽後方において器官形成クロックは hairy 発現の同調的振動をもたらす. 我々は振動の同調には,Notch-Delta による 細胞間コミュニケーションが関与すると考え,その関与をモザイク解析により検討した.我々はまず,Notch のリガンドである Delta を恒常的に発現する細胞を得るために,delta を負に制御する her1 の機能をアンチセンスオリゴの注入により欠損させ た.この細胞を野生型胚に移植したところ,節境界は移植片の周辺で常に前方にシフトしており,時計遺伝子である her1 の 振動のタイミングがコントロール側に比べ早いことがわかった.この活性はさらに Delta を欠損することで消失するので,振動 状態にある細胞は HER タンパクが減少すると周囲の細胞に Delta を介したシグナルを送り,her 遺伝子の発現のタイミングを 補正していることが明らかになった. 班員の近藤による数理モデルはこの現象をうまく説明できることが判明した. 39 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 図-1 同調的振動は Delta-Notch シグナルを介して成立する 空間的周期性を生み出す機構 ゼブラフィッシュ縞模様に関して,模様形成が反応拡散の原理であることを示唆するいくつかの理論的な証拠(引用文献 1)および,模様形成の場を色素細胞層に特定する証拠(引用文献2)を挙げてきた.その中で最も決定的なものを以下の 図に示す. 図-2 実験的に誘導したストライプ修復過程 ストライプを構成する黒色色素細胞を縞2本分消去すると,最も腹側にあるストライプが背側に盛りあがるように 移動をはじめ,湾曲した形状になって隙間を埋めていく様子が観察される. 上の連続写真で見られるように,縞模様は明らかに「波」のような動的な性質を持つことがわかる.また,これと同じ動きが, 反応拡散原理を組み込んだシミュレーションでも確認されている.特定の細胞に対して,近い距離,遠い距離に存在する 色素細胞を消去したときの反応を網羅的に観察することにより,黒色色素細胞は,黄色色素細胞から「近距離で抑制」「遠 距離で生存の促進」という2種類の刺激を得ていることがわかった.また黄色色素細胞は黒色色素細胞から「近距離の抑 制」のみの刺激を受けている. 遠距離で促進 近距離で抑制 図-3 ストライプ修復機構に関わる反応拡散モデル 40 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 この関係は,反応拡散波形成のための理論的な十分条件を満たしており,シミュレーションでもそれが確認された.色素 細胞間相互作用を担う分子ネットワークの解明を目指して,模様変異遺伝子のポジショナルクローニングを行っている.既 にジャガー・レオパードの2つの遺伝子の特定に成功している.これらの遺伝子は,色素細胞の分化そのものには影響を 与えずに,模様のみ(ジャガーは縞の幅が広くなる.レオパードは斑点になる)が変化するため,模様形成反応の中核に関 与している可能性が高い.クローニングの結果,ジャガーはイオンチャンネルの一種,レオパードは細胞間コミュニケーショ ンに関連する遺伝子をコードしていることがわかった.まだ2つのみしか遺伝子が特定できていないため,ネットワークの再 構築に至っていないが,今後さらにクローニングを進め,完全なネットワークの解明を目指す. ニワトリの体節を用いた反応拡散モデルの検証 ニワトリ胚を機械的に伸張させて発生させた場合,伸びた体節ができるのでなく,正常な長さの体節が数多くできることが 解った.体節の部位特異的に発現する遺伝子や,Hox遺伝子等の発現状態を解析した結果,位置情報が反応拡散でで きると仮定したときのシミュレーションの結果と一致し,体節形成の位置情報が反応拡散の波でできていることを示唆した. また,ゼブラフィッシュの胚を用いて,低温化での体節形成時に分節遺伝子がどのようなパターンで発現するかを解析した その結果,通常の温度ではPSMの尾部で発現が振動している her1 等の分節遺伝子が,低温化では振動しなくなることが 解った.この結果はもう一つのモデルである CW (clock & wavefront)モデルとは決定的に相容れないが,RD(反応拡散) モデルでは説明できるため.この結果も反応拡散による体節の分節位置の調節を示唆した. クロックにおける Notch シグナルと Wnt シグナルの関係 マウス尾芽領域に発現する遺伝子と体節領域に発現する遺伝子間で subtraction を行い,ブラスト検索を行った後,in situ hybridization 法によるスクリーニングを約 530 個の遺伝子に関して行った結果,尾芽領域に特異的に発現するクローン が 34 個同定できた.その後,興味深い遺伝子として体節形成過程で機能未知の 4 遺伝子のノックアウトマウスを作成し解 析中である.この4つの遺伝子の中には,Wnt のアンタゴニストとして知られる nkd1, nkd2 が含まれている.特に nkd1 は尾 芽で周期的な発現を示しており,その発現誘導は Wnt シグナルに依存するが,その後の周期的な発現は Notch シグナル によって調節されており,Wnt シグナルと Notch シグナルをつなぐ分子として興味深い. 図-4 体節形成過程で働く Notch シグナルと Wnt シグナルの相互作用(仮説) Notch シグナルの可視化 体節形成過程で機能する器官形成クロックの分子実体として,Notch シグナル及びその制御因子の positive-negative feedback によって形成されるサーキットが最も可能性が高いことがわかった.この過程ですでに Notch シグナルに対して負 に働く転写因子 hairy related 遺伝子が振動していることは,多くの種で示されているが,Notch シグナルそのものが振動し ているかどうが不明であった.我々は,活性化した Notch シグナルのみを検出する特異抗体をもちいて,Notch シグナルが 体節形成過程で振動しているかどうか検証した.その結果,未分節中胚葉の後方部では確かに Notch シグナル自身が振 動しており,それが未分節中胚葉前方部で安定化する.その Notch シグナルは Dll1-KO マウスでは消失し,Lunatic fringe (L-Fng)-KO マウスでは逆に活性が上昇しているとともに,振動も見られなかった.よって後方部における Notch シグナル は Dll1 により誘導され,L-Fng により負の制御を受けていると考えられる. 41 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 Notch activity Hes7 expression domain Mesp2 expression domain Hes7 Progressive wave NICD Periodicity Dll1 L-Fng 図-5 体節形成過程で働く器官形成クロックの成立機構(モデル) ■考 察 尾芽組織で働く器官形成クロックは体節形成とリンクしている 2 時間周期の遺伝子発現の変動としてとらえられていた. 本プロジェクトの目的はその器官形成クロックが最終的に分節境界の決定,体節の形成へと至る過程を明らかにすることで あり,その分子機構が理解されるに至ったことは大きな成果であったと思う.特にクロックの分子実体を Notch シグナルの 振動であることを視覚的に証明し,さらにそのクロックが停止する機構も明らかにした.クロックを停止し,分節境界を決定す る機構に関与する因子が我々がかねてより解析を続けてきた転写因子 Mesp2 であったことは,その解析に多くの時間と経 費をかけてきた価値があったと安堵している.今後は,この Mesp2 遺伝子がどのような調節をうけて,何を引き金として本来 あるべき場所で発現誘導されるのか?器官形成クロックとの関係をさらに詳細に解析するとともに,Mesp2 下流遺伝子であ り,分節境界形成の実行部隊である機能分子を同定し,形態的な分節境界の形成にいたる分子機構を明らかにすることが 最重要課題であり,それはこの開放融合研究の中でニワトリで得られてきた解析と統合することにより,今後組織としてのコ ンパートメントの形成機構として,応用可能なメカニズムとして位置づけられると期待している. ゼブラフィッシュの縞模様に関しては,「反応拡散の原理で形成される」こと自体は,完全に証明できたと考える,残って いるのは分子ネットワークの完全な解明である.2つの重要と思われる遺伝子をクローニングしたが,残念ながらリガンド分 子そのものではなかったため,未だに全容は想像できるレベルに至っていない.しかし,他にも模様変異突然変異は存在 するため,この方向で進めていけば,完全解明も時間の問題と思われる. 今後重要になるのは,反応拡散原理が本当に胚の形態形成にも使われているかどうかである.ニワトリ胚において我々 が得たデータは,反応拡散の関与を匂わせるものの,残念ながら決定的なものとは言いがたい.やはりなんらかの分子的 なデータが必要であろう.ゼブラフィッシュの縞模様形成に関して,今後分子ネットワークが明らかになってくると予想される が,それらがもし他の形態形成現象と共通であれば,その現象は反応拡散によって起きることが示唆される. ■ 引用文献 1. Shoji S, Iwasa Y, Mochizuki A. Kondo S: 「Directionality of stripe formed by anisotropic reaction-diffusion models」,Journal Theoretical Biology,214,549-561, (2002) 2. Hirata M, Nakamura K, Kanemura T, Shibata Y, Kondo S: 「Pigment cell organization in the hypodermis of zebrafish」 DEVELOPMENTAL DYNAMICS, 227, 497-503, (2003) 42 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 ■ 成果の発表 原著論文による発表 国内誌(国内英文誌を含む) 国外誌 1. Sawada A, Fritz A, Jiang Y, Yamamoto A, Yamasu K, Kuroiwa A, Saga Y, Takeda H: 「Zebrafish Mesp family genes, mesp-a and mesp-b are segmentally expressed in the presomitic mesoderm, and Mesp-b confers the anterior identity to the developing somites」, Development. 127:1691-702, (2000) 2. Koizumi K, Nakajima M, Yuasa S, Saga Y, Sakai T, Kuriyama T, Shirasawa T, Koseki H : 「The role of Presenilin1 during somite segmentation」, Development 128:1391-1402, (2001) 3. Haraguchi S, Kitajima S, Takagi A, Takeda H, Inoue, T and Saga Y : 「Transcriptional regulation of Mesp1 and Mesp2 genes: differential usage of enhancers during development」, Mech. Dev. 108:59-69, (2001) 4. Shoji S, Iwasa Y, Mochizuki A , Kondo S: 「Directionality of stripe formed by anisotropic reaction-diffusion models」,Journal Theoretical Biology, 214, 549-561, (2002) 5. Kondo Shigeru:「The reaction-diffusion system: a mechanism for autonomous pattern formation in the animal skin」,Genes to cells, 7, 535-542, (2002) 6. Okazaki N, Kikuno R, Ohara R, Inamoto S, Koseki H, Hiraoka S, Saga Y, Nagase T, Ohara O, Koga H : 「Prediction of the coding sequences of mouse homologues of KIAA gene: III. The complete nucleotide sequences of 500 mouse KIAA-homologous cDNAs identified by screening of terminal sequences of cDNA clones randomly sampled from size-fractionated libraries」, DNA Res. 167-180, (2003). 7. Shoji H, Mochizuki A, Iwasa Y, Hioki K, Kondo S: 「Origin of the directionality in the fish stripe pattern」, DEVELOPMENTAL DYNAMICS, 226, 627-633, (2003) 8. Hirata M, Nakamura K, Kanemura T, Shibata Y, Kondo S: 「Pigment cell organization in the hypodermis of zebrafish」,DEVELOPMENTAL DYNAMICS, 227, 497-503, (2003) 9. Okazaki N, F-Kikuno R, Ohara R, Inamoto S, Koseki H, Hiraoka S, Saga Y, Seino S, Nishimura M, Kaisho T, Hoshino K, Kitamura H, Nagase T, Ohara O, Koga H : 「Prediction of the coding sequences of mouse homologues of KIAA gene: IV. The complete nucleotide sequences of 500 mouse KIAA-homologous cDNAs identified by screening of terminal sequences of cDNA clones randomly sampled from size-fractionated libraries」, DNA Res. 11:205-18, (2004) 10. Okazaki N, Kikuno R, Ohara R, Inamoto S, Koseki H, Hiraoka S, Saga Y, Kitamura H, Nakagawa T, Nagase T, Ohara O, Koga H: 「Prediction of the coding sequences of mouse homologues of FLJ genes: the complete nucleotide sequences of 110 mouse FLJ-homologous cDNAs identified by screening of terminal sequences of cDNA clones randomly sampled from size-fractionated libraries」, DNA Res. 11:127-35, (2004) 11. Ishikawa A, Kitajima S, Takahashi Y, Kokubo H, Kanno J, Inoue T, Saga Y : 「 Mouse Nkd1, a Wnt antagonist, exhibits oscillatory gene expression in the PSM under the control of Notch signaling」, Mech Dev. 21:1443-53, (2004) 12. Morimoto M, Takahashi Y, Endo M. Saga Y : 「The transcription factor Mesp2 establishes segmental borders by suppressing Notch activity」, Nature in press, (2005) 原著論文以外による発表(レビュー等) 国内誌(国内英文誌を含む) 1. Sawada A, Saga Y, Takeda H: 「Zebrafish somitogenesis-roles of mesp- and hairy-related genes」, Tanpakushitsu Kakusan Koso. 45:2738-44, (2000) 43 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 2. 近藤 滋: 「生物の模様を作る化学反応」,蛋白質核酸酸素, 45 巻 17 号, 93-99, (2000) 3. 近藤 滋: 「動物の皮膚模様を作る化学反応の波」,日本皮膚科学会雑誌, 112 巻 13,1748-1749(2002) 4. 武田洋幸: 「波と分節”蛋白質核酸酵素」,47:2017-23, (2002) 5. 近藤 滋: 「反応拡散系と動物のパターン形成」, 数理科学, 4月号, (2003) 6. 近藤 滋: 「振動現象による空間的な周期性(繰り返し構造)の形成」, 細胞工学, vol. 22 no. 12,1331-1336(2003) 7. 近藤 滋: 「生物のパターン形成と振動現象」, 計測と制御, 8月号 vol.43, 594-598, (2004) 8. 近藤 滋: 「Turing 波(反応拡散波)」, 生体の科学, 55 巻 5 号 10 月, 498-499, (2004) 国外誌 1. Saga Y, Takeda H: 「The making of the somite: Molecular events in vertebrate segmentation」, Nature reviews genet. 2:835-845, (2001). 口頭発表 招待講演 1. 武田洋幸: 「分節時計を示す遺伝子発現」, 第 53 回日本細胞生物学会シンポジウム,福岡,2000.10.13 2. 近藤 滋: 「発生における自律的位置情報形成のメカニズム」, パシフィコ横浜, 発生生物学会シンポジウム, 2002.5.21 3. 近藤 滋: 「発生における自発的パターン形成」, ホテル日航熊本, 第101回日本皮膚科学会, 2002.6.8 4. 近藤 滋: 「21 世紀の発生と進化(エボデボ)研究 徹底討論」, 中央大学, 日本進化学会シンポジウム, 2002,8,5 5. 近藤 滋: 「動物の皮膚模様を形成するメカニズム」, 国立京都国際会館, 生化学学会シンポジウム ,2002.10.14 6. 近藤 滋: 「発生における自発的位置情報形成の原理」, 京都賞記念ワークショップ,2002.11.12 7. 近藤 滋: 「動物の形態形成と波の理論」, 日経ホール, 「大学と科学」公開シンポジウム, 2002.11.20 8. 近藤 滋: 「動物の皮膚に発生する移動波と定在波」, パシフィコ横浜, 日本分子生物学会ワークショップ, 2002.12.13 9. 近藤 滋: 「Stationary and Traveling Waves on the Skin of Animals」, 総合研究大学院大学, 平成 14 年度総 合研究大学院大学国際シンポジウム(第 8 回), 2003.3.5 10. 近藤 滋: 「動物の皮膚模様はどのようにして描かれるか」, 兵庫県民会館, 第 16 回日本機械学会計算力学 講演会 市民フォーラム, 2003.11.24 11. 近藤 滋: 「「動物の皮膚模様はどのようにして描かれるか」"How stripe patterns emerged on the skin of fish and mammals? "」, 東海大学校友会館, ロレアル, 2004.6.14 12. 近藤 滋: "How do animals get the stripes?", 東京工業大学,四肢・上皮性付属器の発生進化に関する国際シ ンポジウム, 2004.9.23 13. 近藤 滋:「分子ネットワークのシステム特性」, パシフィコ横浜, 日本生化学会シンポジウム, 2004.10.16 14. 近藤 滋:「How do animals get the stripes? 」, 早稲田大学, The 2nd 21st century COE symposium on Physics of Self-organization System, 2004.12.18 応募・主催講演等 1. 澤田篤志,二階堂昌孝,川上厚志,荒木和男,武田洋幸: 「Fgfシグナルが制御する脊椎動物の分節」,第24回 日本分子生物学会年会,横浜,2001.12.9-11 2. 堀川一樹,石松愛,近藤滋,武田洋幸: 「分節時計の同調振動をもたらす分子ネットワークの解明」,第37回日 本発生生物学会大会,名古屋,2004.6.4-6 44 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 特許等出願等 なし 受賞等 なし 45 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 2. 器官形成クロックの分子メカニズム 2.2. コンパートメント成立機構の解明と誘導系の確立 国立医薬品食品衛生研究所 菅野 純、高橋 雄、相賀 裕美子(現国立遺伝学研究所:発生工学研究室)、 高橋 淑子(理化学研究所・発生再生科学総合研究センター) ■要 約 未分節中胚葉から体節が分節化をおこしコンパートメントを形成する過程の分子メカニズムを解明するにあたり,1)分節 化にみられる境界形成の分子機構,2)分節化に伴う細胞の極性変化のしくみ,3)体節の前後極性形成形成機構,4) 未 分節体節細胞間のシグナリングの 4 点に焦点を当ててマウス及びニワトリを用いて研究を行った.1)に関しては,境界形成 を引き起こす誘導活性が Notch シグナルと転写因子 Mesp2 によって調節されていること, 2)に関しては,体節の上皮化に Rho ファミリーが関与すること,3)に関して Notch シグナル Dll1 と Mesp2 が形成する positive-negative feedback 系にさらに Dll3 シグナルが拮抗的に働いていることを示した.4) に関しては新規 cDNA や,体節中胚葉での機能未知なものを単離し た.これらの一連の研究を通して,体節分節にみられる分子機構が,たとえば脳形成など他の形態形成のしくみにも共通し て働いている可能性がみえてきた. ■目 的 我々脊椎動物の繰り返し構造の基盤は発生過程で一過的に形成される体節構造であり,そのダイナミックな形態形成は, 器官形成クロックによって正確に制御されている.体節の分節化における上皮組織が形成される機構を明らかにし,時間 的情報がいかにして空間的な形態形成に変換されるかそのメカニズムを明らかにする. ■ 研究方法 1)の境界形成誘導活性に関しては主にニワトリ胚を用いて,組織及び細胞塊の移植操作と DNA の in ovo エレクトロポレ ーション法とを組み合わせて,本来は分節境界のできない場所に,境界誘導活性を有すると思われる細胞を移植し,その 後の境界形成への影響を解析した(引用文献1).また Notch シグナルと Mesp2 発現の関係に関しては,各種ノックアウト マウスを用いて解析した.2)分節に伴う細胞の極性変化についてはエレクトロポレーション法を用いて Rho ファミリーのさま ざまな変異体を体節中胚葉内に強制発現させたときの上皮と間充織への影響を解析した(引用文献2).3)体節の前後極 性に関しては,Notch 関連遺伝子(Dll1, Dll3, Mesp2, Psen-1, Hes5, lunatic-fringe)のノックアウトマウスを用いた遺伝学的 解析を行った.4)細胞間シグナリングに関与する候補分子の探索は,まずトリ 2 日胚の体節中胚葉と側板中胚葉の cDNA ライブラリー間でサブトラクションを行い,次にシグナルシークエンストラップ法(引用文献3)を用いて,細胞膜上及び細胞 外にタンパク質が発現するクローンを得て,最終的には,in situ ハイブリダイゼーション法を用いて,初期体節中胚葉に特 異的に発現する cDNA を得た. 46 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 ■ 研究成果 セグメンターの同定 次分節部位に限局して存在する細胞群が,新規の境界形成誘導能(セグメンターと呼ぶ)をもつことを見出した(引用文 献1).このことは,次分節部位の細胞を本来は分節しない部位に移植すると,異所的な境界を作ることから結論された.さ らに,セグメンターの分子実体に迫るため,次分節領域で特異的に発現する Lunatic fringe(L-fringe)に注目し,L-fringe の 発現境界がセグメンターに関与するかについて解析した.まずエレクトロポレーション法を用いて L-fringe を未分節中胚葉 全体に発現させ,次にこの組織から一部を切り出して,エレクトロポレーションしていない別の胚内に移植し,L-fringe の境 界を異所的に作った.その結果,L-fringe の境界に沿ってその前方で形態境界が作られた.L-fringe は Notch の活性を修 飾していることが知られていたので,活性型 Notch を用いて同様の操作を行ったところ,やはり異所的な境界が作られた. このことから,本来の分節境界ができる際には,境界のすぐ後方の細胞群が前方の細胞に作用して境界を作ること,及びこ の誘導作用には Notch が関わることが結論づけられた(引用文献1). 図-1 分節境界を誘導する新規の活性”セグメンター”. セグメンターは Notch 活性により調節されている(参考文献(1)より). また,マウスを用いた解析でさらに Notch シグナルの重要性が確認された.Mesp2-KO マウスでは前方部の Notch シグ ナルが安定化せず,分節境界が形成されない.Notch シグナルと Mesp2 シグナルの関係を分節境界形成過程で詳細に 調べた結果,Notch シグナルは分節境界において Mesp2 により抑制されることにより Notch シグナルの境界面が形成され、 これが将来の分節境界を形成することがわかった.またこのとき Mesp2 は L-Fng を誘導しており,それが Notch 活性の抑制 に寄与すると考えた.したがって,Mesp2 は体節の前後極性の形成に加えて分節境界の形成に関わる非常に重要な転写 因子であることが明らかになった. Segmental border Mesp2 Dll1 L-Fng Notch1 Notch1 NICD 図-2 分節境界形成機構.Mesp2 は L-fng を介して Notch 活性を抑制する. 47 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 上皮化のメカニズム Rho ファミリーの中でも,細胞極性に関わることが示唆されていた Cdc42 と Rac1 について解析した(引用文献4).驚くこ とに,Cdc42 の活性を抑えると細胞は積極的に上皮化をおこした(引用文献2).逆に Cdc42 の活性を上昇させると,細胞は 間充織のままであった.Rac1 は,ドミナントネガティブ型でもドミナントアクティブでも上皮形成に異常が見られたことから, Rac1 が厳密なレベルで維持されることが体節細胞の上皮化に重要であることがうかがえた.さらに,以前より体節上皮化に 必須であることが知られていた転写因子 Paraxis が,Rac1 の活性を必要とすることも見出した(引用文献3). 図-3 体節分節における細胞の上皮化.Rho ファミリーである Cdc42 の活性が抑制される場合には 細胞は上皮化をおこす(引用文献(2)より). 体節の前後極性確立の分子機構の解明 体節の前後極性は脊椎骨の分節性の基盤である体節の分節化に先立って形成される.転写因子 Mesp2 のノックアウトマ ウスは,体節がすべて後方化することから体節の前部を規定する遺伝子であると考えられる(引用文献5).一方,Notch シ グナルの活性化に関与する Psen1 遺伝子ノックアウトマウスは全く逆の表現型,体節の前方化を示す.よって,体節の前後 極性は Mesp2 と Notch シグナルの相互作用で確立すると想定された.そこで、我々は,Mesp2, Psen1, Dll2, Dll3 のノック アウトマウスの交配による遺伝学的解析により,体節の前後パターンの確立に関わる分子機構を解析した.その結果, Notch リガンド Dll1 と Mesp2 はポジテイブ・ネガテイブフィードバックにより,お互いの発現を制御しており,この関係が中心 となり,Mesp2 と Dll1 を発現する細胞が分かれること,そしてそのカスケードに Dll3 をリガンドとした Notch シグナルが Dll1 のシグナルと拮抗的に作用することにより,Mesp2 と Dll1 の発現ドメインが体節の前後にわかれていくことを明らかにした (引用文献6).さらに Dll3 の機能を明らかにする目的で,Mesp2 遺伝子座に Dll3 をノックインしたマウスを作成した. Mesp2 が欠損するマウスでは,Dll1 の発現抑制が起こらずに体節がすべて後方化するが,Mesp2 の代わりに Dll3 が発現 するマウスにおいて,Dll1 の発現が著しく抑制され,その下流の遺伝子 uncx4.1 の発現もストライプパターンが回復し,部分 的に分節境界も作成されており,Dll1 と Dll3 の拮抗的な作用により前後極性が確立することを明らかにした. 前後極性確立前 Dll1 体節後半部 Dll3 体節前半部 Dll1 Dll3 Psen1 Psen1 Psen1 Mesp2 Mesp2 Dll1 Dll1 Uncx4.1 Tbx18 Uncx4.1 図-4 体節の前後極性確立機構. Dll1 は Notch 1 を活性化(体節後半部), Dll3 は Mesp2 を介して Notch シグナルを抑制する(体節前半部). 48 Dll1 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 細胞間シグナリングに関与する候補分子の探索 約 23,000 クローンについて解析した結果,約 100 クローンがシグナルシークエンストラップスクリーニングで陽性であっ た.これらクローンのそれぞれについて,ホールマウント in situ ハイブリダイゼーション,及び切片 in situ ハイブリダイゼー ションを行ったところ,15 クローンが初期体節に特異的な発現パターンをもって発現することがわかった(引用文献7). 図-5 シグナルシークエンストラップスクリーニングの方法とその結果得られた遺伝子の分類 ■考 察 本研究で見出されたセグメンター活性は,境界形成を引き起こす新規の活性として注目に値する.また,その後のさらな る分子実体の研究から,体節の境界形成と,脳の区画を引き起こす分子メカニズムとの間に共通性が見出され,体節研究 から普遍原理の解明につながることを示す成果といえる.2)細胞の上皮-間充織転換は,初期形態形成のみならず,上皮 性のガン細胞が間充織化を伴って転移することなどから,生命現象にとって根幹をなす問題といえる.しかしながら,我々 の研究が報告されるまで,実際の体の中で細胞がどのように上皮化あるいは間充織化するのかについて,直接的な解析 はほとんどなかった.加えて,培養皿などで二次元的に培養された細胞のふるまいは,体内という3次元での細胞環境と著 しく異なっていることも浮き彫りとなった.このことは,今後の研究展開として,細胞の複雑な挙動を体内で直接解析する必 要性を強く示すものである.規則的に上皮化をおこす体節分節を新しいモデル系として用いた本研究から,細胞のふるま いの基本ルールの一端がみえてきたといえよう.3)シグナルシークエンストラップ法と,サブトラクション,in situ ハイブリダイ ゼーションという 3 つのステップを組み合わせることで,初期体節に特異的に発現するシグナル分子の候補がいくつか得ら れた.これらの各遺伝子についてその機能と役割を解析することで,今後新しい知見が得られるものと期待される. ■ 引用文献 1. Sato Y, Yasuda K, Takahashi Y : 「Morphological boundary forms by a novel inductive event mediated by Lunatic fringe and Notch during somitic segmentation」, Development 129:3633-3644 (2002) 2. Nakaya Y, Kuroda S, Kaibuchi K, Takahashi Y : 「Mesenchymal-epithelial transition during somitic segmentation is regulated by differential roles of Cdc42 and Rac1」, Developmental Cell 7, 425-438, (2004) 49 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 3. Tashiro K, Tada H, Heilker R, Shirozu M, Nakano T, Honjo T : 「Signal sequence trap: a cloning strategy for secreted proteins and type I membrane proteins」, Science, 261:600-603, (1993) 4. Fukata M, Nakagawa M, Kaibuchi K: 「Roles of Rho-family GTPases in cell polarisation and directional migration」, Curr Opin Cell Biol. 15:590-597 (2003). 5. Saga Y, Hata N, Kosek, H , Taketo M : 「Mesp2: a novel gene expressed in the presegmented mesoderm and essential for segmentation initiation」, Genes & Deve. 11:1827-1839, (1997) 6. Takahashi Y, Inoue T, Gossler A, Saga Y : 「Feedback loops comprising Dll1, Dll3 and Mesp2, and differential involvement of Psen1 are essential for rostrocaudal patterning of somites」, Development 130:4259-4268, (2003) 7. Tonegawa A, Kasai T, Takahashi Y : 「 Systematic screening for signaling molecules expressed during somitogenesis by the signal sequence trap method」, Dev Biol 2003, 262:32-50 (2003) ■成果の発表 原著論文による発表 国内誌(国内英文誌を含む) なし 国外誌 1. Kitajima S, Takagi A, Inoue T, Saga Y : 「MesP1 and MesP2 are essential for the development of cardiac mesoderm」, Development. 127:3215-26, (2000) 2. Takahashi Y, Koizumi K, Takagi A, Kitajima S, Inoue T, Koseki H, Saga Y : 「Mesp2 initiates somite segmentation through the Notch signalling pathway」,Nat Genet. 25:390-6, (2000) 3. Sudo H, Takahashi Y, Tonegawa A, Arase Y, Aoyama H, Mizutani-Koseki Y, Moriya H, Wilting J, Christ B, Koseki H : 「Inductive signals from the somatopleure mediated by bone morphogenetic proteins are essential for the formation of the sternal component of avian ribs」, 4. Developmental Biology. 232, 284-300, (2001) Nomura-Kitabayashi A, Takahashi Y, Kitajima S, Inoue T, Takeda H, Saga Y : 「Hypomorphic Mesp allele distinguishes establishment of rostrocaudal polarity and segment border formation in somitegenesis 」 , Development, 129:2473-81, (2002) 5. Shiroi A, Yoshikawa M, Yokota H, Fukui H, Ishizaka S, Tatsumi K, Takahashi Y : 「Identification of insulin producing cells derived from embryonic stem cells by zinc-chelating dithizone」, STEM CELLS 20, 284-292, (2002) 6. Sato Y, Yasuda K, Takahashi Y: 「Morphological boundary forms by a novel inductive event mediated by Lunatic-Fringe and Notch during somatic segmentation」, Development 129, 3633-3644, (2002) 7. Suetsugu R, Sato Y, Takahashi Y: 「Pax 2 expression in mesodermal segmentation and its relationship with EphA4 and Lunatic fringe during chicken somitogenesis」, Mechanisms of Development 119S, S155-159, (2002) 8. Tonegawa A, Kasai T, Takahashi Y: 「 Systematic screening for signaling molecules expressed during somitogenesis by the signal sequence trap method」, Developmental Biology 262, 32-50, (2003) 9. Rhee J, Takahashi Y, Saga Y, Wilson-Rawls J, Rawls A : 「The protocadherin papc is involved in the organization of the epithelium along the segmental border during mouse somitogenesis」, Dev Biol. 254:248-61, (2003) 10. Takahashi Y, Inoue T, Gossler A, Saga Y : 「Feedback loops comprising Dll1, Dll3 and Mesp2, and differential involvement of Psen1 are essential for rostrocaudal patterning of somites」, Development. 130:4259-4268, (2003) 11. Nakaya Y, Kuroda S, Katagiri Y, Kaibuchi K, Takahashi Y : 「Mesenchymal-epithelial transition during somitic segmentation is regulated by differential roles of Cdc42 and Rac1」, 50 Developmental Cell 7, 425-438, (2004) オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 12. Kokubo H, Miyagawa-Tomita S, Tomimatsu H, Nakashima Y, Nakazawa M, Saga Y, Johnson RL : 「Targeted disruption of hesr2 results in atrioventricular valve anomalies that lead to heart dysfunction」, Circ Res. 95:540-547, (2004) 13. Kii I, Amizuka N, Shimomura J, Saga Y, Kudo A : 「Cell-cell interaction mediated by cadherin-11 directly regulates the differentiation of mesenchymal cells into the cells of the osteo-lineage and the chondro-lineage」, J Bone Miner Res. 19:1840-1849, (2004) 14. Kokubo H, Miyagawa-Tomita S, Saga Y, Johnson RL : 「Mouse hesr1 and hesr2 genes are redundantly required to mediate Notch signaling in the developing cardiovascular system」, Dev. Biol. 278: 301-309, (2005) 15. Takahashi Y, Kitajima S. Inoue T, Kannno, J, Saga Y : 「Differential contributions of Mesp1 and Mesp2 to the epithelialization and rostro-caudal patterning of somites」, Development, 132: 787-796, (2005) 16. Sato Y, Takahashi Y : 「A novel signal induces a segmentation fissure by acting in a ventral-to-dorsal direction in the presomitic mesoderm」, Developmental Biology, in press, (2005) 原著論文以外による発表(レビュー等) 国内誌(国内英文誌を含む) 1. 利根川あかね,高橋 淑子: 「背腹軸に沿った中胚葉の部域化のしくみ」,実験医学 18, 1211-1217,(2000) 2. 高橋雄,相賀裕美子: 「マウス体節形成と Notch シグナル」, 細胞工学,19:1434-1437, (2000) 3. 相賀裕美子: 「転写因子 Mesp1 は心臓前駆細胞に発現し,心臓形成に必須な因子である」, 遺伝子医学,5 (2):199-203, (2001) 4. 相賀裕美子: 「Notch シグナルを介した体節の分節機構」, 医学のあゆみ,199 (13):891-896, (2001) 5. 武田洋幸,相賀裕美子: 「FGF と Notch シグナルによる体節形成の制御」, 細胞工学,21,486-492, (2002) 6. 高橋淑子: 「かたちの魔術師:ニワトリ胚」, 細胞工学 21, 48-54, (2002) 7. 佐藤有紀,高橋淑子,利根川あかね: 「ニワトリ胚への局所的遺伝子導入法.~COS 細胞と組織移植による方 法~」遺伝子医学別冊「図・写真で観る発生・再生実験マニュアル」, 安田國雄編 125-133, (2002) 8. 仲矢由紀子,高橋淑子: 「ニワトリ胚体節中胚葉への遺伝子導入法」, 遺伝子医学別冊 「図・写真で観る発生・再生実験マニュアル」安田國雄編 105-110, (2002) 9. 佐藤 有紀,高橋淑子: 「体節形成のメカニズム」, 小児外科 35, 284-290, (2003) 10. 吉野剛史,佐藤有紀,高橋淑子: 「Notch の切断と発生分化におけるシグナル伝達」, 細胞工学 22, 623-627, (2003) 11. 高橋 淑子: 「学会にも改革の嵐」, 細胞工学 23, 1210-1213 (2004) 12. 相賀裕美子: 「Notchシグナルの多様性」, 発生・分化・再生研究」 実験医学増刊 vol 23, p64-72, (2005) 13. 仲矢 由紀子,高橋 淑子: 「形態形成における間充織-上皮転換と Rho ファミリーの役割 体節分節をモデル とした研究」, 細胞工学 24, 171-177, (2005) 国外誌 1. Takahashi Y, Kuro-O M, Ishikawa F : 「Aging Mechanisms」, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:12407-12408. (2000) 2. Yasuda K, Momose T, Takahashi Y : 「Applications of microelectroporation for studies of chick embryogenesis」, Development, Growth and Differentiation. 42, 203-206, (2000) 3. Takahashi Y, Osumi N, Patel N : 「Body Patterning」, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98, 12338-12339, (2001) 4. Takahashi Y : 「Somitogenesis」, Mechanisms. Encyclopedia of Life Sciences (Nature Publishing Group), Web Publishing, (2004) 5. Takahashi Y : 「Shaping up of the chic chick: boundary formation shared between somitogenesis and brain development」, International Journal of Developmental Biology, in press (2005) 51 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 6. Takahashi Y, Sato Y, Suetsugu R, Nakaya Y : 「 Mesenchymal-to-epithelial transition during somitic segmentation: a novel approach to study the roles of Rho family GTPases in morphogenesis」, Cells Tissues Organs, in press (2005) 口頭発表 招待講演 1. Yoshiko Takahashi : 「Somite segmentation」,マルセイユ(フランス),第一回 Franco-Japonais Mediteranean Meeting,2000. 10. 23 2. Yoshiko Takahashi: 「 SEGMENTATION IN VERTEBRATES: INDUCTIVE EVENTS DRIVE MORPHOLOGICAL CHANGES OF CELLS」,品川プリンスホテル・東京,第16回日本生物学賞・受賞記念講 演会,2000.11.29 3. 高橋 淑子: 「脊椎動物の分節形成と境界の確立」,岡崎コンフェレンスセンター,第4回岡崎機構セミナー(岡 崎統合バイオサイエンス),2001.2.19 -21 4. 高橋 淑子: 「生命科学の現場から-個体発生とかたちづくり-」,東京工業大学(大岡山),東京工業大学大学 院理工学研究科・地球惑星科学専攻 2000 年度教室発表会, 2001. 3.27-28 5. Takahashi Y: 「Somite segmentation: cooperative morphogenetic movements elicited by inductive events, cell-cell communications, and cell polarity dynamics 」 , Kyoto, Japan, 14th International Congress of Developmental Biology (including 34 th Annual Meeting of the Japanese Society of Developmental Biologists), 2001.7.8-12 6. 相賀裕美子: 「体節形成と Notch シグナリング:転写因子 MesP2 による制御」, 第 73 回日本生化学会, 横浜, 2001.10.13. 7. 相賀裕美子: 「繰り返しパターンの確立機構」, 第 53 回日本細胞生物学会, 福岡, 2001.10.31 8. Saga Y: 「 Function of Mesp2, a bHLH-type transcription factor, in somite segmentation」, International Symposium in Conjunction With Award of the International Prize for Biology -Frontiers of Developmental Biology, Tokyo, 9. 2001.11.29 Saga Y, Takahashi Y, Inoue T: 「 Molecular events leading to the establishment of rostro-caudal polarity of a somite」, CSH meeting (Mouse Molecular Genetics), 2002.8.29 10. Takahashi Y, Nakaya Y : 「Roles of small GTPases Rac1 and Cdc42 in mesenchymal-epithelial transition during somitic segmentation 」 , Port Douglas, North Queensland, Australia, Boden International meeting on Epithelio-Mesenchymal Transitions, 2003.10.5-8 11. Saga Y: 「Genetic dissection of somite patterning」, Center for Developmental Biology, RIKEN, Kobe. Beauty in Embryology-Patterning and shaping. 2004.2.3-4 12. 高橋淑子:かたちづくりと境界形成: 「体節分節にみる誘導作用と細胞の上皮化」, 阿蘇いこいの村,熊本大 学 COE サマーリトリートセミナー(COE リエゾンラボ研究会),2004.8.6-7 13. Yumiko Saga: 「Dissection of genetic cascade leading to the somite patterning」, Swiss Japanese Meeting, Japan, 2003.11.25 14. Yumiko Saga: 「A molecular mechanism critical for somite patterning and segmental border formation」, CSH meeting, (Mouse Molecular Genetics), 2004.8.30 応募・主催講演等 1. 高橋 淑子: 「科学プレゼンテーションにおける日本の現状と問題点」,奈良先端科学技術大学院大学,科学 プレゼンテーションワークショップ,2000.9.20 2. Yoshiko Takahashi: 「Body Pattern」,California Irvine,第3回日米先端科学者会議,2000.9. 21-23 3. 高橋 淑子: 「脊椎動物の分節現象にみる周期的な細胞極性の変化」,パシフィコ横浜,日本生化学会第 73 52 オーガンリソースとしての中胚葉細胞と器官形成クロックの研究 研究成果の詳細報告 回 シンポジウム 「多細胞系構築の基盤となる細胞生物学会の接着と極性化のダイナミクス,2000.10.14 4. 高橋 淑子: 「分節にみる細胞の形態変化」,日本細胞生物学会・シンポジウム「脊椎動物の分節時計」, 2000.10.31 5. Takahashi Y, Koizumi K-i, Takagi A, Kitajima S, Inoue T, Koseki H, Saga Y: 「Mesp2 initiates somite segmentation via the Notch signaling pathway」, Cold Spring Harbor, New York, 2000.9.1 6. Saga Y : 「 Function of Mesp2, a key player for somite segmentation 」 , 14th International congress of Developmental Biology, Kyoto, 2001.7.11 7. Saga Y: 「Molecular events leading to the establishment of rostro-caudal polarity of a somite」, Segmentation Meeting, Nara, 2001.7.11 8. Takahashi Y: 「 A segmentation boundary is established by signaling molecules including Notch/L-fringe」,Segmentation Meeting in Nara, 2001.7.13-15 9. 高 橋 淑子 : 「 脊 椎 動物 の分 節 現 象 にみられるダイナミックな 形態形成( Formation ofthe segmentation boundary during vertebrate somitogenesis)」,パシフィコ横浜,第 24 回第 24 回日本分子生物学会,シンポジウ ム「ボデイプランを支える分子メカニズム」,2001. 12.9-12 10. Yoshiko Takahashi: 「Somite segmentation: a model system to study cytoskeletal dynamics when cells and tissues change their shape」, パシフィコ横浜,日本発生生物学会第 35 回大会(日本細胞生物学会との合同大会)合同 シンポジウム:「細胞生物学会骨格のダイナミズムに支配される形態形成」(Morphogenetic movements controlled by cytoskeletal dynamics),2002.5.21-23 11. Takahashi Y, Hirai Y , Oka Y: 「Epimorphin acts extracellularly to promote cell-sorting and aggregation during the condensation of vertebral cartilage」, ピアザ淡海滋賀県立県民交流センター,第 56 回日本細胞生物学会 大会,2003.5.14-16 12. Takahashi Y, Sato Y, Watanabe T, Nakaya Y: 「 Boundary formation in organogenesis: control of cell communications and changes in cell polarity」, Center for Developmental Biology, RIKEN, Kobe. Beauty in Embryology -Patterning and shaping. 2004.2.3-4 13. 高橋雄,北嶋聡,菅野純,相賀 裕美子: 「Notch リガンド D113 は Mesp2 の欠損による体節形成と前後パターン 形成の異常を回復する」,日本発生生物学会第37回大会,名古屋,2004.6.4-6 14. 安彦行人,原口清輝,菅野純,相賀 裕美子: 「体節形成に関わる転写因子 Mesp2 の発現は転写因子 Tbx6に よって制御される」,日本発生生物学会第37回大会,名古屋,2004.6.4-6 特許等出願等 なし 受賞等 なし 53
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