外務省総合外交政策局国際社会協力部 人権人道課 課長 嘉治 美佐子 様 市民的及び政治的権利に関する国際規約第5回政府報告及び拷問等禁止条約第 1回政府報告作成に関する意見募集及び NGO 非公式ヒアリングのあり方につ いての要請書 私たちは、国際的な人権関係諸条約の日本国内における実施に関心を寄せ、 さまざまな立場から取り組みを進めている NGO です。今回、貴人権人道課より 9月19日付けで各 NGO 宛に発信された「市民的及び政治的権利に関する国際 規約(B 規約)第5回政府報告及び拷問等禁止条約第1回政府報告作成に関す るご意見募集及び NGO 非公式ヒアリングについて」と題したファックス文書の 内容について問題意識と懸念を共有したことを受け、連名によりこの要請書を 提出致します。 基本的考え方 私たちは、市民的および政治的権利に関する国際規約(以下、自由権規約) ならびに拷問等禁止条約の国内履行状況に関する政府報告を作成する過程にお いて、再度の「意見募集」ならびに「NGO 非公式ヒアリング」を実施するとい う方針そのものについては、国際的な人権諸条約の実施措置である政府報告制 度における NGO の参加の保障に向けた措置として一定前進であるとの評価を し、原則的にはこれを歓迎するものです。 しかしながら同時に、今回当該ファックス文書によりなされた告知を拝見す る限りにおいては、国際的な人権諸条約が定める政府報告制度の諸過程におけ る幅広い意見聴取や NGO の参加の意義や、そのあるべき姿について、政府と私 たちの間には依然として大きな隔たりがあるのではないかとの強い懸念を持っ ており、そのことを大変残念に思っております。 私たちは、政府報告制度の諸過程における政府と NGO の対話は、条約機関に よる諸勧告の履行状況を含む個別課題について、両者の認識の一致・不一致な らびにその根拠を開かれた形で明らかにするために極めて重要であると認識し ています。そしてそのためには、一連の過程において一貫して透明性が確保さ れ、説明責任が果たされていることが重要であり、そのことこそが信頼関係に 注:この文書は、ホームページに掲載するために PDF 化したものであり、執行した原本で はありません。 もとづく建設的対話の礎であると考えています。 したがって、政府報告制度の諸過程において、双方が意見や主張を一方的に 伝えるにとどまらない、対話・意見交換の場をいかにして実現するのかを、ま さしく「対話」にもとづいて追求しなければなりません。そのことこそが、国 際人権諸条約の日本国内における効果的実施の促進という課題において、非常 に重要なことであると認識しています。この点に関しては、これまでにも貴人 権人道課と NGO が意見交換を重ねてきた中で、一定の相互確認がなされてきた ことなのではないかと思います。 問題認識 上記の基本的考え方にもとづいて、私たちは、今回各 NGO にファックス文書 により告知された「意見募集」ならびに「NGO 非公式ヒアリング」の開催要領 について、それが透明性を確保し説明責任を果たす姿勢を欠いており、政府と NGO との建設的対話ならびに信頼関係醸成の前提を傷つけるものであるとの 認識を共有しております。そして私たちは、その前提を傷つけることは、国際 的な人権緒条約の国内における実施措置そのものを形骸化させるものと懸念し ています。「これらの最終見解を実行するにあたって、締約国が NGO を含む国 内のあらゆる関係団体との対話に従事することを期待する」とした、第4回日 本政府報告書審査を経て自由権規約委員会が採択した「最終見解」の第34パ ラグラフの精神も、同様の問題意識により述べられたものであると考えます。 私たちの具体的な懸念事項は以下のとおりです。 自由権規約、拷問等禁止条約ともに、政府報告の作成が大幅に遅延している ことについて、その理由が説明されていないこと。 ファックス文書では、 「前回ヒアリングからの時間の経過に伴う諸事情の変化に 対応する」ことが、 「意見募集」ならびに「NGO 非公式ヒアリング」を実施す る趣旨であるとの説明がなされているが、政府自身による「時間の経過と諸事 情の変化」への対応方針がまったく説明されていないこと。 自由権規約について2001年10月、拷問等禁止条約について1999年 11月に開催された「非公式ヒアリング」における NGO からの意見について、 それがいかに「報告作成に際し参考に」されてきたのかが明らかにされていな いこと。すなわち、NGO の提出した/する意見が、どのように報告作成に反映 されたのか/され得るのかについてまったく不明なままであること。 自由権規約委員会による第4回日本政府報告書審査を経て採択された「最終 注:この文書は、ホームページに掲載するために PDF 化したものであり、執行した原本で はありません。 見解」により勧告された諸事項の履行状況について、日本政府の現状認識が明 らかにされていないこと。 両報告作成に関する基本的方針、ならびにこれまでの作成過程を経た作業結 果が作成中間段階の報告書、またはその要綱、目次、骨子などの形で明らかに されていないこと。 「NGO 非公式ヒアリング」が、提出・陳述される意見に対する政府側の答弁 義務を放棄しており、また質疑応答の時間が設けられていないこと。 提案ならびに要請事項 上記の問題意識、ならびに貴人権人道課が関係各省庁とも調整しつつ「NGO 非公式ヒアリング」の開催を準備されている現状を踏まえ、私たちは政府に対 し、国際的な人権諸条約が定める政府報告制度の諸過程、とりわけ政府報告の 作成過程における幅広い意見聴取ならびに NGO による参加の保障のあり方に ついて、今後、政府と NGO が信頼関係にもとづいた継続的な対話・協議を行な い、考え方や問題意識の共有を経てそのあるべき姿について一定の結論を出す ことを呼びかけたいと思います。 その第一歩として、私たちは、貴人権人道課に対し、来る10月7日に予定 されている「NGO 非公式ヒアリング」についてその開催要領を見直し、上に述 べた私たちの基本的考え方ならびに問題意識に配慮したものに修正するよう、 要請致します。具体的には、「NGO 非公式ヒアリング」を以下の要領にて開催 することを求めます。 政府報告の作成状況ならびに自由権規約委員会による「最終見解」の履行状 況に関する相互の認識の確認にもとづく建設的な対話の場とすべく、 「自由権規 約ならびに拷問等禁止条約の政府報告作成に向けた、両条約の国内実施状況に 関する意見交換会」と位置付けること。 すべての関係各省庁による出席を確実にすること。 両条約の政府報告の作成が大幅に遅延していることについて、その理由を説 明すること。 「前回ヒアリングからの時間の経過に伴う諸事情の変化」に対する、政府と しての認識と政府報告の内容作成にあたっての対応方針をまず説明すること。 過去に実施された「非公式ヒアリング」における NGO からの意見について、 それがいかに「報告作成に際し参考に」されてきたのかを明らかにすること。 反映された事項と反映されなかった事項について明確にするとともに、特に反 注:この文書は、ホームページに掲載するために PDF 化したものであり、執行した原本で はありません。 映されなかった事項については、いかなる認識を持ってそうしたのかを説明す ること。 自由権規約委員会による第4回日本政府報告書審査を経て採択された「最終 見解」により勧告された諸事項の履行状況について、日本政府の現状認識を課 題ごとに明らかにすること。 両報告作成に関する基本的方針を説明すること。 上記と併せ、両政府報告の作成中間報告として、要綱、目次、骨子等を含め た報告書草案の内容開示を行なうこと。 人権人道課ならびに関係各省庁との質疑応答の十分な時間を設けること。会 場の都合等により10月 7 日当日での実施が難しい場合には、後日に質疑応答 を中心とした会合を別途設けること。 この要請書に記載されている私たちの基本的考え方、問題意識について、出 席する関係各省庁にもあらかじめ伝達すること。 実施当日の記録を適切な方法で公開すること。 他の国際人権条約の政府報告作成過程における NGO との意見交換の実績、と りわけ子どもの権利条約の履行状況や女性差別撤廃条約の履行状況についての 政府報告の作成過程における「意見募集」や「ヒアリング」の実施要領(注) を認識し、それを踏まえること。 終わりに なお、上記の要請事項が十分に受け入れられていないと判断される場合には、 私たちは、10月7日に予定されている「NGO 非公式ヒアリング」の場におい ても、この要望書の内容に沿ってその開催要領に関する問題提起ならびに交渉 を行なうべきであると考えております。そして、同時にその場合に私たちは、 政府報告の作成過程における幅広い意見聴取と NGO による参加のあり方の現 状が、透明性と説明責任を欠く不十分なものであるということを、可能な手段 をもって国内外に周知するとともに、政府に対して継続的な対話・協議を求め ていく所存です。 今回の機会が、政府にとっても、NGO にとっても、国際的な人権基準を国内 で効果的に実施するという共通の課題に向けたより強固な信頼関係を醸成し、 建設的な対話の実現を導き、そしてこれまでの実績にさらなる前進をもたらす 機会となることを、切に願っております。 2003年10月1日 注:この文書は、ホームページに掲載するために PDF 化したものであり、執行した原本で はありません。 【要請書署名団体一覧-43団体・順不同】 社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本 反差別国際運動(IMADR) 反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC) 市民外交センター(SGC) 社団法人 自由人権協会(JCLU) 在日韓国人問題研究所(RAIK) 外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会(外キ協) 部落解放同盟中央本部 社団法人 部落解放・人権研究所 ARC(Action for the Rights of Children) 死刑廃止条約の批准を求めるフォーラム 90 東京精神医療人権センター 朝鮮人強制連行真相調査団 入管問題調査会 国賠ネットワーク 反差別ネットワーク人権研究会 女性の家 HELP 無実のゴビンダさんを支える会 一緒企画 (ISSHO) 在日本朝鮮人人権協会 日本カトリック正義と平和協議会 沖縄市民情報センター 移住労働者と連帯する全国ネットワーク 特定非営利活動法人 DPI(障害者インターナショナル)日本会議 国際人権活動日本委員会 フォーラム平和・人権・環境 動くゲイとレズビアンの会(アカー) 全ての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク(RINK) かながわみんとうれん(民族差別と闘う神奈川連絡協議会) 「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NET ジャパン) 特定非営利活動法人 監獄人権センター(CPR) 統一獄中者組合 アイヌ資料情報室 注:この文書は、ホームページに掲載するために PDF 化したものであり、執行した原本で はありません。 AIPR(琉球弧の先住民族会) 日本キリスト教協議会「在日外国人」の人権委員会(NCC) 社団法人 北海道ウタリ協会 在日韓国民主人権協議会(民権協) 社団法人 神奈川人権センター 日本国民救援会 I 女性会議 ひょうご国際人権問題研究会 北京 JAC (元)拷問等禁止条約の批准を求める会 注: 子どもの権利委員会による第2回日本政府報告書の提出にあたり、200 1年4月9日ならびに5月14日、ならびに政府報告提出後の11月26日に、 外務省の主催による「意見交換会」が実施されている。そこでは、外務省から 報告書作成の方針についての説明がなされたり、NGO が事前提出した質問に対 する関係各省庁からの回答がなされたりしている。また、女性差別撤廃委員会 による第4・5回日本政府報告書審査にあたっては、NGO からの質問に対して 政府としての回答が文書によりなされている。 本件に関する連絡先: 社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本 〒101-0048 東京都千代田区神田司町 2-7 小笠原ビル 7 階 Tel: 03-3518-6777 Fax:03-3518-6778 Email: [email protected] 反差別国際運動(IMADR) 〒106-0032 東京都港区六本木 3-5-11 Tel: 03-3586-7447 Fax: 03-3586-7462 Email: [email protected] 注:この文書は、ホームページに掲載するために PDF 化したものであり、執行した原本で はありません。
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