「アジアにおけるこれからの国際課税対応について」を拝聴して

「アジアにおけるこれからの国際課税対応について」を拝聴して
税理士法人ワイズコンサルティング
山本
圭一郎
日時:2013 年 9 月 27 日(金)17:00∼19:00
会場:中央大学駿河台記念館
講師:伏見
俊行氏
テーマ:「アジアにおけるこれからの国際課税対応について」
ビジネス会計人クラブの皆様、事務局の皆様には日頃からお世話になっております。税
理士法人ワイズコンサルティングの山本圭一郎でございます。2013 年 9 月 27 日(金)に
開催された伏見俊行先生講演による「アジアにおけるこれからの国際課税対応について」
の感想を述べたいと思います。
まず、講演は、冒頭から五輪まゆみさんの「心の友」という歌からスタートしました。
私はこの歌を全く知らなかったのですが、この歌はインドネシアのほとんどの方が知って
いる歌だそうです。インドネシアは、世界でもトップクラスの親日国家であり、故にこの
歌が国民の方から愛されているとのことでした。それでは、以下に伏見先生の講演内容で
私の印象に残った内容を纏めたいと思います。
インドネシアの重要性
インドネシアは、親日国家、面積が大きい国、人口が多い国、東南アジアでの政治的パ
ワーがある国、世界最大かつ穏健なイスラム国家、資源大国、豊富な労働力がある国、成
長する消費人口がある国、重要な海上交通を握る国である。
増大する海外での税務リスクと対応
伏見先生によるとアジア新興国における移転価格問題とその対応については、新興国で
の課税の未然防止策と円滑な解決策が重要であると説明されていました。特に、このよう
な問題の原因は、大きく分けて税務当局の問題、納税者の問題、当局・納税者間の問題、
税務当局間の問題に分けることができ、それぞれに見合った適切な対応があると説明され
ていました。また、OECD 非加盟国との相互協議事案の件数については、発生件数は増加
傾向にあるが繰越件数も増加しており、発生しても処理が追いついていないという現状が
あると解説されていました。
税務に関する国際的な動向
税の問題が先進諸国の政治トップの話題に挙げられており、各国は、多国籍企業の国際
的租税回避問題、国際的脱税への対応、企業の税に関するコンプライアンス向上に向けた
取組について関心を持っている。G20 でも国家主権の枠組みを考慮しつつ、必要な個別及
び協調的な行動をとることをコミットするとの声明を出しているとのことでした。
税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組
コーポレートガバナンスの充実による税務コンプライアンスの向上は、企業・税務当局
の双方にとってメリットがある、なぜなら、企業側は、税務リスクを軽減させ、税務調査
対応の負担を軽減させることができるからである。税務当局側は、調査必要度の高い法人
への税務調査の重点化を図ることができるからである。
移転価格上の税務コンプライアンスの維持・向上に向けた取組
この問題については、問題の認識、トップマネジメントの関与、親会社のガバナンス、
税務当局とのコミュニケーションを図り、企業自ら自前で準備対応することが必要である
と解説されていました。これからの海外との付き合い方についても、事前対応が大切であ
り、企業の海外進出については、企業自らリスクをとる覚悟が求められ、進出企業は、現
地において日本代表としての責任感を持ち、現地に貢献すべきであるとも解説されていま
した。そして、これからの具体策については、伏見先生自身が暗中模索とのことでしたが、
途上国当局への働きかけ、途上国当局と日本企業との円滑な関係作り支援、日本企業のサ
ポート・アドバイス等を通じて国際交流の充実・円滑化を図ることが 1 つのアイディアで
あると説明されていました。
「それからの特攻の母」と国際課税
伏見先生は、昭和 63 年から薩摩半島の鹿児島県知覧に赴任され、知覧の税務署長に就任
されました。伏見先生は、この赴任期間中、知覧が太平洋戦争末期に陸軍特別特攻隊の基
地であったことを知り、このことについて研究されたそうです。その過程で伏見先生は、
鳥濱トメさんという方の存在を知りました。鳥濱トメさんは、知覧で食堂を営み、特攻隊
員を迎え、世話をし、見送った女性です。人は、「特攻の母」と呼び、今日でも多くの人の
記憶に残っている女性です。トメさんは、戦後、お国のために命を捧げた若者の思いを胸
に抱き、「あの子たちの分まで世の中のために働かなくてはいけない」と思い、戦争の悲劇
を伝え、社会のために尽くしました。その中心的な仕事の 1 つが税だったそうです。
「税は
国の礎」であり、あの子たちが願った国の復興、発展のために基本となるものであり、彼
女は、税務署に協力して円滑な税務のために貢献しました。やがて世間は、彼女のことを
「納税おばさん」と呼んだとのことです。伏見先生は、このトメさんの話と国際課税の話
は、本質的に共通する部分があると解説されていました。私は、この話を聞き、トメさん
の姿勢に感銘を受けました。
最後に、伏見先生は、「納税の歌」というものについて解説されました。この歌は、昭和
22 年に申告納税制度が導入され、これを促進するために作られた歌で、伏見先生が税務大
学校でたまたま発見された幻の歌だそうです。今回の公演は、歌で始まり歌で終わるとい
う斬新的な講演でしたが、国際課税の本質を伏見先生なりの観点から解説されるという内
容でした。実務の現場に立つ上では、この講演の内容を活かして、今後の国際税務業務に
取り組んでゆきたいと思います。伏見先生、本日は貴重なご講演をいただき、ありがとう
ございました。
【ワイズコンサルティング国際会計グループ】
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