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RAPID CRS エビデンスシート
-TR-FRET(時間分解-蛍光共鳴エネルギー転移)法への応用-
(はじめに)
時間分解蛍光(Time-Resolved Fluorescence)と蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence
Resonance Energy Transfer)を組み合わせた測定技術である TR-FRET での RAPID CRS の
使用を試みた。
今回、TR-FRET 技術を応用した HTRF 法による IL1β 測定において、RAPID CRS 貼付の影
響を評価した。
図 1 に示すように HTRF サンドイッチイムノアッセイでは、2 種類の抗体を各々、Eu クリ
プテートあるいは d2 にて蛍光標識し、固定化せず用いる。
励起光
337nm
FRET
665nm
蛍光
IL1β
620nm
蛍光
Euクリプテート
標識抗IL1β抗体
d2標識抗IL1β抗体
図1.HTRFサンドイッチイムノアッセイ原理
測定対象の抗原存在下で 320nm の励起光を照射すると、励起された Eu クリプテートより
620nm の蛍光が発生すると共に、免疫複合体上に隣接する d2 へ蛍光共鳴エネルギー転移が
起こり、665nm の蛍光が発生する。
免疫複合体形成に関与していない遊離の抗体を標識する d2 へは、FRET は発生しないことか
ら、HTRF 法では通常のイムノアッセイにおいて不可欠な洗浄(B/F 分離)が一切不要である。
加えて Eu クリプテートは長寿命蛍光物質であり、FRET の結果、d2 より発生する 665nm の
蛍光も長寿命となることから、励起光を遮断した後一致時間(数十μS)経過した後に蛍光を
測定すること(時間分解蛍光)で、反応液中に存在する種々の短寿命蛍光物資の影響を最小限
に抑えている。
実際の測定は、マイクロプレートへサンプル分注後 2 種の標識抗体を添加し、室温放置後、
時間分解蛍光を測定する、いたってシンプルかつ簡便である(図 2)。
測定において、反応液へのコンタミおよび蒸発を防ぐ目的で、試薬分注後プレートをシール
する。
一方、上記のように UV 光で Eu クリプテートを励起させる必要から、通常プレートシール
を測定前に剥離する。
測定毎にシールを剥離することは煩雑であり、ウェル間のクロスコンタミネーションの原因
ともなることから、剥離せず測定が可能な UV 透過性のプレートシールが望まれている。
サンプル
Euクリプテート
標識抗IL1β抗体
d2標識抗IL1β抗体
室温 放置
マイクロプレート
時間分解蛍光測定
図2.HTRFの原理とIL1β測定プロトコル
(材料と方法)
CISbio 社製、HTRF IL1β 測定キット
(http://www.cisbio.com/japan/drug-discovery/human-il1v-assay-mouse-il1v-assay-kits)
添付の標準 IL1β と d2 および Eu クリプテート標識抗体を、キット添付の使用説明書に従い 384well
マイクロプレート(CORNING 3674)へ分注し、n=10 にて検量線を作成した。
TR-FRET 対応のプレートリーダ-(ARTEMIS、古野電気)にて、バイオクロマト社製 UV
透過プレートシール RAPID CRS または A 社製 UV 非透過プレートシールを貼付または剥離した
状態で蛍光を測定した。
測定した 620nm と 665nm のカウントより Ratio および DF%を次式より計算した。
Ratio=665nm/620nm X 10000
DF(%)=(Ratio std - Ratio background)/ Ratio background X 100
(結果と考察)
1)
検量線
図 3 に示すように、UV 非透過性のプレートシールを貼付すると全く測定が不能であった。
一方、UV 透過性の RAPID CRS では、シールを剥離して測定した結果と差が認められなかった。
A社
図3.IL1β検量線
2)
0pg/mL CV
図 4 に 0pg/mL の Ratio(Ratio backgroud)値の CV へ及ぼすプレートシール貼付の影響を示す。
RAPID CRS を貼付しても CV は 2.5%以下であった。RAPID CRS を貼付による CV の上昇は
軽微であり、かつ上記の様に検量線への影響も認められないことから、測定感度への影響は極めて
小さいことが示された。
A社
図4.IL1β 0pg/ml Ratio CV
3)
620nm,665nm カウントリカバリー
図5に 620nm,665nm カウントへ及ぼす、プレートシール貼付の影響を示す。
UV 透過性シール貼付による、カウントの減衰は 15%と許容できる範囲であった。
CRS
A社
図5.620nm、665nm カウント
(結語)
RAPID CRS は励起光、蛍光共に透過性に優れ、貼付したままで TR-FRET シグナルを測定
しても、蛍光カウントの減衰は 15%と容認できる範囲であった、また検量線の S/B 比および
測定値の CV に与える影響も極軽微であることから、RAPID CRS を HTRF コンパチブル
プレートシールとして使用できることが明らかになった。
実験データ提供元:シスバイオ株式会社
<2015.5.22 作成>