懲 戒 請 求 補 充 書 ( 3) 第二東京弁護士会 御中 懲戒請求者 氏 名 千葉成田ミイラ事件①の再審支援の会 代表 氏 名 対象弁護士 氏 名 登録番号 紀藤 正樹 SPGF 代表 釣部 人裕 釣部人裕 所属事務所及び事務所の所在地 リンク法律事務所 21759 被請求人である紀藤正樹弁護士の弁護士倫理に反する不法行為の内、「実名での前科の公表」は、最 高裁判例(「いわゆるノンフィクション「逆転」事件」等)に鑑みれば、「更生の利益」が「表現の自 由」に優先することは明らかである。この点について、本書でその内容を補充する。 最高裁判例の判決主旨によれば「更生の利益」が「表現の自由」より優先する 改めて、被請求人が、高橋弘二(以下、高橋という)個人を名指しの上で、前科を公表したことが、 弁護士倫理に反する不法行為であることについて、以下に整理する。 1.被請求人は、2012 年(平成 24 年)1 月 27 日に、インターネット上における自らの facebook 及び Twitter に「殺人罪で有罪の教祖高橋弘二」、 「教祖で元受刑囚高橋弘二氏」と記述し、同年同月 28 日、自らのブログに「殺人罪に問われ有罪となり服役した高橋弘二教祖」と記述し、同年 5 月 2 日、 自らの facebook に「高橋弘二元受刑囚」と記述し、同年同月 27 日、自らが執筆した書籍『マイン ド・コントロール(㈱アスコム発行)』に、 「殺人罪で実刑となった。高橋弘二は、受刑を終え現在 は出所しているが、」等と記述し、高橋の実名を記載して、繰り返し前科を公表・拡散した。 2.最高裁判例(いわゆるノンフィクション「逆転」事件)では、「その者が有罪判決を受けた後ある いは服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるのであるから、 その者は、前科等にかかわる事実の公表によって、新しく形成している社会生活の平穏を害され その更生を妨げられない利益を有するというべきである。」と判示しており、「表現の自由(前科 公表の利益)」と「平穏に生活する権利」、「更生の利益」を個別事例ごとに衡量し、前者が優越し ない限り違法だとした。 1 3.では、どのような場合に「表現の自由(前科公表の利益)」が「更生の利益」に優越するかといえ ば、同判例は「ある者の前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為 を構成するか否かは、その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的又は社会的 な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的 、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもの」としている。 4.これを本件についてみれば、高橋は、1999 年(平成 11 年)7 月 3 日に小林晨一さんを殺害したと して、2000 年(平成 12 年)3 月 14 日に殺人罪で起訴され、2005 年(平成 17 年)7 月 4 日の上 告審判決により、懲役 7 年の有罪判決が確定し、刑の執行が開始され、2009 年(平成 21 年)3 月 に刑の執行を満期で終えた。 高橋は、拘禁による身体的・精神的疲れを療養するため、何ら社会的活動をすることなく、静か な生活環境を形成し、当然のことながら、一切の犯罪を犯すことなく一市民として平穏に暮らして いる。 高橋が刑期を満期で終えてから 2012 年(平成 24 年)10 月現在まで 3 年 7 ヶ月が経過し、事件 当初からいえば 13 年 2 ヶ月が経過したことになる。 5.被請求人は、事件当初から 12 年 6 ヶ月もの年月が経過した 2012 年(平成 24 年)1 月 27 日にな って、インターネット上のブログや SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使い、高 橋の実名を記載して、前科を公表・拡散し始めたのである。 被請求人が、高橋の実名を記載し、前科を公表した理由は不明だが、前記4の生活状況からする と、最高裁判例が示すような、歴史的又は社会的な意義はない。 6.よって、本件についていえば、被請求人の「表現の自由(前科公表の利益)」よりも高橋の「更生 の利益」が優先されるべきであり、被請求人の行為は、弁護士倫理に反する、弁護士の品位を害す る行為なのである。 7.2012 年(平成 24 年)9 月7日、最高裁第2小法廷(竹崎博允裁判長)は、 「前科に顕著な特徴があ り、起訴事実と相当程度の類似が認められた場合にのみ許される」と、刑事裁判において、前科が あるから、今回も犯人だろうとの安易な判断は、予断排除の原則、刑事裁判の鉄則からして、許 されるものではない旨、初判断を示した。つまり、検察が安易に前科を示せば、特に市民感覚の裁 判員に予断偏見をもたらす危険が大きく、前科立証を制限すべきだと判断したのであろう。 前記最高裁第2小法廷の判断主旨からしても、被請求人が特定個人を名指しの上で前科を公表す る行為は、表現の自由を逸脱した不法行為であり、当然に弁護士倫理に反する行為である。 8.2012 年(平成 24 年)10 月 19 日、読売新聞夕刊 19 面に、「出所後も被害「終身刑のよう」」との 見出しで、「「ネット社会でいったんレッテルを貼られたら社会復帰はできない。終身刑を言い渡 されたようなもの」2003年に詐欺などの容疑で逮捕され、懲役2年4月の判決を受けた東京都 内の男性(40)はネット上に漂う犯罪歴に今も苦しめられている。自分の名前をネットで検索す ると犯歴を暴露するブログや掲示板が表示されることは、出所後すぐ気付いた。就職しようと十数 社に履歴書を送ったが、全て断られた。「初めて人に会う時、どう見られているのか怖くて仕方な い」と話す。削除を請け負う弁護士がいると知り、依頼したのは昨年7月。これまでに6件の掲示 2 板やブログを削除してもらったが、「モグラたたき状態」という。特に困るのがグーグルのサジェ スト検索。名前だけならすぐにはたどり着かない暴露サイトが、「詐欺」という言葉がセットで検 索されると、すぐ表示されてしまうからだ。「犯した罪は重い。でも服役後もこんなに長い間、制 裁を受け続けなければいけないのか」と嘆く男性は、「就職もできず再び犯罪に手を染めてしまう 人もいるのではないか」と話す。削除要請は一般的に、掲示板の管理人に対してメールや郵送で依 頼するが、管理人の連絡先が分からない掲示板も少なくない。年間 100 件以上の削除を手がける神 田知宏弁護士は「検索サイトで対応してくれることが、被害を軽減させる一番の近道」と話してい る。」と、ネット上で個人の犯歴が一度暴露されてしまえば、それを完全に削除することは非常に 困難であり、それが就職の際の障害となり、社会復帰を妨げていることが記事になっている。 9.つまり、個人の前科が一度ネット上で公表されれば、拡散は容易でも完全に消し去ることはできず、 これによって、社会復帰は困難となり、結局、裁判所で判決された刑事罰以上の罰を受けるような 結果となる。高橋についていえば、13 年も前の事件の前科を、被請求人から執拗に公表・拡散され、 社会的に完全に抹殺されてしまっているのであり、更生の利益が著しく侵害されているのである。 10. 今年(2012 年)1 月、EU(欧州連合)はインターネット上の個人情報の削除を要求できる「忘 れられる権利(rights to be forgotten)」を含む法案をまとめている。この主旨からしても、被請求 人が、13 年も前の事件の前科を、公表・拡散する行為が、 「表現の自由」という名の下に行われた 人権侵害であることがよくわかる。 以上述べてきた通り、被請求人による高橋の実名での前科の公表は、高橋の更正の利益を侵害してお り、最高裁判例に反する不法行為であり、弁護士倫理に反することは明らかである。 第二東京弁護士会からの判断を待っている間にも、被請求人による請求人らに対する名誉毀損、プラ イバシーの侵害は益々エスカレートしてきている。これ以上、被請求人の不法行為を看過できないため 、私たちは、高橋の前科の公表が不法行為であるとの民事提訴をする予定でいる。 以上 平成 24 年 10 月 26 日 懲戒請求者氏名 釣部人裕 3
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