自動車整備相談所の相談事例の紹介

 ここに取り上げた事例は、平成26年度第4四半期に全国の自動車整備相談所に寄せられたものです。
ユーザー対応について指摘するものではなく、こうした事例を参考として顧客の満足度を高める為の
ものとご理解下さい。主な相談事例は、次の通りです。
Q1.走行距離が少なくて困っている・・・
平成27年1月23日 関西地方 男性
【相談】
経費が安く、環境に配慮したすばらしい車で1回の充電で220kmは走るとのセールストークか
ら充分実用に耐えると判断し、契約した。しかし、乗り始めの時でも1回の充電で180km程度し
か走行できず、登録後2年半ほど経った今、1回の充電で80km程度しか走らなくなってしまった。
購入したディーラーに苦情を言うと、「経年による傷みや劣化はどうしようもない。有償修理で部
品代だけで60万円程度かかる」と言われた。これでは同じクラスのガソリン車の方が維持費も安
い。ガソリン車なら重大な故障で、保守管理が行われていれば5年10万km保証が常識となって
いる現在、わずか2年半で60万円のエンジンともいえるバッテリーを有償で交換しなければなら
ないというのはおかしくないか?私はディーラーが妥協案を提示してくれたら折り合いをつけるつ
もりだし、話し合いにも応じる用意があるが、ディーラーはそういった提案を一切せず、「仕方がな
い」としか言わない。貴会から話をして貰えないか?
【対応】
ディーラーには連絡してみるが、妥協案の提示や金銭の話は出来ない。ただ、要望は伝える、
それで良いか?と聞くと「それで良い」と。「当方から連絡をした証としてディーラーからお客様宛
に再度連絡して貰えるよう伝える」と言って電話を切った。
ディーラーは、店長が窓口になっており、相談者の名前を伝えるだけで苦情内容を理解した。
店長は、「保証内容については何度も説明しているし、誠心誠意尽くしてきた。折り合い云々と
いうが、相談者の実際の要求は過大で現状、歩み寄る部分がない。振興会に苦情を持ち込んだ
のなら消費生活センターやPLセンターにも電話を掛けるだろうが、社として決まっている対応を
営業所サイドでどうこうできない。振興会には迷惑をかけているが本社に報告し、相談者には
‘‘振興会からも連絡はあったが、どうしようもない’’という連絡だけさせていただく」と言われたの
で、相談をここで終えた。
Q2.エンジン上部のブラケット用ボルトが1本ないことを
発見した・・・
平成27年2月2日 東北地方 男性
【相談】
先日、自家用車のウォッシャー液補充のためにボンネットを開けたところ、エンジンヘッドカバー
上部に取付けられている配線(ワイヤー?)固定用のブラケット取付けボルトが1本ないことを発
見した。平成25年11月の車検整備後は、どこにも整備を依頼していないので、その時に整備工
場で付け忘れたとしか考えられない。
整備振興会は定期点検整備の促進などをPRしているが、このような整備ミスが発生するという
ことは会員整備工場に対してどのような指導をしているのか。振興会に車を持って行くので現状を
確認の上、ボルトを取付けてくれないか。
【対応】
以下のとおり回答した。
・整備ミスが原因のトラブル事案については、整備の責任者(整備主任者)研修会等の機会を通
して周知を行い、同種トラブルの再発防止を指導・徹底している。
・ボルトの取付けについては、整備振興会は車の修理を行っている事業場ではないのでできない
が、前回、車検整備を行った整備工場に対応して貰ったらどうかとの助言を行った。なお、当該整
備工場が当会会員であれば指導を行うことができることを説明した。(相談者は、整備工場の名
前は教えたくないとのこと)
結局、何をどうして貰いたいとの要求もはっきりせず、単に話を聞いて貰いたいだけなのではな
いかという感じであったので話を聞くこととした。話を聞いている中で、整備工場の名前が出たた
め、相談者に当該整備工場は当会の会員である旨を告げ、当該整備工場に対し今回の相談内
容を伝えるとともに必要に応じ指導を行うこととができるが、どうしたらよいかを確認したところ、ボ
ルトが取付けられていなかった状況と当方(相談者)の感情(立腹していること)だけであれば連
絡をしても差し支えないとのことであった。
2月2日、当会から整備工場の社長に上記内容の連絡を行った。社長から、入庫及び整備内容
等を確認の上、事実関係が確認できれば謝罪の連絡をしたい旨の意思表示があった。
2月3日、相談者から、「昨日、整備工場の社長が来宅し、ボルトを取付けていった。早急な対
応を感謝する」旨の電話連絡があった。
Q3.無償だと思っていたバッテリー交換で、金銭を要求
される・・・
平成27年2月2日 関西地方 男性
【相談】
(消費者センターからの紹介)
消費者生活センターに電話をしたらこちらに電話をしてくれというので電話した。10月に貴会会
員A指定工場で車検を受けた。1月に路上で車が止まり、A工場に電話をした。工場はすぐに来て
くれ、その場でテスターを使って調べ、「バッテリーの不良」という判断を下し、交換して貰った。し
かし、金銭の話は一切なく、「これで終わりですか?」と問うと、「終わりです」というので私は、車検
後すぐだからサービスでバッテリーを交換してくれたものと理解した。
ところが、先日いきなり請求書が内容証明で送られてきた。工場に電話をすると、「再三電話をし
ているのに電話に出ない。着信拒否にもなっている。逃げているのか?お金を払わないのなら被
害届を提出する」と言われた。貴会会員A指定工場のこの対応は正しいのか?という苦情。
【対応】
車は7~8年前に新規登録された乗用車だが、A指定工場で購入したかどうかは不明。バッテ
リーは過去に一度交換している。今回の車検時は、バッテリーに問題なかったそうだが、車検後
のタイミングでダメになること自体は珍しいことではなく、それだけで整備工場の非を訴えることは
できない。ただ、工場の接客が事実ならば一部に問題がないこともない。対応したのは誰で、その
方に直接話を聞いてみたい。「金銭的な話に立ちることはできないが、交換時のやり取りには解し
がたいものを感じるので是非とも確認したい」と言うと、「電話はしなくていい。この全国展開してい
る整備工場が私のクルマのバッテリーを無許可で交換し、その代金を請求してきたことを全国に
知らしめて欲しい」と。
「当方は事実確認が出来ていない内容を報告することはない。テスターで確認し、本人を目の前
にして無料で7~8年前に新車購入した車のバッテリーを交換してくれる工場など存在しないと思
う」と伝え、電話を切った。以後、連絡はないがこのように無茶な苦情を言う相談者もいることから、
公開・公表しなければ違法ではないので保身のために録音しておく方が良いかもしれない。
Q4.前の工場からの騒音がうるさい・・・
平成27年3月9日 関西地方 男性
【相談】
病院に入院しているが、前の整備工場のホーンの音がうるさい。何とかならないか。
【対応】
工場は当会会員指定工場。確かに病院の前に指定整備工場があるのでホーンの音が聞こえる
可能性はある。しかし、工場と病院の間には交通量の多い番号1桁の国道もある。
騒音規制法等、関係条例に照らし合わせてみたところ、市の騒音規制区域(市条例?)では、工
場の立地は第3種地域。片や病院側は第4種地域に該当。第3種地域の条件は、測定場所の近
隣50mに病院、学校、図書館などがある場合、昼間の規制値が60dB以下で第4種地域は65d
B(同規制値)以下がその数値。つまり病院の立地の方が高い。この数字を調べてから市の環境
課に問い合わせ、音の測定方法などの詳細を調べ、さらに具体的な防音対策の講じ方や罰則等
も確認し、その内容を会員指定工場に苦情内容とともに知らせた。
その結果、会員工場は、騒音規制法や建築基準法だけでなく振動規制法や悪臭防止法、水質
汚濁防止法など関係法令とも照らしあわせて、特に規制に違反していないことを確認した。しかし、
今まで苦情がなかったとはいえ、病院に入院している患者にしてみれば病を治すために入院して
いるのでちょっとした音がストレスになって入院期間が伸びる可能性もある。工場として入院患者
と揉めるのも本意ではない。今後、ホーンの音圧測定時は、出来るだけ病院から遠い位置で防音
対策をし、出来るだけ短く鳴らして基準の合否を確認したいとのことであった。また、工場は今後、
音が漏れにくい防音対策も講じるなど本部とも相談し、最大限の努力を払うということであった。こ
のことを相談者に連絡すると何とか納得していただけ、その
後、病院側から苦情はない。
工場は病院のあとに建設されており、基準をクリアしているから問題ないといってしまえばそれ
までだが、音の聞こえ方は感受性もある。まして入院患者は同じ人ではなく、基準だけで片づけら
れないことも多々あると思われる。当方もいい勉強になった。
Q5.契約とは異なる他社製のパワーゲートを装着
された・・・
平成27年3月17日 関西地方 事業者
【相談】
当会会員のA認証工場。実の弟が経営するB中古車店(未認証工場)がトラックを販売し、C社
のパワーゲートを装着する架装をD認証工場(当会会員工場)にお願いした。契約は口頭だけで
なく書面でも交わしたが、納車された車には契約したC社のパワーゲートではなく、E社のパワー
ゲートが装着されていた。
D認証工場に苦情を言うと、「性能は同じだから」といった言い訳をして取り合ってくれず、対応
がのらりくらりしている。ユーザーにそのまま見せてみたところ、「E社の物を注文した覚えはない。
E社のものを取り外して、私が発注したC社のものをつけるか、出来なければもう車はいらない」と、
B中古車店が言われた。
この相談はA認証工場からだが、B中古車店が実の弟なので相談を受け、整備相談所となって
いる当会に相談してきた。クルマは、パワーゲートを装着したのでボディを切削しており、C社の物
を付け直すにしても、再販売するため元の状態に戻すにしても、かなりの金額を要する。
D会員工場の契約不履行は疑いのないところだが、今後どうすればいいか。
【対応】
Q5.センサーを交換してダメなら次はECUを換えましょうと
契約書面ではC社の装備を指定して契約したことが複写になっており、契約に間違いはない。
言われた・・・
民法634条に、「仕事の目的物に瑕疵があるときは、瑕疵の修補を請求できる」とある。ただし、
瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでないという
平成26年9月12日 関西地方 女性
ことも併せて書かれてある。本件が瑕疵に該当したとしても重要であるかどうかは微妙。原則は、
【相談】
契約通りC社のパワーゲートに交換することだが、金額的には過大な要求だと言えなくもない。
今までは自宅近くの専業工場(ユーザーは自動車屋と言った)で車検を受けてきたが、このたびは、ディー
ラーで車検を受けた。図らずもディーラーは、「年式や走行距離から考えて、いつどうなるかわからない」と
現在、装着されている部品に欠陥があるとか中古品であったとかではないので、裁判になっても
いうようなことを言ったが、検査が済んですぐ、オレンジ色の警告ランプが点いたのでディーラーに持ち込ん
最終的には話し合いで解決するようになると思われる。そうすると、御社(AとB)が、Dと話をし、
だところ、「故障個所は雪道走行時などに作動するシステムのトラブルで、センサーを交換すれば消えると
妥協点を探り、お客様に安価で供給すると納得していただけるのではないか、という話になるので
思いますが、それで直らなかったらECUを交換します」とアドバイスがあった。
はないだろうか。また、相談の大元は未認証のB中古車店だが相談自体は御社(当会会員認証
故障個所を限定せず、この部品を交換してダメならこの部品を交換しましょうというアドバイスに納得がい
工場)からで、苦情を言われているD工場も当会会員認証工場。利害相反が視野に入り、整備相
かない。センサーもECUも見積もりを取ったが、どちらも安い部品ではない。それに15年以上乗っているが
談所としては非常に相談に乗りにくい。
今までトラブル一つなく乗り続けてきたのに、なぜ突然このような高価な部品が壊れるのか。この質問を
通常、こういった提案は当会から出来ないが、双方が会員なので、一般論としてもう一度三社で
ディーラーでしたら、「偶然です」という答えが返ってきたが、なぜ偶然このような部品が検査の後に壊れる
話し合って妥協点を探り合ってはどうか?と言うと、「ユーザーに理解が得られるよう一度話し合
のかも説明して欲しい。
いをしてみる」と言って納得し、電話を切った。その後連絡はない。
Q6.交換したHIDヘッドライトが暗い・・・
平成27年3月25日 関西地方 男性
【相談】
ヘッドライトが暗くなってきたので、「激安」との看板を掲げるA自動車整備工場に部品代金込の
1万5千円で、HIDヘッドライトへの交換をお願いした。しかし、交換した次の日に点灯させてみる
と、元々つけられていたヘッドライトよりも暗く、そのまま点けていたらすぐに切れた。あまりにもお
粗末な品物だったので工場に返金を申し入れたが、「返金ではなく、新しいものに付け変える」と
いって引かず、結局、押し問答の末、「指定したメーカーのものなら」とメーカーを指定して妥協し
た。
ところが、交換されたHIDは指定したメーカーのものではなく、生産国も表示されていない紛い
物だった上、二度目の交換作業時に防水キャップを割ったのか水が浸入し、内部が曇るように
なった。光軸調整にしても壁に当てて調整するといった原始的な方法で、テスターも使わず(保有
していない?)、リフレクターも外されたままになっていた。これらのことからこの店が信用できなく
なり、車を購入した別のB工場に持って行ったところ、絶句された。貴会に聞きたい。A整備工場
のような不当工場が野放しでいいのか?
【対応】
調べると、相談者の言う場所に認証工場はなかったので、まずは、非会員未認証工場で行った
作業には安価とリスクが引き換えになっていることを説明。問い合わせをしてきた方の声が若く、
落ち着いていたので、「あなただけでないが、ここに電話をしてくる人の多くは、‘‘素人だから’’と
か‘‘知らない’’ということを自慢げに言うが、トラブルになってから苦情を言ってきても、非会員未
認証工場を選んだのは私ではなくあなたなので自己責任以外の何ものでもない。会員か非会員
かなど我々にはわからないという方も多いが、そのために当会ではラジオCMを入れ、新聞広告
を打ち、いろんなイベント(具体的なイベント名や数字を
説明し、CMの音楽を言うと知っていた)を行っている。行き届いていないかもしれないが、ユー
ザーにも知ろうとする努力は必要だと思う。今回のように不都合が発生してから当会にいくら苦情
をいってもお金は返ってこない。先に情報を仕入れることも必要だ」と説明。→次頁に続く。
また、感情が昂ぶって、裁判云々をいう人も多いが、簡単に出来るものではない。今回のように
見積書も契約書もなく作業を依頼するのはよほどの付き合いのある工場ならわからないでもない
が、面識もない工場に、安いという看板に踊らされていきなり飛び込んで作業させたあなたは、ま
さに「飛んで火にいる夏の虫」。
今回、壊れて騙された(と思い込んでいる)と言うなら、「あなたが工場の責任を明確にし、工場
と話をする以外方法はない」とアドバイス。ここまでの話で納得し、「今度からは黄色い看板の工
場で修理をお願いする」と言って自分から電話を切った。
最近は未認証工場の相談であってもこのように落ち着いて話をする人には出来るだけその人
の話を聞き、認証工場と未認証工場のスキルの違いを説明して、自己管理責任を徹底的に刷り
込むようにしている。
Q7.作業そのものが疑わしいので整備代金を返還
して欲しい・・・
平成27年3月27日 関東地方 男性
【相談】
7年程前から乗っている車を、昨年8月ディーラー(指定工場)に車検依頼した。問題なく納車さ
れたが、半月後に別の整備工場に排気系統の作業を依頼したところ、新車時にスポーツパーツ
のブレーキホースとオプション交換した際の取付不良(固定位置がずれホースが捩じれていた)
が確認され、また、エンジン下面のオイル痕が取り除かれていないのが確認された。
工場に申し出ると、最初はブレーキホースの取付状態の不具合を認識できず、販売元への照
会後に不具合を認めて新品と交換することになった。エンジンの汚れについては、「スチーム洗浄
の一部作業が不十分であったと思われるので再作業を行わせて欲しい」との申し出があった。
また、作業内容の不信感を取り除く為には、「車検に準じた整備を再度実施させて欲しい」との
提案があったが、7年間の作業そのものが行われているか疑わしい状態で作業を任せることに
は信頼ができないことから、7年分の整備代金の返還を要求した。譲歩して、今回の車検代金を
返還してくれるように誠意を求めたが、応じてくれない。7年間の異常状態を放置された不安感を
考えると誠意を見せるべきではないか。交渉が出来るようにして欲しい。
【対応】
相談窓口では、金銭の仲介はできないが相談者の了解の下、相手方との話し合いが行われる
よう双方の間に入って、アドバイスは出来ると伝えた。確認の結果、工場側は作業の不手際は認
めおり、信頼回復を得るべき提案をしているが誠意と言う名の要求があり、受け入れられない金
銭的な条件については応じられないと拒否している。
相談者にはブレーキホースの取付けについて、新車交換時等の作業確認が不十分であった点
は問題であるが、不具合対応としては理解できる範囲と考えられること、及び事後処理の対応に
ついて相談窓口で金銭的な仲介には介入できない旨を伝えた。法律相談所に相談して、対応を
考えたいとのこと。