平成 26 年度 全国理科教育大会 報告者:北海道砂川高等学校 東京大会 派遣者 レポート 髙橋賢司 8 月 6 日(水)から 8 月 8 日(金)にかけて東京都の立教池袋中学校・高等学校にて行われた平成 26 年度全 国理科教育大会に出席してきました。私の場合は、大会第 1 日目からの全国理事会、文科省講話、研究代表者会 議等にも参加してきました。以下、大会第 2 日目の研究協議(第 6 分科会座長として参加)と実験講習会、大会 第 3 日目の研究発表(第 3 分科会・物理③の印象に残ったもの)と、コース別研修(巡検)を報告します。 研究協議( 第 6 分科会 「 実験実習・探究活動を利用した理科教育 」 )座長として 【開催日時】 【協議題】 【協議題趣旨】 平成 26 年 8 月 7 日(木) 16:00 ~15:30 「実験実習・探究活動を利用した理科教育」 実験実習や探究活動を取り入れた、効果的で一般性のある指導について、具体的な指導事 例を基に協議する。 【座長】 【意見提示者】 【意見提示要旨】 北海道砂川高等学校 髙橋 賢司 東京都立井草高等学校 宮本 信之 愛知県立岡崎北高等学校 楫本 紘司 兵庫県立浜坂高等学校 良紀 岸本 ①探究する力、自ら発信する力を育てる「サイエンス・ラボ」 (愛知県立岡崎北高等学校 楫本 紘司 先生) 岡崎北高等学校では、各学年 1 学級 40 名のコスモサイエンスコースを設置し、理数及び英語教育に力を入れ た特色ある教育活動を実践しているようだ。今回は、その中でも、第 2 学年で実施されている学校設定科目の「サ イエンス・ラボ」についての意見提示であった。サイエンス・ラボは、毎週 1 時間実施され、生徒は約 6 名ず つ、7 班に分かれ、班毎に観察・実験を中心とした探究活動を行う。研究は、半年単位で行われ、9 月と 3 月に は研究発表会が実施される。前期の講座では、生徒は教員が提示したテーマの中から興味のあるものを選び、研 究を行う。後期は、そのテーマを継続しても良いし、新たなものを選んでも良く、自分達で研究したいテーマが あれば、そのテーマで研究することも出来るそうだ。この講座の目的は、生徒自ら探究する力の養成することに あるため、普段の授業における教員と生徒との対話を重視しているということでした。対話の中から、生徒の知 りたいという感覚を引き出し、生徒自身の研究計画につなげる工夫が見られた。この講座のもう一つの重要な目 的は、言語活動の充実もあるようだ。生徒との対話に加え、実験時や考察時に、生徒同士が議論し合える環境作 りも心掛け、実践している。また、年 2 回開催される研究発表会では、生徒自身も、他の班の研究発表を評価す るなど、互いに評価し合うようだ。こういった実験考察時の生徒同士の議論や、発表会での互いを評価し合う取 り組みを通して、充実した言語活動が繰り広げられ、自らの考えを論理的に相手に伝える力を養成している。 「サ イエンス・ラボ」は、生徒にとって好評のようで、探究活動や言語活動が充実している点が、特に生徒からも評 価されているという。 【質疑応答・意見等】 意見で、普段、教員側から評価されている生徒が、半期ごとに行われる研究発表の場で、生徒同士が、お互い に、実験の取組過程や、プレゼンを評価し合う取り組みは、生徒自身の課題に対しての探究する力、発信する力 を育てるのに非常に効果的であると思うという意見が、会場から多く見受けられた。 【意見提示要旨】 ②理科教育における小高連携~小学校との連携を通して~ (兵庫県立浜坂高等学校 岸本 良紀 先生) 兵庫県では、平成 24 年度より、県教育委員会による理数教育アクションプランが始まり、その中の、サイエ ンストライやる事業に基づき、新温泉町教育委員会の依頼で、近隣の小学校で研修会を実施した時の様子と、小 学校との連携をテーマに、 「夏休みの自由研究を読んでみよう」の 2 つの取り組みについての報告があった。 小学校での研修会実施の背景には、教科・科目の専門性の高い高校の教員が、小学校教員に対し、実験の演示等 を行い、小学校教員の観察・実験の指導力向上を図り、小学校児童の理科への興味・関心を高めることが目的の ようだ。研修会では、探究的要素を多く含んでいて、かつ短時間で行える実験を複数用意し行う事で、教員同士 の対話が活発に行われ、有意義なものになった。2 つ目の取り組みである、 「夏休みの自由研究を読んでみよう」 では、小学生の夏休み自由研究のポスターを教材として、高校生が小学生のポスター発表を読み取る力の育成と、 評価やアドバイスすることを通して、言葉の力を身に付けることを目的としたようだ。高校生が、小学生に自分 が感じたことを伝えるには、言葉を選び、表現の仕方を工夫する必要がある。小学生の探究心を大切にして、高 校生は感想シートに記入しなければならなく、高校生徒にとってこの経験は、言葉の力の育成や、身近な生活の 中に探究的な活動の題材があることに気づかせるものになった。 【質疑応答・意見等】 意見で、高校生が小学生の夏休み自由研究に対して、アドバイスする事は、言葉を選び、同じニュアンスの事 を言うにしても、より分かり易く伝えなければならないので、高校生の表現のバリエーションが広がる事が期待 できるという意見が目立った。 実験講習会【物理分野】 【開催日時】 平成 26 年 8 月 7 日(木) 13:00 ~ 15:30 ○「ボイルの法則実験器の製作と実験」 (東京都立城東高等学校 田原 輝夫 先生) 温度が一定ならば、一定量の気体の体積は圧力の大きさに反比例すること(ボイルの法則)を確かめるために、 アクリルパイプ、シリコーン管、径の異なるゴム栓、ガラス管、そして 500〔mL〕のペットボトルから成る簡 単に製作可能な「ボイル法則実験器」の紹介がありました。原理は、ペットボトルの高さを上下させることで、 アクリルパイプ内部の気圧を変化させながら、アクリルパイプ内部の気柱の長さの変化を観測し、一定に保たれ た気温のもとでは圧力と体積の間に反比例の関係が成り立つことを確かめるというものでした。実験では、アク リルパイプ内の空気圧 P〔cmH2O〕= 大気圧 P0 + ⊿h を用いて行った。⊿h は、ペットボトル内の水面の高 さと、アクリルパイプ内の水面の高さの差である。 ○「回折格子による干渉縞の観察装置の作製」 (東京都立立川高等学校 野口 禎久 先生) 簡易分光器で白色光を観察したときの連続スペクトルの見え方を理解するために、簡単に製作可能な実験装置 の紹介があった。回折格子は 1〔mm〕あたり、500 本のレプリカフィルムを厚紙に開けた穴に貼り付けて、塩 ビパイプの継ぎ手の筒に挿入する。スクリーンには、厚紙にあらかじめ印刷した角度目盛の紙を貼り付け、光源 には、2 種類取り替えが可能で、イルミネーション LED と、白色光源 LED の 2 つとした。スリットには、黒い 紙に 1~2〔mm〕程度の細長い隙間を開けたものを用いる。アクリルパイプの筒の内側に、黒い色画用紙の筒を 入れると、より鮮明な干渉縞が観察できるポイントも教わることが出来た。 研究発表(第 3 分科会・物理③) 【開催日時】 平成 26 年 8 月 8 日(金) 9:00 ~ 12:00 ○「波動分野指導法の一考察」 (福井県立丸岡高等学校 鈴木 秀明 先生) 波動分野では、動的な現象を、短時間に、明確にイメージできるように指導する事が求められている。そこで、 視覚教材としてのコンピューターによるシミュレーション(CG)や、作図作業を通して波動イメージの根底を 理解させる幾つかの取り組みについての紹介があった。 ○「偏光板を利用した交流回路の電圧の位相差の観察」 (東京都立杉並高等学校 永露 浩明 先生) 発光ダイオードと偏光板を組み合わせることで、RLC 回路の交流電圧の位相の違いを視覚的に表すことができ る装置「電圧位相差観察装置」の製作した装置の紹介があった。 ○「パソコン計測システムを用いた電気振動の観察実験の開発」 (愛媛県立川之石高等学校 廣本 和也 先生) 手軽に電気振動の観察を行いたいと考え、オシロスコープではなく、パソコン計測システム(振駆郎、理科ネッ トワーク)を用いた実験方法の紹介があった。 コース別研修(東京地下施設見学コース) 【開催日時】 平成 26 年 8 月 8 日(金)13:00 ~ 17:00 コース別研修では、3 つのコースから、ひとつを選択するようになっていたので、私は「東京地下施設見学コ ース」を選択しました。巡研では、最初に、新宿地域冷暖房センター、次に上北沢共同溝を見学しました。 新宿地域冷暖房センターは、首都圏初の地域冷暖房センターとして、1971 年に開設され、冷凍能力 228,800 〔kw〕加熱能力 173,139〔kw〕 、供給延床面積 220 万〔m2〕を誇る世界最大級の地域冷暖房センターです。見 学では、大会議室でオリエンテーションを受けた後、都市ガスを燃料として電気と熱を取り出すガスタービンコ ージェネレーション、水管式ボイラ、中央監視室、蒸気駆動復水タービン・ターボ冷凍機、電動ターボ冷凍機を 見て回りました。冷暖房センターでは、なぜガスで冷房が出来るのかを、手にアルコールを塗ると蒸発する際の 周囲から熱を奪い冷たく感じる気化熱を例に、また水蒸気が冷たい物に触れると凝縮して水滴になる現象を通し て、分かり易く教えて頂きました。 上北沢共同溝では、ガス、電気、上下水道など日常生活に欠かせないライフラインを車道の下にまとめて収納 する空間を見学してきました。実際に、各見学者がヘルメットを付け、建設途中の共同溝を見学するという大変 貴重な経験ができました。共同溝のメリットは、大きく 3 つあるそうで、1つが、ライフラインをまとめて収納 する事で維持・管理が容易となり道路の掘り返しを減らせるそうです。2 つ目が、災害からのライフラインを守 るということ。平成 7 年の兵庫県南部地震では、一部で整備されていた共同溝内のライフライン被害は全く無か ったようです。3 つ目は、増加する都市ニーズに応えることで、将来のニーズを予測しライフラインの収容空間 を確保することで、将来の掘り返し工事の抑制につながるそうです。 共同溝見学では、シールド、ボルトレス継手を採用したセグメント等も学んで来ることが出来ました。
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