情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律の

情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律の影響と課題
「法務・監査」分科会・研究会を実施して
NPOデジタル・フォレンジック研究会 「法務・監査」分科会 主査
小向 太郎
デジタル・フォレンジック・コミュニティ2011では、「法務・監査」分科会による研究企画として、
「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律の影響と課題」を
テーマとする研究会を実施した。
2011年6月に「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」が
成立した。いわゆるサイバー犯罪やコンピュータ・ネットワークを悪用した犯罪の増加に対応
するために、コンピュータウィルスに関する罪やネットワークに対する犯罪捜査手続に関する
規定を整備するものである。
今回の改正法が成立した背景には、コンピュータ・ネットワーク犯罪の深刻化に加えて、
これに対応するための国際協調の必要性がある。ネットワーク上の犯罪は複数の国に影響
を及ぼすことが多いため、1国のみで有効な対応を行うことは難しい。欧州評議会では、
2001年11月にシステムへの不正な攻撃や児童ポルノ等の最低限の禁止規定を設けることと、
サイバー犯罪に対する捜査手続を整備することを求める「サイバー犯罪条約」を採択しており、
わが国も批准する方向で検討が進められてきた。
サイバー攻撃の大規模化、悪質化が、わが国でも急速に注目されるようになっている。
このような問題に対応していく上でも、今回の改正法は重要な影響を持つ可能性があると
考えられる。
そこで、このセッションでは、情報セキュリティやデジタル・フォレンジックの在り方にも影響
を与え得るこの法律をテーマに据え、各分野の専門家をパネルに迎えて、制度の概要に
関する正確な理解に資する報告をいただき、その上で、国際的側面や実務への影響などに
ついて、多面的に課題を提示していただいた。これらの報告を受けて、会場からも活発な
質問やコメント寄せられ、具体的な議論をすることができたと考えている。ただし、制度の内容
や課題に関する前提知識の共有にはそれなりの時間がかかり、やや時間が不足した感が
あるのではないかとも感じている。
この法律を含めサイバー空間に対する法執行については、本格的な運用はこれからの
面があり、今後も注目すべき課題が多い。会員の皆様からのご要望があれば、今後も「法務・
監査」分科会で適宜取り上げていきたい。また、このテーマに限らず、ご希望のテーマが
あれば是非事務局までご連絡いただきたい。引き続き、「法務・監査」分科会の活動にも
ご参加いただけると幸いである。