398 岐阜県警山岳警備隊と北飛山岳救助隊 北アルプスの岐阜県側を守るのは岐阜県警山岳警備隊と北飛山岳救助隊である。 県警が飛騨方面隊を取りまとめる小隊長は谷口光洋警部補（57）。彼は奥飛騨交番の所長も兼務する。警 察庁指定「広域技能指導官」であり、山岳分野では全国で２人目に任命されたプロ中のプロだ。職場は３ ８年間北アルプス。高山市出身、高校生のときに山岳警備隊の救助現場に遭遇し、強く感動して憧れた。 高校を卒業すると迷うことなく警察官になった。とにかく山が好き、彼は「山に登りたい気持ちがよくわ かるから、遭難者をあまり厳しく叱れない」と笑う。それでもいまではタクシー代わりに救助を求める、 マナー知らずの連中には厳しい言葉になる。高度な技術と知識を持ち、周囲の信頼は厚い。 彼らと共に活動するのは民間ボランテア団体「北飛山岳救助隊」である。この隊員の家族 は「出動要請があっても谷口さんが一緒と聞くと安心です」と話す。 1977年先輩隊員が滝谷で殉職した。その衝撃と悲しみは深く、山岳警備隊はトレーニングを強化するな どして、更に力をつけてきた。それ以来、二重遭難は発生していない。 「若手の育成が使命、多くの後継者が育っていることがうれしい」。 山岳警備隊員は普段は地元の高山警察署や飛騨警察署の交番な どで勤務する警察官。日常勤務のなかひとたび救助要請があれば 速座にかけつける。山岳会出身者もいるが多くは登山未経験、 そんな隊員を過酷な救助作業ができるまで鍛えたれる。夏と冬の 槍穂高の縦走、１０時間以上歩いたり岩場の登攀訓練もある。 「思った以上に怖いです」と新人隊員が口にするのは救助ヘリで の高吊り、さまざまな山岳地形に慣れる必要もある。 登山者の命を守ることに加え自分の命も守る。基本技術を身体に 徹底して叩きこむ。こんな地道な訓練と努力が連日行われている。 【谷口光洋さん】 北飛山岳救助隊の発足は1957年、県警山岳警備隊より５年ほど 早く、もう半世紀以上も前になる。当初は警備隊をリードする存在 だったが、警備隊が実力をつけ全国でも屈指のレベルとなったいま 警察からの要請を受けて協力する形となっている。隊員は３８名、 会社員、公務員、自営業などさまざま。７代目隊長の袖垣吉治さん は地元神社の神主さんだ。 「いろいろな隊員がいるからで日程など組み合わせ折り合いがつけ られる。まったく都合がいいんです」と袖垣さんは笑う。 「仕事でもないのに都合をつけ、大変な思いで危険な山に救助に 向かう。やはり山が好きだからでしょうね」 【袖垣吉治さん】 救助隊の原点は 「地元の山で遭難して苦しんでいる人がいる。助けないわけにいかないでしょう」 こ の思いから始まった。この精神はいまも脈々と受け継がれ息づいている。
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