第2編 受変電機器選定上の技術計算 1.6 変圧器の結線と出力計算 (1)単相変圧器を三相結線したときの出力 単相変圧器は単相で使用する場合のほか,単相変圧器を組み合わせて多相変圧器として使用す る場合がある。 ①三相結線の出力 三相回路の皮相容量 P は次式で表される。 P= 3 ×(線間電圧)×(線電流)[VA] ・・・・・・・・・第 1−19 式 1)単相変圧器を第 1−5 図のように星形結線(スター結線)としたとき,星形結線の線間電圧 は 3 ×(単相変圧器の相電圧)となり,線電流は同じなので,このときの出力PYは第 1−19 式に代入すると PY= 3 ×(線間電圧)×(線電流)=3×(単相変圧器の相電圧)×(単相変圧器の線電流) となり,単相変圧器3台分の容量と等しくなる。 Iv 線電流=単相変圧器の線電流 V Ev 相電圧 Evw Eu Euv Iw U Ew 線間電圧 = ×単相変圧器の相電圧 3 W Iu Ewu 第 1−5 図 星形結線 2)同様に,単相変圧器を第 1−6 図のように三角結線(デルタ結線)としたとき,線間電圧は 単相変圧器の相電圧であり,線電流は 3 ×(単相変圧器の線電流)となるので,このとき の出力PΔ は第 1−19 式に代入すると PΔ= 3 ×(線間電圧)×(線電流)=3×(単相変圧器の相電圧)×(単相変圧器の線電流) ・・・・・・・・・第 1−20 式 となり,星型結線と同様に,単相変圧器3台分の容量と等しくなる。 115 V Iv Iuv Ev (単相変圧器 の相電圧) Eu Iwu Ivw U 3 (単相変圧器の線電流) (線電流)= × Evw Iw Euv(線間電圧=単相変圧器の相電圧) W Ew Ewu Iu 第 1−6 図 三角形結線 (2)三相変圧器の結線 三相変圧器の結線は,一般的に三角形結線(Δ)と星形結線(Y)で高圧側と低圧側を組合せ で構成され,第 1−6 表のような構成となる。 第 1−6 表 三相変圧器の結線 高圧側 低圧側 主要な用途 Δ Δ 低圧側の中性点を必要とせず,低圧/低圧用または特別高圧用で大容量のもの Δ Y 2次400V級などの低圧側の中性点を必要とするもの Y Y 6.6kV/210V50kVA以下の高圧配電用変圧器 (主に柱上変圧器に使用される) Y Δ 75kVA以上で中性点を必要としないもの (高圧配電用または特別高圧用) 三相変圧器結線の表示方法としては,次のような項目が決められている。 ①端子記号 二巻線変圧器の線路端子記号は,高圧巻線をU,V,W,低圧巻線をu,v,wとする。中性点端 子記号はそれぞれO,oとする。 ②位相と端子記号の順序 線路端子記号は,時間的な位相の順序に応じて,U→V→W,u→v→wの順序につける。 ③結線の表示 三角結線,星形結線および千鳥結線はそれぞれ高圧巻線をD,Y,Zとし,低圧巻線をd,y,z の記号で表す。また星形結線,千鳥結線において,中性点が外部に引き出される場合は,YN, ZN,yn,znと表す。 ④位相変位の表示 位相変位の表示方法は,電圧の高い方の巻線の電圧ベクトルを時計の分針とみなし,電圧の低 い方の巻線の電圧ベクトルを時計の時針とみなして,分針が12時の位置にあるときの時針の示す 時数で表す。 このように表した数値を位相変位時数という。ただし,時間的な位相の順序を表す誘導電圧ベ 116 第2編 受変電機器選定上の技術計算 クトルの回転方向は,反時計方向とする。高圧が星形結線,低圧が三角結線の場合を第 1−7 図に, 高圧が三角結線,低圧が星形結線の場合を第 1−8 図に示す。 また,第 1−7 表に三相結線の角変位と結線表示記号を示す。 第 1−7 図 Y−Δ結線の位相変位表示(Yd1) 第 1−8 図 Δ−Y結線の位相変位表示(Dy11) 117
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