三田 - 電気通信大学

The 6th China-Japan-Korea Joint Seminar on Atomic and Molecular
Processes in Plasma (AMPP2016) 参加報告
2016 年 7 月 26 日~28 日
電気通信大学 レーザー新世代研究センター
中村信行研究室 三田百恵
私は 2016 年 7 月 26 日から 28 日までの 3 日間、中国・成都の西南物理研究院にて開催さ
れた AMPP に参加した。これはプラズマ中の原子分子過程の研究を扱う日中韓合同セミナ
ーであり、私は“Observation of visible and EUV emission of Tungsten ions”と題する口頭発表を
行った。
口頭発表
今回は現在開発中である国際熱核融合実験炉(ITER)のエッジ付近のプラズマ診断に有
用であるとされる、小型電子ビームイオントラップ(CoBIT)によって得られた 5 価から 13
価のタングステン多価イオンの可視・EUV 領域の発光線を報告した。さらに、この発光線
のうちのいくつかは精密な原子時計の光源に有用であると予測されており、理論計算と他
の研究グループの過去の実験結果と比較した結果その発光線の観測に成功したこと、また
価数の同定に矛盾がないことを主張した。
発表についての質問は 3 つ頂いた。1 つ目は、スライド中に表記した言葉が何であるかと
いうことであった。これは私が間違った単語を書いてしまったために頂いた質問であり、中
村さんがそれに気づいてすぐに間違いだと答えて下さった。発表までにスライドを何度も
見直していたが、簡単なミスに気づけなかったことに深く反省した。2 つ目は、観測した発
光線の中に不純物のラインは含まれているかどうかという質問であった。それに対して、今
回発表した実験結果において不純物ラインの同定を行っていなかったために分からないが、
過去の実験で酸素の発光線を観測しているためそれが入っていることはあり得るだろうと
答えた。あいまいな答えでなくはっきりとした回答ができるように準備をしておくべきだ
ったと反省している。3 つ目に頂いた質問は、スペクトルが真っすぐでないがこれは何が原
因であるかと聞かれた。この質問にはイオンからの発光が弱いため拡大して表示しており、
そのためにバックグラウンドが目立ってしまっていると答えた。しかし言葉の選び方を間
違えており質問者の誤解を招いてしまい、本来の意味で用いるバックグラウンド(フィラメ
ントのみのデータ)を取得して測定データから引いていないように受け取られてしまった
ようだ。そのあと続けてバックグラウンドを撮影していないのかと質問を受け、それは取得
しており反映したデータであると答えた。質疑応答を通して、もちろん緊張してはいたが英
語力のなさを改めて痛感した。せっかく研究報告はできても聞き手を納得させなければ発
表の意義が半減してしまうと思うため、英語力を鍛えることが今後の大きな課題である。
会議に参加して
3 日間を通して講演を聞いて、私を含めてタングステンを扱った報告が非常に多かったと
感じた。それだけプラズマ中の原子分子過程においてタングステン多価イオンが重要であ
って注目されているのだと実感した。しかし私が報告したような比較的低い価数のタング
ステンを扱っていた発表はほとんど見られなかった。さらに可視領域の発光線の観測や、そ
れに加えて EUV 領域を同時に測定している場合も少なかったため、今後の実験へのさらな
る意欲に繋がった。また、今回の会議では理論の研究をしている方が非常に多く、実験と理
論とで協力して様々なことが明かされていくのだと思うとこれからへの期待が膨らんだ。
初めての発表の場が英語での口頭発表であり、ただ原稿を読むだけで精いっぱいであっ
た。しかしより良い発表態度で臨むためには非常に多くの練習が必要であり、今回“非常に”
多くの練習をこなせたかと考えると読むだけになってしまうという結果は当たり前であろ
うと考えられる。ただ、堂々としていたというお褒めの言葉を頂けたため、これを私の強み
として維持していきたい。そして今後の成長にこれらの反省を生かし、発表はもちろん、実
験でもより良い結果が残せるように努力したい。
最後に…成都での生活
交通事情
車のクラクションが常に鳴っている。例えば車線変更といったような軽い合図の際に
使うようで、そのため交通量が多い時間帯ではホテルの部屋からも常に聞こえていた。ま
た、電気バイクの利用者が多かったり横断歩道のない場所を横切る歩行者が散見された
りと、よく事故が起こらないなと阿吽の呼吸ぶりに感心してしまった。
食事
四川省とだけあり、辛いものが非常に多かった。まるで普通の野菜であるというような
表情で赤や緑の大量の唐辛子が皿の上に鎮座しているのである。皿の上は山火事。口の中
も大火事。しかし、中には辛くないものもあったため無事におなかを満たすことができた。
お米があったこともありがたかった。また、冷えた飲み物が基本的になく、常温か熱いか
のどちらかであった。常温のビールには驚いた。そして度数が低かった。しかし白酒とい
う聞くだけで眩暈がするほど高い度数のお酒を中国人はぐいぐい飲んでいらっしゃった。
滞在 3 日目の夜、発表をした日に麻婆豆腐の元祖である陳麻婆豆腐に行き、本格的な現
地の味を堪能した。もちろん辛かったがその中にうまみが含まれており、おいしいおいし
いと何度も口に出してしまうほどであった。
図 1. 三国志ゆかりの地「成都武侯祠」で
の一枚
会議最終日である滞在 4 日目の午後に会
議の excursion で訪れた場所。三国志に
まつわる様々な武将の像や劉備の墓が
あった。また、日本人が多く訪れるため
か日本語の説明が載っている場所が多
くあった。この写真は赤い壁に緑の竹が
よく映えていて綺麗だった場所より。蝉
がよく鳴いていた。
武将の像は暗い屋内にありうまく撮影
できなかった。
図 2. 陳麻婆豆腐での一枚
あつあつの鍋にぐつぐつとした麻婆豆腐。スパイスが効いており食欲をそそられた。初
めは激辛であることを警戒して 8 名で 2 皿を注文。しかしあまりにもおいしくあっとい
う間に平らげてしまったため全員一致の希望で追加した。成都で食べた一番のお気に入
りになった。他の品もとても美味しく、発表が終わった日の最高のご褒美となった。
図 3, 4. 会場(左)と質疑応答を受ける私(右)
西南物理研究院にあった一室で、思っていたよりも随分広くスクリーンが 2 つもある会
場でさらなる緊張と焦りに襲われた。改めて、初めての発表の場としてはあまりにも大
きすぎたと感じている。会議名の垂れ幕は毎回作られているとのこと。
発表の様子の写真は西北師範大学の院生である唐さんに撮っていただき、会議後に送っ
て下さったもの。兎に角発表が無事に終わってよかった。