平成 28年3月 16日 鴨川市長 長 谷 川 孝 夫 様 鴨川市立国保病院

(案 )
平 成 28年 3 月 16日
鴨川市長
長 谷 川 孝 夫
様
鴨川市立国保病院あり方検討委員会
委員長
川 名
康
介
鴨川市立国保病院の今後のあり方について(答申)
鴨 川 市 立 国 保 病 院 あ り 方 検 討 委 員 会 設 置 要 綱 第 2 条 の 規 定 に 基 づ き 、検
討を行なった結果を別紙のとおり答申します。
1 はじめに
国 は 、団 塊 の 世 代 が 後 期 高 齢 者 と な る 平 成 37年 を 見 据 え 、医 療 制 度 改 革
を 進 め て い る 。平 成 26年 6 月 25日 に は 、都 道 府 県 に よ る 地 域 医 療 構 想 の 策
定 等 を 内 容 と す る「 地 域 に お け る 医 療 及 び 介 護 の 総 合 的 な 確 保 を 推 進 す る
た め の 関 係 法 律 の 整 備 等 に 関 す る 法 律 」が 公 布 さ れ 、千 葉 県 で も 地 域 医 療
構想の策定に向けた作業が進められている。
一 連 の 医 療 制 度 改 革 の 背 景 に は 、医 療 保 険 等 の 社 会 保 障 費 の 膨 張 に よ る
公 費 の 増 大 が あ り 、平 成 28年 度 診 療 報 酬 改 定 で も 診 療 報 酬 の 引 き 下 げ が 決
ま る 等 、医 療 機 関 経 営 は 今 後 さ ら に 厳 し い 状 況 と な る こ と が 見 込 ま れ て い
る。
公 立 病 院 に 対 し て は 、平 成 19年 度 に 総 務 省 か ら「 公 立 病 院 改 革 ガ イ ド ラ
イ ン 」が 示 さ れ 、病 院 事 業 を 設 置 す る 地 方 公 共 団 体 は 公 立 病 院 改 革 プ ラ ン
を 策 定 し て 病 院 事 業 の 経 営 改 革 に 取 り 組 む こ と が 求 め ら れ て き た 。平 成 27
年 3 月 31日 に は 、公 立 病 院 改 革 プ ラ ン に 基 づ く 各 地 方 公 共 団 体 の こ れ ま で
の 取 組 結 果 を 踏 ま え た「 新 公 立 病 院 改 革 ガ イ ド ラ イ ン 」が 示 さ れ 、前 述 の
医 療 制 度 改 革 と 連 携 を と り な が ら 、引 き 続 き 、経 営 効 率 化 、再 編 ・ ネ ッ ト
ワ ー ク 化 、経 営 形 態 の 見 直 し 等 の 視 点 に 立 っ た 改 革 を 継 続 す る こ と が 求 め
られている。
そ の よ う な 国 あ る い は 県 の 動 向 の 中 で 、鴨 川 市 立 国 保 病 院( 以 下「 本 院 」
と い う 。)は 、地 域 に 根 差 し た 公 立 病 院 と し て 、急 性 期 の 医 療 を 提 供 す る
な ど 、安 房 保 健 医 療 圏 に お け る 循 環 型 地 域 医 療 連 携 シ ス テ ム の 一 端 を 担 う
と と も に 、地 域 に 密 着 し た 医 療 機 関 と し て 、在 宅 医 療 ・ 介 護 等 を 支 援 す る
体 制 を 維 持 し て き た 。一 方 で 、病 院 施 設 は 現 在 地 へ 移 転 し て か ら 40年 が 経
過しており、老朽化が進んでいる。
そ こ で 、本 委 員 会 は 、市 長 の 諮 問 を 受 け 、本 院 の 現 状 及 び 本 院 を 取 り 巻
く環境を踏まえ、今後の本院のあり方を検討した。
2
会議の状況
(1) 諮問事項
本 委 員 会 は 平 成 27年 9 月 29日 、市 長 か ら 次 の 事 項 に つ い て 諮 問 を 受 け
た。
① 国保病院の役割に関すること。
② 経営上の課題とその対策に関すること。
③ 経営の形態に関すること。
④ その他市長が必要と認める事項
-1-
(2)会議開催の状況
市長の諮問を受け、下記のとおり委員会を開催した。
①
第1回あり方検討委員会
平 成 27年 9 月 29日 ( 火 ) 午 後 1 時
30分 ~
3
②
第2回あり方検討委員会
平 成 27年 11月 12日 ( 木 ) 午 後 2 時 ~
③
第3回あり方検討委員会
平 成 27年 12月 22日 ( 火 ) 午 後 3 時 ~
④
第4回あり方検討委員会
平 成 28年 3 月 16日 ( 水 ) 午 後 3 時 ~
本院の現状及び本院を取り巻く環境
本 院 は 、地 方 公 営 企 業 法 の 一 部 適 用 に よ る 病 院 事 業 と し て 、常 に 企 業 の
経 済 性 を 発 揮 す る と と も に 、公 共 の 福 祉 を 増 進 す る よ う 運 営 さ れ 、地 域 医
療において基幹的な役割を果たしてきた。
現 在 は 、市 民 の 健 康 保 持 に 必 要 な 医 療 の 提 供 を 基 本 に 、本 市 北 西 部 及 び
隣 接 す る 他 市 を 主 た る 診 療 圏 と し て 、一 般 診 療 の ほ か 、他 の 医 療 機 関 と の
連 携 に よ る 二 次 救 急 医 療 機 関 と し て の 救 急 患 者 の 受 け 入 れ に 加 え 、訪 問 看
護 ス テ ー シ ョ ン 及 び ヘ ル パ ー ス テ ー シ ョ ン を 設 置 し 、訪 問 診 療 、訪 問 看 護
及び訪問介護等の在宅患者に対する医療・介護の提供に取り組んでいる。
[ 本 院 の 概 要 ] ( 平 成 27年 4月 1日 現 在 )
診療科目
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内科、整形外科、小児科、歯科、呼吸器内科、
神経内科、泌尿器科、眼科、耳鼻科、口腔外科、
スポーツ整形外科
病床数
70床
一 般 病 床 52床
療 養 病 床 18床( 医 療 病 床 10床 、介 護 療 養 病 床 8床 )
職員数
93名
正 職 員 45名( 医 師 6名 、看 護 師・准 看 護 師 25名 外 )
非 常 勤 職 員 46名 ( 看 護 師 ・ 准 看 護 師 10名 外 )
鴨 川 市 シ ル バ ー 人 材 セ ン タ ー 派 遣 職 員 2名
し か し 、近 年 、そ の 経 営 実 績 は 非 常 に 厳 し い 状 況 に あ る 。平 成 23年 度 よ
り 医 業 収 益 及 び 経 常 収 益 の 減 少 傾 向 が 続 い て お り 、平 成 25年 度 決 算 か ら は
赤 字 に 転 落 し 、平 成 26年 度 決 算 で は 、医 業 収 益 で 78,097千 円 の 損 失 、経 常
収 益 で 71,992千 円 の 損 失 を 計 上 し て い る 。そ の 原 因 は 、医 業 収 益 の 減 少 で
あ り 、入 院 収 益 、外 来 収 益 、訪 問 看 護 ス テ ー シ ョ ン 収 益 、訪 問 介 護 ス テ ー
シ ョ ン 収 益 の い ず れ も 減 少 傾 向 に あ る 。中 で も 入 院 収 益 の 減 少 額 は 大 き く 、
病院に入院する患者数の減少が収益減少の主な要因となっている。
-2-
[収益の推移]
単位:千円
平成23年度
平成24年度
平成25年度
平成26年度
医業収益
45,723
5,402
-13,567
-78,097
経常収益
43,162
4,309
-16,690
-71,992
60,000
45,723
43,162
40,000
20,000
5,402 4,309
0
-20,000
-13,567 -16,690
-40,000
-60,000
-80,000
-78,097
-100,000
平成23年度
平成24年度
平成25年度
-71,992
平成26年度
(千円)
医業収益
経常収益
※決算書より作成
本 院 の 診 療 実 績 を み る と 、外 来 患 者 数 は 減 少 傾 向 に あ り 、特 に 口 腔 外 科 、
小 児 科 、整 形 外 科 及 び 呼 吸 器 科 に お け る 減 少 割 合 が 大 き く な っ て い る 。入
院 患 者 数 に つ い て は 、特 に 一 般 病 棟 で 減 少 し て お り 、新 規 入 院 患 者 が 減 少
し 、病 床 稼 働 率 が 低 い 状 況 と な っ て い る 一 方 、療 養 病 棟 に お い て は 新 規 患
者 数 が 増 加 傾 向 に あ り 、高 い 稼 働 率 を 維 持 し て い る 。な お 、い ず れ も 近 年
は 自 宅 退 院 割 合 が 低 下 す る な ど 、入 院 患 者 層 が 変 化 し て き て い る 状 況 が う
かがえる。
[診療実績の推移]
・外来患者数
-3-
・入院患者数等
(一般病棟)
(療養病棟)
安 房 保 健 医 療 圏 の 医 療 供 給 体 制 を み る と 、基 準 病 床 数( 一 般 病 床 及 び 療
養 病 床 ) 2,039床 に 対 す る 病 床 数 は 2,073床 、 充 足 率 は 101.7 % と な っ て い
る が 、今 後 の 人 口 減 少 に 伴 い 、病 床 需 要 は 減 少 し て い く と 考 え ら れ る 状 況
にある。
鴨 川 市 の 人 口 は 平 成 27年 4 月 1 日 時 点 で 34,729人 と な っ て お り 、そ の う
ち 高 齢 者 人 口 は 12,233人 で あ る 。ま た 、本 院 の 立 地 す る 長 狭 地 区 の 人 口 は
平 成 25年 4 月 1 日 時 点 で 4,953人 、そ の う ち 高 齢 者 人 口 は 1,935人 と な っ て
お り 、人 口 減 少 、少 子 高 齢 化 及 び 過 疎 化 が 進 行 し て い る 。今 後 は 、市 全 体 、
長 狭 地 区 の い ず れ に お い て も 人 口 減 少 と な る 見 通 し で あ り 、市 全 体 で は 平
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成 22年 か ら 平 成 52年 の 30年 間 で 25.5 % の 減 少 が 見 込 ま れ て い る 。 加 え て 、
高 齢 者 人 口 に つ い て も 、平 成 32年 の 12,485人 を ピ ー ク に 市 全 体 で 減 少 と な
る 見 通 し で あ る 。こ の こ と は 、人 口 減 少 に 伴 い 今 後 さ ら に 病 院 を 受 診 す る
患 者 数 が 減 少 す る 可 能 性 が 高 い こ と を 示 し て お り 、本 院 を 取 り 巻 く 経 営 環
境は厳しさを増していくものと考えられる。
[安房保健医療圏の人口の推移]
[鴨川市の人口の推移]
※国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」より作成
-5-
一方で、本院の主な診療圏である長狭地区のニーズを明確化するため、
本委員会で実施したアンケート調査では、本院が担う診療機能について、
「 急 性 期 治 療 後 の 患 者 を 受 け 入 れ 、回 復 期 の リ ハ ビ リ 等 を 提 供 す る 」機 能
を 今 後 期 待 す る と の 回 答 が 、現 在 担 っ て い る と 認 識 さ れ て い る 回 答 の 2 倍
( 回 答 数 現 在 :6 、 今 後 :12) と な っ た 。 ま た 、 鴨 川 市 内 の 基 幹 病 院 で あ
る 亀 田 総 合 病 院 へ の ヒ ア リ ン グ か ら も 、本 院 に 急 性 期 治 療 後 の 患 者 受 け 入
れを期待する声が聞かれた。
こ れ ら の こ と か ら 、本 院 の 現 在 の 患 者 の 受 け 入 れ 体 制 で は 、急 性 期 治 療
後の患者の受け入れニーズを拾い切れていない可能性が浮き彫りとなっ
ている。
な お 、地 域 の 高 齢 化 が 進 む 中 に あ っ て 訪 問 看 護 ス テ ー シ ョ ン 収 益 、訪 問
介 護 ス テ ー シ ョ ン 収 益 と も に 減 少 し て い る 状 況 に あ る が 、近 隣 に 事 業 所 開
設が相次いでいることも主な要因のひとつと考えられる。
4 諮問事項に対する答申
本委員会では、本院のあり方について様々な視点からの意見が集まり、
多 角 的 な 議 論 と な っ た 。特 に 学 識 経 験 者 の 方 々 か ら は 第 3 回 あ り 方 検 討 委
員会において提言書をいただいた。
こ の 答 申 の 内 容 に つ い て は 、こ れ ら の 意 見 及 び 提 言 を 集 約 し た も の で あ
り、実施可能なものから早急に取り組むことを期待する。
(1 ) 国 保 病 院 の 役 割 に 関 す る こ と
①
地域に対する役割について
本院は、病院が立地する長狭地区の患者に対する医療提供に重点を
置き、受け入れの中心としている。特に外来診療においては、本院の
全 受 診 患 者 に お け る 長 狭 地 区 住 民 の 割 合 は 約 54% を 占 め て お り 、 今 後
人口減少が見込まれる中にあっても、地域に根付いた、かかりつけの
医療機関として、地域住民の外来診療ニーズに応える役割を継続して
担う必要がある。
一方で入院診療においては、本院の全受診患者における長狭地区住
民 の 割 合 は 約 22% で あ り 、 平 成 26年 度 の 全 病 床 稼 働 率 が 約 54% で あ る
ことも踏まえると、現在の近隣住民の入院診療ニーズに応える機能を
堅持しながらも、入院診療機能の一部を転換し、病床の有効活用を図
るべきである。特に近隣の医療機関からは急性期治療後の患者の受け
入れ先としての役割を期待されているため、地域連携などその機能を
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強化することが必要である。
また、鴨川市地域防災計画において、本院は災害時の応急救護活動
における後方医療施設としての役割等を担っており、本院が内陸部に
立地し、君津市など近隣市を含め約8km四方には病院が立地してい
ない状況にあることからも、救急医療を含め、引き続き、災害時医療
における役割を担っていくことが求められる。
②
地域包括ケアにおける役割について
今後ますます医療・介護等の連携が重要となってくることから、本
院は、地域の医療・介護等の連携拠点としての機能拡充に努め、長狭
地区を中心とした地域における地域包括ケアシステムの確立に寄与し、
その中核となる必要がある。
訪問看護及び訪問介護等の取組については、鴨川市の要介護認定者
が年々増加傾向にある中、近隣に同種の事業所が増加しているが、地
域住民から選ばれる事業所となるよう、サービスの質の向上や差別化
に取り組むとともに、地域住民が安心して暮らし続けることができる
よう、全国のモデルともなる取組を展開することを期待したい。
また、在宅医療の要となる訪問診療については、本院の立地条件及
び公立病院の役割として、公共の福祉に資するため、引き続き、これ
を推し進め、他の医療機関が訪問しにくい地域の患者への対応を積極
的に担っていく必要がある。
(2 ) 経 営 上 の 課 題 と そ の 対 策 に 関 す る こ と
①
職員の意識改革の推進
外 来 患 者 の 増 加 及 び 病 床 稼 働 率 の 向 上 を 図 る た め 、患 者 満 足 度 の 向
上 を 目 指 す と と も に 、診 療 報 酬 な ど 収 益 の 確 保 の た め 、次 の 対 策 に 取
り組むことが必要である。
○現在直ちに取り組まなければならないこと
・職員全体が危機意識を共有し、入院患者を積極的に受け入れ、
まずは病床稼働率の上昇を目指す。そのために問題点を洗い出
し て 、職 員 全 体 で そ の 解 決 策 に 取 り 組 み 、入 院 患 者 増 を 目 指 す 。
○現在担っている役割を維持し、その発展を図ること
・収益の改善のためにプロジェクトチームをつくり、診療報酬加
算の取得、経費の節減などについて検討する。
-7-
②
入院診療機能の転換の推進
経営悪化の最大の要因は、入院患者数の減少である。人口減少が見
込まれる中にあっても、広域的な医療機能の分化・連携の動向を踏ま
えながら、地域が求める良質かつ適切な医療を効果的・効率的に提供
するため、主に回復期や慢性期の病床機能への転換を進めることを基
本に、次の対策に取り組むことが必要である。
○現在担っている役割を維持し、その発展を図ること
・急性期治療後の患者に対して適切な治療と在宅復帰支援を行う
ためのメディカルソーシャルワーカーを常勤で雇用し、病院の
地域包括ケア推進体制を充実させる。
・リハビリテーション体制を充実させ、必要に応じて理学療法士
又は作業療法士等の職員を増加させる。
・病院の入院患者受け入れ体制の間口を広げる。特に亀田総合病
院からの入院患者の受け入れを積極的に行う。
・地域包括ケア病床を導入し、患者の積極的な受け入れを行う。
地域包括ケア病床の要件であるデータ提出加算については、で
きるだけ早急に取得する。
・現在の建物でも改修可能なトイレなど、必要なところは改修す
る。
③
医師、看護師等の確保
本市における医療従事者の確保は大きな課題のひとつであり、本院
のみならず、鴨川市としての対応が必要である。
特 に 医 師 の 確 保 に つ い て は 、病 院 の 存 続 に 関 わ る 最 大 の 課 題 と し て 、
次の対策に全力で取り組むことが必要である。
また、看護師等については、多様な働き方の受け入れを強化し、産
休・育児休暇等によって現場を離れた人材や、地域に戻られた方の就
労の場としての受け入れなど、キャリア採用の強化を図ることが必要
である。
なお、本委員会では、病院職員の患者サービスの質の向上について
も委員から言及があった。これについても企業職員として患者満足度
の向上を目指すため、職員研修の充実など積極的に対策に取り組むこ
とを強く期待する。
さらに、病院の医療、介護サービスを支えている専門職の定年退職
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が 集 中 す る 状 況 も 見 込 ま れ る 中 、新 た な 職 員 を 確 保 し て い く た め に は 、
職場環境の改善など魅力のある病院であることが必要である。
○現在担っている役割を維持し、その発展を図ること
・医師招へいは、全国の自治医科大学の卒業生を主なターゲット
として招へいを目指すほか、現在の医療体制を維持するため、
千葉大学を含め、あらゆる病院からの医師派遣を検討し、積極
的に要請すべきである。
(3 ) 経 営 の 形 態 に 関 す る こ と
経 営 の 形 態 に つ い て は 、地 方 公 営 企 業 法 の 全 部 適 用 、地 方 独 立 行 政 法
人 及 び 指 定 管 理 者 な ど 、い く つ か の 経 営 パ タ ー ン に つ い て 比 較 検 討 を 行
っ た 結 果 、経 営 改 善 の 取 組 の 進 捗 を 踏 ま え 、ま ず は 地 方 公 営 企 業 法 全 部
適 用 へ の 転 換 を 図 り 、経 営 の 責 任 と 権 限 を 付 与 さ せ る こ と が 望 ま し い と
の 意 見 が 大 勢 を 占 め た 。こ の 結 果 を 踏 ま え 、引 き 続 き 検 討 す る よ う 期 待
する。
な お 、経 営 改 善 を 進 め る 上 で は 、院 内 の マ ネ ジ メ ン ト 体 制 を 強 化 す る
と と も に 、他 の 医 療 機 関 と の 連 携 を 促 進 さ せ る こ と の で き る 人 材 を 確 保
するため、次の取組を進めることが必要である。
○現在担っている役割を維持し、その発展を図ること
・医師招へいや研修体制、地域連携など病院のマネジメントを充
実させるため、院内から管理者等を選任し、積極的に病院の課
題に取り組んでいただくべきである。
・ 看 護 師 の マ ネ ジ メ ン ト 体 制 を 充 実 さ せ る た め 、現 在 の 看 護 師 長 1
名の体制から、副院長兼看護部長、看護師長の複数体制に変更
すべきである。
・副院長兼看護部長は、外部からの招へいを検討すべきである。
なお、外部医療機関等からの職員の招へいについては、早期に
実現できるよう調整を進めるべきである。
(4 ) 施 設 の 更 新 等
本 院 の 施 設 は 現 在 地 へ 移 転 し て か ら 40年 が 経 過 し 、施 設 全 体 の 老 朽 化
が 著 し く 、ま た 、一 般 病 棟 に お い て 耐 震 基 準 が 確 保 さ れ て い な い 状 況 に
ある。
これまでに述べてきたとおり、本院は、地域において必要かつ重要な
-9-
医療機関であり、早急に病院施設を更新することが必要である。
た だ し 、施 設 整 備 に は 巨 額 の 費 用 を 要 す る こ と か ら 、そ の 前 提 と し て 、
経 営 改 善 に よ り 収 支 の 均 衡 を 図 る こ と が 必 要 で あ り 、病 床 の 稼 働 率 向 上
な ど 経 営 改 善 の 取 組 の 結 果 を 踏 ま え て 、必 要 病 床 数 等 の 施 設 規 模 を 判 断
す べ き で あ る 。こ の 施 設 規 模 に つ い て は 、本 委 員 会 に お い て 複 数 の 病 床
再編パターンを作成して検討したが、経営改善の取組を実施した上で、
今 後 数 年 間( 概 ね 3 年 程 度 )の 収 支 均 衡 が 見 込 め た 経 営 実 績 を も っ て 改
めて検討し、決定することが望まれる。
併 せ て 、地 域 の 人 口 及 び 人 口 構 成 の 変 化 を 見 通 し 、 病 院 と 一 体 的 に 地
域 包 括 ケ ア セ ン タ ー の 整 備 を 図 る な ど 、次 の 事 項 に 取 り 組 む こ と が 望 ま
れる。
○将来的な課題として、建物の更新と地域包括ケアセンターの併設
・現在の病院建物は老朽化し、病棟も3つに分かれており非効率で
あり、療養病床に医療用酸素などの配管がないなど医療安全上も
問題が多い。トイレなども不衛生であり、医療機関としての機能
を満たしていない。集客の面でも、古い建物では患者も集まらな
い。徹底したローコストでコンパクトな病院建物を新築すること
を検討すべきである。
・病 床 数 は 看 護 師 の 効 率 的 な 勤 務 を 考 え 、1病 棟 50床 程 度 と す べ き で
ある。
・病床は、一般病床・地域包括ケア病床・回復期リハビリテーショ
ン病床・療養病床の適切な組み合わせを考えるべきである。
・急性期病院としての性格を保つため、救急受け入れのスペースと
最低限の手術室(手術をしなくなった場合の多目的への転用の可
能性を考慮する)を整備すべきである。
・地域包括ケアのモデルを目指し、病院と一体的に地域包括ケアセ
ンターを整備すべきである。
・地域包括ケアセンターには、地域包括支援センターに加えて訪問
看護、訪問介護、訪問リハビリ、訪問服薬管理、訪問歯科診療、
デ イ サ ー ビ ス を 併 設 し て 、こ れ ま で よ り 充 実 強 化 を す べ き で あ る 。
・地域包括ケアセンターでは、子ども、障害、高齢等の全世代対応
型のワンストップサービスを行うことと、インフォーマルケアと
の有機化を図るために、コミュニティソーシャルワークを担当す
る職員を配置すること。できれば社会福祉協議会の身分で業務を
行わせるべきである。
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・地域包括ケアセンターの機能で可能なものは、建物改築の前に機
能充実を図るべきである。
5
おわりに
医 療 機 関 経 営 を 取 り 巻 く 環 境 が 厳 し さ を 増 し て い る 中 、地 域 医 療 を 着 実
に 推 進 す る た め に は 、収 支 の 均 衡 を 図 り 、安 定 し た 経 営 基 盤 を 確 立 し な け
ればならない。
今 後 、新 公 立 病 院 改 革 ガ イ ド ラ イ ン に 基 づ い て 策 定 す る 新 た な 公 立 病 院
改 革 プ ラ ン に お い て は 、公 立 病 院 と し て の 立 場 に 安 住 す る こ と な く 、更 な
る 病 院 の 経 営 効 率 化 を 推 し 進 め 、地 域 の ニ ー ズ を 十 分 に 見 極 め た 上 で 、経
営 形 態 の 見 直 し や 、施 設 の 更 新 を 目 指 し 、一 層 の 病 院 改 革 を 図 っ て い た だ
きたい。
本 答 申 が 地 域 医 療 の 拡 充 と 病 院 経 営 改 革 の 一 助 と な り 、本 院 が「 市 民 に
信 頼 さ れ 、真 に 必 要 と さ れ る 医 療 機 関 」と な る こ と を 委 員 一 同 切 に 願 う も
のである。
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