化学療法の美容上の副作用に対する美容ケアによる

日本香粧品学会誌 Vol. 37,
化学療法の美容上の副作用に対する美容ケアによる
No. 3, pp. 171–176（2013）
乳がん患者の QOL 改善効果
171
〈一般論文〉
化学療法の美容上の副作用に対する美容ケアによる
乳がん患者の QOL 改善効果
土方僚子 1，鈴木裕美子 *, 1，竹内裕美 1，松本梓 1，
田崎美弥子 2，大沢かおり 3，岡田直美 4
Usefulness of Cosmetics in the Medical Field:
Beauty Care Improves QOL of Breast Cancer Patients
Tomoko HIJIKATA1, Yumiko SUZUKI *, 1, Hiromi TAKEUCHI 1, Azusa MATSUMOTO 1,
Miyako TAZAKI 2, Kaori OHSAWA 3, Naomi OKADA 4
（Accepted: May 30, 2013）
Abstract
Chemotherapy is needed to treat breast cancer, but often causes adverse drug reactions involving the skin, hair and nails.
We investigated the effect of beauty care consultation by Shiseido makeup technicians and its continuation by patients on the
quality of life（QOL）of women breast cancer outpatients. Statistically signiﬁcant improvements were observed in the depression score in the Hospital Anxiety and Depression Scale（HADS）. We also observed a signiﬁcant correlation between
improving makeup satisfaction score in the Visual Analogue Scale（VAS）and decreasing HADS depression score. It was
concluded that beauty care consultation by technicians and its continuation by patients are useful to improve the QOL of
women breast cancer outpatients.
Key words:
1.
breast cancer, chemotherapy, adverse drug reactions, beauty care, quality of life（QOL）.
方など，一般の化粧品情報ではカバーできない点も多
緒言
く，美容専門家ががん患者に美容ケアアドバイスを実施
女性のがんは近年乳がんが著しく増加し，1990 年代
することは，このような患者の悩みの解決に有意義であ
後半より女性のがん罹患率のトップを占めている。年
ると考え，がん患者に対し，化学療法による美容上の副
齢別に見た女性の乳がんの罹患率は 30 歳代から増加し
作用に対する美容ケアの効果を検討することを試みた。
1）
始め，50 歳前後にピークとなり，その後はしだいに減
研究
2.
少する 2）。このように乳がんは社会活動性の高い年代に
好発し，ほかのがんと比べて罹患後の生存期間が長い。
2–1.
目的
外来での化学療法は多くの患者が経験するが，その副
がん患者に対して美容ケアアドバイスを行い，一定期
作用としてがん治療は全身の脱毛，顔色の変化などさま
間化粧品を継続使用させることで，患者の心理状態など
ざまな外見変化を起こすことがあり，ボディ・イメージ
の変化について QOL 尺度を用いて客観的に評価を行い，
の変容により患者の QOL の低下につながる可能性があ
美容ケア自体の有用性を検討することを目的とした。
る。そのため，女性の乳がん患者には，たとえば子ども
2–2. 方法
2–2–1. 被験者
の学校行事や友人との付き合いで外出する際など，社会
生活において化粧を必要とする患者が多いと考えられる。
2 回目以降の化学療法を受ける 20 歳以上の外来治療
副作用による外見変化については，脱毛時の眉の描き
1,
2
3
4
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連絡先 E-mail: [email protected]
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東京共済病院腫瘍内科
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* Shiseido Research Center（2–2–1 Hayabuchi, Tsuzuki-ku, Yokohamashi, Kanagawa 224–8558, Japan）
Faculty of Medicine, Toho University（5–21–16 Omori-nishi, Ota-ku,
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Cancer Patient Support Center, Tokyo Kyosai Hospital（2–3–8
Nakameguro, Meguro-ku, Tokyo 153–8934, Japan）
Medical Oncology, Tokyo Kyosai Hospital（2–3–8 Nakameguro,
Meguro-ku, Tokyo 153–8934, Japan）

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