2013.10.09 57回宇宙科学技術連合講演会,米子 1E14 次世代熱制御システムの標準化検討 三菱電機株式会社 :舟生 豊朗、高橋 市郎、小田木 功 一般財団法人 般財団法人 宇宙システム開発利用推進機構 (J-spacesystems) (J spacesystems) :三原 荘一郎、唐原 荘 郎 唐原 健 1 目次 1. はじめに 2. 熱制御系の構成と課題 ○ 構成 ○ 課題 3 将来の熱制御系 3. ○ 概要 ○ 機器構成、機能 ○ ネットワーク化 ○ ネットワーク化のメリット 4 まとめ 4. 2 はじめに 3 はじめに 熱制御系は衛星内を網羅するように温度センサ、ヒータが配置され、リ モートインタフェース・ターミナル(RIM)、ヒータ制御装置(HCE)等と個々 に直接インタフェースし、また制御のための処理を衛星制御装置(SC)等の ソフトウェアが行っている。 衛星の熱設計は、個々のサブシステム/機器の設計結果を反映するため、温 衛星 熱設計は 個々 サブシ テム 機器 設計結果を反映するため 温 度センサやヒータの設置箇所、あるいはRIMやHCEへの影響、地上系との調 整など全体のスケジュールに影響を及ぼしている。 また、現状の温度計測は、温度センサの特性に依存しており、全測定範囲 での測定精度が一定ではない。衛星運用モードを効率化し、電力の最適化、 次世代で 放熱面やパドル 最適化等 次世代での放熱面やパドルの最適化等への発展的な効率向上につなげるた 発展的な効率向上に なげるた め、温度計測を高精度化する。 本報告では、従来の熱制御系の構成、課題を整理し、課題解決にインテリ 本報告では 従来の熱制御系の構成 課題を整理し 課題解決にインテリ ジェント熱制御用リモートターミナルとSpaceWireを用いたネットワーク化 について検討を行った。 本報告は、次世代宇宙システムにおいて衛星がコンステレーションを構成 することを想定し、少しずつ搭載部品が異なる衛星や、異なるミッション 機器を搭載する衛星を最適な設計解とするために対応できる標準的な設計 可能な検討を行ったものである。 4 ネットワーク化構想 アビオニクス・アーキテクチャ ロードマップ 物理I/Fの統一とネットワーク化 (1) 現状 衛星内のSpW化 T Tx MDP Mil-Std1553B AOCE (3) 将来 MDP Tx Rx/ Tx DHU RT 観測 センサ AOCE バス接続 SpW/ S W/ SpFi DHU Rx/ Tx PtoP接続 (2) 一部の機器で採用 コンポーネント内 のSpW化 I/F board1-A CPU -A A CPU -B 機能モジュール 間インタフェース の統一 標準化設計、 標準化設計 高速データの取扱い 機器の小型化により 任意の場所に設置。 Plug & Play I/F board1-B SpW I/F board3-A I/F board3-B RT I/F board2-B I/F board2-A AOCE DHU MDP RT Rx Tx 共通プラットフォーム SpW/SpFi I/F 共通プラット フォーム、ネット ワーク化 : Attitude & Orbit Control Electronics : Data Handling Unit : Mission Data Processor : Remote Terminal : Receiver : Transmitter 5 熱制御系の構成と課題 6 熱制御系の構成 熱制御 系の構成 熱制御系は、衛星内を網羅するように温度センサ、ヒータが配置されてい る。 搭載機器の設計が進んだ時点で、熱制御系へ反映されるためセンサ、ヒー タの実装箇所、チャネル数、スレッショルドの設定等の確定が開発の後半 となる。 分散化/インテリジェント化により、他の機器の設計結果を柔軟に受け入れ る。また、温度測定精度を向上させ、リソース軽減に貢献する。 ■RIMが収集するHKテレメトリ用の温度セ ンサ情報を共用 ■SCの搭載ソフトウェアにて処理 ■HCEに対してヒータON/OFFを指令 ■ソフトウェア化による設計の自由度増し、 ■専用の温度センサ ハードウェアの簡略化 ■ハードウェア回路にて判定 ド 路 定 ハードウェアの ■ヒータのON/OFFを実行。 ソフトウェア制御 第二世代 第一世代 第三世代 分散/ 分散/ インテリジェント化 フル・ハードウェア構成 1990 1995 2000 2005 2010 2015 7 現状構成と課題 第一世代 マージンを持った設計が必要。 ハードウェアによ る回路構成のた め、変更のリスク SC系 HKテレメトリ用温度センサ ヒータスイッチ回路 路 RIMなど 抵抗値モニタ ON/OFF 閾値 コンパレータ サーミスタ ENA/DIS指令 ON/OFF指示 ヒータ電源 ヒータ電力 ENA/DISモニタ / タ ヒータ ON/OFF回路 ON/OFFモニタ 第二世代 ソフトウェア化、 ソフトウェア化 集中管理 W/H、TLM、S/W、地上系 との調整など設計変更に よる複数機器への影響 ソフトウェア化により設計の 自由度が増し、ハードウェ アが簡略化。 SC ヒータ制御S/W (閾値パラメータ) (閾値パラメ タ) HKテレメトリ RIM ((データバス)) ハーネス接続は、 ネス接続は TB:ターミナル・ブロック HCE ON/OFF指令 (データバス) 温度モニタ ON/OFF回路 ヒータ電力 HKテレメトリ用温度センサ HKテレメトリ用温度センサ HKテレメトリ用温度センサ ヒータで加熱 ヒータ ヒータ タ ヒータ 8 課題の整理 設計遅れ が全体に 影響 高精度な温度計測 発熱量の明確化 システム設計、 機器レイアウトへ反映 サブシステム設計 /コンポ設計 衛星運用 モードの 効率化 熱設計へ反映 複雑化 地上系 RIM、HCE RIM HCE へ反映 ワイヤーハーネス設計、 ピンアサイン、ケーブル分 岐、ハーネス・ルーティング 地上系との整合 熱制御系は、衛星内を網羅するように配置されており、複雑なワイヤーハーネス となっている。 各サブシステム/機器設計の結果を熱設計へ反映するため、ワイヤーハーネスの変 更とRIMやHCE等の機器へのインパクトが大きい。 地上系と追加したセンサ等の位置とピンアサインについて、TLMの整合をとる作 業を軽減。 温度測定精度を向上することで衛星運用モードの効率化、リソース軽減に貢献可 9 将来の熱制御系 10 将来の熱制御系 分散処理とネットワーク – 分散化によって、他の機器/サブシステムの設計結果(チャネル数の増減、 制御パラメ タ 閾値など)の影響範囲を限定的にする 制御パラメータ、閾値など)の影響範囲を限定的にする。 – ソフトウェアでのパラメータ設定による個別対応(設計/温度制御の柔軟 性を確保)を行い、ハ ドウェアを共通化する。 性を確保)を行い、ハードウェアを共通化する。 – ネットワークの導入により、衛星システム側のワイヤハーネス設計の単 一化、ルーティング設計の負荷を軽減する。 – それぞれの温度計測箇所、ヒータ設置個所は、アドレス等で管理を行い、 それぞれ 温度計測箇所 ヒ タ設置個所は アドレス等で管理を行い 地上系との整合をとる。 高精度化 – ADCの高分解能化、サーミスタのリニアライズ、等を行い、衛星システ ム運用モードに反映させる。 リニアライザ 12bit ↓ 8bit 変換 サーミスタ 特性の リニアライズ イズ 計算ロジック (S/W可) デジタル処理 定電流(0.1mA) A/D変換 (12bit ) サーミスタ パラメータとしてCHによって使用する変換 カーブをメモリに登録し、当該CHで呼び出す。 将来温度モニタ・ブロック 11 将来の熱制御系 ヒータ制御装置(HCE)と高機能ターミナルブロック(HTB)から構成。 HCEは、ヒータ用電源および各HTBの監視を行う。 HCEは ヒ タ用電源および各HTBの監視を行う HTBは、温度モニタ、ヒータ制御を行う。 HCE主要機能 HCE 主要機能 機能名称 ヒータ用電 ヒ タ用電 源の監視 各HTBから の温度テレ メトリ収集 内容 HTBに出力するヒータ電源用バス HTBに出力するヒ タ電源用バス の電流を監視し、必要があれば OFFする。(半導体スイッチ) ヒータ用データバスに繋がる全 てのHTBから温度テレメトリを集 約する。 また、ヒータON/OFF温度変更 が指示された場合、各HTBに対し て所望の基準値を出力する て所望の基準値を出力する。 衛星データ バスとのイ ンタフェー ス ヒータ、温度制御系として、ヒー タ制御基準値、温度テレメトリ等 のデータ授受。 回路電源 衛星バス電源から、HCE内の回路 に必要な2次電圧を生成して、各 回路に供給する。 HTB主要機能 HTB 主要機能 機能名称 ヒータ ヒ タ ON/OFF用 スイッチ 内容 ヒータに対してヒータ用電源を入り ヒ タに対してヒ タ用電源を入り 切りするためのスイッチ(半導体ス イッチ) サーミスタの温度を電圧に変化し、 サーミスタ抵 更にデジタル値とする(検出回路 抗値の検出 +A/D変換) 温度のデジタル値を所定の基準値と 比較してヒータON/OFFの指示を ヒータ ON/OFF 出力する。また、温度のデジタル値 判定 を温度テレメとして出力、データバ スからの所定の基準値を保持する。 HCEとの間で温度テレメ(TLM)、 データインタ 基準値及びENA/DIS(CMD)の送 フェ ス フェース 受を行う。 ヒータ用電源から、HTB内の回路 回路電源 に必要な2次電圧を生成して、各回 路に供給する。 12 将来の熱制御系 HCE:ヒータ制御器 HCE :ヒータ制御器 From EPS ON/OFF CMD 衛星バス電源 回路電源 ON/OFFスイ チ ON/OFFスイッチ 電流の監視 温度テレメ収集 ON/OFF指示 モニタ・テレメ 温度テレメ集の出力 各回路へ 各ステータスの出力 各ステ タスの出力 ・ CMD ヒータ用 CMD ON/OFF基準値出力 データバス データバス TLM インタフェース インタフェース ( MPU ) TLM F From DH ヒータ用電源バス ヒ タ用電源バス 1 ヒータ用電源バス N ヒータ用データバス 1 ヒータ用データバス N 衛星データバス HTB:高機能ターミナルブロック HTB:高機能ターミナルブロック ヒータ用電源 ON/OFFスイッチ ON/OFFスイッチ 回路電源 O /O 判定 ON/OFF判定 各回路へ デ タバ データバス インタフェース ヒータ CMD TLM ・ 基準温度値(メモリ) ・ 温度テレメ出力 デジタル値 ADC ( MPU ) HTB 他のHTBへ ON/OFFスイッチ ON/OFF 指示 電圧値 ( MUX ) 検出 路 検出回路 サーミスタ 13 ヒータネットワーク 電源、データバスのトポロジ ■ ヒータ電源の電流監視 ■ 衛星システム、HTBか らのデータのルーティング A部ヒータ サーミスタ 1~10 HTB-1 ■ ディジーチェーンによるヒー タ タ電源、データバスの接続 デ タバ 接続 C部ヒータ サーミスタ 1~10 HTB-3 D部ヒータ サーミスタ 1~10 HTB-4 EPS 電源バス HCE HTB-7 ヒータ用電源バス&ヒータ用データバス HTB-8 DH G部ヒータ サーミスタ 1~10 HTB-10 HTB-12 衛星データバス J部ヒータ サーミスタ 1~10 HTB-9 K部ヒータ サーミスタ 1~10 H部ヒータ タ サーミスタ 1~10 I部ヒータ サーミスタ 1~10 HCE-HTBとの接続をブロック単位でHCEを頂点とする分散、Line topology。 HCEによる熱制御システム全体の管理。 ➜ コマンド配信、HKテレメトリ収集 ➜ 各サブネットワークでの電力(ヒータ 各サブネットワ クでの電力(ヒ タ ON/OFF)管理 HTBは、独立した熱制御を実行。 14 ヒータネットワーク 各パネルにリングトポロジーによる経路の冗長化。 HTBを必要数搭載 HTBを必要数搭載。 HCEから各パネルのHTB(1台)と接続。 HCE HTB S b nett Sub Sub net Sub net Sub net Sub net 15 ネットワーク化のメリット メリット 1) HCEと各ヒータを接続する個別のヒータ電源ラインをバス化。 ➜ 大幅なハーネス質量の削減 2) RIMと各サーミスタを接続する個別の信号ラインをバス化。 ➜ 大幅なハーネス質量の削減 大幅なハ ネス質量の削減 3) ヒータとサーミスタの接続は各HTBとの接続に限定。 ➜ システムハーネスとは切り離してヒータ、サーミスタを設置可能。 システムハ ネスとは切り離してヒ タ、サ ミスタを設置可能。 ○システムインテグレーション作業が容易になる。また、後になってのヒータ 追加等も容易になる。 4) ヒータの増減に対して柔軟な対応が可能である。 ヒ タの増減に対して柔軟な対応が可能である ➜ HTBの配置を大まかに決めておけばヒータ数の詳細決定が後でも良い ○従来 HCEの仕様(チャンネル数)は全体の熱設計が終わらないと決定で ○従来、HCEの仕様(チャンネル数)は全体の熱設計が終わらないと決定で きなかった。(HCEのスケジュールに影響) 5) ヒータ、サーミスタ及びHCE/HTBとして熱制御系がクローズする。 ➜ システムと熱で分担を明確に分離。 ○従来、サーミスタの接続がDH系、ヒータはPDU(電源または計装系)と接 続され 全体まとめを熱とシステムで分担し複雑化していた 続され、全体まとめを熱とシステムで分担し複雑化していた。 16 ネットワーク化のメリット メリット(続き) 6) ヒータ電源バスの増強も容易に可能。 ➜ ヒータ、サーミスタの故障に対して冗長の組み込みが容易となる。 7) 高精度の温度管理が可能。 ➜ DHからサーミスタのテレメトリを切り離したことでHTB、HCEとして既 DHからサ ミスタのテレメトリを切り離したことでHTB HCEとして既 存の制約から解放される。 ○ DH系(RIM)のA/D変換が8ビットの制約があるため、高温側の温度モニタが 低分解能であった。 課題 ○これまでの方式と異なるため、HCEおよびHTBの新規開発が必要である。 ○リソ ス(質量、体積、 スト等) の影響を最小限とする。 ○リソース(質量、体積、コスト等)への影響を最小限とする。 ○従来方式と同等の品質、信頼度を維持する。 ○熱系、システム、DH等の分担区分の整理と新しい認識が必要である。 17 まとめ 18 まとめ 熱制御系にインテリジェント・リモートターミナルを採用し、ヒータ制御用 電源のマルチドロップ化、TLM/CMDのネットワ 電源のマルチドロップ化 TLM/CMDのネットワーク化により ク化により、従来衛星 従来衛星 システム開発に比較して効率的な開発が可能となる。 また、温度計測の高精度化は衛星運用の効率化、経年変化に対する対応など により、衛星リソース(質量など)に影響する電源系機器の見直しに反映可能 衛 ど 響 機 直 映 能 となる。 本検討の結果、多様なミッション機器を複数の衛星に分散搭載するコンステ レーション構成を実現する標準バス機器として適用が可能である。 機器の分散化はコストや質量増の要因となるため、小型で低価格な機器開発 機器の分散化はコストや質量増の要因となるため 小型で低価格な機器開発 が必要となる。 将来、機能を見直し、HCEとHTBの一体化、衛星システムのネットワーク 将来、機能 見 、 体化、衛 テ ネ へ直接接続することで、さらに機器の共通化と独立性を高められる。 このほか、同一設計で複数の機器を製造するメリットがあるが、環境試験等 の手法に検討が必要。 の手法に検討が必要 今後、機器の小型化とネットワーク化による信頼性の確認を行う。 今後、機器の小型化とネットワ ク化による信頼性の確認を行う。 19
© Copyright 2024 Paperzz