学校法人 藤学園 藤幼稚園 第 39 号 号 平成 26 年2月 25 日 日 ◇ 子どもは風の子 ◇ 少しずつ春の準備をし始めている木々たち。でも、 まだまだ寒さが厳しい2月です。“子どもは風の子” というように、子ども達は外で遊ぶのが大好きです。 寒くても負けずに元気に走り回って遊んでいます。 学年末を迎え、子ども同士の関わりが増えてきた この時期、より一層、友達同士が深く関われるようにしていきたいと考えてい ます。 教育雑感 シリーズ 38 ~言葉は言霊(ことだま) なり~ 9 5~6年程前のことです。テレビのスイッチを何気なく入れたところ、小柄 3 でふっくらとした老婦人がインタビューを受けている場面が、私の目に映って きました。その瞬間、歌手であり女優でもある宮城まり子さんだと直感しまし た。 私は懐かしさのあまり、宮城さんが、今でも少女のような純粋な気持ちを持 って、女性のインタビュアーに語られているテレビの画面に引き込まれていき ました。 宮城さんの語り口調はとても子どもっぽく、饒舌に語られるわけではありま せん。でも、宮城さんが一つ一つ発する言葉は、とても含蓄のあるものでした。 私は、久しぶりにテレビに釘付けとなりました。その中で特に印象に残った のは、「愛すること。そして、愛されること」と「優しいことは、強いことよ」 という言葉でした。こうした言葉はある意味、月並みな言葉であり、よく聞か れ、書物でも目にします。 私がここで感じ入ったことは、言葉の内容そのものよりその言葉を語る人が、 これまでの生き様やそれに裏付けられた信念を背景にして確信を持って発する 行為に、聞く側がなるほどと納得する点でした。 1 どんな素晴らしい言葉を発しても、それが相手の 心に響かなければ、生きた言葉にはなりません。そ んなことからも、言葉は、まさに言霊だと感じたも のです。 宮城さんは歌手であり女優でもありますが、ねむ の木学園の園長として長い間、障がいのある子ども 達の教育に献身的に取り組んでこられた人です。 幼い頃から、お母さんの愛情を一身に受けて育て られました。おそらく、お母さんの豊かな愛情がねむの木学園設立の原動力に なっていたことは、想像を待つまでもないことでしょう。 宮城さんのお母さんが、今ある宮城さんの姿をイメージして育ててこられた とは思いません。でも、少なくとも母親の愛情をたっぷりと子どもに注ぎ導き 育ててこられた結果として、人間を大切にする今の宮城さんを誕生させたので はないかと思いました。 番組の中で、宮城さんは、ご自身の年齢を 79 歳と 13 か月とおっしゃってい ました。80 歳と1か月と言われないところに妙に親しみを感じました。そして、 こうした言い回しは、少女のような感性をいつまでも待ち続けている宮城さん 流の表現の一つだと思いました。 一方で、女性のインタビュアーの存在も強く印象に残りました。相手の個性 なりを引き出すというテクニックの面では、話の上手な人へのインタビューは 割とやりやすいのではないかと思います。しかし、宮城さんのように一つ一つ の言葉を選びながら語られる人へのインタビューは、むしろ難しいのではない かと思います。 宮城さんの個性を引き出すためには、インタビュアーとして出過ぎるでもな く、そうかといって引き過ぎてしまってもいけないわけであり、そういう面で は見事なインタビューでした。こうしたやり取りを視聴しているだけでも、人 とのコミュニケーションの取り方を学ぶ良い機会となります。 そして、最後にインタビュアーが、番組の視聴者から寄せられた宮城さんへ の励ましの言葉を読み上げている最中に涙ぐんでいた姿が、とても印象的でし た。演技ではない、まさに番組の流れの中から自然に生まれた一粒の涙に私は みえました。 おそらく、インタビュアーは、視聴者を代弁するかのように、宮城さんのほ とばしる言葉の一つ一つに心を動かされ、それが抑えきれずに感極まり涙が流 れたのでしょう。まるで人生の師とその弟子が創り上げていく授業を参観した ような気持ちにさせてくれた、素晴らしい番組でした。 2
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