4. Iterative Model-based Reconstruction(IMR)の 臨床利用とその

第19 回 CTサミット報告
ニューチャレンジセッションⅠ:次世代へつなぐ最新臨床研究
4.Iterative Model-based
Reconstruction(IMR)の
臨床利用とその可能性
能登 義幸 新潟大学医歯学総合病院診療支援部放射線部門
“Iterative Model-based Reconstruc-
IMR では逐次近似演算の前段階で,
Level も 3 段階に調整することができる。
tion”
(以下,IMR:フィリップス社製)は
最終画像に必要な分解能とノイズレベル
図 2 に Body における Image Definition
逐次近似法を用いた画像再構成法である。
を踏まえ画質の最適化が行われるよう
の一例を示す。Soft Tissue は実質臓器
当院では 2013 年 12 月にフィリップス社
cost function として画像のノイズレベル
に,Routine は CT angiography(以下,
製「Ingenuity Elite」への更新に併せて
と分解能レベルの組み合わせを設定する
CTA)に,Sharp Plus は肺野や骨に対
IMR が導入され,現在では基本的に全症
ことができ,空間分解能をロスすること
して最適化される。
例に対して thin slice の IMR Image を再
なく,画像ノイズを大幅に低減し,演算
構成し,診断に応用している。本稿では,
の効率化と画質選択を可能としている。
IMR の基礎評価と当院における臨床利用
これが knowledge-based IR と呼ばれる
の現状について述べる。
理由である。IMR は FBP 法を使用しな
IMR とは
Virtually noise-free
images
いため,鮮鋭度のパラメータは画像再構
I M R はこれまで不 可 能だった l o w
成関数ではなく,ユーザーは cost func-
noise image が可能となった。前述のよ
tion として“Image Definition”と呼ば
うに,IMR は非線形的にノイズ低減を
IMR は,繰り返し演算により求める
れるパラメータを選択して鮮鋭度を,画
行えることが大きな特長であり,画像ノ
解を導く iterative reconstruction(以
像ノイズ量を“Noise Level”と呼ぶパラ
イズはスライス厚や X 線量への依存性が
下,IR)法を用いた画像再構成法であり,
メータを用いてコントロールすることが
ない。一例を図 3 に示す。FBP 法ではス
filtered back projection(以下,FBP)
できる。I ma g e De f init ion は Bra in
ライス厚 5 mm から 1 mm に変更した場
法と比較して raw data 上に存在するノ
(Routine,Sharp,Sharp Plus の 3 種
合,5 m m 厚で S D 6 . 5 だ っ たものが
イズを大幅に低減することが可能である。
類)
,Cardiac(Routine,Sharp の 2 種
1 mm 厚で SD 14 . 2 になり,画像ノイズ
また,演算ハードウエアの革新と計算ア
類)
,Body(Soft Tissue,Routine,
は√5 倍になる。このことからスライス厚
ルゴリズムを最適化することにより,画
Sharp Plus の 3 種類)と,部位ごとに適
と画像ノイズには平方根の関係が成り立
像再構成の速度を大幅に短縮している。
正化されており,さらに目的に合わせて
つことがわかる。しかしながら,IMR に
IMR は最尤推定法(maximum likeli-
鮮鋭度を調整することができ,Noise
おいては 5 mm 厚で SD 2 . 3,1 mm 厚で
hood)をベースにノイズ統計学とシステ
ムモデル,評価関数(cost function)を
Cost Function
Minimize Data mismatch
+ Roughness
加味した逐次近似画像再構成法である。
得られる画像は非線形的にノイズ低減さ
minimize(K-η-Λ)
K=Data mismatch
η=Regularization penalty
Λ=Edge Fidelity
Optimization(Maximum Likelihood)
れ,結果的に画像ノイズはスライス厚や
Task of identifying resulting data
with statistical closest match to acquired data,
while applying noise penalty.
X 線量に依存せず,ほぼ一定のノイズレ
ベルとなる。これにより virtually noisefree images と言われるこれまで不可能
だった low noise の実現が可能となった
System Model
Statistics Model
Detailed description of
the system geometry.
Model that represents the ideal measurement
of an object based on Poisson model
of the x-ray transport.
だけではなく,低コントラスト領域での
検出能の向上も図られている(図 1)。ま
た,頭部や心臓をはじめとする全身への
適応も可能となっており,あらゆる部位
で再構成することが可能となっている。
34 INNERVISION (30・11) 2015
図 1 IMR の概念図
(画像提供:株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン)
〈0913-8919/15/¥300/ 論文 /JCOPY〉