宮崎県保育連盟連合会 保育士部の研修会 H22.12.8 保育所において必要な感染症の知識 九州保健福祉大学 薬学部 生化学第一講座 教授 佐藤 圭創 '医師、医学博士、内科学会認定医、呼吸器学会専門医・指導医、感染制御医( 自己紹介 佐藤 圭創'さとう けいぞう( 昭和37年4月5日生(48歳) 略歴 S37年 宮崎県高千穂町に生まれる S56年 宮崎県立延岡西高等学校卒業 S56年 熊本大学医学部入学 S62年 同卒業し熊本大学第一内科入局 '呼吸器病学・神経内科学( H2年 熊本大学医学部大学院医学研究科入学感染症学の研究を開始'微生物学教室( H7年 同終了'博医取得( H11年 熊本大学第一内科助手 H12年 3年間米国NIH/NIEHS に留学 Ronald Mason教授のもとで感染症における生体防御と フリーラジカルについての研究を行う。 H15年 熊本大学呼吸器内科に復帰 H17年 熊本大学大学院医学薬学研究部薬物治療学准教授 H21年 九州保健福祉大学薬学部感染症治療学教授 H22年 九州保健福祉大学薬学部生化学第一講座教授 現在にいたる 1 ウイルス感染症 • 2010口蹄疫'宮崎(:家畜29万頭 • 2001口蹄疫'英国( :家畜1000万頭 • スペイン風邪: 3000万人死亡 • 天然痘: 20世紀3億人、有史以来全人口の 1/10が死亡 2 ウイルス感染症 • 2010口蹄疫'宮崎(:家畜20万頭 • 2001口蹄疫'英国( ウイルス感染症、人類にとって :家畜1000万頭 大きな問題 • スペイン風邪: 3000万人死亡 • 天然痘: 20世紀3億人、有史以来全人口の 1/10が死亡 3 最近のニュース ー耐性菌ー • MDRAB'多剤耐性アシネトバクター( • MDRP '多剤耐性緑膿菌( • NDM-1 問題になっている耐性菌 MRSA MRSE ESBL VRE MRSP BLNAR BLPAR Metallo-beta-lactamase産生菌 など 4 感染症治療の概念 抗微生物療法 + 微生物の生物活性・生成物を制御 + 宿主の過剰な免疫反応を 制御 ↓ 抗微生物 療法 「きれいに治す」 ウイルス感染症や耐性菌感染症は 抗微生物薬剤の選択肢が尐ないため +アルファの治療戦略が必須である。 5 微生物 病態 治療 新型インフルエンザ 入院18000人、死亡200人 入院:小児と高齢者 リスクのない人'40%(重症化 死亡率:高齢者が多い 致死率0.5%程度'NEJM( 腸症状 高度肥満は重症化易 小児のVit.D欠乏は重症化易 上気道<<下気道 ARDS>>MOF ウイルスとしては弱毒 'PB1-F2'-(、HA開裂弱毒タイプ、 NS-PDZシグナル欠失( オセルタミビルによる初期の封じ込め効果有 宿主の過剰な免疫:重症化 耐性 厚生労働省ホームページより 6 微生物 病態 抗体保有率'2010.2月( Aソ連 新型 Apdm A香港 B山形 7 治療 8 • 今年は、 2009H1N1 + 香港 + B 9 微生物 新型インフルエンザ • • • • ウイルス感染症の重要性を再認識 真の新型へのシミュレーション 耐性、病原性変異時の対応 ワクチンの重要性 などなど 10 病態 治療 序 伝染病 11 ??? 12 マラリア 13 日本各地にマラリア 瘧'おこり( • お地蔵さんを縄で縛る。 宮崎県は、マラリア蔓延地帯だった!!! 14 マラリア'Malaria( • マラリア'Malaria(は、熱帯から亜熱帯に広く 分布する原虫感染症。高熱や頭痚、吐き気な どの症状を呈する。悪性の場合は意識障害 や腎不全などを起こし死亡する。 • 瘧'おこり(とは、大抵このマラリアを指してい た。 • 過去には、ヨーロッパや日本などでもマラリア が流行したと考えられている。 15 疫学 • マラリアは世界で100カ国以上にみられ、世 界保健機関'WHO(の推計によると、年間3~ 5億 人の罹患者と150~270万人の死亡者が あるとされる。 ハマダラ蚊 16 マラリアの症状 • 悪寒、震えと共に熱発作が1~2時間続く。 • 熱発作の間隔は、四日熱マラリアで72時間ごと、三 日熱・卵型マラリアで48時間ごと、熱帯マラリアで24 時間ごとに起こる。 • その後、体温は更に上昇し、顔面紅潮、呼吸切迫、 口渇、頻脈、嘔吐、頭痚、筋肉痚などが4~5時間続 き、その後、解熱します。 • 熱帯熱マラリアでは高熱が持続し、意識障害、腎不 全などを起こしやすいのです。 • 日本では、感染者数が尐ないために正確にマラリア と診断することが困難で、風邪などと誤診されて、治 療が遅れ、死亡するケースも報告されている。 17 歴史を作った7大伝染病 PHP研究所 18 グローバル化とマラリア • 海外渡航で感染 • Airplane マラリア 19 蚊が媒体 • • • • • • マラリア ウエストナイル脳炎(熱) デング熱 日本脳炎 フィラリア症 黄熱病 20 ??? 21 梅毒 22 中国 一時間に一人 先天性梅毒 23 梅毒 • 梅毒'Syphilis。黴毒、瘡毒'そうどく(とも(は、 スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ (Treponema pallidum) によって発生する感染 症、性病。 • 試験管内の培養は不可能のため、病原性の 機構はほとんど解明されていない。 • 1998年には全ゲノムのDNA 配列が決定、公 開されている。 24 歴史 • クリストファー・コロンブスの率いた探検隊員がア メリカ上陸時に原住民女性と交わって感染し、 ヨーロッパに持ち帰り、以後世界に蔓延したとす る説が有力。 • 日本では1512年に記録上に初めて登場している。 交通の未発達な時代にもかかわらず、コロンブ スによるヨーロッパへの伝播からわずか20年で ほぼ地球を一周したことになる。特に沖縄にお いては、激烈な流行であった。 • 著名人では、加藤清正、前田利長、木戸孝允な どが梅毒で死亡したとみられている。 25 現在 • TPHA法、FTA-ABS法によるトレポネーマ抗体 の検査陽性は639例(1.40%)。 • 陽性率は1978〜1999年まで概ね1〜約2%の 間で推移し、梅毒の潜在的な感染例は減尐 していない。 26 感染経路 • 主に性行為・オーラルセックスにより感染、皮 膚や粘膜の微細な傷口から侵入し、進行に よって血液内に進む。 • これ以外にも母子感染、輸血血液を媒介とす る感染もある。 • 母子感染の場合、子供は先天梅毒となる。 27 症状 • 第1期と第2期が感染しやすく、感染後約1週 間から13週間で発症する。 • 現代においては先進国では、抗生物質の発 達により、第3期、第4期に進行することはほ とんどなく、死亡する例は稀である。 • 第1期梅毒の最初の数週間は抗体発生前で、 検査において陽性を示さない。 28 歴史を作った7大伝染病 PHP研究所 29 第1期と第2期が感染しやすい 歴史を作った7大伝染病 PHP研究所 30 31 32 33 治療 • 男性の場合は泌尿器科・性病科、皮膚科、女性の場 合は産婦人科、皮膚科、性病科を受診。 • 特に皮疹がある場合は皮膚科がよい。 • ペニシリン系の抗生物質の投与で治癒する。 • 胎児'母体(に対し、エリスロマイシンを使用した場合 には、新生児は出産後改めて治療する必要がある。 治癒に要する期間は2〜8週間。 • なお、感染してから1年以内の梅毒を治療した場合、 治療初期に38度台の高熱が出ることがある'ヘルクス ハイマー現象(。菌が一気に死滅するための反応熱で あり、初回治療の場合は、病院でしばらく観察する必 要がある。 34 えっ??? 歴史を作った7大伝染病 PHP研究所 35 売春宿で 梅毒に感染 精神異常 うつ病 自殺未遂 言語障害、 脊髄障害 寝たきり 自殺未遂、 頭痚、 被害妄想 えっ??? 先天性 梅毒?? 難聴?? 31歳で梅毒死 めまい、頭痚 抜け毛、精神錯乱 36 歴史を作った7大伝染病 PHP研究所 ??? 37 ベネチアでペスト患者の 集団墓地を発見 38 現在進行形の!! 歴史的感染症 39 ペスト 現在の感染症? 過去の感染症? 40 まだまだペスト発生している!!! 41 42 ペスト (癙、Pest) • ペスト (癙、Pest、Bubonic Plague) は、人体にペスト菌 'Yersinia pestis 腸内細菌科 通性嫌気性/グラム陰性/ 無芽胞桿菌(が入ることにより発症する病気。 • 日本では感染症法により一類感染症に指定されている。 ペストは元々齧歯類'特にクマネズミ(に流行する病気で、 人間に先立ってネズミなどの間に流行が見られることが多 い。菌を保有したネズミの血を吸ったノミ'特にケオプスネ ズミノミ(に人が血を吸われた時にその刺し口から菌が侵 入したり、感染者の血痰などに含まれる菌を吸い込む事で 感染する。 • 人間、齧歯類以外に猿、兎、猫などにも感染する。 • かつては高い致死性を持っていた事や罹患すると皮膚が 黒くなる事から黒死病と呼ばれ、恐れられた。 • 14世紀のヨーロッパではペストの大流行により、全人口の 三割が命を落とした。 43 ペスト菌の発見 • 1894年、日本人細菌学者の北里柴三郎 • 1894年、スイス・フランスの医師で、パスツー ル研究所の細菌学者でもあったアレクサンダ ー・イェルサン イェルサンにちなんで Yersinia pestis 44 ペスト菌の流れ 45 ペスト敗血症 • ペスト菌が血液によって全身にまわり敗血症 を起こすと、皮膚のあちこちに出血斑ができ て、全身が黒いあざだらけになって死亡する。 黒死病と呼ぶ由来 46 肺ペスト • 腺ペストの流行が続いた後に起こりやすいが、 時に原発することもある。 • かなり稀な病型。 • 腺ペストを発症している人が二次的に肺に菌が 回って発病し、又はその患者の咳によって飛散 したペスト菌を吸い込んで発病する。 • 気管支炎や肺炎をおこして血痰を出し、呼吸困 難となり2~3日で死亡する。 • 患者数は尐ないが死亡率は100パーセントに近 い。 多くの医療関係者がこれで亡くなった 47 治療 • 伝染病院に隔離され、抗生物質による治療 が行われる。有効な薬品としてストレプトマイ シン、テトラサイクリン、サルファ剤等があげ られる。 • 適切な治療がなされれば死亡率は20から0 パーセントに下がる。 48 予防 予防策として、 • 感染の予防策としてはペスト菌を保有するノ ミや、ノミの宿主となるネズミの駆除 。 • ワクチンの接種 。 • 腺ペスト患者の体液に触れない。 49 まとめ • 伝染病は、今も存在する!!! • HIV、influenza も伝染病!!! • 伝染病は、人類の歴史を変えてきた!!! 感染症の脅威を忘れてはならない 特に、感染弱者=乳児・小児には、重要!!! 50 第1章 感染症の考え方 ーインフルエンザを例に概説ー 51 感染症の病態形成因子 微生物 1 過剰免疫 3 2 4 2次感染 環境因子 1.微生物そのものによるもの、2. 他の微生物の2次感染によるもの、3.微 生物によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応によるもの、4. 宿主と 微生物を取り囲む環境因子 52 インフルエンザの病態 ウイルス 1 過剰免疫 3 2 4 2次感染 環境因子 1.ウイルスそのものによるもの、2. 細菌性肺炎などの2次感染によるもの、 3. ウイルス感染によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応によるもの、 4. 宿主を取り囲む環境因子 53 インフルエンザの病態 ウイルス 1 過剰免疫 3 2 4 2次感染 環境因子 1.ウイルスそのものによるもの、2. 細菌性肺炎などの2次感染によるもの、 3. ウイルス感染によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応によるもの、 4. 宿主を取り囲む環境因子 54 微生物 インフルエンザウイルス 病態 治療 NA阻害剤 の作用機序 オセルタミビル、ザナミビル ノイラミダーゼ オセルタミヴィル ザナミヴィル オセルタミビル 55 なし あり 抗インフルエンザ薬の比較 ノイラミニダーゼ阻害薬 薬効分類 一般名 (製品名) オセルタミビル (タミフル®) ザナミビル (リレンザ®) ペラミビル (ラピアクタ®) ラニナミビル 剤形 経口剤 【カプセル】 成人、小児※1 【ドライシロップ】 1歳以上 吸入剤 (成人、小児※2) 注射剤 (成人) 吸入剤 (成人、小児) 創薬会社 Gilead (米) Biota (豪) BioCryst (米) 第一三共 販売会社 中外 GSK 塩野義 第一三共 1日投与量 成人 【CAP】 75mg×1日2回 10mg※3×1日2回 300mgを15分以上かけて 単回点滴静注※4 40mg※5、単回吸入 小児 【DS】 2mg/kg×1日2回 10mg※3×1日2回 投与日数 5日間 5日間 有効型 A型、B型 A型、B型 承認申請中 1回 (重症例:症状に応じて連日) A型、B型 ※1:小児≧37.5kg '10歳以上の未成年患者には原則として使用禁止( ※2:適切に吸入投与できると判断された場合のみ。ただし4歳以下に対する安全性は確立していない ※3:5mgブリスター×2 ※4:重症化するおそれのある患者:600mg/日を15分以上かけて単回点滴静注、症状に応じて連日反復投与 ※5:20mg容器×2 56 ※6:20mg容器×1 (イナビル® ) 10歳未満:20mg※6、 単回吸入 10歳以上:40mg※5、 単回吸入 1回 A型、B型 [各製品添付文書より作成] 微生物 M2 蛋白のイオンチャンネルが阻害 ↓ ウイルス内部の酸性化障害 ↓ ウイルスRNAがM1蛋白から 外へ出ることが出来ない。 病態 治療 Amantadine、 Rimantadineの作用機序 脱殻阻害 → ウイルスの複製 が出来ない MLDS? 今回の新型は耐性化 ウイルス遺伝子 膜タンパク質'M2( Amantadine, Rimantadine インフルエンザウイルス 57 脱殻阻害剤 アマンタジン 宿主細胞 微生物 M2 蛋白のイオンチャンネルが阻害 ↓ ウイルス内部の酸性化障害 ↓ ウイルスRNAがM1蛋白から 外へ出ることが出来ない。 病態 治療 Amantadine、 Rimantadineの作用機序 脱殻阻害 → ウイルスの複製 が出来ない MLDS? 今回の新型は耐性化 NA阻害剤との併用で耐性化抑制 AMT ウイルス遺伝子 + NA inh 膜タンパク質'M2( Amantadine, Rimantadine インフルエンザウイルス 58 脱殻阻害剤 アマンタジン 宿主細胞 微生物 病態 治療 RNAポリメラーゼ 細胞質内のウイルス ↓ 細胞核内に移動 ↓ ウイルス自身のRNAポリメラーゼで 転写・複製 ○○○○○○は、 元から断たなきゃだめ!!! RNAポリメラーゼ阻害剤 T-705'大正富山( RNAポリメラーゼ 59 微生物 HA 感染の成立 病態 治療 周囲の細胞に伝搬 NA 自分の はさみ 他人の はさみ ノイラミダーゼ プロテアーゼ ヒト由来 ダニ由来 細菌由来 RNA ポリメラーゼ 阻害剤 (大正富山T705) マクロライド 脱殻阻害剤 アマンタジン 60 NA阻害剤 タミフル リレンザ インフルエンザの病態 ウイルス 1 過剰免疫 3 2 4 2次感染 環境因子 1.ウイルスそのものによるもの、2. 細菌性肺炎などの2次感染によるもの、 3. ウイルス感染によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応によるもの、 4. 宿主を取り囲む環境因子 61 宿主細胞 HA インフルエ ンザ HA 62 NA HA NA HA HA : 赤血球凝集'ヘマグルチニン( NA: ノイラミニダーゼ 微生物 病態 治療 HA開裂 P.Gingivalisのプロテアーゼ 黄色ブドウ球菌プロテアーゼ 連鎖球菌'ストレプトキナーゼ( 緑膿菌のプロテアーゼ 好中球のエラスターゼ ダニのプロテアーゼ HA開裂 インフルエンザウイルス活性化 マクロライド、歯磨き、家の掃除 • • • Cleavage of influenza A virus H1 hemagglutinin by swine respiratory bacterial proteases. R J Callan, F A Hartmann, S E West, and V S Hinshaw.J Virol. 1997; 71: 7579–7585. インフルエンザウイルス感染と細菌性プロテアーゼ. 君塚ら. 歯科学報2006; 106:75-80. Potentiation of infectivity and pathogenesis of influenza A virus by a house dust mite protease. Akaike T, Maeda H, Maruo K, Sakata Y, Sato K. J Infect Dis. 1994;170:1023-6. 63 歯磨き効果 歯磨きによる 口中総プロテアーゼ活性制御 ↓ インフルエンザの活性化抑制 口中総プロテアーゼ活性 'azocazein法,ΔOD( 0.15 0.1 0.05 0 CAM(-) CAM+) 64 ダニのプロテアーゼがインフレンザを活性化 65 Df-protease のウイルス複製効果 Df-protease 0.5 mg/ml Trypsin 0.5 mg/ml Plasmin 10 mg/ml Protease なし Journal of Infectious Diseases 170, 1023, 1994 66 DfproteaseによるHA開裂 ハウスダスト Df-protease 67 Journal of Infectious Diseases 170, 1023, 1994 インフルエンザ感染モデルにおける致死率上昇 Df-protease Df-protease Journal of Infectious Diseases 170, 1023, 1994 68 Df-プロテアーゼ • インフルエンザウイルスの活性化 • 喘息などのアレルギーの原因抗原のひとつ 喘息の人がインフルエンザ増悪 しやすい原因のひとつ??? 免疫学的な機序以外にも可能性 69 HA 感染の成立 周囲の細胞に伝搬 自分の はさみ 他人の はさみ ノイラミダーゼ プロテアーゼ ヒト由来 ダニ由来 細菌由来 RNA ポリメラーゼ ウイルスの活性化抑制 マクロライド NA 阻害剤 家のそうじ(ハウスダスト対策) 歯磨き、うがい、 歯周囲炎のコントロール 慢性気道感染症 のコントロール 70 NA阻害剤 タミフル リレンザ 脱殻阻害剤 アマンタジン ウイルス治療のターゲット ウイルス粒子そのもの 赤 血 球 凝 集 素 開 裂 (H A ) ウ イ ル ス 脱 殻 (M 2 タ ン パ ク ) ウ イ ル ス 複 製 (R N A ポ リ メ ラ ー ゼ ) 71 ウ イ ル ス 遊 離 (N A ) ウイルス治療のターゲット ウイルス粒子そのもの 赤 血 球 凝 集 素 開 裂 (H A ) ウ イ ル ス 脱 殻 (M 2 タ ン パ ク ) アマンタジン ウ イ ル ス 複 製 (R N A ポ リ メ ラ ー ゼ ) ウ イ ル ス 遊 離 (N A ) オセルタミビル ザナミビル ベラミビル ラニラビル T-705 72 8本の文節RNA 簡単に交換される 問題点 インフルエンザウイルスは 高率に変異する。 ↓ 耐性ウイルスができやすい いたちごっこ??? インフルエンザウイルスは 変異するために進化した ウイルス 変異するウイルスにも対応できる 変わらないもの 細菌の2次感染や宿主反応の コントロールを 主体とした治療 73 インフルエンザの病態 ウイルス 1 過剰免疫 3 2 4 2次感染 環境因子 1.ウイルスそのものによるもの、2. 細菌性肺炎などの2次感染によるもの、 3. ウイルス感染によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応によるもの、 4. 宿主を取り囲む環境因子 74 微生物 病態 治療 A型インフルエンザにおける肺炎合併率(2002/03年シーズン) 対象者数 肺炎 合併率'%( 0~15歳 729 1 0.14 16~64歳 959 8 0.83 65~79歳 97 2 2.06 80歳以上 30 4 13.33 合計 1825 15 0.82 日本臨床内科医会 インフルエンザ研究班 河合直樹ら 75 繊毛運動障害・免疫細胞機能障害 マクロファージ・好中球の機能障害 インフルエンザ ウイルス 細菌の2次感染 繊毛運動障害 2次感染起こりやすい 76 新型インフルエンザの 2次性細菌性肺炎 • 重症患者・死亡患者の30%: 2次性細菌性肺炎を合併していた! 起炎菌: 肺炎球菌&黄色ブドウ球菌'MSSA, MRSA( CDC home page 77 ポイント インフルエンザは、風邪ではない。 ハイリスクの患者には、抗菌薬の投与タイミン グを誤らないことが大事。 もしやと思ったら抗菌薬 • 外来で肺炎治療可能なキノロン or PC投与 • 肺炎球菌ワクチンは、重要 78 インフルエンザの病態 ウイルス 1 過剰免疫 3 2 4 2次感染 環境因子 1.ウイルスそのものによるもの、2. 細菌性肺炎などの2次感染によるもの、 3. ウイルス感染によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応によるもの、 4. 宿主を取り囲む環境因子 79 微生物 病態 治療 インフルエンザの病態から治療へ 治療のターゲット 1,4.インフルエンザウイルス、環境 2.2次感染 抗ウイルス 薬など 抗菌薬 重症化 3.過剰な免疫反応 重症化対策:最も重要 80 微生物 病態 治療 79歳 男性 基礎疾患:うっ血性心不全、肺結核後遺症による呼吸不全 mPSL 125mg/day oseltamivir AMK MEPM ARDS Bacterial pneumonia 37 0 WBC CRP Inf.Ag. 10 9800 8200 2.1 2.3 '+( '+( 9200 10.3 '-( 20 7500 12.7 '-( 7200 8.5 Infuluenza A (+) vaccine'+( Virus? 81 17400 20.2 '-( days 22000 20.4 微生物 病態 治療 100 Pneumonia Virus 8 Lethality 6 60 4 40 2 Lethality(%) 80 Lung consolidation Virus counts(PFU/lung)log10 マウスインフルエンザ肺炎モデルの経過 20 0 0 0 2 4 6 8 10 Days after infection 12 14 16 mouse:ddy 30g, male Influenza virus: influenza virus A H2N2 (mice adapted) 日本胸部臨床62、812-8 82 微生物 病態 治療 マウスインフルエンザ肺炎モデルの経過 ウイルス量 100 肺炎 死亡率 6 60 4 40 2 20 0 0 肺洗浄液O2 • -生成量 (nmol/30min) 感染病日 0 2 4 6 8 10 30 酸化ストレス状態 10 0 83 12 14 16 死亡率(%) 80 肺炎 ウイルス量 8 インフルエンザ感染とフリーラジカル Influenza virus infection 酸化ストレス: フリーラジカルが主因 IFN- Xanthine oxidase iNOS O2•- •NO ONOO•OH, H2O2 Tissue injury 84 NO system 微生物 病態 治療 インフルエンザ肺炎モデルにおける iNOS 阻害 剤の効果 Concentration of nitrite/nitrate In serum (mM) Nitrite and nitrate concentrations in serum of mice infected with influenza virus • NOが増加 50 iNOS: • NO合成酵素、 L-NMMA: • NO合成酵素阻害剤 P < 0.05 40 * P < 0.05 100 30 * 20 10 75 0 Normal 6 d.p.i. 生存率改善 50 Induction of iNOS activity in mouse lungs infected with influenza virus Control NOS activity in mouse lung ( nmol / 30 min / lung ) 3.00 L-NMMA 2 mg/mouse/day, 25 2.00 ip (day 2- 7) 1.00 0 0.00 0 2 4 6 8 Days after infection 0 2 4 6 8 10 Days after infection iNOSが増加 85 12 14 16 インフルエンザ感染とフリーラジカル Influenza virus infection IFN- O2•- system Xanthine oxidase iNOS O2•- •NO ONOO•OH, H2O2 Tissue injury 86 微生物 病態 治療 (nmol / 1.0 ml s-BALF / 30 min) Generated O •2 Superoxideの生成 インフルエンザ肺炎モデルに おける xanthine oxidase 阻 害剤の効果 O2 • -が増加 25 20 15 10 5 XO:O2 • -生成酵素、 Allopurinol: XO阻害剤 with SOD 0 4 5 6 7 8 Days after infection 100 * * P < 0.05 XO activity (nmole isoxanthopterin/min) Xanthine oxidase の活性 75 0.9 ** 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 plasma BALF 生存率改善 50 0.3 Control 0.2 0.1 25 Allopurinol 1 mg/mouse/day, ip (day 4- 7) 0 0 3 6 8 0 Days after infection 0 2 4 6 8 10 12 Days after infection XO活性が増加 87 14 16 インフルエンザ感染とフリーラジカル (動物実験) インフルエンザ感染 Allopurinol IFN- Xanthine oxidase L-NMMA iNOS 抗ウイルス療法でなく、過剰な免疫を •NO O2•- 抑制することで治療が可能 ONOO- 組織傷害 88 ポイント 重症化には 宿主の過剰な免疫反応が 関与している。 インフルエンザは酸化ストレス病だ!!! ウイルス 1 過剰免疫 3 2 4 環境因子 89 2次感染 感染症の病態形成因子 微生物 1 過剰免疫 3 2 4 2次感染 環境因子 1.微生物そのものによるもの、2. 他の微生物の2次感染によるもの、3.微 生物によって引き起こされる宿主の過剰な免疫反応によるもの、4. 宿主と 微生物を取り囲む環境因子 90 第2章 見る、視る、観る、診る、看る 感染症 91 92 93 94 95 96 97 98 99 ??? 100 感染性心内膜炎 見落すと死! 101 102 ??? 103 白癬 Trichophyton rubrum 104 爪白癬はどれ? 105 爪白癬はどれ??? 爪白癬 爪白癬 爪白癬 乾癬に伴う爪甲変形 爪甲剥離症 爪を尐しけずりとり, 顕微鏡で水虫の菌を 爪より確認する必要 あり 原因不明の変形 物理的刺激による爪甲変形 106 107 爪白癬 爪カンジダ症 爪扁平苔癬 'つめへんぺいたいせん( 掌蹠膿疱症 'しょうせきのうほうしょう( 108 爪乾癬'つめかんせん( 爪異栄養症 股部白癬'こぶはくせん( :いんきんたむし'陰金田虫(は正式には 109 白癬症 110 ??? 111 癜風'でんぷう( 癜風菌は皮膚の常在菌で、体幹などのいわ ゆる脂漏(しろう)部位に胞子の形で存在して います。高温、多湿の環境下で多汗により菌 が増殖、形態変化'菌糸形になる(して癜風が 発病 癜風菌'マラセチア・ファーファー( 112 ? ? ? 113 伝染性膿痂疹'とびひ( 114 とびひ 115 伝染性膿痂疹'とびひ( • 伝染性膿痂疹'でんせんせいのうかしん(と は、小児に生じる細菌感染症の一種。 • 接触により、火事の飛び火のように広がるこ とから、俗に飛び火'とびひ(ともいう。 116 症状 • 湿疹などを掻くことによりできた傷に、黄色ブド ウ球菌・連鎖球菌が感染し、小児の体幹・四肢 に膿疱を伴う痂皮'かひ;かさぶたのこと(がで きる。 • 接触感染にて感染が広がることがある。 • 夏季に子供に好発、たまに成人にも発症する。 • 最近は抗生剤が効かない耐性菌が多くなった。 117 とびひ'ブドウ球菌性( とびひ'連鎖球菌性( 118 ??? 119 突発性発疹 高い熱が3~4日続き、熱が下がると同時に、 おなかや背中に赤い発疹が出る病気。生後6 ~12カ月に多く、初めての発熱がこの病気と いう子も多いので、あわてずに経過観察を。 季節を問わずに発生し、はしかや水ぼうそう のように感染力が強くないのが特徴です。 からだのおへそを中心に大きさの異なる赤い斑点が出てきます。手足にはみ られません。顔にも出ることが多く、目の周りが赤くなることもあります'赤パ ンダと呼んでいます(。 ヒトヘルペスウイルス6型または7型初感染に よる。感染源は主に家族からの水平感染と考 えられる。 120 突発性発疹 121 ??? 122 伝染性紅斑'リンゴ病( • ヒトパルボウイルスB19による感染症である。 リンゴ病という通称がよく知られている。 • 感染経路は経気道的な飛沫感染である。た だし、ウイルスが排泄されるのは'免疫が正 常の患者では(特徴的な発疹が出現するより も1週間程度前までなので、伝染性紅斑の患 者を隔離しても他者への感染予防にはならな い。 123 りんご病 124 りんご病の皮膚所見 右腕に現れた独特の斑紋 'レース状皮疹( 125 ??? 126 溶連菌感染症 127 溶連菌感染症 いちご舌 128 ??? 129 カンジダ感染症'がこうそう( 130 ??? 131 単純ヘルペス1 132 ヘルペス口内炎 133 134 単純ヘルペスの経過 135 ??? 136 陥入爪 137 ??? 138 手足口病 139 手足口病 140 141 手足口病 'hand, foot and mouth disease:HFMD( • 手足口病'hand, foot and mouth disease:HFMD( は、その名が示すとおり、口腔粘膜および手や 足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急 性ウイルス感染症で、幼児を中心に夏季に流行 が見られる。 • 本疾患はコクサッキーA16'CA16(、CA10、エンテ ロウイルス71'EV71(などのエンテロウイルスに よりおこり、基本的に予後は良好な疾患である。 • 急性髄膜炎の合併が時に見られ、稀であるが急 性脳炎を生ずることもあり、なかでもEV71は中枢 神経系合併症の発生率が他のウイルスより高 いことが知られている。 142 疫学 • 本症は4歳位までの幼児を中心とした疾患であり、2歳以下が半数 を占めるが、学童でも流行的発生がみられることがある。 • 学童以上の年齢層の大半は既にこれらのウイルスの感染'不顕 性感染も含む(を受けている場合が多いので、成人での発症はあ まり多くない。 • 感染症発生動向調査によると、国内における手足口病流行の ピークは夏季であるが、秋から冬にかけても多尐の発生が見られ る'「グラフ総覧」参照(。 • 最近では、1985年、1990年、1995年、2000年と5年おきに比較的 大きな流行がみられており、それぞれの年に検出されたウイルス をみると、85年はCA16、90年はEV71、CA16、CA10の混合流行、95 年はCA16、2000年は EV71がそれぞれ流行の主流となっている。 • 最近数年間にアジア地域では死亡例を伴った比較的大きな流行 が見られ、注目を浴びた。 143 最近の流行 • 1997年4~6月にマレーシア・サラワクではHFMDの大流行が見ら れ、急速な経過で死亡する例が30例以上報告された。この間、エ ンテロウイルスを初めとする複数のウイルスが検出されたが、死 亡例からは咽頭、便などからEV71が分離されている。また剖検が 行われた尐数例では、中枢神経系に浮腫、炎症像がみられ、脳幹 脳炎が1例に見られた。 • 1997年大阪においては、HFMDの発生状況は例年をやや下回る 程度であったが、HFMDあるいはEV71感染と関連が濃厚な小児の 死亡例が3例報告された。3例ともに急性脳炎と肺水腫が認められ た。 • 台湾においては1998年2月頃よりHFMDが増加し、5月をピークと する大流行となった。HFMDに関連する髄膜炎、脳炎、急性弛緩性 麻痺'acute flaccid paralysis:AFP(などが相次ぎ、EV71が分離され、 12月までに台湾全土で死亡が78例と報告された。 • 2000年6~8月に兵庫県で脳炎による死亡例を含むHFMDの流行 がみられ、EV71が検出されている'IASR2001年6月号参照(。 144 145 146 147 148 病原体 • CA16、CA10、EV71などのエンテロウイルスが病因となる。 • ヒト-ヒト伝播は主として咽頭から排泄されるウイルスによ る飛沫感染でおこるが、便中に排泄されたウイルスによ る経口感染、水疱内容物からの感染などがありうる。 • 便中へのウイルスの排泄は長期間にわたり、症状が消 失した患者も2~4週間にわたり感染源になりうる。 • 腸管で増殖したウイルスが血行性に中枢神経系'特に EV71(、心臓'特にCA16(などに到達すると、それらの臓 器の症状を起こしうる。 • いちどHFMDを発病すると、その病因ウイルスに対しての 免疫は成立するが、他のウイルスによるHFMDを起こす ことは免れない。 149 臨床症状 • 3~5日の潜伏期をおいて、口腔粘膜、手掌、足底や 足背などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹が出現 する。時に肘、膝、臀部などにも出現することもある。 • 口腔粘膜では小潰瘍を形成することもある。発熱は約 1/3に見られるが軽度であり、38℃以下のことがほと んどである。通常は3~7日の経過で消退し、水疱が 痂皮を形成することはない。 • 稀には髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系 合併症の他、心筋炎などを生ずることもある。特に、 EV71による場合には、中枢神経系合併症に注意する 必要がある。 150 病原診断 • 通常は臨床的になされることが多く、水疱性発疹の性状、分布 が重要であり、季節や周囲での流行状況などが参考となる。 • 鑑別診断としては、 口腔内水疱: ヘルパンギーナ、ヘルペスウイルスによる歯肉口内炎、アフタ 性口内炎 手足の発疹: 水痘の初期疹、ストロフルス、伝染性軟疣腫'水いぼ( • 病原診断としてはウイルス分離が重要である。その場合、臨床 材料として水疱内容物、咽頭拭い液、便、直腸拭い液などが用 いられる。 • 血清診断は補助的であるが、行う場合には、エンテロウイルス 間での交差反応がない中和抗体の測定が勧められる。急性期と 回復期の血清で4倍以上の抗体価上昇により診断する。 151 口の中の水ほうは、小さ なものが多発することも ありますが、舌先に白み がかった大きな口内炎に なることがあります。 手足の水ほうは、よく見る と、だえん形のことが多く、 治ると褐色のしみのよう になり消えていきます。 水疱: 1~5mm 以下の扁平な円形~楕円形の小水疱疹が手掌、足底に 好発し、紅暈'まわりが赤い(を伴う。水疱内容は白色で、数日内に飴色と なり吸収され、やがて消失する。 皮疹: 米粒大の紅色丘疹で、手背、足背に分布するが乳児では臀部にも 出現する。水疱、皮疹は痚みを伴わない。 口内疹: 口蓋弓、硬口蓋、軟口蓋、頬粘膜、舌、歯肉に1-5mmの水疱, 潰瘍形成がみられ,痚みを伴う。数日で治癒する。 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 感染症法における取り扱い • 手足口病は5類感染症定点把握疾患に定められており、全 国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告がなされている。 報告のための基準は以下の通りとなっている。 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑 われ、かつ、以下の2つの基準を満たすもの。 1. 手のひら、足底または足背、口腔粘膜に出現する2~ 5mm程度の水疱 2. 水疱は痂皮を形成せずに治癒 ○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断 により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体 診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの。 162 学校保健法での取り扱い • 手足口病は、学校で予防すべき伝染病1~3種に含ま れていない。 • 主症状から回復した後もウイルスは長期にわたって 排泄されることがあるので、急性期のみ登校登園停 止を行って、学校・幼稚園・保育園などでの流行阻止 をねらっても、効果はあまり期待ができない。 • 本症の大部分は軽症疾患であり、脱水および合併症、 ことに髄膜炎・脳炎などについて注意がおよんでいれ ば、集団としての問題は尐ないため、発疹だけの患児 に長期の欠席を強いる必要はなく、また現実的ではな い。 通常の流行状況での登校登園の問題については、 流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって 判断すればよいと考えられる。 163 治療・予防 • 特別な治療を要しないことがほとんどである。 • 発疹にかゆみなどを伴うことは稀であり、抗ヒスタミン剤の塗布を 行うことはあるが、副腎皮質ステロイド剤などの必要はない。 • 口腔内病変に対しては、刺激にならないよう柔かめで薄味の食べ 物を勧めるが、何よりも水分不足にならないようにすることが最も 重要である。薄いお茶類、スポーツ飲料などで水分を尐量頻回に 与えるよう努める。ときには経静脈的補液も必要となる。 • 発熱に対しては通常解熱剤なしで経過観察が可能である。抗生剤 の投与は意味がない。しかし、元気がない、頭痚、嘔吐、高熱、2 日以上続く発熱などの場合には髄膜炎、脳炎などへの進展を注 意する。合併症を生じた場合の特異的な治療法は確立されていな い。 • 予防としては患者に近づかない、手洗いの励行などである。患者 あるいは回復者に対しても、特に排便後の手洗いを徹底させる。 手足口病の原因ウイルスに対するワクチンは開発されていない。 164 165 注意事項 • 家庭で気をつけること 食べ物:口の中が痚いことが多いので、すっぱいもの、辛いもの、しみないものをあ げます。 外出は避けます。 入浴:熱がなければかまいません。 予防:よく感染します。手をよく洗ったり、便の始末をしたときはよく手を洗いましょう。 ウイルスは便中に排泄されますので。 • 保育園、幼稚園、学校 尐なくとも熱のある時は休みます。口の中が痚くて食べられないときも休みましょう。 きれいに症状がとれていてもかなり長い間腸からウイルスが出ますので、隔離して も意味がありません。発熱や食べられないなどの症状があれば休ませるのが普通 です。いつまで休むかということについては小児科医によって意見がまちまちです。 その子どもの症状によって判断することになります。口内炎が残っていても行ってか まいません。水疱はつぶれると感染を起こしてめんどうなことになるので、水疱がな くなるまで、学校での鉄棒や登り棒はやめましょう。プールも、発疹がふやけてつぶ れたりすると細菌感染が起こるので、やめた方が無難でしょう。 • その他の注意事項 ①口が痚くて、全く飲んだり食べたりできないとき ②高熱が続いて、頭が痚がったり、嘔吐を繰り返すとき は早めに診察を受けましょう。無菌性髄膜炎を起こすことがあります。 166 ??? 167 ヘルパンギーナ 168 ヘルパンギーナ 169 ヘルパンギーナ 'Herpangina ( • ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜に あらわれる水疱性発疹を特徴とし、夏期 に流行する小児の急性ウイルス性咽頭 炎であり、いわゆる夏かぜの代表的疾 患である。 • その大多数はエンテロウイルス属、流行 性のものは特にA群コクサッキーウイル スの感染によるものである。 170 疫学 • 疫学パターンはエンテロウイルス属の特徴に沿う。す なわち熱帯では通年性にみられるが、温帯では夏と 秋に流行がみられる。 • 我が国では毎年5 月頃より増加し始め、6~7月にか けてピーク を形成し、8月に減尐、9~10月にかけてほ とんど見られなくなる。国内での流行は例年西から東 へと推移する。 • その流行規模はほぼ毎年同様の傾向があるが、1999 ~2001年の3年間はそのピ ーク時において、定点当 たり報告数が例年に比べて高い状況であった。 • 患者の年齢は4歳以下 がほとんどであり、1歳代が もっとも多く、ついで2、3、4、0歳代の順となる。 171 病原体 • エンテロウイルスとは、ピコルナウイルス科に属する多数 のRNA ウイルスの総称であり、ポリオウイルス、A群コク サッキーウイルス'CA(、B群コクサッキーウイルス'CB(、エ コーウイルス、エンテロウイルス'68~71 型(など多くを含 む。 • ヘルパンギーナに関してはCA が主な病因であり、2、3、4、 5、6、10型などの血清型が分離される。なかでもCA4が もっとも多く、CA10、CA6 などが続く。またCB 、エコーウイ ルスなどが関係することもある。 • エンテロウイルス属の宿主はヒトだけであり、感染経路は 接触感染を含む糞口感染と飛沫感染 であり、急性期に もっともウイルスが排泄され感染力が強いが、エンテロウ イルス感染としての性格上、回復後にも2 ~4週間の長期 にわたり便からウイルスが検出される。 172 臨床症状 • 2~4 日の潜伏期を経過し、突然の発熱に続いて咽頭粘膜の発赤が顕著となり、 口腔内、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1~2mm 、場合によ り大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現する。 • 小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痚を伴う。 • 発熱については2 ~4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失する。 発熱時に熱性けいれ んを伴うことや、口腔内の疼痚のため不機嫌、拒食、哺乳 障害、それによる脱水症などを呈する ことがあるが、ほとんどは予後良好であ る。 • エンテロウイルス感染は多彩な病状を示す疾患であり、ヘルパンギーナの場合 にもまれには無 菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがある。前者の場 合には発熱以外に頭痚、嘔吐などに注意すべきであるが、項部硬直は見られ ないことも多い。後者に関しては、心不全徴候の出現に十分注意することが必 要である。 • 鑑別診断として、単純ヘルペスウイルス1型による歯肉口内炎'口腔病変は歯 齦・舌に顕著(、手足口病'ヘルパンギーナの場合よりも口腔内前方に水疱疹 が見られ、手や足にも水疱疹がある(、アフタ性口内炎'発熱を伴わず、口腔内 所見は舌および頬部粘膜に多い(などがあげられる。 173 174 軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1~2mm 、 場合により大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱 175 口蓋垂付近の水疱しんや潰瘍や発赤 176 手足口病 手足口病の 水疱は、 前の方に多 い 177 病原診断 • 確定診断には、患者の口腔内拭い液、特に水疱内容を含ん だ材料、糞便、髄膜炎を合併した例では髄液などを検査材 料としてウイルス分離を行うか、あるいはウイルス抗原を検 出する。 • 遺伝子診断'PCR 法や制限酵素切断法など(も可能である。 確定診断にはウイルスを分離することが原則である。 • 血清学的診断は、急性期と回復期のペア血清を用い、中和 反応'NT(、補体結合反応'CF(な どで4倍以上の抗体の有 意な上昇を確認することで行われる。しかしながら、エンテロ ウイルスでのCF は交差反応が多いので、一般には行われ ない。 • 実際には臨床症状による診断で十分なことがほとんどであ る。 178 治療・予防 • 通常は対症療法のみであり、発熱や頭痚などに 対してはアセトアミノフェンなどを用いることもあ る。 • 脱水に対する治療が必要なこともある。 • 無菌性髄膜炎や心筋炎の合併例では入院治療 が必要であるが、後者の場合には特に循環器 専門医による治療が望まれる。 • 特異的な予防法はないが、感染者との密接な接 触を避けること、流行時にうがいや手指の消毒 を励行することなどである。 179 感染症法における取り扱い '2003年11月施行の感染症法改正に伴い更新( • ヘルパンギーナは5類感染症定点把握疾患に定められて おり、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告がなさ れている。報告のための基準は以下の通りとなっている。 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾 患が疑われ、かつ、以下の2つの基準を満たすもの 1. 突然の高熱での発症 2. 口蓋垂付近の水疱しんや潰瘍や発赤 ○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の 判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、 病原体診断や血清診断によって当該疾患と診断されたも の 180 学校保健法における取り扱い • ヘルパンギーナは学校において予防すべき伝染病の中には明確 に規定されてはなく、一律に 「学校長の判断によって出席停止の 扱いをするもの」とはならない。 • 欠席者が多くなり、授業などに支障をきたしそうな場合、流行の大 きさ、あるいは合併症の発生などから保護者の間で不安が多い場 合など、「学校長が学校医と相談をして第3 種学校伝染病としての 扱いをすることがあり得る病気」と解釈される。 • 本症では、主症状から回復した後も、ウイルスは長期にわたって 便から排泄されることがあるので、急性期のみの登校登園停止に よる学校・幼稚園・保育園などでの厳密な流行阻止効果は期待が できない。 • 本症の大部分は軽症疾患であり、登校登園については手足口病 と同様、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判 断すべきであると考えられる。 181 注意 家庭で気をつけること ■高熱:何日も高熱が続きますが、熱さましを使いすぎないようにして下さい。 暑がっているようなら、涼しくしてあげて下さい。 ■食事:のどの痚みが強いため、よけい食欲がなくなります。栄養はなくても、 尐しずつとれていれば大丈夫です。'すっぱい物や、醤油・ソースはいや がります。( ■水分:水分は十分にとらせて下さい。麦茶、イオン飲料など、あっさりした ものでけっこうです。 ■入浴:熱があっても、とくに具合が悪そうでなければ、汗を流すことはかま いません。 ■園や学校:熱が下がり、のどの痚みもとれて、食事も含めて普通の生活に 戻ってからです。'学校伝染病に指定されていて、「主な症状がなくなって から2日間」過ぎたら、出席できることになっています。( 182 ??? 183 水痘 184 185 水痘 186 水痘 • 水痘は、水痘帯状疱疹ウイルス'varicella zoster virus ;VZV(によって起こる急性の伝染性疾患である。 • 19世紀の終わりまでは、水痘と天然痘は明確に区別 されていなかった。 • 1875年Steinerによって、水痘患者の水疱内容を接種 することによって水痘が発症することが示され、1888 年von Bokayによって、水痘に感受性のある子どもが、 帯状疱疹の患者との接触によって水痘が発症するこ とが確認された。 • 1954年にThomas Wellerによって、水痘患者および帯 状疱疹患者いずれの水疱からもVZVが分離されること が確認された。 • その後の研究によって1970年代に日本で水痘ワクチ ンが開発され、現在水痘の予防に使用されている。 187 疫学 • 水痘ウイルスの自然宿主はヒトのみであるが、 世界中に分布し、その伝染力は麻疹よりは弱い が、ムンプスや風疹よりは強いとされ、家庭内接 触での発症率は90%と報告されている。 • 発疹出現の1~2日前から出現後4~5日、ある いは痂皮化するまで伝染力がある。 • 1999年4月の感染症法施行後の感染症発生動 向調査によると、約3,000の小児科定点医療機 関から毎週1,300~9,500例の報告がある。 • 季節的には毎年12~7月に多く、8~11月には減 尐しており、罹患年齢はほとんどが9歳以下であ る。 188 189 190 病原体 • 水痘帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルス科の α亜科に属するDNAウイルスであり、他のヘルペ スウイルスと同様に初感染の後、知覚神経節に 潜伏感染する。 • ウイルスは通常気道粘膜から侵入し、鼻咽頭の 侵入部位と所属リンパ節にて増殖した後、感染 後4~6日で一次ウイルス血症を起こす。 • これによりウイルスは他の器官、肝、脾などに散 布され、そこで増殖した後二次ウイルス血症を 起こし、皮膚に水疱を形成する。 • ウイルスは発疹出現の5日前ころから1~2日後 まで、末梢血単核球から分離される。 191 臨床症状 • 潜伏期は2週間程度'10~21日(であるが、免疫不全患者ではより長くなること がある。 • 成人では発疹出現前に1~2日の発熱と全身倦怠感を伴うことがあるが、子ど もでは通常発疹が初発症状である。 • 発疹は全身性で掻痒を伴い、紅斑、丘疹を経て短時間で水疱となり、痂皮化す る。 • 通常は最初に頭皮、次いで体幹、四肢に出現するが、体幹にもっとも多くなる。 • 数日にわたり新しい発疹が次々と出現するので、急性期には紅斑、丘疹、水疱 、痂皮のそれぞれの段階の発疹が混在することが特徴である。 • またこれらの発疹は、鼻咽頭、気道、膣などの粘膜にも出現することがある。 • 臨床経過は一般的に軽症で、倦怠感、掻痒感、38度前後の発熱が2~3日間 続く程度であることが大半である。 • 成人ではより重症になり、合併症の頻度も高い。通常呼吸器症状や胃腸症状 を伴うことはない。初感染からの回復後は終生免疫を得て、その後に野生株に 暴露された場合には、臨床症状を起こすことなく抗体価の上昇をみる。 192 193 194 典型的な水ほう • 典型的な水ほうは、中に水を多く含み、よく みると真ん中に黒い点が見えることがありま す。 195 196 197 ??? 198 帯状疱疹 199 帯状疱疹 200 201 合併症 • 合併症の危険性は年齢により異なり、健康な小児ではあまりみら れないが、15歳以上と1歳以下では高くなる。 • 1~14歳の子どもでの死亡率は10万あたり約1例であるが、15~ 19歳では2.7例、30~49歳では25.2例と上昇する。 • 合併症として、皮膚の二次性細菌感染、脱水、肺炎、中枢神経合 併症などがある。 • 水痘に合併する肺炎は通常ウイルス性であるが、細菌性のことも ある。 • 中枢神経合併症としては無菌性髄膜炎から脳炎まで種々ありうる 。脳炎では小脳炎が多く、小脳失調をきたすことがあるが予後は 良好である。 • より広範な脳炎は稀で1万例に2.7程度であるが、成人に多く見ら れる。急性期にアスピリンを服用した小児では、ライ症候群が起こ ることがある。免疫機能が低下している場合の水痘では、生命の 危険を伴うことがあるので十分な注意が必要である。 202 治療 • 石炭酸亜鉛化リニメント'カルボルチンクリニメント;カチリ(など の外用が行われる。 • 二次感染をおこした場合には抗生物質の外用、全身投与が行 われる。 • 抗ウイルス剤としてアシクロビル'ACV(があり、重症水痘、およ び水痘の重症化が容易に予測される免疫不全者などでは第一 選択薬剤となる。この場合、15mg/kg/日を1日3回に分けて静脈 内投与するのが原則である。 • 免疫機能が正常と考えられる者の水痘についても、ACVの経口 投与は症状を軽症化させるのに有効であると考えられており、 その場合、発症48時間以内に50~80mg/kg/日を4~5日間投 与するのが適当であるとされている。 • 全ての水痘患者に対してルーチンに投与する必要はない。 203 予防 • 本疾患はヒト-ヒト感染によるので、その予防は感染源のヒトとの接触を さけることが重要である。 • 弱毒化生ワクチンが日本、韓国、米国などで認可されているが、任意接 種のワクチンの扱いである。1回の接種での抗体獲得率は約92%である 。米国では、1歳以上で水痘の既往のない全ての小児に対してワクチン 接種が推奨されている。 • 副反応としては、軽度の局所の発赤、腫脹'小児では19%、成人では24% (が主なものである。水痘様発疹の出現は4~6%とされているが、発疹の 個数は5個程度でほとんどは斑丘疹である。全身性の副反応は稀である 。 • 現在日本で流通している水痘ワクチンはゼラチンを含まない製剤である 。水痘ワクチンは、麻疹・風疹などのワクチンと異なり、ワクチン接種によ って抗体が獲得されても、水痘ウイルスに暴露した時に発症することが 10~20%程度ありうる。 • ただし、この場合の水痘は極めて軽症で発疹の数も尐なく、非典型的で あることが殆どである。 204 205 感染症法における取り扱い '2003年11月施行の感染症法改正に伴い更新( • 水痘は5類感染症定点把握疾患に定められており、全国 約3,000カ所の小児科定点より毎週報告がなされている。 報告のための基準は以下の通りとなっている。 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が 疑われ、かつ、以下の2つの基準を満たすもの。 1. 全身性の丘しん性水疱しんの突然の出現 2. 新旧種々の段階の発しん'丘しん、水疱、痂皮(が同 時に混在すること ○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判 断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病 原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断された もの 206 学校保健法での取り扱い • 第二種の伝染病に属する。登校基準は以下 の通りである。 ○すべての発疹が痂皮化するまで出席停 止とする。ただし、病状により伝染のおそれが ないと認められたときはこの限りではない。 207 注意 ■かゆみ:皮膚があたたまっているとかゆみが強くなります。ひっかくのは、できるだけやめさせ て下さい。爪は短めに。'かゆみどめの飲み薬、塗り薬を使うこともあります。( ■ 家族にもうつる:まだみずぼうそうにかかったことのないきょうだいや大人にうつします。 ■ 食べ物:口の中にぶつぶつができて痚いときは、熱いもの、辛いもの、すっぱいものは避け て下さい。 ■ 入浴:熱がなければかまいません。とくに夏場はとびひになりやすいので、シャワーなどを使 って皮膚を清潔にしておいて下さい。 ■きょうだいがいる時 • みずぼうそうは感染力が強いので、きょうだいがいる家庭は要注意。 感染した直後にワクチン接種を受けるか、2週間の潜伏期のあいだに抗ウイルス剤を使う と、軽くすませることができます。 • お母さんからの移行免疫はあまりなく、生後1か月くらいから、もうかかりやすくなっていま す。'赤ちゃんがかかると、症状が強い!( 最近は、大人で免疫をもっていない方も多いようです。心配な方は、血液の検査等で、数日で 確かめることができます。 ■保育園・学校 通常は1週間ほどお休みになります。ブツブツが全部かさぶたになれば、もう伝染力はありませ んので、登園・登校が許可されます。 208 注意2 • 水痘では、小児に一部の解熱剤'げねつざい(を併用する と、重篤な脳障害'ライ症候群(をおこす可能性があるとし て、使用禁止になっているものがあります。 15歳未満のみずぼうそうには、アスピリンとその類似薬は 使用ができません。'インフルエンザにも同じ( • アスピリンは通常の解熱剤としては使用していませんが、 アスピリン類似薬としてはPL顆粒、幼児用PL顆粒、LLシ ロップ、PA錠などがそれに相当します。これらの薬剤はみ ずぼうそうの子どもたちへは使用しません。 • 解熱剤の中でも問題がないであろうといわれているのは、 アセトアミノフェン'カロナール内服、アルピニー坐薬(など です。 209 こんなときはもう一度診察を ■発疹が赤くはれて化膿したとき。 ■ぼんやり、ぐったり、元気がないとき 。 ■4日以上熱が続くとき。 210 ??? 211 風疹 212 風疹 213 風疹'rubella( • 風疹'rubella(は、発熱、発疹、リンパ節腫 脹を特徴とするウイルス性発疹症である。 • 近年国内においてもその発生は減尐傾向に あるが、まれに見られる先天性風疹症候群 予防のために、妊娠可能年齢およびそれ以 前の女性に対するワクチン対策が重要な疾 患である。 214 215 216 疫学 • 我が国では風疹の流行は2~3年の周期を有 し、しかも10年ごとに大流行がみられていた。 • 最近では、1976、1982、1987、1992年に大き い流行がみられているが、次第にその発生 数は尐なくなりつつあり、流行の規模も縮小 しつつある。 • 季節的には春から初夏にかけてもっとも多く 発生するが、冬にも尐なからず発生があり、 次第に季節性が薄れてきている。 217 病原体 • 風疹ウイルスはTogavirus科Rubivirus属に属 する直径60~70nmの一本鎖RNAウイルスで、 エンベロープを有する。 • 血清学的には亜型のない単一のウイルスで ある。 • 上気道粘膜より排泄されるウイルスが飛沫を 介して伝播されるが、その伝染力は麻疹、水 痘よりは弱い。 218 臨床症状 • 感染から14~21日'平均16~18日(の潜伏期間 の後、発熱、発疹、リンパ節腫脹'ことに耳介後 部、後頭部、頚部(が出現するが、発熱は風疹 患者の約半数にみられる程度である。 • 3徴候のいずれかを欠くものについての臨床診 断は困難である。 • 溶血性レンサ球菌による発疹、典型的ではない 場合の伝染性紅斑などとの鑑別が必要になり、 確定診断のために検査室診断を要することが尐 なくない。 219 220 221 222 223 • 多くの場合、発疹は紅く、小さく、皮膚面よりやや隆起して全身にさ らに数日間を要することがある。 • 通常色素沈着や落屑はみられないが、発疹が強度の場合にはこ れらを伴うこともある。 • リンパ節は発疹の出現する数日前より腫れはじめ、3~6週間位持 続する。カタル症状を伴うが、これも麻疹に比して軽症である。 • ウイルスの排泄期間は発疹出現の前後約1週間とされているが、 解熱すると排泄されるウイルス量は激減し、急速に感染力は消失 する。 • 基本的には予後良好な疾患であり、血小板減尐性紫斑病 '1/3,000~5,000人(、急性脳炎'1/4,000~6,000人(などの合併症 をみることもあるが、これらの予後もほとんど良好である。成人で は、手指のこわばりや痚みを訴えることも多く、関節炎を伴うことも ある'5~30%(が、そのほとんどは一過性である。 224 風疹'三日はしか(と麻疹'はしか(のちがい • 発熱と発疹が出るタイミングが違う。 はしかは高熱がいったん下がった後に発疹が出ます。 一方、風疹は ●発熱と発疹がほぼ同時に現れる。 ●発熱は比較的低く、熱が出ないケースもある ●発疹はまず耳の後ろや顔にでて、頭、胴体、手足へと広がる。 手足に出る頃に顔の発疹は消え始め、3日前後で消える ●発疹が出る数日間前からリンパ節が腫れ、発疹が出ている間 がもっとも症状が強い。2~3週間で回復する ●コプリック班がでる事はない ●全身のだるさ、頭痚、食欲不振、目の充血、鼻汁、咳、喉の痚み 等の症状もでる ●発疹の後の色の色素沈着はない 225 皮疹の違い • 麻疹はそれぞれの紅い斑点'紅斑といいます(がお互いに くっつき合い、次第に地図のような大きな斑点になってい き、典型的な経過では身体全体が紅くなって、その紅い皮 膚の間に普通の皮膚の色が残っているような像となります。 • 風疹では、おのおのの発疹は決して融合せず'ひっつか ず(、最後までパラパラとした感じの発疹のまま経過します '豹の斑点を紅くしたようなものを想像して頂ければ結構 です(。 • 麻疹の発疹:ぼたん雪、風疹の発疹:粉雪 「麻の服にボタン、風に舞う粉雪」 226 先天性風疹症候群 • 妊娠前半期の妊婦の初感染により、風疹ウイルス感 染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈 する先天性風疹症候群'congenital rubella syndrome: CRS(が高率に出現することにある。 • 妊娠中の感染時期により重症度、症状の発現時期が 様々である。 • 先天異常として発生するものとしては、先天性心疾患、 難聴、白内障、網膜症などが挙げられる。 • 先天異常以外に新生児期に出現する症状としては、 低出生体重、血小板減尐性紫斑病、溶血性貧血、間 質性肺炎、髄膜脳炎などが挙げられる。 • 以後に発症するものとしては、進行性風疹全脳炎、糖 尿病などがある。 227 CRS の診断方法は、症状、ウイルス遺伝子検出以外に、IgM 抗体は胎盤通過をしないので臍帯血や胎児血からの風疹IgM 抗体 の検出が有れば感染の証拠である。 出生前に感染した乳児は、出生後数ヶ月感染力を持ち続ける。 典型的な三大症状は、心奇形。聴力障害として難聴。眼の異常として白内障。 228 病原診断 • ウイルスの分離が基本であるが通常は行われず、保 険適応でもない。 • 血清診断は保険適応にもなっており、一般的に用いら れている。 • 赤血球凝集抑制反応'HI(、中和法'NT(、補体結合法 'CF(、酵素抗体法'ELISA(などの方法があり、以前に はHI法が主流であった。その場合、急性期と回復期の 抗体価で4倍以上の上昇により診断する。 • 最近ではELISAが使われるようになり、急性期で特異 的IgM抗体が検出されれば、単一血清での診断も可 能である。 • CF法は感染後比較的早期に陰性化するので、抗体保 有の有無をみるための検査としては不向きである。 229 治療・予防 • • • • • • 特異的治療法はなく、対症的に行う。発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痚剤を 用いる。 弱毒生ワクチンが実用化され、広く使われている。MMR'麻疹・おたふくかぜ・風 疹(混合ワクチンとして使用している国も増加している。 我が国では平成6年以前は中学生の女子のみが風疹ワクチン接種の対象であっ たが、平成6年の予防接種法改正以来、その対象は生後12カ月以上~90カ月未 満の男女'標準は生後12カ月以上~36カ月以下(とされた。 また経過措置として、平成15年9月までの間は、12歳以上~16歳未満の男女に ついてもワクチン接種の対象とされた。 現時点での予防接種率をみると、風疹の予防接種を受ける幼児の数は増加した が、逆に中学生での接種率は減尐し、対策の強化が課題となっている。平成8年 度の伝染病流行予測事業による調査では、我が国における風疹抗体保有状況 をみると、小学校高学年から中学生年齢の女子の抗体陽性率は低く、12歳女子 における風疹抗体陽性率は52%にすぎない。 風疹の流行の規模は縮小しつつあるが、発生が消えたわけではない。風疹に対 する免疫を有しない女性が妊娠した場合に風疹の初感染を受ければ、先天性風 疹症候群発生の危険性が高いことは明らかであり、現時点では幼児期のみなら ず中学生に対しても風疹ワクチン接種を積極的にすすめる必要がある。 230 感染症法における取り扱い '2003年11月施行の感染症法改正に伴い更新( • 風しんは5類感染症定点把握疾患に定められており、全国 約3,000カ所の小児科定点より毎週報告がなされている。 報告のための基準は以下の通りとなっている。 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が 疑われ、かつ、以下の3つの基準のすべてを満たすもの 1. 突然の全身性の斑状丘しん状の発しん 'maculopapular rash(の出現 2. 37.5℃以上の体温 3. リンパ節腫脹 ○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判 断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病 原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断された もの。 231 学校保健法における取り扱い • 風疹は第二種の伝染病に定められており、 登校基準としては、紅斑性の発疹が消失する まで出席停止とする。 • なお、まれに色素沈着を残すことがあるが、 その段階で出席停止とする必要はない。 232 ??? 233 麻 疹 234 麻疹 235 麻疹'measles( • 麻疹'measles(は、感染性は非常に高く、感 受性のある人'免疫抗体を持たない人(が暴 露を受けると90%以上が感染する。 • 年齢では1歳にピークがあり、約半数が2歳以 下である。 236 237 238 239 疫 学 • • • • • • • • • ヒトからヒトへの空気感染'飛沫核感染(の他に、さらに、飛沫感染、接触感染など様々な感染経路で感 染する。 我が国では通常春から夏にかけて流行する。 過去1984 年に大きな全国流行があり、1991年にも流行があったがやや小さく、その後大きな全国流行 はなかった。 しかし、毎年地域的な流行が反復している。 罹患者の95%以上が予防接種未接種である。近年の推移を見ると、小児科定点から報告された麻疹患 者数は、1999 '平成11(年には過去最低となっていたが、2001'平成13(年は過去10 年間では1993 '平 成5(年に次いで二番目に大きい流行であった。2001年は当初より高知県、奈良県、九州地方などで流 行がみられ、3月に入って北海道でも患者数が急増した。 2000 年度同調査から感受性人口を推計すると、日本全国で300 万人弱の感受性者が存在していると考 えられる。 毎年地域的な流行が反復している。感染症発生動向調査では、国内約3,000の小児科定点から年間1~ 3万例の報告があり、実際にはこの10倍以上の患者が発生していると考えられる。この中で2歳以下の罹 患が約50%を占めており'図1(、罹患者の95%以上が予防接種未接種である。近年の推移を見ると、小 児科定点から報告された麻疹患者数は、1999 '平成11(年には過去最低となっていたが、2001'平成13( 年は過去10 年間では1993 '平成5(年に次いで二番目に大きい流行であった。 年齢階級別で多いのは、20~24 歳、20歳未満、25~29歳などである。 発症予防には麻疹ワクチンが有効であるが、感染症流行予測調査によると国内での麻疹ワクチン接種 率は低く、1歳児の接種率は約50%である。 2000 年度同調査から感受性人口を推計すると、日本全国で300 万人弱の感受性者が存在していると考 えられる。 240 病原体 • 原因ウイルスである麻疹ウイルスはParamyxovirus 科Morbillivirus 属に属し、直径100~250nmのエンベロープを有する一本鎖RNA ウイルスである。 • A からH のcrade に分類され、genotype は22種類報告されている。 日本で主に流行しているのはD3, D5 タイプであり、ワクチン株はA タイプである 。 • 麻疹ウイルスのレセプターは、補体調節蛋白であるCD46 ' membrane cofactor protein:MCP(であると発表された 。 2000年、Tatsuoらにより麻疹ウイルスのレセプターがリンパ組織 に特異的に発現する膜蛋白SLAM'signaling lymphocyte activation molecule;CDw150(であることがNature に発表され 、SLAM は未熟 胸腺細胞、活性化されたリンパ球・単球、成熟樹状細胞に発現し、 リンパ球の活性化とIFN‐γ産生制御を誘導すると報告されている。 241 臨床症状 <前駆期'カタル期(> 感染後に潜伏期10~12日を経て発症する。38 ℃前後の発熱が2~4日 間続き、倦怠感があり、不機嫌となり、上気道炎症状'咳嗽、鼻漏、くしゃ み(と結膜炎症状'結膜充血、眼脂、羞明(が現れ、次第に増強する。 • 乳幼児では消化器症状として下痢、腹痚を伴うことが多い。 • 発疹出現の1~2 日前頃に頬粘膜の臼歯対面に、やや隆起し紅暈に囲 まれた約1mm 径の白色小斑点'コプリック斑(が出現する。 • コプリック斑は診断的価値があるが、発疹出現後2日目の終わりまでに 急速に消失する。 • また、口腔粘膜は発赤し、口蓋部には粘膜疹がみられ、しばしば溢血斑 を伴うこともある。 242 臨床症状 <発疹期> • カタル期での発熱が1 ℃程度下降した後、半日くらいのうち に再び高熱'多くは39.5 ℃以上(が出るとともに'2峰性発熱( 、特有の発疹が耳後部、頚部、前額部より出現し、翌日には 顔面、体幹部、上腕におよび、2 日後には四肢末端にまでお よぶ。 • 発疹が全身に広がるまで、発熱'39.5 ℃以上(が3~4日間続 く。 • 発疹ははじめ鮮紅色扁平であるが、まもなく皮膚面より隆起 し、融合して不整形斑状'斑丘疹(となる。 • 指圧によって退色し、一部には健常皮膚を残す。発疹は次 いで暗赤色となり、出現順序に従って退色する。発疹期には カタル症状は一層強くなり、特有の麻疹様顔貌を呈する。 243 臨床症状 <回復期> • 発疹出現後3~4日間続いた発熱も回復期に入ると解熱 し、全身状態、活力が改善してくる。 • 発疹は退色し、色素沈着がしばらく残り、僅かの糠様落 屑がある。カタル症状も次第に軽快する。 合併症のないかぎり7~10 日後には回復する。患者 の気道からのウイルス分離は、前駆期'カタル期(の発 熱時に始まり、第5 ~6 発疹日以後'発疹の色素沈着以 後(は検出されない。 • この間に感染力をもつことになるが、カタル期が最も強 い。 244 245 合併症 '1(肺炎:麻疹の二大死因は肺炎と脳炎であり、注意を要する。 [ウイルス性肺炎] 病初期に認められ、胸部X 線上、両肺野の過膨張、瀰漫性の浸潤影が認められる。また、片側性の大葉性肺炎の像を呈する場合もあ る。 [細菌性肺炎] 発疹期を過ぎても解熱しない場合に考慮すべきである。抗菌薬により治療する。原因菌としては、一般的な呼吸器感染症起炎菌であ る肺炎球菌、インフルエンザ菌、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌などが多い。 [巨細胞性肺炎] 成人の一部、あるいは特に細胞性免疫不全状態時にみられる肺炎である。肺で麻疹ウイルスが持続感染した結果生じるもので、予後 不良であり、死亡例も多い。発疹は出現しないことが多い。本症では麻疹抗体は産生されず、長期間にわたってウイルスが排泄さ れる。発症は急性または亜急性である。胸部レントゲン像では、肺門部から末梢へ広がる線状陰影がみられる。 '2(中耳炎:麻疹患者の約5 ~15%にみられる最も多い合併症の一つである。細菌の二次感染により生じる。乳幼児では症状を訴えな いため、中耳からの膿性耳漏で発見されることがあり、注意が必要である。乳様突起炎を合併することがある。 '3(クループ症候群:喉頭炎および喉頭気管支炎は合併症として多い。麻疹ウイルスによる炎症と細菌の二次感染による。吸気性呼吸 困難が強い場合には、気管内挿管による呼吸管理を要する。 '4(心筋炎:心筋炎、心外膜炎をときに合併することがある。麻疹の経過中半数以上に、一過性の非特異的な心電図異常が見られると されるが、重大な結果になることは稀である。 '5(中枢神経系合併症:1,000例に0.5~1例の割合で脳炎を合併する。発疹出現後2~6日頃に発症することが多い。髄液所見としては、 単核球優位の中等度細胞増多を認め、蛋白レベルの中等度上昇、糖レベルは正常かやや増加する。麻疹の重症度と脳炎発症に は相関はない。患者の約60%は完全に回復するが、20~40%に中枢神経系の後遺症'精神発達遅滞、痙攣、行動異常、神経聾、 片麻痺、対麻痺(を残し、致死率は約15%である。 '6(亜急性硬化性全脳炎'subacute sclerosing panencephalitis :SSPE(:麻疹ウイルスに感染後、特に学童期に発症することのある中枢 神経疾患である。知能障害、運動障害が徐々に進行し、ミオクローヌスなどの錐体・錐体外路症状を示す。発症から平均6~9カ月 で死の転帰をとる、進行性の予後不良疾患である。発生頻度は、麻疹罹患者10万例に1人、麻疹ワクチン接種者100万人に1人で ある。 246 病原診断 • ウイルス分離、麻疹特異的IgM 抗体価の測定、急性期と回復期の ペア血清での麻疹IgG 抗体の有意な上昇をもって診断可能である 。従来日本では臨床症状のみで診断することが多かったが、今後 は実験室診断が必要であると考える。 • 近年の流行ウイルス株を調べたり、ウイルスのH抗原の変異など を検索する分子疫学的な調査のために、ウイルス分離は重要で ある。通常、咽頭拭い液、血液などから分離されるが、カタル期か ら発疹出現後3 日以内の分離率が高い。 • 抗体測定方法には、赤血球凝集抑制法'hemagglutination inhibition :HI 法(、中和法、ゼラチン粒子凝集法'particle agglutination :PA 法(、ELISA 法などが用いられている。 247 治療・予防 • 特異的治療法はなく、対症療法が中心となる が、中耳炎、肺炎など細菌性の合併症を起こ した場合には抗菌薬の投与が必要となる。 • ワクチンによる免疫獲得率は95%以上と報告 されており、有効性は明らかである。 • 接種後の反応としては発熱が約20~30%、発 疹は約10%に認められる。いずれも軽症であ り、ほとんどは自然に消失する。 248 感染症法における取り扱い '2003年11月施行の感染症法改正に伴い更新( • 麻しん'成人麻しんを除く(は5類感染症定点把握疾患に定められ ており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告がなされてい る。報告のための基準は以下の通りとなっている。 ○診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、 かつ、以下の3つの基準を全て満たすもの 1. 全身の発しん'回復期には色素沈着を伴う( 2. 38.5 ℃以上の発熱 3. 咳嗽、鼻汁、結膜充血などのカタル症状 なお、コプリック斑の出現は診断のための有力な所見となる ○上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、 症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、病原体診断や血清学 的診断によって当該疾患と診断されたもの。 249 学校保健法 • 学校保健法に基づく第二種の伝染病に属し、 登校基準としては、「発疹に伴う発熱が解熱 した後3日を経過するまで出席停止とする」と 述べられている。 250 ??? 251 流行性耳下腺炎 'おたふくかぜ( 252 流行性耳下腺炎 253 流行性耳下腺炎'おたふくかぜ(とは • • • • • 流行性耳下腺炎'おたふくかぜ(は 、唾液を通じての空気感染または 、接触感染でうつります。そのため 、家族や保育所、幼稚園、小学校 など子供同士が密接に接触すると ころで流行。 潜伏期はおおよそ2~3週間で、感 染力は比較的弱く、不顕性感染' 感染しているのに症状が出ない(も 、約30-40%。 不顕性感染は、女性や乳幼児に 多いと言われています。 感染する年齢としては、1~2歳の 乳幼児期は比較的尐なく 5-10歳頃が一番多い。'おおよそ 85%は15歳以下です。( なお母親からの抗体は、生後10ヶ 月くらいまでは有効だと言われて います。 254 255 症状 • 耳下腺のはれ:耳下腺部'耳たぶ~耳の前のあごのラインに 沿って(が腫れます。ふつうは、片側から始まり、1~2日のうち に両側が腫れてくる。'ただ4人に1人くらいは、片側だけしか腫 れない人がいます(腫れは、痚みがありますが、赤くはなったり はせず、3日くらいでピークをむかえ、1週間から10日程度で消 失。 • 発熱: 約80%の人に発熱があります。中程度の発熱が多く、 発熱期間も合併症がなければ、1~3日程度が多いようです。 発熱に伴い、頭痚や腹痚がでることもあります。 • 食欲低下: 耳下腺が腫れて痚いため、食べ物がかみにくい、 飲み込みにくいなどの症状が出ることもあります。 • 唾液腺のはれ: 約50%の人は、顎下腺や舌下腺'顎の下、顎と 首の間にある(などの 唾液腺が腫れます。耳下腺のはれと同じで痚みを伴います。 256 流行性耳下腺炎'おたふくかぜ(の合併症 '1(無菌性髄膜炎 ・他の無菌性髄膜炎と同じ症状で、発熱、頭痚、嘔吐、けいれんなどが症状です。 ・頻度は、おたふくかぜの2-10%と言われています。ただし髄膜炎の症状のない場合でも、 髄液の検査で、異常を示すものがけっこうあります。 ・発症時期は、耳下腺が腫れ出してから4日以内が50~60%となっていますが、 耳下腺が腫れ出す前'20%(や耳下腺が腫れない場合'4~5%(もあります。 ・予後は良好で、大部分は2週間程度で後遺症なく治ります。 '2(脳炎・脊髄炎 ・頻度的には0.2%程度と言われています。 ・2~3日で急激に発症し、髄膜炎の症状の他に、麻痺や意識障害なども加わります。 '3(精巣'睾丸(炎・卵巣炎 ・思春期以前はまれ。ほとんどは思春期以降に合併します。 ・精巣'睾丸(炎は、成人男性の10~30%の頻度で起こり、耳下腺腫脹後 4-10日くらいに多いとされます。主な症状は、発熱、頭痚、悪心、精巣'睾丸(の 激痚・腫れ、陰嚢の発赤などで、3-7日くらい続きます。まれに睾丸の萎縮を起こすことも ありますが、片側だけのことが大部分なので不妊症となることはまれです。 ・卵巣炎の症状は下腹部痚が多いようです。 '4(膵臓炎 ・合併率は数%といわれています。 ・7-10日目頃に多く発熱、上腹部痚、悪心、嘔吐、下痢などの膵炎の症状があります だいたいは1週間程度で治ります。以前は糖尿病との関連が言われていましたが 最近ではあまり関係がないと言う意見が多いようです。 '5(聴力障害'難聴( ・合併率は 0.4%以下といわれ、難治性で、回復しません。 ・3~7日目頃に多く、突然めまい、耳鳴り、嘔吐、ふらつきなどとともに 耳が聞こえにくくなります。 ・多くは、片側の耳だけのため、日常生活には差し支えないことが多い。 '6(心筋炎 ・おもに成人の合併症で、頻度としてはまれです。 ・胸痚、頻脈、呼吸困難などの症状が、1~2週後から出現し、 突然死することもあります。 257 いつまでうつりますか? • はっきりと確定していませんが、耳下腺が腫れる3日前から 、耳下腺が腫れだして4日目くらいまでが感染期間と考えら れています。 • また不顕性感染'感染しているのに症状が出ない(の人から も感染することがあり、集団発生はなかなか防ぎきれません 。 ●いつから登校・登園してよいか 学校保健法で「耳下腺の腫脹が消失するまで」と決められて います。ふつう耳下腺の腫脹は6~10日間程度続きます。 しかしいろいろな合併症の可能性もありますので、無理はし ないことが大事です。 258 ??? 259 伝染性軟属腫'みずいぼ( 260 伝染性軟属腫 261 伝染性軟属腫 • 伝染性軟属腫ウィルスによる感染でおこるい ぼの一種。 • 詳しい感染経路は不明だが、プールなどで肌 と肌が接触して移ることが多いといわれてい る。 • 1度かかると免疫ができるので、再びかから ないといわれている。 • 春から秋にかけてよく見られる。 262 • 伝染性軟属腫ウィルスによる接触感染。 • いぼが破れて中のウィルスが飛び散るとそれ に触れたほかの皮膚や他人に移る。 • 感染力は非常に弱い。 • アトピーなどで皮膚が傷つき易い人には感染 し易いといわれている。小児に多い。 • 放っておいても1年以内に95%の人が自然に 治癒し、平均6~7ヶ月で治癒すると言う報告 がある。 263 症状 • 直径1~3mmくらいの白い塊(こ れがウィルスの塊です(を含んだ 表面が滑らかないぼが、胸・わき の下・肘・ひざなどに出来る。大 きいものではえんどう豆大になる こともある。 • よく見ると中央にくぼみがある。 痒みを伴うこともある。 • いぼの色は他の皮膚とほとんど 変わりないが、ひっかいて感染を おこすと赤くなったりする。 • 1個だけのことは尐なく数個から 数十個くらい出来るのが普通。 264 治療 • 放っておいても数ヶ月から1年くらいで、免疫がつき自然に治るが、治る 時期がはっきりしない。水いぼは悪性ではないが、他人にも移り、どんど ん増えることもあるので数の尐ないうちに除去するのが一般的といえる。 除去の方法は 1(特殊なピンセットで白い塊をつまんで取り除く 2(硝酸塩などの薬でとる。 • 飲み薬で治療する方法。 漢方薬の「ヨクイニン」という生薬がいぼに効果がある。しかし飲んですぐ いぼが消えるわけではなく、飲んでいるといぼの増加が押さえられたり、 いぼの消失が早まるといった効果が見られる。 粉・錠剤などがあり、個人差はあるが2週間ほどで効果が現れてくる。 この「ヨクイニン」は薬局などにうっている「はと麦茶」に含まれており、そ れを含むお茶でも効果があるようです。 265 家では • 清潔にして、爪を短くしておく。 • 水いぼのウィルスが付着していると思われるタ オルなどの共用はしないほうがいい。 • 水いぼを除去したあとは、傷になっています。そ こからばい菌が入り込む危険があるので、指示 された軟膏(抗生剤入りの物(があれば傷が乾く まで塗っておく。 • 処置をした日はお風呂は控えた方がいい。 266 学校保健法 • 学校保健法施行規則が一部改正され、平成11年4月1日より施行されています 。それにより、「水イボ」は単に「通常登園停止の措置は必要ないと考えら れる伝染病」とされたのみならず、「原則としてプールを禁止する必要は ない」ということも公に認められました。従って大手を振って幼稚園や学校に 行けることになったのです。「水イボ」はポックスウィルス群に属している伝染性軟 属腫ウィルスが直接皮膚に固着することによって発生する感染症です。プールの 水などによる間接的な伝染はないと考えられています。健常な皮膚であれば単 に付着するだけでは「うつる」恐れはなく、伝染しやすいのは微細な「キズ」がある とか、「肌荒れ」や「湿疹」などがある部位といえます。従って綿100%の肌着を 使用し、スキンケアに留意し、肌荒れや湿疹などが生じたら早急に治療を受ける ようにすることが最高の予防法となります。水イボの治療はピンセットでつまみ取 ることが主流でした。なぜなら、園で預かってもらえないため、やむを得なかった からでした。今ではこのような必要は原則としてありません。先に述べました「最 高の予防法」を実行すれば、数ヶ月から1年前後には、自然に脱落して治ってし まいます。従って長期的に考えれば水イボは全く気にする必要はなくなったとい えるでしょう。 267 ??? 268 269 アカントアメーバ角膜感染症 • アメーバの一種であるアカントアメーバが角 膜に感染して起こる病気です。 • 角膜の感染症のなかでは最も重症です。 270 271 コンタクトによる角膜感染症が増加 • コンタクトレンズ使用者の間でアカントアメー バ角膜感染症が増加しているという。 • アカントアメーバ角膜感染症は充血、視力障 害、強い眼痚等の症状を示し、失明に至る恐 れもある難治性の感染症。 • ソフトコンタクトレンズ用消毒剤の消毒効果の みでは角膜感染症の原因となるアカントアメ ーバという微生物を完全には消毒できず、感 染防止のためにはレンズの「こすり洗い」もあ わせて行うことが重要である。 272 症状 • 非常にゆっくりと進行しますが、他の感染に 比べて眼の痚みが相当強いのが特徴で、涙 もかなり出ます。 • また、白眼の充血も非常に強くなります。 • 視力の低下は初期は軽度ですが、徐々に見 えにくくなり、進行すると重度の視力障害にな ります。 • 目やには軽度です。 • 通常は片眼性です。 273 治療 • アメーバに対する特効薬がないため、抗真菌 薬を使用しますが、それに加えて感染した角 膜表面を何度も削る治療を併用する必要が あります。 • 根治には何カ月もかかることがまれではあり ません。 • どうしても治らない場合は、角膜移植を余儀 なくされる場合もあります。 274 ??? 発熱、結膜炎、喉の腫れ 275 咽頭結膜熱 276 咽頭結膜熱 • 咽頭結膜熱'いんとうけつまくねつ(とはアデ ノウイルスによる感染症。 • プールの水を媒介として感染しやすいことか ら「プール熱」や咽頭結膜炎ともいわれる。 277 症状 • 感染後4~5日間の潜伏期間を経て、突然、38~ 40℃の高熱が4日~1週間続く。 • 喉の腫れと結膜炎を伴う。喉の腫れがひどい場 合は扁桃腺炎になることもある。 • 結膜炎を伴う場合は、目が真っ赤に充血する。 発熱、結膜炎、喉の腫れの3つの症状は、必ずし も同時に現れないことが多いので、注意。 • 3日間以上続く38℃以上の発熱があれば、プー ル熱を疑い、内科に診てもらったほうが良い。 278 感染経路 • ウイルスは感染力が非常に強く、口、鼻、喉、 目の結膜から体内に入り感染する。 • 一般的には乳幼児が多く感染する。 • 主な感染経路としては保育園、幼稚園、学校 等のプールで感染することが知られるが、感 染者のくしゃみや、感染者が使っていた食器、 タオルを共用することによって感染することも ある。 279 280 281 282 原因 • アデノウイルス3型でおこる。 283 治療 • 対症療法が中心 284 予防 • 外出から帰ってきたら石鹸で丁寧に手洗いす る。 • プールから上がったときには洗眼、手洗い、う がいをする。またプールの水もきれいに洗い 流す。 • タオル、洗面器、食器は共有しない。 • 院内感染を予防するために、外来入り口を分 けている病院も多い。患者が触ったところは、 診療後にアルコール等で消毒される。 285 休み • 学校保健法施行規則では、主要な症状がな くなってからも2日間は原則として出席停止と なっている。 286 ??? 大量の眼脂'目ヤニ(、涙、結 膜'白目(の充血、異物感'痚 み(、かすみ 287 EKC 288 流行性角結膜炎 • 流行性角結膜炎'りゅうこうせいかくけつまく えん((EKC:epidemic keratoconjunctivitis)はウ イルスで起こる急性の結膜炎のことで、別名 「はやり目」ともいわれ、感染力が強い。 • 学校保健安全法上の学校感染症の一つで、 感染の恐れがなくなるまで登校禁止となる。 289 原因 • 主にアデノウイルス8型により引き起こされる が、19型・37型によっても引き起こされる。 290 症状 • 以前はプールでうつる夏の病気だったが、近 頃では一年中見られるようになった。 • 1~2週間程度の潜伏期の後、発症する。結 膜炎+角膜炎を起こすため、角結膜炎と呼ば れる。また全例ではないが、耳前リンパ節の 腫脹を伴う。 291 結膜炎 • 充血し、眼脂'めやに(が出る'ひどいときには「めや に」で目が開かないくらいになる( • 片目発症後、4~5日後に反対側の目も発症する場合 が多い • 涙目になったり、まぶたがはれることもある • 視力が尐し低下する場合がある • 症状が重くなると、耳前リンパ節が腫れて触ると痚み を伴う • 症状が強い人の場合は、まぶたの裏の結膜に白い膜 ができ、眼球の結膜に癒着をおこす • 症状が治まるまで約2~3週間かかる 292 角膜炎 • 透明な角膜に点状の小さな混濁が生じ、眼痚 を感じる • 眩しさやかすみを感じる • 視力障害を感じることもある • 黒目の表面がすりむける角膜びらんを伴い、 目がゴロゴロしたり、眼痚がひどくなる • 症状が数ヶ月~丸一年に及ぶこともある 293 大量の眼脂'目ヤニ(、涙、結 膜'白目(の充血、異物感'痚 み(、かすみ… → EKC 294 295 治療 • ウイルスに対する有効な薬剤はない。 • 充血・炎症に対しステロイドの点眼を行い、細 菌の混合感染の可能性に対しては、抗菌剤 の点眼を行う。 296 予防 • 主として手を介した接触感染で、ウイルスに感染した眼を 手で触れると、手にウイルスが付着し、そのまま、いろんな 物に触れると、その物にウイルスが付いて、他の人がそれ に触れて感染するという経路がほとんどとなる。 • 手をよく洗い、手で目をこすったり、顔に触れたりしないこ と。 • 休養をとって体力をおとさない。 • 風呂は最後に入り、その湯はすぐに捨てる。 • タオル類の共有はやめる。 • 治ったように見えても、しばらくの間は外出などは控える。 • 流行時には、院内感染による流行拡大もあるため、乳幼 児は、診察を受けるとき以外は病院につれて行かない。ま た、入院中の患者が感染した場合、急性期でない限り強 制退院の対象となり得る。 297 ??? 激しい出血症状を伴う結膜炎 298 急性出血性結膜炎 • 激しい出血症状を伴う結膜炎 である。 • アポロが月面着陸した1969年に最初の世 界的流行がありましたので'アポロ病'のニック ネームがついています。 299 原因 • コクサッキーウイルスA24変異株とエンテロ ウイルス70と呼ばれるウイルスが原因です。 300 症状 • 突然の眼の痚み・まばゆい・眼の異物感 • 1~3日の潜伏期の後、眼の痚み、めやに、眼 の充血などで突然始まり、まぶたの腫れや結膜 下出血'白目にポツポツとした点状の出血(が認 められます。 • 片目が発症した後、1~2日の内に他方の眼に もうつります。 全身症状としては頭痚、発熱、呼吸器症状など がみられます。 約1週間で治ります。 301 休み • 医師において伝染のおそれがないと認めら れるまで出席停止 • なお、このウイルスは糞便中に比較的長く '1ヶ月程度まで(排泄されることがあるが、こ の場合の感染力はさほど強くなく、手洗いな どの一般的な予防方法の励行などを行えば 登校は可能である。 302 予防 • 涙・めやにに触れた手などから感染しますの で、手をよく洗い、目に触れるようなものは、 人と共有しないようにしましょう。 303 304 305 ??? 306 アレルギー性結膜炎 307 ○流行性角結膜炎:アデノウイルス8、4、37、 19型感染 ○咽頭結膜熱'プール熱(:アデノウイルス3、 4型感染 ○急性出血性結膜熱:エンテロウイルス70型 感染 308 そろそろ 時間がなくなってきました。 309 ガイドラインの使い方 臨床症状 → どう対応するか 疾患確定 → どう対応するか 物事の対応を判断する指標: 標準化 テキストではない 必要最小限の情報しかない 310 熊本城 九州保健福祉大学 薬学部 教授 佐藤 圭創 ご清聴ありがとうございました。 高千穂峡 あゆやな、延岡市 311
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