学校通信12月号 老画家の死と「最後の一葉」 − 展覧会の絵に想う − 校長 村山 孝 ところが、どうだろう、長い長い夜のあいだじゅう、雨は叩きつけるように降り続け 疾風のような風が吹きすさんでいたというのに、煉瓦のかべにはまだ一枚の蔦の葉がし っかりへばりついていた。蔓に残っている最後の一葉だった。−途中省略ー 「最後の一枚だわ」ジョンジイは言った。 『最後の一葉』0・ヘンリー著 芹沢恵・訳 光文社古典新訳新書より引用 0・ヘンリーのこの著作は、約1世紀前の大正9年に日本に紹介され、翻訳書や英語の教 科書などを通じて年配の方々にはなじみの深いものである。 若い絵描きのジョンジイ(ジョアンナの愛称)とスウは大都会の3階建ての煉瓦づくりの の粗末な部屋で暮らすルームメイトである。 ジョンジーは重い肺炎にかかり、往診した医者からは「助かる見込みは十に一つ」と言い 渡される。そして、蔦の葉っぱの数を数えるようになり、最後の一枚が落ちたら、私も行か なくちゃならないと、思い込む。 長いこと絵筆を握っていなかった老人の絵描きは、ジョンジイーとスウの階下に住み、二 人と大の仲良しであった。彼は、飲みすぎるほどジンを飲んでは、そのうちに描く傑作のこ とを口にするのであった。 そして、夜の訪れとともに、また北風が吹き始めた。雨も相変わらず乱打し、・・。 翌朝、スウが1時間だけの睡眠から醒めると、ジョンジーは大きなうつろな目を大きく見 開いて、 「ブラインドを上げて。わたし、見たいの。」とスウに命じた。 すると、どうであろうか。蔦の葉はまだ一枚残っているではないか。最後のひと葉が健気 にもへばりついているではないか。 最後の1枚の葉が落ちた時、着ているものも靴もびしょ濡れで、氷のように冷たくなって 動けなくなって発見されたベアマン老人が描いた傑作であった。 若い画家の命を助けるために、命の危険も省みないで生命をかけて描き上げた最後の一葉 であった。 翌日、医者はスウに「危機は脱した。」と告げる。 この著書は、いま、息をしている言葉でもう一度古典を、というシリーズの中の一冊です。 長い年月をかけて世界中で読み継がれてきた古典を、まれに見るスピードで動いている今こ そ心の赴くままに手にとって・・、という意図で翻訳され、編集されています。ぜひ、子ど もを取り巻く大人にまず読んでもらいたいとものです。そして、子どもたちにも。 今回の展覧会に出展するために子ども達は、思い思いの気持ちを持ちながら平面及び立体 の図工の作品、そして家庭科の作品作りに精を出しました。ある学年はお面を、またある学 年は文学作品をモチーフにして。それぞれの学年のそれぞれの子ども達が、どのような思い を、どのような手法で、どのように表現したのか、ぜひ 子どもの声に耳を傾けて欲しいも のです。声なき声にも耳を傾けるとき、 「没弦の琴の音」が聞こえてくるような気がします。 ムスログスキーの「展覧会の絵」でも聴きながら、ゆったりとした気持ちで。
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