(97年)。 24

二木会・ 第一回 「読書会」 レジュメ
「持続可能な福祉社会 ∼『 もうひ とつの 日本』 の構想」 (広 井良典著)
(1)な ぜ 、 い ま 、 この本 を読む のか ?
我 らの世代は、日本 の高度成長 (60年 安保 、そ の後 の池 田内閣 の 「所得倍増計画」)
の時代 に、経済成長す るカイ シ ャの企業戦士 として、「限 りない経済成長 を」 のために
勤勉 に働 き続 けて きた。 だが、サ ラ リーマ ンの定年 を迎 えた頃に、成長神話 が崩壊 し、
核家族 は孤立 し、社会的に少子高齢化 が急 ピ ッチ で進 んでい る。長期政権 だった 自民党
政治 が終わ り、民主党政権 に代 わ ったが 、制度疲 労 による 「負 の遺産」は簡単 に解消 し
ない。日本 が 見習お うと してアメ リカ型 資本主義 も壁 にぶつ かってい る。我 らは この時
代 を ど う見 るのか。世界的視 点 か ら、読み解 きたい。
(2)高 福祉 のオ ラ ンダの奇跡
北海 の天然ガ ス産 出 によって 、オ ラ ンダは ヨー ロ ッパ で もつ とも社会保 障制度 が充実
した 国 に。 だが、80年 代初 めのオイル・ シ ョックのよ る経済危機 に政府 が対応 できず 、
「オラ ンダ病」に陥 つた。国家財政 の赤字 、労働 コス トの高騰、失業率 12%ま で上 昇。
この後 、 15年 かか って、世界的な 「オ ラ ンダモデル 」 と言われ る国家 に成熟 した。 オ
ラ ンダは 「干拓 の 国」な ので 、伝統的 に国民 の コンセ ンサス を得 る伝統がある。
A、 労働形態 を 「夫 20妻 0」 → 「夫婦 で 1・ 5」 へ。 フル タイ ム (週 36∼ 38時 間 )
労働 か らパ ー トタイム (週 30∼ 35ま たは週 20時 FHR)労 働 を取 り入れて、労働 時間 の
短縮 、 ワー クシェア リングヘ。男性 17%、 女性 68%が パ ー トタイ ム (97年 )。 週休 3
日になるため、家庭労働 や育児 の分担、趣味 の多様化 へ。政労使 間で 82年 に合意。 99
年 には財 政黒字 に転 拠
B,異 文化、異民族 が共存 できる社会。戦後、
1日
植 民地 のイ ン ドネ シア、ス リナ ム な
どの移民を受 け入れ、 トル コ、モ ロ ッコの 労働移民を容認。 83年 の憲法改 正で多民族
国家 と明示 し、異文化教育 も実施。5年 以上 の滞在者 には地方参政権 を授与。 →マ リフ
ァナは麻薬 でない と容認。売春 は合法 ビジネ ス として認 めて課税。 ゲイにも寛容。
(長 坂寿久著 「オランダモ デル 」 日経新聞社 )
(3)広 井論文 が提起す る 「人生前半 の社会保障」
これ まで、福祉問題 と言 えば、高齢者 の 医療、介護 問題 で語 られてきた。少子化高齢
化 が進行す る社会 の 中で、 リス クをは高齢者 に集 中 して い た。 だが 、若年層 (15∼ 24
歳 )の 失業率は 9.5%(全 年齢層 の失業者率 4.7%)。 この 2,3年 、新卒者 の就職率
が極度 の悪化 してい る。「個人 のチ ャ ンスの保障」 をせ よとい う論 が新鮮で説得力。
限 りない経済成長 =生 産 の拡大 (消 費 の拡大で再生産 されて い く)と い うシステ ムが
崩壊。「人生前半 の社会保障」=教 育 へ の公 投資 の重要性 が高まる。著者 の 「若者基礎年
金 」 の提案。 20歳 -30歳 の個人 に月額 4万 円程度 の年金支給 を試案 として提示。
子 ども― 現役時代一 老人 (退 職者)の 図式 か ら、人生 の なか のワー クシ ェア リングヘ。
Q
前期高齢者 の社会還元努力 と、貧 しい 「後期子 ども世代」 を ど うす るか。
☆討論課題一 高校無料化 と朝鮮高校 の 問題。各国に現存す る 「 日本人 学校」 の 問題。
(4)「 定常型社会 」 の資本主義
定常型社会 =ゼ ロ成長社会。 日本だけでな く、世界的な傾 向。
アメ リカ =強 い成長志向 &小 さな政府 (貧 富 の差 の拡大、犯罪率の高 さ)
ヨー ロ ッパ =定 常 (環 境 )志 向 と大 きな政府 (所 得 の平等、犯罪率 の低 さ)
日本 は、 アメ リカ型 社会 を追随。
稲作 の遺伝子― 「集団 が内側 に向かつて 閉 じる」
。
カイ シ ャ、家族 が都会 の なかで ム ラ社会 を作 つてい た。
→異端、外国人 のυFtt。
→古 い共同体 が崩れて個人が孤立 して い る。 →引き こも り現象 も。
「成長 の限界」 メ ドウス理論 =人 間 が現在 と同 じ経済活動 を続 けてい る と、
2030年 頃 に破局 が訪れ る。
ス ロー &オ ープン
(こ
れ まではファス ト&ク ローズ トだ った)の 価値観。
人 のつ なが り
A、
同心円を広げてつ なが る― 「共同体的な一体意識」 →文化
B、
独 立 した個人 としてつ なが る― 「個人 をベ ース とす る公共意識」 →文明
☆討論課題―
a,勤 勉 は美徳 か。 b,我 ら、 この時代 に どう生 きるのか。各人 の
セカン ドライフ・ プラン。
<ま とめ >著 者 は、社会保障、福祉 、医療 、ケア学な どの分野 で 、多 くの著書 を持 ち、
イデオ ロー グ として活躍 している。若干読み に くいの が欠点だが 、これ まで福祉 と言 う
と、後期高齢者 の介護 問題 が 中心だ ったのに、新 たに 「後期子 どもへ の基礎年金 」 と
いつた ことを提案 してい る。実際 にその財源 を確保す るためには、高齢者 の年金削減 、
相続税 の高額化 な ど国民の反対 が多 い政策 が必要にな つて くる。だが 、考 え方 の新 しい
視点 として知 ってお くべ き問題 で、我 らの生 き方 に も関連 して くるのだ。
(レ ポー ター・ 官原安春 )
図表 3-4「 若者基礎年金」構想・試案
内容 :20"歳 のすべての個人に月額 4万 円程度の「若者年金」を支
給する (義 務教育年限が終了する15歳 からとすることもありうる)。
財源 :以 下の組み合わせ
1)退 職年金のスリム化 (特 に高所得高齢者の年金削洩 中期的には
′
L/Jと い う方向 う
部分民営イ
「厚めの基礎年金&報 酬上げ」
の
2)オ 断力随の強化 (榊 ]を 通 した 隣無会 平等Jの 期
3)消 費税そのlL罰 りな原
財政規模 :約 81兆 円 (16965万 人 (2029歳 の人口。2003年 〕X48万 円
*な お、これは現在の年金給付額44制 L円 (2003年 局 よりはるかに
)
小さいことに留意
4
考え方
・給付された著者年金の使途は自由だが、
・4ゴ 舌費
・教育費
のほか、NPOな ど採算の取 りにくい「社会的起判 を支援すると
いう仰面 ももつ。
・
「人生前半の生 割剥到 の社会化により、親からの自立を促すという
趣旨も。
・児童手当の延長という意味合い も (髯 期 日
子ども」期への対応)
…児童手当よりやや給付額が大きいのは、上記「親による扶養」
さいため
の度合い力測ヽ
,「 ベーシック・インカム」の書
1動 的導入という性格も有する。
・基本的なねらいは、降剌電
子どもの時期における機会の平等の溜 剰
であり、かつての時代の 開喘1中 学の調 口 と発想 としては部 、
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