2008年10月発行

<これからの温泉地におけるまちづくりのあり方を考えます>
第3 号
2008 年 10 月発行
発行 ● 事務局: 財団法人日本交通公社 研究調査部 (担当:朝倉・岩崎) 〒100-0005 東京都千代田区丸の内 1-8-2
■第2回「温泉まちづくり研究会」開催(9月5日)
1.観光客満足度調査について
8月中旬から 10 月中旬までの約2ヶ月間、5温泉地で観光客満足度調査(はがき留め置き法と
インターネット調査の併用)を実施し、9月5日の研究会で中間報告を行いました。宿泊先の手配
方法や温泉地への来訪回数、到着・出発時間等、温泉地ごとに大きな特徴があり、また宿泊施設に
ついてはどの温泉地でも比較的高い満足度が得られていることがわかりました。
詳しい調査結果の分析は後日、ニュースレターでご報告します。
2.「これからの入湯税のあり方について」提言素案を議論
当研究会におけるこれまでの議論や釧路公立大学学長小磯修二氏の講演等を踏まえ、温泉地にお
ける観光まちづくりの財源としての「これからの入湯税のあり方」について、2つの項目から成る
提言素案をまとめました。
提言内容の1つ目は、現在の入湯税の使途やその配分比率を見直し、
「観光振興」目的での配分を
高めていく、というものです。法律(地方税法)で定められた使途目的の中で、入湯税を徴収して
いる場所、つまり温泉地へより積極的に還元・投資して欲しい、また温泉地として「持続可能」で
あるために、貴重な資源である泉源の管理・保護に入湯税を活用するべきではないか、という提言
です。
2つ目の提言内容は、現在の入湯税をかさ上げし、増えた分の税収を「観光まちづくり」という
目的を明確にした基金や特別会計として活用するというものです。
「観光まちづくり」のための新
税導入は、すでに入湯税という目的税があるため難しいという現状を踏まえての提言です。納税者
となる観光客に対して目に見える形でかさ上げ分を観光まちづくり事業に活用できれば、観光客の
満足度向上、そしてリピーターの増加にもつながるでしょう。観光まちづくり組織も、しっかりし
た長期ビジョンを策定して事業を実施していく力が求められます。
いずれの提言も国や行政、徴収義務者である宿泊施設、そして納税者となる「観光客」の理解と
協力があって実現するものです。観光まちづくりが温泉地の持続的な発展の土台となることからも、
当研究会では、入湯税を観光まちづくりの財源の一つとして活用するという手法を、全国の温泉地
や行政に提案していきたいと考えています。
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3. 次の研究テーマは「指定管理者」-幹事は由布院温泉
当研究会における2番目の研究テーマは、「指定管理者」です。観光まちづくり組織が、地元施
設の指定管理者に認定されることは、観光地の魅力を高めていく上でも効果があると考えられるた
めです。
今回は、第1回目の議論であり、指定管理者の概要について事務局から説明した後、メンバー温
泉地の指定管理者の現状について簡単に報告して頂きました。
■指定管理者とは
2003 年地方自治法改正により、2006 年9月までに自治体が「公の施設(*)
」の管
理の担い手を民間事業者等多様な主体に拡大する制度。本格的なスタートは 2006 年4
月。民間企業のノウハウの導入により、運営経費の削減やサービスの向上等が期待されて
いる。 *民生施設、衛生施設、体育施設、社会教育施設、宿泊施設、公園、会館、診療施設
●阿寒湖温泉
「双湖台ハウス」という展望台の指定管理者を、NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機
構が受託している。しかし、営業期間が短い(冬季は閉鎖)等の理由から、次年度の委託につ
いては釧路市と検討中である。指定管理者の課題としては、委託期間が限定されていることや、
地元以外の企業の参入等である。なお、2009 年4月にオープン予定の多目的施設の指定管理者
については、説明会が 10 月 14 日にあり、NPOが申請を検討している。
●有馬温泉
旅館組合が温泉施設の指定管理者に申請したが、認定されなかった。この施設は、どれだけ
利益を上げるか、が認定のポイントであった。現在の認定期間が終わり、次に指定管理者が募
集される際には、旅館組合は再度申請にチャレンジする予定である。なお、指定管理者ではな
いが、神戸市から旅館組合が宿泊施設を借り受けて運営している(家賃を神戸市に支払ってい
る)。
●由布院温泉
観光協会が指定管理者に指定され、2005 年度から国民宿舎を運営している。また、毎年度利
益の中から納付金を由布市に支払っている。ただし、建物が老朽化して耐震性に懸念があると
のことから、2008 年度一杯で宿泊施設としての運営を終了し、その後の利用について由布市と
検討している。
指定管理者となることは、メリットだけでなくデメリットもあります。観光まちづくり組織
が指定管理者になる意義や留意点について議論すべく、次回の研究会には講師を招聘して、全
国の指定管理者についての情報を共有することになりました。
*次回研究会(第3回)は 11 月7日(金)の予定です
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■指定管理者のメリット・デメリット
タイプ
1.委託料のみタイプ
2.利用料のみタイプ
3.委託料+利用料併用タイプ
ローリスク・ローリターン
独立採算性
(ハイリスク・ハイリターン)
1と2の中間型
施設の使用料等を指定管理者の収入として収受できる
施設例
図書館、地域の集会所、児童公園等
受益者負担
無料
自
治
体
メリット
博物館、美術館、健康増進施設、温浴施設、宿泊施設等
有料
有料
・管理・運営経費(=委託料)の削減(特にタイプ2,及び3の場合)
・サービス向上による住民満足度の向上
収益悪化で指定管理者が契約期間途中で撤退する可能性がある
デメリット
●初期投資が不要
●収入増加を見込める
・自治体の設置する公の施設の管理・運 ・施設使用料が指定管理者の収入となるため、利用者増が管理者
営の代行であるため、建設費や賃貸料 側の収入増につながる(管理者側の経営意欲が働きやすい)
等の初期投資が不要
●収益事業が可能
●固定資産税が不要
・自主事業として付帯事業を行えば、収入増加が見込める
メリット
●無料施設で も委託料が入ってくるの *受益者負担の割合が大きい宿泊施設等の観光施設、スポーツレ
で、経費削減すれば利用者増減に関係 クリエーション施設等の集客施設に適している
なく委託料の範囲内で安定的な収入が
得られる
*来館者数に応じて委託料を増減させる
報奨金制度を導入する場合もある
管
理
者
●外部ではなく地元の企業等が受託すると、中・長期的な視点で考えた場合の地域活性化の一助とすることがで
きる。
デメリット
・収入増加で委託料がさらに削減される可能性がある(人件費の確
保、職員の福利厚生(事業所が負担する厚生年金加入等)が不十
分な場合もある)
・自治体の条例・施行規則により、民間企業のノウハウを十分活か
すことができない
・「公の施設」であり、管理者が民間企業の場合、自社利益を追求す
ることができない
・指定期間が短いため、人材育成や長期的な事業展開が難しい。
・指定期間満了後、再度指定を受けられる保証がない(公募制度の場合)。
・財政基盤の強弱によって、参入のチャンスが限られてしまう。
※契約時に、自治体と十分な詰めをおこなうことが肝要
利用者
メリット
・施設のサービスの改善(利用時間の延長、魅力的なイベントの増加、新しいサービスの提供等)
「最新事例 指定管理者制度の現場」学陽書房を参考に、(財)日本交通公社にて作成
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