――――――――――――― Zika ウイルス感染:スリナム共和国 Zika virus infection – Suriname WHO 11 Nov 2015 (翻訳 2015/11/14) (仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六 2015 年 11 月 2 日、スリナム共和国の世界保健規則(IHR)窓口は 2 名の Zika ウイルス国内感染例を PAHO/WHO に通知してきた。検査室での暫定的検 査が Academic Hospital Paramaribo で実施された。調査が進行中であり、詳細 な情報は保留されている。 WHO の助言 Zika ウイルスの伝播がアメリカのこの地域で増加しているので、加盟国は Zika ウイルス感染を発見して確認する能力を確立して維持し、全ての医療施設 においてさらなる負荷に備えて保健サービスを準備するとともに、この病気を 伝播する蚊を減らすため、とくにこの蚊がいる地域において、効果的なコミュ ニケーション戦略を実施するよう勧告する。情報の全ては、以下の最新の疫学 的更新から入手できる。 PAHO/WHO Zika virus infection website Epidemiological update on Zika virus infection - 16 October 2015 ――――――――――――― フランス領ポリネシアで Zika ウイルスの流行 Epidemiological update: outbreak of Zika virus in French Polynesia ECDC 11 Nov 2013 (翻訳 2015/11/14) 2013 年 11 月 6 日、フランス領ポリネシア公衆衛生当局は、2013 年第 41 週以降多島(archipelagos)を渡って広がっている Zika ウイルスによる微熱性 発疹性候群の発生を報告した。デング熱のタイプ 1 および 3 が 2013 年 2 月以 来多島で発生が続いている。 400 例以上の Zika ウイルス感染臨床例が 2013 年 10 月 30 日までにフラン ス領ポリネシアの3つの多島(ソシエテ諸島、トゥアモトゥ諸島、マルキーズ 諸島)から報告されている。報告された全ての症例は軽い。3 例についてウイル ス塩基配列による確認を行った。感染は全ての年齢グループで急速に広がって おり、性別差はない。 -1- この地域における流行のさらなる拡大のリスクを考慮し、微熱性発疹性候群 の臨床的発生動向調査が、多島の地域社会と医療施設の全てで強化されている。 媒介蚊制御の再強化とともに、疫学的発生動向調査が、地元の保健当局によっ て強化されている。 Zika ウイルス感染症は、出血症状を伴わない結膜炎と大きな丘疹性発疹を 特徴とする短期間の軽度の熱性疾患である。治療は対症療法のみである。Zika ウイルスは、デング熱も伝播するヤブカの仲間によって伝播されるフラビウイ ルスに属する。ネッタイシマカとヒトスジシマカが Zika ウイルスの媒介動物で あることが最近証明された。 検査室診断は、病気の初期に分子検査(PCR 増幅と遺伝子配列)、血清学 的検査(特異 IgM 抗体の検出)およびその他のフラビウイルスとの交差反応性 によって行われる。 1947 年にウガンダの Zika 森における歩哨猿からウイルスを初めて分離して から、散発的な症例や限定液流行が熱帯アフリカと東南アジアで報告されてき た。2007 年に、大流行がヤップ島(ミクロネシア)で記録され、2010 年にはカ ンボジア一症例が確認された。Zika ウイルスの地理的に区別される 2 つの系統 が循環しており、一つはアフリカ、もう一つは東南アジアと太平洋地域である。 フランス領ポリネシアにおける 2013 年の流行は、太平洋地域で特定された 2 番 目の流行である。 予防は、デング熱の予防と同じで、蚊に刺されないよう曝露を最小限にする ため、地域社会における媒介動物制御キャンペーンおよび個人の予防対策に基 づく(虫よけ剤、とくに朝夕の蚊の活動が最も盛んな時間帯には、長袖、長ズ ボン、長靴を着用)。 フランス領ポリネシアの一部は観光地であるが、旅行者による EU への輸入 の潜在的リスクは、症例数が限られているので限定的である。ただし、この地 域からの帰国者がデング熱様の臨床症状を呈している場合は病院へ行くことを 助言する。欧州においてヒトスジシマカの活動は晩秋と冬の間にないので、ヨ ーロッパ大陸でこのウイルスが広がるリスクは現在ない。 -2- ――――――――――――― 簡単な紹介 Zika ウイルスは 1947 年にウガンダの Zika 森のアカゲザルから分離された。 ヒトへの感染は 1968 年にナイジェリアで初めて報告された。 2007 年:ミクロネシアで流行。49 名が確認され、59 名が可能性が高い症例で、 住民 11,241 名の内約 73%が感染したと推定された。 2013 年 11 月:タヒチを含む西ポリネシアで流行。361 名が確認され、35,000 名以上が感染した疑い。 2014 年 2 月:ニューカレドニアで 49 症例が報告され、内 30 例は仏領ポリネ シアからの輸入。 2015 年:コロンビア、ブラジルから感染報告。 ヒトヒト感染:2009 年にセネガルで蚊に咬まれた米国研究者が帰国後発症し、 彼の妻に伝播した。 フラビウイルス科 一本鎖プラス RNA ウイルスの一 科で、エンベロープを持つ。蚊が 媒介する以下のウイルスを含む。 Zika ウイルス 日本脳炎ウイルス 西ナイルウイルス 黄熱ウイルス デングウイルス マレー渓谷脳炎ウイルス Viralzone: Flaviviridae セントルイス脳炎ウイルス ――――――――――――― Zika ウイルス:地理的分布 Zika virus: Geographic Distribution 米国 CDC October 2015 (翻訳 2015/11/16) Zika ウイルス病の発生は、これまで熱帯アフリカ、東南アジアおよび太平 洋諸島で報告されてきた。Zika ウイルスは新たな地域に広がり続けているよう だ。2015 年 5 月、汎アメリカ保健機構(PAHO)は、ブラジルで Zika ウイル ス感染が初めて確認されたことについて警戒を発した。 Zika ウイルスは米国で現在見つかっていない。ただし、帰国した海外旅行 者の感染が報告されている。太平洋諸島と南アメリカにおける最近の流行とと もに、米国への旅行者や帰国者の間で Zika ウイルス症例数が増加する可能性が ある。これらの輸入症例は米国の一部の地域においてこのウイルスの地域的広 がりを起すかも知れない。 -3- Zika ウイルス伝播の証拠が過去または現在ある国(2015 年 10 月現在) Zika ウイルス伝播の証拠が過去または現在ある国 AFRICA ASIA OCEANIA/PACIFIC Angola* Cambodia ISLANDS Burkina Faso India* Cook Islands Cameroon Indonesia Easter Island Central African Republic Malaysia Federated States of Cote d’Ivoire Pakistan* Micronesia Egypt* Philippines French Polynesia Ethiopia* Thailand New Caledonia Gabon Gambia* Vietnam* Solomon Islands Kenya* Vanuatu ―――――――――― Nigeria AMERICAS Senegal Brazil Sierra Leone* Colombia Somalia* Tanzania* Uganda Zambia* * これらの国についてウイルス伝播の証拠は、健康人に Zika ウイルス抗体が 検出された研究でのみである。これらの研究は、その抗体がデング熱などその 他の近縁のウイルスに感染したことによる抗体の可能性もあるので、Zika ウイ ルスに感染したかどうかを決定することはできない。 ――――――――――――― -4- Zika ウイルス感染の疫学的更新:2015 年 10 月 16 日 Epidemiological update on Zika virus infection - 16 October 2015 WHO 16 October 2015 (翻訳 2015/11/16) アメリカ地域において Zika ウイルスの伝播が増加していることを考慮し、 汎アメリカ保健機構・世界保健機関(PAHO/WHO)は、加盟国が Zika ウイル ス感染症例を発見して確認する能力を確立・維持し、医療施設の全てのレベル でさらなる負荷の可能性に対する保健サービスを準備し、この病気を伝播する 蚊を減らすため、とくにこの蚊が生息する地域において効果的な大衆コミュニ ケーション戦略を実施するよう勧告する。 状況の要約 2014 年以来、Zika ウイルスの国内循環がアメリカ大陸で検出されている。 2014 年 2 月、チリの保健当局はイースター島において Zika ウイルスの国内伝 播による最初の症例を報告し、2014 年 6 月まで症例報告が続いている。 2015 年 6 月、ブラジル公衆衛生当局は国の北東部における Zika ウイルスの 国内伝播を確認した。今年 10 月現在、14 州がウイルスの国内伝播を確認した; Alagoas、Bahia、Ceará、Maranhão、Mato Grosso、Pará, Paraíba、Paraná、 Pernambuco、Piauí、Rio de Janeiro、Rio Grande do Norte、Roraima および São Paulo。 最近、コロンビア保健当局は Bolívar 州において Zika ウイルス感染の最初 の国内症例の発見を報告した。 世界の様々な地域における Zika ウイルス感染の最近の発生は、この蚊媒介 性ウイルスが蚊が見つかっている領域全体に広がる可能性を証明している。 勧告 アメリカ大陸のこの地域で伝播が拡大していることを考慮し、この媒介蚊が この地域の数ヶ国に生息しているので、PAHO/WHO は発生動向調査に関する 勧告を更新する。PAHO/WHO は蚊媒介性疾患に関する以前の勧告を再強化し、 このヤブカが循環している加盟国に対して蚊の密度を減らす目的で効果的な大 衆コミュニケーション戦略の実施を継続するよう要請する。 発生動向調査、臨床例の管理および予防と制御の措置に関する勧告は、この 病気に関する新たな情報が利用可能になり次第、吟味し、更新されるだろう。 発生動向調査 -5- Zika ウイルス発生動向調査は、デング熱とチクニングニヤ熱に対する既存 の発生動向調査システムを基礎として構築すべきであり、その際臨床症状の違 いを考慮しなければならない。疫学的状況に適するように、発生動向調査は、(i) Zika ウイルスが地域に侵入したかどうかの判定、(ii) 一旦侵入してからの Zika ウイルス熱の拡大の監視、および (iii) 中枢神経系および自己免疫の合併症の監 視に焦点を合わせるべきである。 Zika ウイルス感染の国内伝播がない国に対して、以下の事項を勧告する。 ● 第一症例を発見するための事実に基づく発生動向調査の強化。ブラ ジルとコロンビアの経験に基づき、保健当局は原因不明の発疹性発 熱症候群(デング熱、チクニングヤ熱、麻疹、風疹およびパルボウ イルス B19 を除外する)のクラスターの発生に警戒し、Zika ウイ ルス感染の検査をしなければならない。 Zika ウイルス感染の国内伝播がある国に対して、以下の事項を勧告する。 ● 新たな地域への侵入を検知するため、このウイルスの傾向と地理的 広がりを監視する。 ● 公衆衛生への影響とともに、中枢神経系および自己免疫の合併症の 可能性を監視する。 ● Zika ウイルス感染と関連するリスク要因を特定し、能力がある場合、 ● 循環している Zika ウイルスの系統を特定する。 これらの活動は、効果的な制御措置の策定と実施の基礎である。このウイル スの侵入が一旦判明したら、進行中の発生動向調査は、Zika ウイルス伝播に影 響する疫学的および昆虫学的変化を監視するために維持されなくてはならない。 発生動向調査によって検出されたあらゆる変化は、当然のこととして適時に活 動を決められるように国の当局へ速やかに通知しなければならない。 以下は、Zika ウイルス感染の暫定的な症例定義である。 疑い症例:以下の徴候の一つ以上を伴う発疹または発熱(37.2 °C 以上)の ある患者(別の医学的状態によって説明できない) ● 関節痛または筋肉痛 ● 非化膿性結膜炎または結膜充血 ● 頭痛または不快感 確認症例:Zika ウイルスを特異的に検出する検査で陽性となった疑い症例 (検査室診断のアルゴリズムを参照) 国際的報告 -6- アメリカ大陸における Zika ウイルスの最近の侵入を考慮し、蚊媒介性ウイ ルスの統合された発生動向調査に貢献するため、各国の公衆衛生当局は、アメ リカ大陸の各国および領域で確認されたあらゆる検査で確認された Zika ウイル ス感染症例を、確立された国際保健規則(IHR)窓口を通して PAHO/WHO に 通知することが奨励される。 検査室での検出 臨床症状発現から最初の 5 日間(急性期、ウイルス血症期)、ウイルスリボ 核酸(RNA)が分子技法(通常またはリアルタイム RT-PCR)によって血清中 に検出できる。主な鑑別診断としてのデング熱のための逆転写ポリメラーゼ反 応(RT-PCR)は陰性でなければならない。さらに、遺伝子配列検査に続くフラ ビウイルスに対する遺伝子検査は、特別な病因を確定するために利用できる。 臨床的に感染が示唆される症例で、デング熱が排除された場合、Zika ウイ ルスを含むその他のフラビウイルスに対するさらなる検査を実施しなければな らない。 Zika ウイルスに対する特異的な IgM や IgG を検出するための血清学的検査 (ELISA や免疫蛍光)は、発症後 5~6 日目まで陽性である。約 2 週間を置い たペア血清での抗体価の上昇を証明しなければならない。ただし、プラーク減 少中和試験(PRNT)の陽性結果の確認が Zika ウイルスに対する中和抗体価で 少なくとも 4 倍増加を示すことが、推奨される。その他のフラビウイルス、と くにデング熱と黄熱、あるいは頻度は低いがウエストナイル熱との交差反応が あり得る。したがって、Zika ウイルスに感染した患者においてデング熱に対す る中和抗体価の 4 倍以上の増加が、その患者が以前デング熱に罹っていた場合、 検出される可能性がある。フラビウイルスの間のこの交差反応を考慮し、血清 学的結果は注意深く解釈しなければならない。 症例の管理 Zika ウイルスに対する特別な抗ウイルス治療はない。マラリア、デング熱 および細菌感染などのより重篤な状態を排除した後、対症療法が推奨される。 一部のデング熱症例が臨床転帰がより重篤なので、Zika ウイルス感染症を デング熱と鑑別することが重要である。さらに、Zika ウイルスとデング熱の混 合感染も発生し得る。デング熱と比べて、Zika ウイルス感染症は軽症であり、 発熱開始が早くその期間が短く、ショックや重篤な出血は見られない。 Zika ウイルスの流行は保健システムの全てのレベルで追加的負荷となり、 患者のスクリーニングと治療のために実施要領を策定して実施し、十分に練っ た計画を必要とする。 -7- 治療 ● Zika ウイルス感染に対するワクチンや特別な治療法はない。したが って、治療は発言した症状に対して行われる。 ● 治療は、休息と解熱のためアセトアミノフェンやパラセタモールの 使用を含む対症および補助療法となる。大型の発疹と関連する掻痒 を制御するため抗ヒスタミン剤の使用が推奨される。 ● 12 歳以下の子供に対しては、アスピリンの使用は出血およびライ症 候群のリスクがあるため勧められない。臨床徴候の原因がデング熱 ● やチクニングヤの場合は非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)の使用 が禁忌であり、その他の非ステロイド系抗炎症剤の使用も勧められ ない。 患者には、発汗、嘔吐およびその他の無感覚な水分喪失による体液 を補充するため多量の水分補給が勧められる。 患者の隔離 他の者への感染を防ぐため、Zika ウイルス感染患者は発症第 1 週(ウイル ス血症)の間ヤブカに刺されないようにしなければならない。患者は、蚊帳(殺 虫剤処理は問わない)に入るか、または窓とドアに網戸をする。さらに、Zika ウイルス感染患者を担当する医師と介護士は、虫よけ剤(IR3535 または Icaridin) の使用と長袖・長ズボンによって蚊に刺されないようにしなければならない。 予防と制御の措置 媒介蚊を減らす際に指示された予防と制御の措置は、有効であれば伝播を防 げる。デング熱の予防と制御の総合的管理戦略は、Zika ウイルスに対する事前 準備の基礎となる。現在の状況において、デング熱の総合的予防と制御の強化 が推奨される。それらの勧告事項には以下を含む。 ● 政府ならびに保健、教育、環境、社会開発および観光部門の全ての レベルにおける部門間の連携と協力 ● 非政府組織(NGO)および民間組織の参加;地域社会全体に対する リスクコミュニケーションと社会的動員 蚊の制御は、デング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスなどの蚊媒介性 ウイルスの伝播を断ち切ることができる唯一の措置である。対応を導く蚊の制 御戦略の主要な要素を以下に列記する。 総合的な蚊の管理(IVM) 効果的かつ実用的なデング熱とチクニングヤの媒介蚊制御計画は、これらの ウイルスが同じ蚊によって伝播されるので、Zika ウイルス、ネッタイシマカに -8- 対する適切な事前準備の基礎となる。したがって、総合的な蚊の管理(IVM) の一環としてデング熱とチクニングヤに対して策定した発生動向調査と蚊の制 御措置を適用し、強化することを推奨する。 成功を期すために、保健、教育、環境、社会開発および観光部門を含む政府 の全てのレベルにおける部門間の連携と協力が不可欠である。総合的な蚊の管 理(IVM)は、非政府組織(NGO)と民間組織の支援に頼ることもある。コミ ュニケーションの窓口は開いておき、地域社会の参加を活性化しなければなら ない。コミュニケーション活動を通してこれらの疾病について明確で質の高い 情報を大衆に提供することが重要である。 アメリカ大陸におけるネッタイシマカとヒトスジシマカの広範な分布を考 慮し、予防と制御の措置は、媒介蚊の密度を減らし、それらの措置を採用する ために地域社会の支持と協力を得ることを目的としなければならない。 国の当局による予防と制御の措置は、以下を含まなければならない。 ● 媒介蚊の繁殖およびヒトと蚊との接触を防ぐか、最小限にするため、 家庭と公共の場所(公園、学校、霊園など)における環境管理を強 化して蚊の繁殖場所を排除する ● とくに定期的な残渣の収集が中断している地域において、繁殖場所 の排除のための大衆衛生活動を組織する ● 家族と地域社会を含む活動による物理的、生物学的および化学的方 法を通した繁殖場所の制御措置を実施する ● 伝播のリスクが高い地域を特定し(リスクの階層化)、人々が集ま る場所(学校、駅、病院、保健センターなど)を優先する。それら から少なくとも半径 400 メータから蚊を排除しなければならない。 ● デング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスの国内発生または輸入 症例が発見された地域において、成虫蚊を殺す処置(主に噴霧によ る)を使用し、感染した成虫蚊排除し、伝播を切断することが示唆 される。この活動は例外的であり、国際的に承認された技術指針に 従って適切に訓練された要員によって遂行され、その他の上記に提 案された活動と一緒に実施する時にのみ効果的である。噴霧は、伝 播を切断し、蚊の繁殖場所の除去を徹底するまでの時間を稼ぐため の主要な手段である。 ● 適切な殺虫剤を選択し(PAHO/WHO の勧告に従う)、製品の表記 と処方を確認し、その殺虫剤に対する蚊の感受性を検討する ● 適切な方法で噴霧器を維持・使用し、殺虫剤の備蓄を維持する ● 蚊の幼虫の駆除および成虫に対する殺虫剤処理(燻蒸)の両方を実 施している間の野外活動の監視を強化する(品質管理) -9- 媒介蚊に対する統合された(同時並行あるいは強調した)活動(地域社会の 衛生活動および推進活動を結びついた訓練された要員による成虫と幼虫の駆除) は、最短の時間で最大の効果を達成するために不可欠である。 媒介蚊の化学的駆除に従事する要員は、例外なく、適切な個人防護具を使用 することがきわめて重要である。この資材を要員に供給し、その使用を監視す るとともに、適切な条件下で十分に備蓄することは、媒介蚊制御計画の責任で ある。 個人的防護措置 デング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスに感染した患者が媒介蚊との 接触を最小限にすることが重要である。この措置は、ウイルスの広がりを防ぎ、 したがって病気を予防する手助けとなる。家族や地域社会の患者は、他の者に 伝播するリスク、ならびに媒介蚊およびヒトと蚊との接触を減らことによって そのリスクを最小限にする方法について教育を受けなければならない。 媒介蚊と患者との接触を最小限にするため、以下の行動が推奨される。 ● 患者は、殺虫剤処理されたか、未処理の蚊帳の中で休むべきである ● 患者およびその他の家族は、手足を覆う衣類を着用すべきである ● 露出した肌や衣類に対して DEET、IR3535 または Icaridin を含む 忌避剤を適用する。その使用に際し、製品のラベルに表示された指 示に厳格に従わなければならない ● ドアと窓に網戸を設ける これらの個人防護措置は、健康な人々へのウイルスの伝播を防ぐためにも有 効である。 旅行者 出発前に 保健当局は、デング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスの循環が記録さ れている国へ出発する旅行者に対し、忌避剤の使用、肌の露出を最小限にする 適切な衣類の着用、殺虫剤や蚊帳の使用など、蚊に刺されないよう身を護るた めに必要な措置を講じるように助言しなければならない。旅行中に速やかに特 定するために、デング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスの症状を旅行者に 知らせることも重要である。その助言は、旅行医療サービス、医院、保健省の 旅行者保健ウェブページ、あるいはその他の政府関連機関のウェブページと通 して中継できる。 訪問地にデング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスが伝播している場合 - 10 - 旅行者には以下のことを助言する。 ● 忌避剤の使用あるいは肌の露出を最小限にする適切な衣類の着用に よって、蚊に刺されないよう身を護る適切な措置を講じる ● 蚊が蔓延っている地域を避ける ● 防虫ネットや殺虫剤の使用 ● デング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスの徴候を認識し、どれ かが該当すれば診察を求める デング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスが伝播している地域から戻っ た時 旅行者が自宅に戻った時、デング熱、チクニングヤおよび Zika ウイルスを 疑って場合、掛かり付けの医師に相談して助言を受ける。 引用文献(省略) ――――――――――――― 訳注:1947 年に発見された Zika ウイルスが最近になってヒトで流行してい る状況は、蚊とヒトからなる感染環を取巻く状況の変化を反映している と考えられる。同じ種類の蚊が媒介するデング熱も、かつでは東南アジ アに限局していたが、南米を中心に現在は全世界に広がっている。ネッ タイシマカやヒトスジシマカの活動域が変化していることが、デング熱 や Zika ウイルスの新たな地域での流行を引起していると私は考える。 フランス領ポリネシアへのウイルスの侵入は、抗体を全く持っていない 処女地で猛威を振う結果となったが、その余波は日本人旅行者の輸入症 例を生み出している。日本におけるヒトスジシマカの分布域が広がって いることを考慮し、蚊が媒介する感染症に注意し、地域ぐるみでの予防 策を検討する時期が迫っている。 <リンク> 感染症研究所:タイ・サムイ島から帰国後にジカ熱と診断された日本人旅行 者の 1 例、2014 年 10 月 21 日 感染症研究所:<速報>フランス領ポリネシア・ボラボラ島帰国後に Zika fever と診断された日本人旅行者の 2 例、2014 年 2 月 20 日 検疫所:2014 年 01 月 20 日更新 フランス領ポリネシアでジカウイルスが 流行しています 感染症研究所:デング熱国内感染症例の積極的疫学調査結果の報告 、 2015/6/23 WHO: Zika virus Key Facts ――――――――――――― - 11 -
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