低GI値食に於ける血糖値と減量への影響 (日本語)

低GI値食に於ける血糖値と減量への影響
Ⅰカロリー計算によるウェイトコントロールの限界!
(1)摂取カロリーと消費カロリー
ダイエット指導の基本は殆どの場合がカロリーの収支バランスを負にする事だと唱えている。
果たして人体はそんなに単純だろうか?
そもそも食物のカロリー値は“爆発熱量計”という装置の中で食物を完全に焼いてその放たれた熱量を測った
値を基にしています。
その方法は予め重量を測った食物を酸素が充満された箱の中で電流を流してヒューズに点火し、爆発燃焼させ
ます。燃えて放出された熱は周囲を覆った水槽の水に吸収されるのでその水温を計って決められます。
1kcal(=4.184J)とは、1 リットルの水の温度を 14.5℃から 15.5℃まで 1℃上げる為に必要な熱量だと定義されてい
ます。
その方法で測定した純粋な糖質・蛋白質・脂質はそれぞれ 1g 当たり 4.10kcal・5.65kcal・9.45kcal であり、蛋
白質の 5.65kcal は体内の場合では 4.35kcal となります(蛋白質に含まれる窒素は尿素として排泄されるのでそ
の分のエネルギーを損失する為)。
体内での消化吸収率を考慮に入れると糖質=4.0kcal、蛋白質=4.0kcal、脂質=9.0kcal がそれぞれ 1g 当たりの
熱量です。
これを利用して殆どの食物の摂取カロリーは成分と重量が分かればカロリー量を計算する事が出来ます。
一方消費カロリーの方は、人を完全に隔離させて密封された部屋に入れて測定する“直接的熱量測定”と人の
酸素消費量を測定して間接的な推定値を得る“間接的熱量測定”があり、その測定値はほぼ同じなので多くは
簡単な間接的熱量測定を利用します。
それによると 1 リットルの酸素が消費されると 4.82kcal の熱を出す為、酸素 1 リットルの消費に付 5.0kcal と
計算されます。
そして人が特殊な装置を付けてウォーキングや水泳及び掃除や洗濯…といった様々な活動についてその消費カ
ロリーが調べられています。
この様に摂取カロリーと消費カロリーの測定方法が異なるにもかかわらず計算上は都合良く使われているのが
現状です。
そしてあたかも飛行機や自動車の燃料の様にエネルギーや燃焼という言葉が使われているのです。
(2)代謝-同化作用と異化作用摂取された食物が体内で消化吸収され、その栄養素がエネルギーとして血液・筋肉・肝臓に蓄えられ、更に
余剰分は脂肪細胞に蓄積されます。
そして必要に応じて骨・筋肉や血液及び細胞の補充などに使われますが、これを同化作用と言います。一方で
体温を保ったり、様々な活動の為にエネルギーが使われますが、これを異化作用と言います。
異化作用には睡眠代謝、基礎代謝、安静時代謝、活動時代謝などがあり、食物の消化吸収過程での熱の発散(D
IT:食事誘導性体熱産生)も異化作用に含まれます。
この同化作用と異化作用の比率は個人差が大きく、また季節や時間帯等によっても大きく異なります。従って
本来カロリー収支にはこの差を考慮しなくてはならず、単純な計算では測れないのです。
(3)運動の本来の目的-インシュリンをコントロールするカロリー計算によって消費カロリーを増やす目的で身体活動が勧められますが、しばしば上手くいかないの
が現状です。
そもそも食事の摂取カロリーと運動の消費カロリーを単純なプラスマイナスで論じる事自体が論外なのです。
運動の消費カロリーは運動中の時間だけで計算されていますが、実はその後の数時間も活発にエネルギーを発
散しています、また運動の最も大きな目的はインシュリンの感受性を高めることでその分泌の必要量を減らす
事です。
運動習慣がある人とない人では同じ血糖を取り込む為にもインシュリンの分泌量が大きく異なります。また肥
満者と非肥満者とを比較した場合にも明らかに肥満者のインシュリン分泌レベルは高くなっています(グラフ①②)。
グラフ①
肥満者と非肥満者に於ける高炭水化物食及び高脂肪食時の
血中ブドウ糖量
高炭水化物食
高脂肪食
グラフ②
肥満者と非肥満者に於ける高炭水化物食及び高脂肪食時の
血中インシュリン量
高炭水化物食
高脂肪食
高炭水化物食と高脂肪食摂取後のエネルギー代謝上昇及び血糖&インシュリン反応(Schwartz 1985)
Ⅱ太る原因は血糖値の過剰上昇にあった!
(1)インシュリンの大切な働き
インシュリンは血糖の上昇を防ぐホルモンで膵臓のランゲルハンス氏島(β細胞)で作られて分泌されます。食
事を摂ると血糖値が上昇し、インシュリンはその血糖(グルコース)を肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えます
が肝臓に蓄積出来るグリコーゲン量は 150g~200g であり、筋肉に蓄積出来るグリコーゲン量は 200g~250g、
血液中には僅か 20g(80kcal)しか蓄積出来ません。そこで蓄え切れない程作られたグリコーゲンは脂肪細胞にト
リグリセリドとして備蓄されることになります。インシュリンの作用は栄養摂取によって上昇した血糖値を正
常な状態へと戻しながらグリコーゲンや脂肪というエネルギーに変えて体内に蓄える働きなので、同時に既に
蓄えてあるグリコーゲンやトリグリセリドの分解を抑制します。
肥満者の多くはこのインシュリンの働きが鈍く、常に多量のインシュリンを分泌している状態(インシュリン抵
抗性)なので効率よくエネルギーを放出できなくなっています。
通常なら少量のインシュリンによって食事で上昇した血糖値を下げることが出来ますがインシュリン抵抗性の
場合には正常なインシュリン量では反応しなくなるのです。
インシュリン抵抗性が続くと糖尿病(インシュリン非依存性の2型糖尿病)を発症しやすくなりますが、更に進行
すると膵臓に過剰な負担が掛かり、ついにはインシュリンの分泌が極端に少なくなって必要なインシュリンを
外部から注射しなくてはならなくなるインシュリン依存症に発展してしまいます。しかしインシュリン注射で
は膵臓から自動調節で分泌される様に適正な時に正確な量のインシュリンを供給することができない為、コレ
ステロールの異常値が出る場合もあります。
(2)血糖値の上昇を緩やかにすることでインシュリンの分泌量を抑える低GI食
インシュリンの過剰分泌を制御する為には前述の運動習慣づくりが勧められますが、血糖値の上げ過ぎを抑
えることでもインシュリンの分泌を抑えることができます。
その方法は食事法にあり、急激な血糖の上昇を伴うことなくゆっくりと吸収してくれる食材を選ぶことです。
その鍵となるのが炭水化物(糖質・澱粉)ですが、含有される食材によってその吸収率が異なり、それに伴う血糖
値の上昇スピードも異なります。
つまり血糖の上昇スピードが速くインシュリンを多量分泌させる炭水化物(高グリセミック)を含む食材とと血
糖が徐々にゆっくりと上昇することでインシュリンも少量づつ分泌させる炭水化物(低グリセミック)を含む食
材があり、それらを上手く使い分けることです。
炭水化物がグルコースとして血糖値を上昇させるスピードを測定して数値化した指数をグリセミック・インデ
ックス(GI)と呼びブドウ糖を100として基準にした数値と食パン(精製白パン)を100として基準にした数
値がそれぞれ一覧表として出されています。
しかしその数値の多くは欧米で調べられたもので日本の食生活にはそぐいません。そこで糖質含有量に差があ
る食材を欧米で出されたGI値或いは食品成分表に添ってカテゴリー分けし、それぞれの主な食材を15名の
被験者に振り分けました。
各被験者には予め空腹時にブドウ糖 100cc(91%液)を服用させ、15分後~150分後迄の血糖値(血糖上昇率)
を測定しておきました(測定機:TERUMO メディセフリーター GR-101)。
そして別の日の空腹時にそれぞれ食材を摂取させ、各食材毎に15分後~150分後迄の血糖値(血糖上昇率)
を測定してその面積を求め、予め測定したブドウ糖との面積比を%で求めた値をGI値(グリセミックインデ
ックス=グライセミックインデックス)としました(グラフ③及び表 1 、表2)。
GI値が高い程血糖値の上昇が高い為にそれに伴うインシュリン量も多くなりますが、血糖の上昇スピードは
速くてもその食材に含まれる糖質の量によってその上限があります、つまり含有される糖質の量が少なければ
過剰に上昇することはありません。従ってGI値が高くてもその摂取量を少なくすることで血糖値の上昇を抑
えられます、そして少なくした分は他のGI値が低い食材で補充することによって食材の全体量は減らさなく
ても血糖値の過剰上昇を抑えることが出来ます。
また反対にGI値が低くてもその摂取量が多ければ血糖値の上昇に反映することになります。
食材によってGI値のバラツキはありますが、GI値が特段に高い食材(糖質含有量が多い食材)は概ね決まって
いて、それらを調製するだけで簡単に低GI食が出来ます。
食事のコントロールに於いてカロリーによる方法は計算値であり、人による実験でしか算出することが出来な
い GI 値による方法は実測値だと言えます。
血糖値(mg/dl)
グラフ③
180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
0
30
基準
60
90
経過時間(分)
うどん
精白米
ずわいがに
120
牛ロース肉
150
スパゲッティ
データ:TN健康科学研究所(2001年)
主要食品摂取後の血糖値/GI値測定
N=15(平均値)
表1
経過時間
(分)
基準
うどん
精白米
ずわいがに
(ブドウ糖)
(生)
(ご飯)
(ゆで)
血糖値
血糖値
血糖値
牛ロース肉
スパゲッティ
(ゆで)
血糖値
血糖値
血糖値
(mg/dl)
(mg/dl)
(mg/dl)
(mg/dl)
(mg/dl)
(mg/dl)
0
86
88
90
92
89
93
15
114
103
112
108
102
110
30
127
118
125
117
123
122
45
154
129
148
126
133
128
60
149
142
141
121
128
142
90
132
137
138
111
113
133
120
123
118
129
99
99
113
150
91
90
99
91
94
98
表2
経過時間
基準
うどん
精白米
ずわいがに
(ブドウ糖)
(生)
(ご飯)
(ゆで)
牛ロース肉
スパゲッティ
(ゆで)
0-15
210.0
112.5
165.0
120.0
97.5
127.5
15-30
517.5
337.5
427.5
307.5
352.5
345.0
30-45
817.5
532.5
697.5
442.5
585.0
480.0
45-60
982.5
712.5
817.5
472.5
622.5
630.0
60-90
1635.0
1545.0
1485.0
720.0
945.0
1335.0
90-120
1245.0
1185.0
1305.0
390.0
510.0
900.0
120-150
630.0
480.0
720.0
90.0
225.0
375.0
6037.5
4905.0
5617.5
2542.5
3337.5
4192.5
回復までの時間
150.0
152.1
159.0
146.3
180.0
160.0
面積/回復時間
40.3
32.2
35.3
17.4
18.5
26.2
GI値
100.0
80.1
87.8
43.2
46.1
65.1
面積比
100.0
81.2
93.0
42.1
55.3
69.4
面積総計
※ 「GI値」とは・・・各食材の面積/回復時間と基準の面積/回復時間との比
※ 面積総計、GI値、面積比は、血糖値が初期値に回復した時点までの値とする
※ 「初期値」とは・・・空腹時(経過時間0)における血糖値
(3)体脂肪の分解によるエネルギー発散のメカニズム
いったん脂肪細胞に蓄積された体脂肪は分解から発散までに複雑な経路を辿ります。
つまり脂肪細胞から体脂肪が分解される為には糖尿病などの病的状態を除いて、飢餓状態下或いは継続的身体
活動によって短時間のエネルギーをまかなうグリコーゲンから長時間の身体活動を可能とする体脂肪にエネル
ギー発散の拠点が移った時です。ここでは一般的な後者の身体活動によるエネルギー発散のメカニズムを説明
します。
まず運動を開始すると即座に筋肉中のグリコーゲンがそのエネルギーとなり、続いて血中のブドウ糖が利用さ
れますが血中ブドウ糖は僅か 80kcal なので次にグルカゴンの作用によって肝臓のグリコーゲンが分解され、更
にアミノ酸(アラニン)からブドウ糖が作られ(糖新生)てエネルギーとして利用されます。
このような過程を経ながらアドレナリン、ノルアドレナリン、成長ホルモン、副腎髄質刺激ホルモン(ACTH)、
甲状腺ホルモン、グルカゴンと言った脂肪動員ホルモンが活性化して酵素アデニルシクラーゼの活性を刺激し
ます、酵素アデニルシクラーゼはC-AMP(サイクリックAMP)をATP(アデノシン三燐酸)から合成
し、ホルモン感受性リパーゼの働きを活性化します。その働きで脂肪細胞内の体脂肪は遊離脂肪酸(FFA)とグリ
セロールに分解されながら血液中に流出してエネルギーとなります(表3)。
表 3
エネルギーの蓄積と発散
イメージ図
〈低カロリー食と低 GI 値食との比較実験に於ける経緯〉
生活習慣病予防と改善の為に GI 値を使った食事法を提唱するに当たって、まだ一般的に馴染みのない GI 値と
いう名称を如何に分かりやすく伝えるかを考慮し“低い GI 値の食事は血糖値の急上昇を伴わない=インシュリ
ンの過剰反応を抑えて体脂肪の蓄積を抑制する”このような食事法を継続することは体脂肪の過剰蓄積を抑え
ると共に既に蓄積された体脂肪を分解・燃焼させながら減量を促すことが出来る、ということから多くの人々
を悩ませている“ダイエット”に注目し、平成13年8月5日放送の科学情報番組「特命リサーチ200X」
の中で「低インシュリンダイエット」と命名しました。
低インシュリンダイエットは生活習慣病予防の改善(運動療法など)から出た発想です、生活習慣病にはインシュ
リン抵抗性(インシュリンの過剰分泌)を伴う疾患が多く、肥満は特にインシュリン抵抗性を誘発します。このイ
ンシュリン抵抗性を改善する為には運動療法が有効ですが、重篤な症状の場合や高度の肥満者は運動禁忌とな
ります。
又、一般的に肥満者は身体を動かすことが困難で有効な運動の前に膝や腰を痛めやすいのです。本当に改善が
必要な方々の改善法が難しかったり、無理してまでも運動をして身体を壊したり逆に運動嫌いになるなら運動
以外の改善法を選べば良いのです。
運動は週に2回、食事は1日3回として週に21回、つまり1:10 の割合です。
如何に食事法の改善が大切かが分かります。
今までのダイエット方法は食事量を減らすことでカロリー制限をする方法でした、当然食事量を減らせれば血
糖値の上昇が緩和されてインシュリンの分泌量も減る為、減量に結びつきます。
しかしこの方法では余りに辛い上に長続きしません、特に病に苦しんでいる方々には二重の悩みとなってしま
います。
食事量を減らさないで(食事量は今までと同じで)血糖値を急上昇させない食事、つまりインシュリンの分泌量を
穏やかにする食事に代えれば辛くないし、何でも食べられます。
但し、何でも好きなだけ無制限に食べて良いのではありません。
その方法がGI値を使う方法です、GI値は糖尿病の食事療法として80年代にオーストラリアやカナダで研
究が始まり、今では日本も含め、各国で研究されています。
しかし、GI値の研究者によるバラツキが多く、一定しないのが現状です、それは被験者の人種・性別・体格・
習慣や季節や時間帯によっても異なるからです。
当研究グループでは、そのGI値の測定についてバラツキを防ぐために出来る限り同一の被験者によって各食
材100g或いは50g摂取後の血液検査を続けました。
そのような方法によって400品目を超えるGI値を算出し、それを元にした実験をアメリカ・ニューヨーク
州のシュナイダー病院に於いて医師である Dr.マーク・ヤコブソン監視の元で実施しました。
肥満傾向にある男女30 人に食事メニューAB2種類を2グループに分けてそれぞれ 3 ケ月間食べ続けてもらい体
重の変化を比べる実験です。
メニューA は低脂肪・低カロリーの一般的な 1200kcal のダイエットメニューで、メニューB は著者の指示で低
GI 値の食材を使い血糖値を低く保つ 1800kcal のダイエットメニューとしました(表4.)。
実験の結果、B の血糖値を低く保つメニューを食べたグループでは平均-8.6kg であり、A の低脂肪・低カロリ
ーメニューを食べたグループの平均は-3.8kg とメニューBの方が明らかにカロリーが高めだったにもかかわ
らずメニューA を食べたグループに対して 2 倍以上もの体重の減少が認められました。
血液検査で脂肪酸・血糖値・成長ホルモンの三項目を調べた結果、メニューBグループの方の血糖値が有意に
低かったことを確認しました。
表4.ニューヨーク州シュナイダー病院での男女30名に於ける比較実験メニュー例
メニュー
A
朝食
昼食
フランスパン、ジャム、ヨーグルト、
チキンサンドウィッチ、サラダ、グレ
白飯、グリルチキン、カリフラワー、
オレンジジュース、紅茶
ープフルーツジュース
ブロッコリー、にんじnソテー、ベイクド
1200kcal
夕食
ポテト、マンゴージュース
メニュー
ライ麦パン、ブロッコリー、アスパラ
トマトの冷製スパゲッティー、牛乳、
白飯、豆腐(冷や奴)
、みそ汁、ベーコンと
B
ガス、オムレツ(生クリーム入り)
、
ツナサラダ、コンソメスープ
ほうれん草のサラダ、ググルチキン、さや
1800kcal
サラダ、紅茶
インゲンのおひたし、マッシュルーム、紅
茶
考察
糖尿病の食事療法として GI 値の研究が始まって26年が過ぎた現在でも一般的な食事療法としてはカロリ
ー計算が主流です。
確かにカロリー計算による食事指導は簡潔明瞭で医師や栄養士などの指導者側にとっては指導や管理が容易で
説得力もあるようです。
しかし糖尿病の患者は増える一方で今や7人に1人は糖尿病及びその予備軍だと言われています。
また肥満の治療から健康、更に美容に至るまでカロリーコントロールが行われますが、多々深刻な問題も抱え
ています。
つまりカロリー計算上は摂取量を減らすことで当然カロリーを減らすことが出来る為に計算上過剰な食事制限
を誘発してしまう現状は拒めないのです。
減量指導の場合、医師や栄養士の監視下に於いては継続出来るもののいったん介入が放たれるとカロリーコン
トロールが出来ずリバウンドを繰り返すこともしばしばあります(ウェイトサイクリング)
。
一般的に健康・美容の為の自己流ダイエットが頻繁に行われますが、そのダイエットの為にかえって健康を害
すことになっては元も子もありません。
一時的に食事制限をして摂取カロリーを減らすことで減量出来たとしてもこの状態では脳内満腹中枢にあたる
視床下部腹内側核(VMH)の働きが亢進せず、反対に脳内摂食中枢にあたる視床下部外側野(LHA)の働きが
活発になり、更に身体代謝が低下することでエネルギーの発散が抑制されてしまうのでかえって体脂肪を蓄積
されやすい体質へと移行してしまいます。
身体と脳は絶えず連動して働いているので食事のコントロールに於いても脳と身体のメカニズムを考慮した方
法を強く主張します。
低 GI 食は食事量を極端に減らす必要がなく、また咀嚼を誘発するので視床下部腹内側核を刺激しやすい為、比
較的少量でも満腹感に達します、更に食事誘導性体熱産生(DIT)も活発になります。
そのようなことからむしろ食べようとしても多くは食べられなくなるので自ずと食事量も低下し、減量へと結
びつきやすくなります。
食事量を制限する訳ではないのでその後のリバウンドを心配することも少なくなります。
日本の食生活は概ね炭水化物(糖質)60%:脂肪 25%:タンパク質 15%と炭水化物(糖質)が最も多くを占め、炭水
化物(糖質)の血糖値コントロールに注目したGI値を利用することは日本の食文化にも適った方法であると考
えます。
参考文献:
・Frank I.Katch,William D.McArdle : NUTRITION,WEIGHT CONTROL,AND EXERCISE, 3rd Edition
・Schwartz,R.S., et all. : The thermic effect of carbohydrate versus fat feeding in man Metabolism, 34, 285-293 (1985)
・ウェイトコントロールのための栄養と運動(廣川書店)
・からだの科学184「肥満症」1995(日本評論社)