海 外だより 当地での日本食の広がり 西方見聞録 from DC│連載 8 藤本 卓 (JA全中農政部WTO・EPA対策室<在ワシントン>) 今回は、当地での日本食の広がりについて紹介 高級レストランで食事をするような富裕層向けに、 したい。筆者がこちらへ来て感じたことは、想像 さまざまな日本食材が手に入る。しょうゆやみそ 以上に日本食が当地に根づいているということだ。 などの調味料系、米、果物、豆腐、寿司等々。な 街には日本食レストランがたくさんあり、スーパー かでも充実しているのが、生鮮野菜である。日本 マーケットでもアメリカ人向けの日本食材を見る 品種のダイコン、カボチャ、ネギ、キャベツ、さ ことができる。 らにはゴボウやナガイモまで売っており、なかに は日本名で売っているものもある。それだけ日本 日本食を普及させているのは外国人 !? 食が浸透しているということだろう。 大衆店では、レトルトやインスタント食品の充 まずは、日本食レストラン事情から。日本食レ 実がめだつ。アメリカ人の大好きな「 レンジで簡単 ストランは、日本人経営の高級店とアジア人経営 に作れる冷凍食品」は、テリヤキやエダマメなどの の大衆店に大別できる。 大衆レストランの人気メニューが多く見られる。 前者は、寿司だけでなく懐石などもあり純日本 インスタントラーメンは 1 つ 50 セント(約45円)程 風にこだわる店か、洋風にアレンジしたいわゆる 度で、日本のメーカーのものが売られている。味 フュージョン系の店である。ハイセンスでヘルシー も日本のものと変わらない。 な日本食というジャンルを確立しているのは、こ ういったレストランの影響が大きい。しかし、と 農林水産省と日本食レストラン海外普及推進機 にかく値段が高いため、客は富裕層や日本人ビジ 構(JRO)は、正しい日本食の普及を目的に 2008 年 ネスマンが多く、一部の大都市圏にしかないため、 にアメリカでもっとも有名なレストランガイドで 広く一般に普及しているとはいいがたい。 ある『Zagat Survey』の日本食版を作製し、全米約 後者はよくはやっている。形にこだわらず、ア 800店を紹介している。筆者も正しい日本食をもっ メリカ人に合うよう積極的にアレンジしているの と理解してほしいという思いがある。 が 受 け て い る の で は な い か。 そ れ に 値 段 が 安 い。 ただ一方で、最近では当地の人々に合うように これらの経営者は日本人ではなく、韓国や中国か 日本食がアレンジされることはよいことではない らの移民の場合が多い。そういった意味では、日 かとも思っている。異国の食文化が当地になじむ 本食文化を当地に広げているのは、日本人ではな ためには変化させて当然だ。日本のカレーライス、 いことが少々さびしいところだ。 コロッケ、ラーメン、オムライス、ナポリタンな ども同じことだ。 スーパーマーケットに並ぶ日本食 また、どのようなアレンジがされているかで当 地の食文化を知るきっかけにもなる。有名な寿司、 こちらのスーパーマーケットは、高級店と大衆 カリフォルニアロールのような当地発の日本食に 店がはっきりしている。 ついて、いつかこのコラムでも特集したいと思う。 高級店では、レストランと同様、日本人経営の 60 月刊 JA 2010/01
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