理 科 学 習 指 導 案

理 科 学 習 指 導 案
平成 14年 10月 11日(金)
指 導 学 級
2年 2組
男子19名 女子17名 計36名
指 導 者 教 諭 佐 藤 拓 也
1 単元名
小単元「電流の利用」
2 単元について
(1)単元観
本単元では,電流の磁気作用の基本的な概念を実験によって調べながら理解させるとともに電流の
利用についての理解を深めるのがねらいである。
今日,電気器具は私たちの生活から切り離すことができないものであり,生徒にとって電気は身近
な存在である。しかし,目には見えない存在,怖い,難しいなどの理由で嫌われる傾向にある題材で
あるともいえる。従って,生徒の興味・関心を大切にして,理解を深めていくことは必要不可欠であ
り,その上で将来の電気と私たちの生活について真剣に考えていくきっかけになる題材であると考え
る。
(2)本単元に関わる生徒の実態
最近「理科離れ」が大きく叫ばれているが,本学級においては約3分の2の生徒が理科を好きな教
科に挙げており,意欲的に授業に取り組む生徒も多い。ただし,単元によっては好き嫌いが大きく偏
っており,本単元である「電流」に対しては,
「興味がない」という生徒が約3分の2を占め,苦手
意識が高いようである。その理由としては,電気に対する恐怖感,回路や測定器具操作の難しさ,計
算に対する苦手意識などが挙げられる。電気や電気製品に関しては,興味をもっている生徒は少なく,
日常生活での必要性は理解できていても,そのしくみや原理は理解していない生徒がほとんどである。
授業における学級の雰囲気は全体的に明るく活発で,特に観察,実験に意欲的に取り組む生徒が多
い。本単元においては男女別のグループ編成ということもあり,グループでの話し合い活動では班長
を中心に比較的活発な意見交換が行なわれている。しかし,自分の考えに自信がないために,全員の
前で積極的に意見を発表する生徒は少ない。以下は,アンケート調査の結果である。
① あなたは理科が好きですか。
好き 21人
嫌い 14人
(嫌いな主な理由) 実験が難しい・面倒くさい,覚えることが多すぎて大変,難しい,など
② あなたは「電流」の分野に興味がありますか。
ある 13人
ない 22人
③ あなたは電気や電気製品に興味がありますか。
ある 6人
ない 23人
どちらでもない 6人
④ あなたは次のどの活動が「好き」ですか,または「嫌い」ですか。
(複数回答)
・実験(実験器具の操作等も含む)
好き
9人
嫌い 14人
・教師の話,説明を聞く
好き 10人
嫌い
4人
・意見の発表
好き
2人
嫌い 17人
・ノート整理
好き 16人
嫌い
9人
・グループでの話し合い活動
好き 12人
嫌い
9人
・実験結果からの考察
好き
5人
嫌い 14人 (回答数35)
‐ 佐藤 1 ‐
(3)指導観
電流や磁界は直接目で見えないものであるため,
生徒にとってかなり難しい題材であると思われる。
しかし,観察,実験には意欲的に取り組む生徒の実態から,本単元では,観察,実験の技能,特に実
験器具の操作法を確実に習得させた上で学習活動を展開させていく必要があると考える。その上で,
モデル化や抽象化といった科学的な手法を駆使し,
「なるほど」という納得や驚きを引き出していき
たい。また,実験装置はできるだけ身近な材料を用い,実験結果から得られる事象や法則を実生活で
用いる電気製品の原理などに結びつけながら考察させ,生徒の興味・関心を高めていきたい。
(4)研究主題との関連
本校の研究主題「自ら課題を発見し,主体的に追求する生徒を求めて(基礎・基本の充実を通して)
」
をうけ,理科における重点努力事項を「自ら学ぶ生徒を育成する実験・観察の工夫」と設定した。自
ら学ぶ意欲を引き出すためには,生徒の「わかる喜び」と「素朴な疑問」を大切にしていくことが必
要不可欠であると考えている。そして,課題や疑問を自分なりに解決し納得させることが大切である。
そのためには,まず実験器具の操作法やレポートへのまとめ方を確実に習得させる題材やその提示法
等を工夫し,生徒にできるだけ素朴な疑問を抱かせることが必要である。その過程を通して,生徒に
新たな疑問を自分で解決しようとしていく姿勢が生まれ,
「自ら学ぶ」ことにつながると考える。
これらに迫るために,本単元である「電流の利用」を通して,以下のようなことを試みた。
① 実験装置の組み立ては毎時間交代で行なわせ,多くの生徒に装置に触れる機会を与える。
② 観察・実験を行なった後は,どんなに当たり前のことでもなるべく多くの生徒に発表させるよう
に心がける。
③ 演示装置や実物教材を多用し,身のまわりの電気器具のしくみに興味をもたせる。
また,副題にある基礎・基本については,①継続的な指導によって身についていく基礎・基本と,
②一単位時間に課題を追求するために必要不可欠である基礎・基本とを明確に分け学習活動を行わせ
る必要があると考えている。①の基礎・基本とはすなわち学習指導要領に示されている内容そのもの
であると考えられる。②の基礎・基本は,本単元についていえば,
「回路を組み立てることができる。
」
(実験の技能)
,
「磁石の性質を知っている。
」
(知識)
,
「磁力線には向きがあることを知っている。
」
(知識)
,
「コイルに電流が流れると磁石になることを知っている。
」
(知識)などの内容が当てはまる
と考えられる。これら2つの基礎・基本の学習を充実させていけば,
「自ら学ぶ」ことに直結するの
ではないかと考える。
3 指導目標
(1)電流が日常生活の中でどのように利用されているかを調べるために,電流の発熱の実験,磁界の観
察,磁石とコイルを用いた実験等に意欲的に取り組ませる。 (自然事象への関心・意欲・態度)
(2)電流の発熱の実験,磁界の観察,磁石とコイルを用いた実験等で得られた結果を日常生活と関連付
けて科学的に考察させる。
(科学的な思考)
(3)電流のはたらきを調べる観察・実験を行なわせ,器具の基礎操作,レポートのまとめ方,発表の仕
方を習得させる。
(観察・実験の技能・表現)
(4)電流による発熱や発光,電力との関係,磁石や電流による磁界,磁界から電流が受ける力,電磁誘
導などの基本的な概念や原理・法則を理解させる。
(自然事象について知識・理解)
‐ 佐藤 2 ‐
4 指導計画
電流とその利用…………………………………………………29時間
(1) 電流………………………………………………………14時間
(2) 電流の利用………………………………………………11時間
① 電流による発熱や発光を調べよう………………3時間
② 電流がつくる磁界を調べよう……………………2時間
③ 磁界の中で電流を流してみよう…………………2時間
④ クリップモーターを作ろう(トライ)…………1時間(本時)
⑤ コイルと磁石で電流がつくれるか………………2時間
⑥ 単元確認評価テスト………………………………1時間
(3) 予備…………………………………………………………4時間
5 単元の評価規準
自然事象への関心・
意欲・態度
・電流による発熱や発
光,電力,磁石や電流
による磁界の発生,磁
界から電流が受ける
力,電磁誘導などの観
察,実験など,電流に
よる発熱や磁界につい
ての事象に関心をも
ち,観察,実験を進ん
で行い,それらの事象
を日常生活と関連付け
て考察しようとする。
科学的な思想
・電流による発熱や発
光,電力,磁石や電流
による磁界の発生,磁
界から 電流が受ける
力,電磁誘導などにつ
いて調 べる方法を考
え,観察,実験などを
行い,規則性を見出す
ことができる。
観察,実験の
技能・表現
・電流による発熱や発
光,電力,磁石や電流
による磁界の発生,磁
界から 電流が受ける
力,電磁誘導などの観
察,実験を行い,基礎
操作を習得するととも
に,記録のしかたなど
も身につけ,自らの考
えを加えた観察,実験
の報告書を作成し,発
表することができる。
自然事象について
の知識・理解
・観察,実験などを通
して,電流による発熱
や発光,電力との関係,
磁石や 電流による磁
界,磁界から電流が受
ける力の関係,電磁誘
導など,基本的な概念
や原理・法則を理解し,
知識を身につける。
6 本時の指導
(1)題材名 「クリップモーターを作ろう」
(2)目 標
『意欲的にクリップモーターを製作し,磁界の中で電流が受ける力とモーターの原理を関連付けて考
察することができる。
』
①意欲的にクリップモーターの製作に取り組むことができる。
(関心・意欲・態度)
②モーターが回転する原理を,磁界の中で電流が受ける力と関連付けて考察できる。
(科学的な思考)
③クリップモーターの回転方向と電流の向きをワークシートにまとめ,発表することができる。
(観察実験の技能,表現)
④モーターが回転するしくみを理解する。
(知識・理解)
‐ 佐藤 3 ‐
(3)本時の学習活動における試み
①1人1人にモーターの製作を行なわせることで,課題に対する意欲を高める。
②大型の演示装置を用いてモーターのしくみについて理解を深める。
③活動の自己評価と感想発表を行なわせ,次時の学習へつなげる。
(4)指導過程【別紙】
(5)評
価
生 徒
具体的な評価項目
①(関)意欲的にクリップモ
ーターの製作に取り組む
ことができたか。
②(思)モーターが回転する
原理を,磁界の中で電流が
受ける力と関連付けて考
察できたか。
③(技)クリップモーターの
回転方向と電流の向きを
ワークシートにまとめ,発
表することができたか。
④(知)モーターが回転する
しくみを理解できたか。
評価基準
十分満足できる(A)
おおむね満足できる(B)
・与えられた材料を工夫しな ・与えられた材料を使い,簡
がら,簡単なモーターを意欲 単なモーターを興味をもっ
的・積極的に製作しようとし て製作しようとしている。
ている。
・演示装置を上手に使い,モ ・モーターが回転する原理と
ーターが回転する原理を,磁 磁界の中で電流が受ける力
界の中で電流が受ける力と を関連付けて考えることが
関連付けて考察できる。
できる。
・クリップモーターの回転方 ・クリップモーターの回転方
向と電流の向きを正確にワ 向と電流の向きをワークシ
ークシートに記入し,わかり ートに記入し,発表すること
やすく発表することができ ができる。
る。
・モーターが回転するしくみ ・モーターが回転するしくみ
を正しく理解し,説明するこ をおおむね理解することが
できる。
とができる。
教 師 ・ わかりやすい演示装置をつくり提示することができたか。
・ 班や個に対する適切な支援・助言ができたか。
・ 板書,ワークシートは適切であったか。
(6)準 備 物
クリップモーター材料(36人分)
,クリップモーター制作説明書,大型演示装置,ワークシート,
模造紙(発表用)
(7)引用文献:平成13年度 科学巡回訪問 理科教材・教具の紹介資料(宮城県教育研修センター)
‐ 佐藤 4‐
(8)座 席 表
教
1班
卓
3班
5班
男
男
女
女
男
男
◎ ◎
◎ ◎
○ ◎
○ ○
◎ ◎
△ △
◎ ◎
○ ◎
○ ○
○ ○
○ ○
○ △
男
男
女
女
男
男
○ ○
○ ○
◎ ○
○ ◎
◎ ◎
○ ◎
○ ○
○ ○
○ ○
○ ○
○ ○
◎ ◎
男
男
女
女
男
男
○ ○
○ ○
○ ◎
○ ◎
○ ○
○ ◎
○ ○
○ △
○ ○
◎ ◎
○ ○
◎ ○
男
○ △
女
女
男
男
○ ○
○ ○
○ ○
○ ◎
△ ○
○ ○
○ ○
○ ○
女
女
男
男
女
女
△ ○
○ ○
◎ ◎
◎ ○
○ ○
○ ○
○ ○
△ ○
◎ ○
○ ◎
○ ○
△ ○
女
女
男
男
女
女
○ ○
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
○ ○
◎ ◎
○ ○
○ ◎
◎ ○
◎ ○
○ ○
◎ ◎
2班
△ △
女
◎ ◎
○ ○
6班
4班
性別
観察,実験の技能・表現
自然事象への興味・関心・態度
自然事象についての知識・理解
科学的な思考
◎・・・十分満足できる。
○・・・おおむね満足できる。
△・・・努力を要する。
‐ 佐藤 5‐
6(4)指導過程
段階
学 習 活 動
学習形態
導
前時の確 1 前時の実験で,磁界の中にあ
認
る導線に電流が流れると力が
はたらいたことを確認する。
一斉
入
5
分
課題提示
クリップモーターを作ろう
一斉
評 価
・完成したモーターを実際に回転さ
せて見せ,製作意欲を高めたい
製作準備
2 クリップモーター製作の説明 個人
を聞く。
・コイル両端のエナメルのはがし方
を徹底させたい。
・エナメル線の性質についてふれて
おく。
製作
3 クリップモーターを製作す 個人
る。
・説明書を参考に主体的に取り組ま ①(観察)
せたい。
・作業の遅い生徒には,個別に支援
する。
・早く完成した生徒には,さらに良
く回るように自分なりの工夫をさ
せる。
観察
4 電流の向きと,作ったモータ 個人
ーが回転する向きを観察しワ 班
ークシートに記入し,発表す
る。
・コイルに流れる電流の向きを変え ③
てみるように指示する。
(発表・ワークシート)
・磁界の向きも記入させる。
考察
クリップモーターはどうして 班
回転するのだろう?
個人
発表
5 グループで話し合った結果を 班
演示装置を使い発表・説明す 個人
る。
・発表者に対し必ずコメントをつけ ②(発表)
て支援する。
理解
6 モーターが回転する原理につ 一斉
いて説明を聞く。
・集中して聞かせたい。
自己評価
7 今日の活動の自己評価を行
なう。
個人
・本時の活動をしっかりと振り返ら ④(ワークシート)
せたい。
感想発表
8 今日の授業の感想を発表す
る。
個人
・なるべく多くの生徒に発表させた ①(発表)
い。
展
開
35
分
終
・支援, ・留意点
・個人で自由に考えさせてから,班 ②
で話し合わせる。
(観察・ワークシート)
・演示装置は自由に使っていいよう
に指示する。
④(観察)
結
10
分
‐ 佐藤 6 ‐
2年理科資料
クリップモーターの作り方
【用意するもの】
①円形磁石1個
④エナメル線(φ0.6mm)
⑦モーター取り付け板
②ミノムシクリップ付導線
⑤セロテープ
③ゼムクリップ2個
⑥乾電池1個(単2)
【作り方】
① 円形磁石をモーター取り付け板に埋め込む。
② エナメル線をマジックに10回程度巻き付けコイルを作る。
③ エナメル線の一方の端はエナメルをカッターで全部はがし,もう一方は半分だけはがす。
④ ゼムクリップを図のように変形させ,モーター取り付け板にセロテープで固定する。
⑤ ゼムクリップの穴にコイルをのせ,ミノムシクリップ付導線で乾電池に接続する。
⑥ はじめは少し手で反動をつけてやると回転する。
☆よく回転するモーターを作るコツ
・コイルをきれいな円形にする。(手で回してみて回りつづけるように調整する)
・エナメルを半分だけはがす方は,いっきにはがさず,回り具合を見ながら少しずつ削っていくと良い。
・クリップのモーターが乗る部分の円は,高さを同じにする。