食 の 事 件 簿 ( フ ァ イ ル No.0 4 7 )

2011年8月10日発刊
食品検査センター http://www.medience.co.jp/food/index.html
第47号
● 食 の 事 件 簿 ( フ ァ イ ル No.0 4 7 )
各地で発生した事件・事故等を取り上げ、食品の安全に対する考えを見つめ直したいと思います。
8月は、食品衛生月間の月です。
毎年8月は、厚生労働省によって「食品衛生月間」に定められています。
「食品衛生月間」は食中毒事故の防止と衛生管理の向上を図るため、食
品等事業者及び消費者に対し、食品衛生思想の普及・啓発、食品の安全性
に関する情報提供及びリスクコミュニケーションの推進を図ることを目的に、
厚生労働省、都道府県、保健所設置市、特別区主催により8月1日から8月
31日までの1ヶ月間実施されます。
『食中毒予防パネル掲示』『資料配布』『街頭相談会』『食品衛生クイズ』等
を行い、食品衛生思想の普及・啓発を実施しています。
夏場(6月~9月)は、細菌が原因となる食中毒が多く発生しています。
カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、腸管
出血性大腸菌といった細菌が原因による食中毒が多発しています。
なぜ夏場に食中毒が増えるのかというと、その理由の一つが「高温多湿な
環境」があげられます。食中毒を引き起こす細菌の多くは、室温(約20度)
で活発に増殖し始め、人間の体温ぐらいの温度で増殖のスピードが最も速く
なります。そして細菌の多くはジメっとした湿気を好むため、湿度も高くなる
梅雨頃から食中毒が増え始めます。
そして、夏バテなどによる私達の体の「抵抗力の低下」も加わり、食中毒が
多発しやすい環境になるのです。
本年は、学校給食でのサルモネラ菌属による大量食中毒の発生、そして
焼肉チェーン店での腸管出血性大腸菌による食中毒事件では、食肉を生食
した数名の方が死亡して、多くの重症者が発生したという痛ましい事件があ
りました。
食中毒予防は、『食中毒予防三原則』に従い、地道で継続的な活動が必
要です。
食中毒予防三原則
1.原因菌をつけない
2.原因菌をふやさない
3.原因菌をやっつける
耳にタコができるくらい聞かれているとは思いますが、油断は禁物です。
ちょっとしたことが原因で発生してしまうのが、食中毒です。起きてしまって
からでは遅いのです。基本に立ち返りましょう。
● 皆様からのご意見・ご感想をお待ちしています。 ●
メルマガに関するお問い合わせは、E-mail にて、なんなりと。
: [email protected]
1/3
● 製 造 現 場 の 食 品 衛 生 (第 4 7 回)
食品の安全を守るためには設備や機械、器具類の管理が大切です。
洗浄不十分や取り扱い方によって食中毒事件につながる可能性もあります。
どのような器具を使用すればいいのか、どのように扱えば品質の低下や細菌の増殖
を防げるのか確認しましょう。
1.設備機器の配置・構造、その整備管理
シンク(流し)
● 下処理用と調理用のシンクは区別しましょう。
食品相互の汚染が起きないよう区別し、二次汚染を防ぐために清潔に保つことが
重要です。
下調理機器、過熱調理機器類
● 衛生・安全性・耐久性にすぐれたものを選びましょう。
食品が直接触れる部分が清潔に保てる(洗浄や消毒が容易にできる)、分解して洗浄
できる材質・機能が必要です。
木製や布製は細菌の温床となる恐れがあります。また洗浄や加熱・殺菌の繰り返しに
耐えられる錆びない素材の機器類が望まれます。
2.器具類の構造・保守・整備管理および衛生管理
冷蔵庫:5℃以下、冷凍庫:-18℃以下
● 食品を変質させる酵素活性や微生物の増殖を抑制し、食品本来の衛生的品質を保持する
ため、十分な冷却機能、設置場所、収納方法、温度管理、庫内の清掃、除霜に注意が
必要です。
● 食中毒菌の増殖を抑制するため、生鮮食品や水分の多い加工食品は10℃以下という設定
→多くの食品を収納すること、扉の開閉が頻繁であることを考慮すると、5℃以下に保つべきです。
● 収納は庫内容積の70%以下、食品は内壁から話して風の通り道を作りましょう。
● 本体の外回りと取っ手部分は毎日洗剤で洗浄、絞ったふきんで乾拭き、消毒を行いましょう。
● 庫内清掃する際には、食品を他の冷蔵庫に移して庫内の内壁、棚板、扉の裏面を洗浄し、
次亜塩素酸ナトリウム溶液やアルコール類で消毒し、ふきんで水気をぬぐい取りましょう。
温蔵庫:65℃以上
食中毒菌の増殖から食品を守るため、温度を適正に保持することが大切です。
自動食器洗浄機
スプレータイプ、ブラシ式洗浄機、超音波式があり、多くの施設で使用されているのが
スプレータイプで、ウォーターナイフと呼ばれる圧力で食器表面の汚れを削り落とします。
デンプン類やタンパク
質を取り除く前処理
が必要
水圧・洗浄剤・温度
のバランスが大事
3.設備機器・器具の保守管理と記録
シンク類(流し、調理台、戸棚など)
1日1回以上、温水と洗剤で洗い、洗浄分が残らないようふきんでふき取り、熱湯で消毒し乾燥
しましょう。
ガス機器類
汚れは清掃し、着火不良、燃焼不良、ガス臭がするときは修理し、記録を残しましょう。
定期点検時に整備をしましょう。
電気機器類
水洗いはせず、ふきんでぬぐうか乾拭きしましょう。汚れの蓄積は漏電の原因にもなります。
冷蔵庫・冷凍庫
故障の兆候に気づくためにも温度測定・記録を行いましょう。
気がつかないうちに品質劣化または不衛生化した食品の提供は大きな食品事故につながります。
2/3
●
異物鑑別・クレーム品検査事例
事例45-②
異物分析の検査方法について(続き)
前回は有機成分の分析に有効な「赤外分光光度計による分析」についてご案内しました。今回は無
機成分の分析に利用される「蛍光X線分析」についてご案内いたします。
● 蛍光X線分析装置による分析
物質にX線を照射したとき一部は吸収され、一部は透過します。吸収されたX線は2次X線や熱な
どに変換されます。それらのうち発生する蛍光X線に注目した分析法が「蛍光X線分析装置による分
析」です。発生する蛍光X線は元素に固有の波長を持つため、どの波長の蛍光X線が発生したかを見
ることで含有する元素を知ることが出来ることになります。また、その強度から含有率の推定もで
きます。
主に無機物などの分析に有効で物質がアルミニウムか、鉄か、ステンレスか、などの判別に利用で
きます。
下図は洗浄に使用される金属タワシを蛍光X線分析装置で測定したときの分析チャートです。測定
された元素は主成分が鉄(Fe)でクロム(Cr)、ニッケル(Ni)などが含まれていました。これ等の比率
からステンレス製の金属タワシと推定されます
●
検 査 ま め 知 識 残留農薬検査法について② 試料の調製方法
前月号に続き、残留農薬検査法についてご紹介いたします。今回は「試料の調製方法」に
ついてです。
● 試料調製
試験品から農薬成分を効率的に抽出するためは、試験品を細か
く均一化する必要があります。試料の調製方法は、厚生労働省に
より手順が定められています。農作物の場合、基本的に可食部が
検査対象とされています。野菜や果実では、上部と下部では農薬
の付着量に差があることが多いため、注意が必要です。
右写真はにんじんの試料調製例です。にんじんや大根(根部)と
いった根菜類については、まず縦方向に4分割し、対角に位置す
る2ヶ所を分取します。試験品全体を反映するように、出来るだけ
多くの固体から分取することが必要です。
分取した部分について、次に包丁等で細切した後に、ミキサーや
フードプロセッサーを用いて磨砕均質化させます。一度使用した器
具は十分に洗浄する必要があり、この点も注意が必要です。
試料調製に用いる器具としてはこの他、穀類や豆類ではミルやグ
ラインダー、生肉や魚介類では肉挽き器とミルを併用することが一
般的です。
次回は残留農薬検査の抽出工程についてご紹介します。
弊社では、残留農薬の検査を承っております。
詳細は弊社ホームページにて → http://www.medience.co.jp/food/zannou1.html
3/3