講義編 微分法(1) 今回から「微分法」に入っていきます。 理文共通範囲の微分積分については、予備知識(前提)とし ます。 今回(1)の主なテーマは【微分係数(右側,左側含む)】・ 【微分可能と連続】・【導関数(定義)】・【積,商の微分公式】・ 【合成関数の微分公式】です。 ■平均変化率 と 微分係数ーーここからーー(復習)ーー 1 A(3 , f(3)) B(move) B(3+h , f(3+h)) 直線ABの傾き A(stop) y=f(x) 3 3+h (固定) (動く) = = f(3+h)-f(3) (3+h)-3 f(3+h)-f(3) h x=3からx=3+hまでの,関数 y=f(x)の平均変化率 ここで, hを限りなく0に近づけると,点 Bは限りなく点Aに 近づく。 そして, f(3+h)-f(3) h h→0 lim (直線ABの傾き) = lim h→0 を,「関数y=f(x)の,x=3における微分係数」 または 「関数y=f(x)の,x=3における接線の傾き」 といい, f' (3) で表す。 (注 極限値が存在するときの話。) まとめると, lim(直線ABの傾き) = lim h→0 h→0 f(3+h)-f(3) = f' (3) h = 「関数y=f(x)の,x=3における微分係数」 = 「関数y=f(x)の,x=3における接線の傾き」 -1- 2 注)図で, 3+h=x とかくと, f(x)-f(3) と書きかえることもできますね。 x-3 x→3 lim イメージ 傾きf' (3) B いくと…… →→直線が見えてきますね!! dx 3 3 の近傍をどんどん拡大して dy A 曲線y=f(x)上の点A(x=3) この直線を「y=f(x)の,x=3における接線」 と呼ぶわけです。 dx……xの微分(微小増加分) dy……yの微分(微小増加分) dy = f' (3) dx ∴dy = f' (3)dx (ただし,x=3の近傍で) この式を見ると,「微分係数」という名前も納得ですね。 さて,上の説明で,《 3の代わりに文字aを使う》と, 4 関数y=f(x)の,x=aにおける微分係数 f' (a) = lim f(a+h)-f(a) h h→0 B f(x)-f(a) x-a x→a =lim C (関数y=f(x)の,x=aにおける接線の傾き) 注)この極限値 f ' (a) が存在するとき, f(x)はx=aにおいて微分可能であるという。 ■平均変化率 と 微分係数ーーここまでーー(復習)ーー ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ -2- ■右側微分係数&左側微分係数 f(a+h)-f(a) f(a+h)-f(a) , lim が存在するとき, h h h→+0 h→-0 lim この極限値をそれぞれ, f(x) の x=a における「右側微分 係数」,「左側微分係数」という。 B f(a+h)-f(a) h h→0 f(x) が x=a で微分可能である f ' (a)=lim C が存在する ための必要十分条件は,f(x) の x=a にお f(a+h)-f(a) と左側微分係数 h h→+0 B C f(a+h)-f(a) lim h B C がともに存在して,かつその値が等 ける右側微分係数 lim h→-0 しいことである。 [例] f(x)=|x| について。 f(0+h)-f(0) |h| h = lim = lim = 1 h h h→+0 h→+0 h→+0 h lim f(0+h)-f(0) |h| -h = lim = lim = -1 より h h h→-0 h→-0 h→-0 h lim x=0 における右側微分係数,左側微 5 4 分係数がともに存在するが、その値 3 2 が等しくないから、 f(x) は x=0 で微 1 -4 -3 -2 -1 0 -1 1 2 3 4 分可能でない。( f ' (0)は存在しない。) [参考] 定性的に言うと,微分可能とは,グラフが「ツナガ ッテイテ」(これを連続という),「ナメラカ」なことである。 (ex. y=|x|のグラフは, x=0 でナメラカでない。) -3- 注)ただし,「ナメラカ」なのに微分可能でないこともある。 1 3 2 3 f(x)=x ( = x) のとき, 1 2 -3 -2 -1 1 0 2 1 -3 1 1 f ' (x) = x = ⋅ 3 であり, x=0 3 3 2 x 3 -1 で微分可能でないが,グラフは 2 「ツナガッテイテ」(連続)、「ナメラカ」である。 《接線が y軸に平行なとき、このようなことがおきる。》 ■微分可能と連続 関数 f(x) が x=a で微分可能ならば、 f(x) は x=a で連続である。 注)この定理の逆は成り立たない。( ex. y=|x| (x=0)) 理由(証明) f(x) が x=a で微分可能(i.e. f ' (a)が存在する)ならば lim{ f(x)-f(a)} = lim x→a x→a = f ' (a)⋅0 = 0 F f(x)-f(a) (x-a) x-a ⋅ G よって lim f(x) = f(a) x→a すなわち f(x) は x=a で連続である。 (fin) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 例題1 関数 f(x) = F 2 x +2 (x≦2) 2 -2x +ax+b (x>2) が x=2 で 微分可能であるとき、定数a , b の値を求めよ。 解 まず,微分可能であるためには、連続であることが 必要なので lim f(x) = lim f(x) = f(2) x→2+0 ⇔ 2a+b-8 = 6 = 6 x→2-0 ⇔ 2a+b=14 ……① ①の下で,(x=2で)微分可能であるための条件は 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 -2 -1 0 -1 -2 《右側微分係数》=《左側微分係数》 f(2+h)-f(2) h h→+0 ⇔ lim 1 2 3 4 5 6 f(2+h)-f(2) h h→-0 = lim -4- 2 注)左辺(のf(2+h))に f(x)=-2x +ax+b , 2 右辺(のf(2+h))に f(x)=x +2 を適用して極限計算 をしてもよいのだが,次のようにする方がラク。 ⇔ lim f ' (x) = lim f ' (x) x→2+0 x→2-0 2 左辺では 2<x なので f(x)=-2x +ax+b より f ' (x)=-4x+a 2 右辺では x<2 なので f(x)=x +2 より f ' (x)=2x ⇔ lim (-4x+a) = lim (2x) x→2+0 x→2-0 ⇔ a-8=4 ⇔ a=12 ……② ①②より a=12 , b=-10 (ans) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ■導関数 (復習) aの値を1つ決めると, f ' (a) の値が唯1つ決まる。 つまり,「f' (a)は , aの関数」なので aの代わりに x とかくと,新しい関数 f' (x)が得られる。 これを y=f(x) の導関数といい, f ' (x) , y' , dy d , f(x) などと表す。 dx dx f' (x) = lim f(x+h)-f(x) h h→0 (導関数の定義) 注) f(x)が与えられたとき,「f ' (x)を求める」ことを, 「f(x)を微分する」という。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 関数 f(x) = x を(導関数の定義を用いて) 例題2 微分せよ。 解 x+h - x f(x+h)-f(x) = lim h h h→0 h→0 f ' (x) = lim = lim h→0 B x+h - x x+h + x ⋅ h x+h + x C -5- (x+h)-x 1 1 = lim = (ans) h→0 h( x+h + x ) h→0 x+h + x 2 x = lim ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ■線型性・線形性 (証明は略) (復習) ・ { c⋅f(x)} ' = c⋅f'(x) (cは定数) ・ { f(x)+g(x)} ' = f'(x) + g'(x) ■積の微分公式 { f(x)⋅g(x)} ' = f' (x)⋅g(x)+f(x)⋅g' (x) 理由(証明) f(x+h)-f(x) g(x+h)-g(x) = f ' (x) , lim = g ' (x) lim h h h→0 h→0 であることに注意して、 f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x) h h→0 { f(x)⋅g(x)} ' = lim f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x+h)+f(x)g(x+h)-f(x)g(x) h h→0 =lim =lim h→0 F f(x+h)-f(x) g(x+h)-g(x) g(x+h) + f(x)⋅ ⋅ h h = f ' (x)g(x) + f(x)g ' (x) G (fin) ■商の微分公式 F f(x) ' f' (x)⋅g(x)-f(x)⋅g' (x) 2 g(x) = { g(x)} G 理由(証明) f(x) ' 1 ' 1 1 ' = f(x)⋅ = f ' (x)⋅ +f(x)⋅ g(x) g(x) g(x) g(x) …① F G F G F G 1 1 g(x+h) g(x) 1 ' ここで g(x) = lim h h→0 F G = lim h→0 1 g(x)-g(x+h) -1 g(x+h)-g(x) = lim ⋅ ⋅ h g(x+h)g(x) h h→0 g(x+h)g(x) -6- = -1 g ' (x) 2 ⋅g ' (x) = 2 であるので { g(x)} { g(x)} g ' (x) 1 ① = f ' (x)⋅ g(x) + f(x)⋅ 2 { g(x)} H = f ' (x)⋅g(x)-f(x)⋅g ' (x) 2 { g(x)} I (fin) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 次の関数を( xで)微分せよ。 例題3 2 3 (1) y=(3x-7)(2x +x-4) 2 (2) y=(x +1) (3) y=ax(bx+1)(cx-1) (a , b , cは定数) 解 (1) F(3x-7)(2x2+x-4)G ' 2 2 = (3x-7)'⋅(2x +x-4) + (3x-7)⋅(2x +x-4)' 2 2 = 3(2x +x-4) + (3x-7)(4x+1) = 18x -22x-19 (ans) 3 2 3 3 (2) F(x +1) G ' = F(x +1)(x +1)G ' 3 3 3 3 3 3 = (x +1)'⋅(x +1) + (x +1)⋅(x +1)' = 2(x +1)⋅(x +1)' 3 2 2 3 = 2⋅(x +1)⋅3x = 6x (x +1) (ans) 参考)今回後で学ぶ「合成関数の微分公式」を用いると 3 2 3 3 一気に F(x +1) G ' = 2(x +1)⋅(x +1)' と計算できます。 2 (3) { ax(bx+1)(cx-1)} ' = F(abx +ax)⋅(cx-1)G ' 2 2 = (abx +ax)'⋅(cx-1) + (abx +ax)⋅(cx-1)' 2 = (2abx+a)⋅(cx-1) + (abx +ax)⋅c 2 = 3abc⋅x -2a(b-c)⋅x-a (ans) 参考)もちろん「展開してから微分」しても OKです。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 例題4 次の関数を( xで)微分せよ。 2 1 3x -6x+1 (2) y= (1) y= 2 2 (x+3) x +1 2 2 解 1 ' 0⋅(x+3) - 1⋅ F(x+3) G ' = (1) 2 2 2 (x+3) F(x+3) G F = G -2(x+3) -2 4 = 3 (x+3) (x+3) (ans) -7- 2 2 2 2 2 3x -6x+1 ' (3x -6x+1)'(x +1)-(3x -6x+1)(x +1)' (2) = 2 2 2 x +1 (x +1) F G 2 2 2 (6x-6)⋅(x +1) - (3x -6x+1)⋅(2x) 6x +4x-6 = (ans) = 2 2 2 2 (x +1) (x +1) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ■合成関数の微分公式 y=f(u) F u=g(x) のとき [イメージ] dy dy du = !! dx du ⋅ dx (分数のように扱える ) g f x →→→→→ u →→→→→ y dy 注) dx = [xy平面における接線の傾き] dy = uy du [ 平面における接線の傾き] du = xu dx [ 平面における接線の傾き] であることに注意 dy dy du すると、 dx = du ⋅ dx を直感的に理解できるでしょう。 y y x u u x dy 注) dx , ⌠ などは ライプニッツ( Gottfried Wilhelm ⌡ Leibniz , 1646-1716)の考え出した記号である。 彼はつねづね「適切な記号は思考を助ける」と言ってい て,微積分におけるこの記号化は,彼の傑作といえるだ ろう。 注)「導関数の定義」からの説明は省略する。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 次の関数を( xで)微分せよ。 例題5 2 4 (1) y=(5x -3) x (2) y= x+1 B C 3 -8- 解 2 4 (1) y=(5x -3) F ⇔ 4 y=u 2 u=5x -3 dy dy du 3 2 3 ∴ dx = du ⋅ dx = 4u ×10x = 4(5x -3) ×10x 2 3 = 40x(5x -3) (ans) 参考)慣れてきたら,いちいち置き換えずに n n-1 (□ ) ' = n⋅□ ⋅□' x (2) y= x+1 B C F 3 ⇔ という感じで計算すればよろしい。 3 y=u u= x x+1 dy dy du 2 1⋅(x+1)-x⋅1 ∴ dx = du ⋅ dx = 3u × 2 (x+1) =3 x x+1 B C 2 2 × 1 3x 2 = 4 (x+1) (x+1) (ans) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ■逆関数の微分公式 dy 1 = dx dx dy (分数のように扱える) ■媒介変数(パラメータ)で表された曲線の微分公式 x=f(t) , y=g(t) のとき dy dt dy g ' (t) = = dx f ' (t) dx dt dx B dt ≠0のときC ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【◇…スタンダード、◇◇…ハイレベル】 (◇)次の関数を(xで)微分せよ。 演習1 2 2 (1) y=(3x +3x-1)(2x +2x+3) 3 2 (2) y=(2x +x+1) (3) y= x x +1 2 -9- 演習2 F 2 x +1 (x≦1) について、 (◇)f(x)= 2 -2x +ax+b (x>1) f(x) が x=1 で微分可能となるように,定数a , b の値を定 めよ。 - 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