勝新太郎の歌声がエントランス中に鳴り響く『ミュージックアワー』。 ぽいプレスリーの「サスピシャス・マインズ」、 水戸芸術館のコンテンポラリーダンスでは想像できない曲が、ジュークボックスから クイーンの名曲や「マンボNo.5」、美空ひばり 飛び出したその理由は? のスキャットが楽しい「A列車で行こう」、そ 一方、リハーサル室では、子供たちが大人顔負けに可憐にダンスしていた…。 して勝新太郎の熱唱。ジュークボックスから 水戸の現代ダンスに、この夏、異変が起こった。 流れる魅惑の音楽が、エントランスホールに この二つのダンス企画の仕掛人、平松み紀さんにお話しをうかがいました。 響き渡るなかでダンス、ダンス、ダンス。いつ も以上に観客から盛大な拍手が…。 ●思考の壁を突破する感じ 「ある領域を超えて、飛躍することもクリエー エントランスで踊ってみる24「ミュージックアワー」5/12,26, 6/30 ションなんですね。様々なジャンルの曲が、私 「これまで自分の生理感覚や呼吸を大切にし過ぎたのかな…。勝新太郎さん のダンスの間口を広げてくれた。思考という の「サマータイム」もそうですけど、今回はヴィヴァルディやピアソラの曲 壁を突破できた感じです」 が先にありました。すでに歴然とした<型>が構築されています。それに自 クラシック、モダン、コンテンポラリーと経験してきた平松さんは、今回の ミュージックアワー③ 分を合わせていくわけです。いつもは、良いか悪いか分かりませんが、思考 ことで、ダンスのジャンルに対して変なこだわりがなくなり、遊び心をもて の果てにあるのがクリエーションなんです。でも『ミュージックアワー』で るようになったとのこと。ダンスの世界は広大であり、アプローチの可能性 は曲と対峙し、勝さんや美空さん、クイーンやプレスリーを相手にジタバタ も無限にあることが伝わってきます。 してしまうことが、正にクリエーションだった」と、平松さんは作品を振り 返ります。 ●水戸の将来のダンスにとんでもない飛翔が 「子供・ダンス・ワークショップ」7/7,8 7/14,15 「5、6年生の精神の集中が高いのに驚きです。昨年は4年生も交じってい て気付きませんでしたが…。受講生とキャッチボールができた感じです。い い球返してきましたよ。こちらもかなり本気でしたし、真剣勝負です」 小学生を対象に現代ダンスを広めていこうと、昨夏開講した「子供・ダンス・ ワークショップ」。好評につき継続実施となった今年は、クラスを3、4年生 のAコース、5、6年生のBコースに分けて行いました。 ミュージックアワー① 「3、4年生はとにかく発想が面白い! まだ年齢的にチビッコ・ダンスの範 ミュージックアワー② 1998年にスタートした「エントラン 疇ですが、いろんなやり方があるのを発見できました。まねすること、練習 スで踊ってみる」シリーズは、今回の すること、そしてこちらからのサジェスチョンでできること。子供だって、 簡単に現代ダンスにアプローチできるんだって確信しました」 『ミュージックアワー』で24回目。実 験的なダンスや劇場公演ではなかな 子供たちに、ダンスのクリエイティ か実現できない作品を、エントラン ヴな部分を刺激として与え、そこか スホールを舞台に、無料でどんどん ら何か創ることができれば、将来の 上演してしまおうと始まりました。 水戸のダンスに新たな展望が期待で ミュージックアワー③ 『ミュージックアワー』は、ジューク きます。 ボックスからいろんな曲が次々に鳴ることを想定し、それにあわせて激し 「今回のように、モチヴェーションの く踊るというコンセンプトで、3回に渡り上演。振付よりも、曲を先行させる 高い子たちが大勢きたら、とんでも というルールのクリエーションです。回ごとに新しい曲を加えたり、同じ曲 ない飛翔があるかも」 でもトリオで踊ったものを群舞にかえたりソロにしたり、様々な実験的な 大きな瞳を輝かせながら語ってくれた平松さんに、更なるチャレンジ精神 要素が加えられています。4分前後の曲と格闘するダンサーの姿が印象的で を感じました。 子供・ダンス・ワークショップ した。 「作曲家の存在の大きさをあらためて感じました。ダンスを創っていく過程 思考することで生まれた新しい表現である現代ダンスは今、大きな壁に突 で、久しぶりに師匠がいる気がした。音ってやっぱり速いんですよね。から き当たっているといわれています。しかし、その可能性はまだまだあって、 だのスピードが追いつかない。 でも追いついたときの喜びが快感に」 ちょっとした思いつきや予期しない出会いが、新しい展開を想像させてく ガーシュインのスタンダード曲や、平松さんに言わせるとジャズダンスっ れるはず。今後を期待させてくれる二つのダンス企画でした。 マジハンパねぇ音楽劇、 初登場! 長谷川裕久(ACM劇場専属劇作家・演出家) キミトギャグジー(右から 鈴木貴幸さん、織笠裕美さん) 市民演劇祭に初登場の劇団です。主宰の鈴木 西部劇が好きだ。古典からニューシネマ、ジ 人生の盛りを過ぎた男たち。強盗団は活路 ョン・ウェインの正統からイタリア産マカロ を求めてメキシコに渡るが、馬から振り落 貴幸さんは水戸市民演劇学校出身で、メンバ ニまで、A級B級傑作駄作問わず西部劇な とされる中年ギャング。破滅するのはすで ーのなかには卒業生が何人かいるとのこと。 「歌 ら何でもいい。イーストウッドの『許されざ に承知、ならどうやって散るか? DVD裏ジ る者』もいいが、 『バック・トゥ・ザ・フューチャ ャケット「死の行進」シーン。死地に向かう あり踊りありの、ミュージカルではなく音楽 劇をやります! 戯曲もオリジナルで音楽もオ リジナル。押しつけじゃありませんが、僕らが 面白いと思っているお芝居を水戸の皆さんに観てもらって、何か感じ てほしい」 日本人の身体感覚から紡がれる 新しいダンスの誕生! −若生祥文 現代ダンスに新たな創造の息吹を感じさせるクリ ー3』もいい。その中でも 男たち4人がそれぞれに マイフェイバリットピク 構えるライフルは、4丁と チャーなのが、サム・ペキ もが互いに銃口を向けぬ ンパー監督1969年作品、 ように握られている。 「燃 最後の西部劇ともいわ える蠍」に始まって全編を れる『ワイルドバンチ』だ。 貫くペキンパー美学の中 すでにアメリカ大陸横断 で「バイオレンス」を際立 鉄道が通って数十年、フ たせるのはこの繊細さだ ロンティアも消えはてた、 ということがよくわかる。 銃と無法の時代の終焉。 エイターとして、今後の動向が注目されている若 生祥文さん。6月下旬より新作のクリエーションが 辻本 力(演劇部門学芸員) スタート。ソロ作品を現代美術ギャラリーで上演 ACM劇場のお知らせ冊子 します。 『ワイルドバンチ』 監督:サム・ペキンパー CAST:ウィリアム・ホールデン、 アーネスト・ボーグナイン、ほか (1969年製作/アメリカ/145min) になぜ 『ワイルドバンチ』 ? ACM劇場の現代ダンス企画は、 大量の血と暴力で哀悼を 捧げる男泣きの世界。この でも、 選者が長谷川さんなら、 納得。もちろん、 格好良さ、 長谷川さんが自作で求める 「美学」 俺も好きです。 みたいなものに通じているのかなとか思っ 1994年の<現代ダンス・フェス ティヴァル IN MITO>から始ま 『ワイルドバンチ』は、西部劇が時代遅れとな りました。どこよりも早く、旬の たり。 った時代につくられた作品。登場人物も同 現代ダンスを日本に紹介してい じく、時代にそぐわず居場所のなくなった たこのフェスティヴァルは、や オヤジ・ガンマンたち。俺たち年食っちまっ 個人的には、ジョン・ウェインの映画とかち ょっと苦手(全部じゃないにしても、アメリ カ万歳!な感じがどうしても…ね)…なん たけど、もう一花咲かせようぜ。さながらや がて日本人ダンサーによる新作 ですが、ジャンル物としての魅力以上のも けっぱちの様相で死地へ向かうオヤジたち。 のがここにはあるように思います。 『V. O. ( 』振付=エルヴェ・ロブ) の企画・制作・上演までたどりつきました。出演メンバーであった若生 そこは、消え行く西部劇というジャンルに 祥文さんは、 ACM専属のダンサーとなり、 その後、 本格的にヨーロッパ へ渡り活躍。今回は帰国後初の振付・出演作品になります。公演後は一 度フランスへ戻り、 エルヴェ・ロブの作品に出演予定。 号 好評発売中! 10月の本番、さらに11月に彼のワークショップを予定しています。こ の機会にぜひ若生さんのダンスを観て、ワークショップ体験してみて はいかが? 水戸芸術館ACM劇場発行の雑誌「WALK」最新号 特集「娯楽2」 佐藤卓、みうらじゅん、平山夢明、近藤芳正、 滝本誠、茂木健一郎 など これからのACM劇場 ★市民演劇祭 8/18(土)16:00 劇団OH-NENS『パパ、ILOVE YOU!』 8/19(日)14:00/18:30 水戸演劇祭プロデュース『ヲ葬式』 8/24(金)19:00 茨城大学演劇研究会『雨と夢のあとに』 多彩な切り口で、 「娯楽」を語った充実の内容 お求めは水戸芸術館ミュージアム・ショップ“コントルポアン” (TEL.029-227-0492) でどうぞ! 8/25(土)19:00 キミトジャグジー『リトルウェッジの魔女』 8/26(日)16:00 健常者と障害者の舞踊劇団「創」(うまれる) 『生まれる、犀、愛夢いっぱいパルパープル!』 ★水戸市民演劇学校卒業公演 『ロミオ・アンド・ジュリエット』原作:W.シェイクスピア 構成・演出:長谷川裕久 9/8(土)19:00、9(日)14:00 ★水戸短編映像祭 9/15(土)、16(日)、17(月) ★水戸芸術館友の会第47回鑑賞会 ミュージカル『ラスト・ファイヴ・イヤーズ』出演:山本耕二、井手麻理子 9/22(土)18:30、23(日)14:00 ★『郵便配達夫の恋』 10/3(水)19:00 出演:中島知子(オセロ)、辰巳琢郎、ほか ★<日本の現代ダンス>『KHAÏL(カイル)』振付・出演:若生祥文 10/27(土)19:00、28(日)14:00 会場:現代美術ギャラリー ◎水戸芸術館チケット予約センター 029‐225‐3555 営業時間9:30∼18:00(月曜休館) ◎お問合せ:水戸芸術館ACM劇場 029‐227‐8123 〒310-0063 水戸市五軒町1-6-8 http://www.arttowermito.or.jp/ これからの募集 ★平成19年度水戸子供演劇アカデミー受講生 対象=小学4年生∼中学3年生/受講期間=10月∼2008年3月 ★水戸市民舞踊学校オープンクラス参加者 対象=高校生以上/開催日時=9/12、19、26、10/3、10、17、11/14、21、28 18:30∼20:30(全て水曜日) ★ダンス、演技の特別ワークショップを11月に開催予定です。 「ダンサーのためのワークショップ」11/3(土)、4(日) Challenge!!! 「現代ダンスワークショップ 入門編」11/10(土)、11(日) 「ショート・演技・ワークショップ vol.5」11/17(土)、18(日) ※詳細はお問い合わせください。 ◎ACM劇場の最新情報は学芸員のブログで! 松本小四郎 http://www.arttowermito.or.jp/blog/matsumoto/ 長谷川裕久 http://www.arttowermito.or.jp/blog/hasegawa/ 櫻井琢郎 http://www.arttowermito.or.jp/blog/sakurai/ 辻本 力 http://www.arttowermito.or.jp/blog/tsujimoto/
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