地域新電力によるエネルギーの地産地消・地域活性化モデルの構築

平成26年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金 構想普及支援事業(Ⅰ事業化可能性調査)
成果報告書要約版
補助事業の名称: 地域新電力によるエネルギーの地産地消・地域活性化モデルの構築
事業者名:(株)日本アプライドリサーチ研究所、環境エネルギー普及(株)
対象地域:山梨県峡中・峡東地域
実施期間:平成27年10月~平成28年2月
1.事業の背景・目的
国が推進する「地方創生」において、地域における新たな雇用創出が期待される中で、豊
富な水力発電を有する山梨県の地域特性を活用したエネルギーの地産地消型の地域新電
力により、新たな企業誘致と雇用創出を図ることを目的とする。
① 山梨県企業局等が所有する既存再生可能エネルギー(電力)を、地域の工業団地及び
公共施設において面的に安定的かつ低料金で提供することによる、エネルギー地産地
消・地域活性化モデルを構築する。
② 地域新電力から需要者への電気料金の設定による、工業団地及び公共施設全体とし
てのピークカットへのインセンティブを付与するための面的なエネルギーマネジメントシ
ステムを明らかにする。
③ 本モデルの中心となる地域新電力会社(地域新電力)の設立を前提に、山梨県との連
携を含む全体の事業スキーム及び地域新電力の事業性を明らかにする。
④ 電力供給者、需要者の双方にとってメリットのある料金設定とすることにより、本モデル
を活用した経済波及効果について定量的に把握する。
2.補助事業の概要
本事業では、(1)山梨県企業局等が所有する既存再生可能エネルギー(水力発電電力)
を、地域の工業団地及び公共施設に安定的かつ低料金で提供することによる地産地消・
地域活性化エネルギーモデルを構築することを主眼に、(2)災害発生時における防災拠点
等への安定的な電力供給、(3)本モデルの中心となる地域新電力会社(地域PPS)の設立
を前提に、山梨県との連携を含む全体の事業スキーム及び地域エネルギーマネジメントシ
ステムの検討、(4)電力供給者、需要者の双方にとってメリットのある料金設定とすることに
より、本モデルを活用した新たな企業誘致や発電事業拡大などの想定される経済波及効
果について検討を行う。具体的には、主に以下の項目について検討する。
① 需要・供給サイドがALL WINとなる地域新電力の事業スキーム及びエネルギー地産地
消・地域活性化モデルの明確化
② 供給サイドにとってメリットのある電力購入条件及び料金等の最適化
③ 需要サイドの電力需要パターンに応じた料金設定の最適化及びデマンドレスポンスに
よる面的なエネルギーマネジメント方策の明確化
④ 供給サイド及び需要サイドの条件設定を踏まえた、本モデルにおける地域新電力の事
業性の確保
⑤ 地域新電力による地域活性化への経済効果の把握
⑥ 電力供給・需要側及び地域新電力がALL WINとなる事業実現方策の明確化
⑦ 供給電力の増加による地域新電力事業拡大の可能性と想定される課題の明確化
3.調査の結果
事業化の可否の結論: 可
検討項目
①EMSの構成
②EMSの効果
③再生可能エネル
ギーに関する調査
(任意)
④事業実施体制・
事業スキーム・スケ
ジュール
⑤事業採算性評価
⑥他地域への展開
⑦今後の展望・課
題・対策
事業化予定時期:2019年
実施方法
本検討におけるEMSは、山梨県
内の既存水力発電所を活用した、
エネルギー地産地消・地域活性化
モデルとしての新電力による電力
需給管理システム。新電力が実施
するEMSとは、電力需給の同時同
量を達成(発電所等から調達し供
給する電力量と需要家の需要量を
一致)させる業務とした。
検討結果
電力需給の同時同量を達成する主な
手段として、県内の水力発電所(笛吹川
水系)による出力調整を行うとともに、調
達する電気として、電力取引所での売買
取引、常時バックアップ契約、さらには
バランシンググループ等を活用した調整
電力の調達等がある。需要側を制御す
る機能としてはデマンドレスポンスが考
えられ、特に料金型は需給調整におい
て有効な手段といえる。
県内の水力発電所で発電した電 需要に対して発電が少ない場合には
気をできる限り多く需要家に販売す 発電量を増やし、多い場合は減らすと
るには、需要に合わせて水力発電 いった発電量調整を実施したとしてシ
の発電量を調整することが有効と ミュレーションすると、水力発電からの供
考えられ、その実施方法と有効性 給量は60.9%となり、何もしない場合から
を検討した。
3.6%向上することがわかった。
笛吹川水系及び早川水系を含む 笛吹川水系の発電量(平成25年度実
山梨県内の全水力発電所の発電 績)は110百万kWh。時間帯別の発電パ
量並びに調査対象として工業団地、ターンは変更可能。国母工業団地の年
県庁の電力需要量を把握し、電力 間電力使用量は、150百万kWh前後で
の需給ギャップの現状を調査した。 あり、笛吹川水系の発電量を上回る。
事業の実施体制については、公 想定される事業開始時期は、公共事業
共事業として業務委託により実施 では、新電力事業開始までに2~3年、
する場合と民間への売買契約によ 新たな発電所の運転開始までに5~6年
り実施する場合があり、両者の比 と、総じて民間事業で行うより1、2年程度
短くなると考えられる。
較検討を行った。
山梨県全体の水力発電事業のポ 収入は、需要家への小売販売額、発電
テンシャルを把握するため、笛吹川 超過分のJEPXへの売電額、余剰電力の
水系の水力発電所に加え、早川水 売電額(インバランス料金)を合計した年
系および塩川水系の水力発電所も 間収入合計と支出額を差し引いた経常
含めた山梨県全体の水力発電所を 利益は731百万円となる。県企業局によ
るエネルギー事業またはその他の県事
活用した場合の事業収支シミュ
業の資金として活用が可能となる。
レーションを実施した。
県の水力発電所を活用した地産 各自治体が保有する資産としての水力
地消・地域活性化のエネルギーモ 発電所を新電力を通じて地域活性化の
デルを他地域に展開することを想 ために活用することで、地域独自の新た
な財源を生み出すことが可能になる。
定した検討を行った。
長期契約に基づく地域エネルギー事
利益を積極的に事業に再投資す
ることで、地域活性化に寄与するモ 業(総工費100億円のLNG発電事業)へ
デルとなるよう10年以上の長期契 の再投資の場合には、総事業費の5倍
以上の経済波及効果が想定される。
約を想定し、検討を行った。
4.地産地消型エネルギーシステムの概要
本検討におけるエネルギーマネジメントシステムとは、山梨県内の既存水力発電所を活用した、エネルギー地産地消・地域活性化モデルとしての新電力による電力需給管理シ
ステムである。ここで、新電力が実施するエネルギーマネジメントとは、電力需給の同時同量の達成、つまり発電所等から調達し供給する電力量と需要家の需要量を一致させるた
めの業務を指す。本検討では、電力需給の同時同量を達成する主な手段として、県内の水力発電所(笛吹川水系)では出力調整を行うとともに、需要側では調達した水力発電に
よる電気を中心に、電力取引所での売買取引、東京電力との常時バックアップ契約、さらにはバランシンググループ等を活用した調整電力の調達などを念頭において実施した。
需給電力の同時同量を達成する主な手段
エネルギー地産地消・地域活性化モデルをめざす本事業のイメージ
新電力事業のエネルギーマネジメントに必要な基本的な機能
【エネルギーマネジメントシステムの構成】
アイテム
対象需要
EMSシステム
電源・
熱源
水 力
その他
導入予定時期
(既設or新設)
設備概要(出力、容量、用途、台数等)
事業開始初期において、需要側制御のためのデマンドレスポンスについては、設備導入をともなわない電気料金型とする。
未定
気象情報等を用いた需要・発電予測機能を持ち、電力取引所での売買支援機能などを含む需給計画機能を持つ業務システム
事業開始時に新規導入
(やまなし電力は、2019年に事業開始
予定)
笛吹川水系:43,240kW、早川水系:75,800kW、塩川発電所:1,100kW
既設
電力の過不足調整には、日本卸電力取引所(前日市場、当日市場)での売買や東京電力(株)との常時バックアップ契約の活用もある。
―