アフガニスタン支援東京会合(2012 年 7 月 8 日 東京) に関するアフガニスタン女性のポジションペーパー 2012 年 6 月 アフガン女性ネットワーク(AWN)とその加盟団体および会員一同は、来る 2012 年 7 月 8 日に開催される東京会議において、アフガニスタンの安定と自立というコミットメン トを新たにするために取り組んでおられるアフガニスタンおよび国際社会の関係者の皆様 のご尽力を歓迎します。 私たちは、アフガニスタン政府および国際社会に対し、円滑な権限移譲および 2015~ 2024 年までの「変革の 10 年」の目標が、ジェンダーの視点を備えたベンチマーク(指標) をもって評価されることを求めます。東京会合では、新しい公約とベンチマークが国際的 に合意されることになりますが、アフガニスタン国内レベルでは充分に遂行されていない 多くの公約が残されていることを見落としてはなりません。それによる女性たちへの影響 には、なお注意の目を向ける必要があります。 東京会合の中心的テーマでもある、アフガニスタンにおける民主主義とアカウンタビリ ティの強化を実現するためには、独立した市民社会、そして何よりも、支配的制度に埋め 込まれた家父長制と闘い、包括的で公正な社会に向けて変化を推進しうるような、強力な 女性団体の存在が不可欠です。市民社会の統合性と独立性を維持するためには、NGO のキ ャパシティと透明性、運営を強化するための資源を配分することが必要であり、そうした 資源は、政府管理資金ではなく、より独立性のある形で配分し運営する必要があります。 さらに、22 の国家優先課題に含まれるコミットメントが、女性たちに直接的恩恵をもたら し、女性の政治参加を推進するものになるためには、総合的ジェンダー予算アプローチが 必要だと考えます。 女性たちは、2014 年そしてその先のアフガニスタンの未来に向けた議論に関わることが できるよう、明確に計画されたイニシアチブを求めています。また、現在行われている和 平・再統合プロセスに女性たちが参加することの重要性を、いま一度強調したいと思いま す。 このポジションペーパーは、8つの地域で開催された一連のコンサルテーションおよび 2012 年 6 月 11-12 日にカブールで開催された2日間のフォーラムに参加した、200 人以 上の女性リーダーたちの懸念や関心、提言をもとにまとめたものです。 これら一連のコンサルテーションとカブールにおけるフォーラムは、女性の声とニーズ を反映したポジションペーパーを作成するための情報収集を目的として企画されました。 私たちは、こうしてまとめられた女性たちの意見が、東京宣言/コミュニケや、成果文書 に付随する相互責任フレームワークなど、東京会合において採択される諸文書に取り入れ られるよう期待しています。 1 以下、東京会合において検討されるべきアフガニスタン女性たちの優先事項および主要 な提言を、5 つの領域にわたって述べます。 グッドガバナンス ・意思決定における女性の活発で生産的な参加、平等なリーダーシップを可能にするため に、政府の様々なプロセスおよびレベルにおける女性参加を保障するクォータシステムを 導入する特別法を起草し承認すること。 ・アフガニスタン国家開発戦略(ANDS)、アフガニスタン国家女性行動計画(NAPWA)、お よび現在策定中の女性、平和、安全保障に関する国内行動計画を含む既存のジェンダー戦 略の実施状況についてモニタリングを行うこと。 ・女性の経済・社会・文化・政治上のニーズに対応するためのメカニズムを、協議により 運営が容易なかたちで設置すること。 ・アフガニスタン国家女性行動計画、女性に対する暴力撤廃法(EVAW)、女性差別撤廃条 約(CEDAW)、国連安保理決議 1325 号その他の決議に関連する活動の実行状況を監視する 政治・行政・司法の仕組みを整えること。 ・女性の政治・社会参加に影響をあたえる主要な法律や政策をジェンダー視点からみなお すために、市民社会と政府による合同ワーキンググループを設置すること。 ・治安部隊と司法セクターに対し、人権、とくに女性の権利とジェンダーについて長期的 トレーニングを実施するための資源をつけること。 相互責任 ・女性支援と生活向上について公約された目標と目的を実行するドナーのアカウンタビリ ティを高めること。 ・基本的に市民社会が主導権をとるかたちで、開発プロジェクト・プログラムの実施を監 督するための独立した監視・レビュー委員会を設置すること。 ・市民社会組織、とりわけ女性に焦点をしぼって支援を行う団体を強化するための長期的 支援を提供すること。国際社会が拠出した資金は、関連するアフガニスタン政府機関との 調整の下に実施されるべきであり、アフガニスタン政府はこの支援を 2014 年以降も持続す るための計画を策定すべきである。 ・以下の目的のために、女性団体支援モニタリングメカニズムを設置すること:アフガニ スタン政府および国際社会を通して提供される女性支援の具体的援助内容の明確化;援助 のどれだけが女性に届き、持続可能な開発の支援に役だっているかのモニタリング;政府 が管理運営するプログラムのジェンダー主流化。このモニタリングは、市民社会および女 性が指導的役割を果たす団体の直接参加、および議会との調整の下で行われるべきである。 また、女性が指導的役割を果たす団体の持続と成長を効果的に支援するものでなくてはな らない。 2 ・透明性を高め、ドナーの優先事項や資金メカニズム、女性に焦点をあてた既存のプログ ラムについて啓発するための、情報共有メカニズムを開発すること。 和平・再統合 和平・再統合 和平プロセスは、正義と透明性、アカウンタビリティの原則にもとづくべきであり、元 兵士の社会再統合を理由に、女性を犠牲にするようなことがあってはならない。 ・各評議会に市民社会から 3 人の女性を参加させるなど、州レベルの和平評議会における 女性のプレゼンスを高めること。 ・和平高等評議会に参加する女性の数を 9 人から 15 人に引き上げ、協議会における女性参 加のバランスを改善すること。 ・計画から実行、交渉に至るまで、和平再統合プログラムの様々な段階で、参加に関心を もっている多くの女性たちの力を活用すること。 ・和平高等評議会および和平州評議会に参加し、和平プロセス・交渉における女性参加の 重要性について人々の認識の変化をもたらした女性委員たちの成果を広く知らしめるため に、印刷物や電子メディアを活用した戦略的意識向上・情報共有を計画し実行すること。 ・和解・再統合プロセスに向けた和平高等評議会の戦略について、メディアを通じて人々 の関心を喚起することによって、すべてのアフガニスタン人が信頼し支持できるような、 包括的かつ透明で、真に人々のものと感じられる和平プロセスを促進すること。 ・元兵士の社会再統合にむけた移行および再配置支援の手段を現金支給だけにしないこと。 教育と雇用の提供、その他、よりよい生活条件機会の提供に重点が置かれるべきである。 ・地域社会と、そこに新しく加わる元兵士との間に信頼と相互作用をうちたてるために、 地域評議会や影響力ある人物、女性たちと協力し、元兵士たちと 3 カ月ごとに定期的に対 話を行うこと。 ・女性と平和、安全保障に関連する事項に注意を払い、女性団体による和平プロセスの監 視及び評価を支援すること。 ・和平プロセスにかかわる男性と女性双方の適切な安全を保障すること。 2014 年以降の国際社会のコミットメント ・女性たちに平等な参加機会を開くために、開発プログラムとインフラ建設を女性の視点 から拡充すること。 ・アフガニスタンの復興、安定化および開発にむけた一貫性のある戦略のもとに、多くの 国際ドナーの統一をはかること。 ・透明かつ説明責任を伴うグッドガバナンスを国際援助の条件とすること。 ・東京会合で合意されたコミットメントの実行について、国際社会、アフガニスタン政府 および市民社会の三者によるモニタリングを促進すること。 ・市民社会組織をパートナーとして認識すること。 3 ジェンダー予算 女性と男性の両方のニーズが対応されているかどうかを調べるために、すべての政府機 関は、ジェンダー別データと統計情報を収集するよう義務づけられるべきである。これは 効果的なジェンダー予算を計画する上で最初のステップである。同様に、すべての政府機 関は、男女両方の生活にあたえる影響を測るために、政策、プログラムおよびプロジェク トの実施前後における男女双方の状況を評価するよう求められるべきである。以下のセク ターおよび課題領域が、女性との協議のうえで、ジェンダー予算配分において優先される べきである。 教育セクター ・最低基準および安全な学習環境の提供を考慮し、質の高い教育を全国規模で実現するた めに投資すること ・遠隔地域の女性教員に、ペースの速いトレーニングを提供すること ・女子学校周辺エリアの安全を改善するために、軍民間のコーディネーションを強化する こと ・少女たちの教育アクセスにおける移行期の影響をモニタリングし、ネガティブな傾向に 対応すること ・女性の権利、ジェンダー暴力および女性の政治参加の重要性を教育カリキュラムに取り 入れること 保健セクター ・農村の母子保健サービス診療所を増設し、助産師教育の機会拡大など、コミュニティに 基づく解決策を促進すること ・アファーマティブアクション、必要な作業施設の提供、女性たちが活動しやすい環境の 整備、医大の女性卒業生に対するメンタリング、女子医学生の家族に対するインセンティ ブ供与、また家族の女性たちが保健セクターに参加できるようにすることの重要性につい てコミュニティの意識を高めること等を通して、女性の専門的医療従事者の数を増やすこ と 安全保障セクター ・女性の参加を妨げている制度上かつ環境上の障壁をなくし、アフガニスタン警察におけ る女性の数を増やすこと ・刑事司法部門における女性判事や弁護士、検察官の安全を保障すること ・ジェンダーにもとづく暴力被害を受けた女性を弁護するトレーニングを受けた弁護士の 層を増やすこと 4 ・女性に対する暴力撤廃法について、印刷物や視聴覚教材などを通じて意識啓発をはかる ための資金を確保すること ・刑事司法部門の意思決定レベル、とりわけ最高裁において、資格をもつ女性を参加させ ること ・公式・非公式の司法部門をつなぎ、また、女性に対する暴力およびジェンダーに基づく 暴力撤廃について、年配者その他影響力ある指導者たちに対するコミュニティに基づくト レーニングを提供することによって、遠隔地における女性たちの司法へのアクセスを改善 すること 経済セクター ・工場や工業生産も含む商業セクターにおける女性の参画を推進すること ・女性たちによる商業事業促進のために、中長期および大規模なローンを提供すること ・州や区レベルにおける女性の経済的発展のための長期プログラムへの支援を維持するこ と ・農村部における女性たちの農業活動の発展と所得創出のため、女性農業協同組合を設置 すること ・経済開発計画の実行ならびにすべてのアフガン市民のためのバランスある資源配分を目 的とする市民社会主導の監視メカニズムを支援すること ・児童保育施設、集中トレーニングプログラムや職場におけるセクシュアルハラスメント 防止など、働く女性の特別のニーズに応えて対策をとること 政治セクター ・女性の政治的キャパシティーを高めること ・女性の政治トレーニングおよびリーダーシップトレーニングのための機関設置のために 資金を割り当てること ・女性の政治参加の重要性について人々の意識を啓発し考え方を変えるための資金を割り 当てること (翻訳:アジア女性資料センター) 5
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