コンシューマーゲームと、ケータイゲームの間を 繋ぐものを作りたかった

コンシューマーゲームと、ケータイゲームの間を
繋ぐものを作りたかった
『クラッシュヒーローズ』開発者座談会
参加者:
ゲームデザイナー
神宮
制作指揮
須藤
メインプログラマー
北脇
ディレクター
須田
プロマネ
塚原
ソーシャルゲームユーザーに TCG の面白さを
-そもそもなぜソーシャルで新しいカードゲームを作ろうと思ったのでしょうか?
神宮:
『カルドセプト』の制作に長年関わっていますが、ストレートな TCG はモバイルのゲ
ームユーザーには敷居が高いように思います。ソーシャルゲームユーザーにも遊んでもら
える簡単なゲームで、トレーディングカードゲームの面白さを伝えたいと考えました。個
人的にスマホをいじるようになって、
「これならライトなゲームが割と簡単に作れるかな」
と思い、実際に Flash のゲームなどを作ってみました。
カードゲームとなるとさすがに自分一人の力では作れないので、昔からの知り合いの須藤
くん(制作指揮。2人は高校・大学が一緒)と話しているうちに固まっていった感じです。
須藤:
「複雑なゲームをもっと身近にできないか?」というところからスタートしましたね。
須田:とは言え、完成するまでにはかなり時間がかかりました。
実際にトランプを使っていくつも試作品を作りました。
-ソーシャルゲームを作ってみて、コンシューマと違ったところはどんなところでしょう
か?
神宮:何よりも自分が SNS をよくわかっていなかったので、招待など SNS ゲームの一般的
なフォーマットをやりながら理解して行って、その度に「うわー、とんでもねぇ」と(笑)
。
僕はゲームデザインの部分だけ考えればよかったけど、それ以外のことを考えた須田くん
は大変だったと思います。
既存の SNS ゲームとは一味違う「戦略性のあるカードゲーム」
神宮:今考えると、ゲーム部分はもっと簡単にしてもよかったかもと思います。
須田:今まで SNS でプレイヤースキルが必要なカードゲームはなかったので、そこが評価
されている半面、マネタイズがとても難しいです(苦笑)。
神宮:確かに自分が作りたいゲームは駆け引きが必要で、
「適当にタップしていたら勝てる」
というものではないです。パラメータで勝ち負けが決まるのではないものが作りたかった。
ユーザーには戸惑いもあったかもしれないけど…。
北脇:それを「いいもの」として売っていくのが我々の役目だと思います。
神宮:そう思ってもらえるとありがたいですね。作る側としては他とは違う、少し変わっ
たことをしたいと思ってしまうので(笑)。
北脇:遊んでもらった人達にアプリの価値を認めていってもらえたらうれしいですね。
神宮:遊んだ人が「こういうふうに考えて遊ぶゲームもあるんだ」と気に入ってくれて、
ちょっとずつまわりに広めて行ってくれたらうれしい。そして、僕が面白いと思っている
ようなゲームを好きになってくれる人が増えて欲しい。
北脇:面白さをわかった人が他の人に説明してあげるということが、SNS では起こり得ます
からね。
須田:同じダンジョンにいるユーザーと対戦できる仕組みが入っているので、そこは楽し
いと思います。
北脇:NPC と対戦するだけだと、自分のデッキの強さが本当はどんなものなのかがわからな
いですからね。
Unity での開発
須田:Unity で SNS ゲームを作っている実例がほとんどなかったので大変でした。神宮さん
がゲームデザインしている間に、それ以外の人間がどう実装するかをあれこれ悩んで試し
ていたという感じです。
神宮:あのクオリティをあの短期間で実現できたというのは、プログラマさんもだが、Unity
は本当にすごいと思いました。
『クラッシュ~』が終わった後自分でも触ってみて、改めて
感じました。戦闘の仕様が決まって、3 日後くらいには動いているものが見られたので…
コンシューマでは考えられないスピード感でした。
北脇:神宮さんが書いた仕様もまだ全部は入れていないし、まだ色々やりたいことがあり
ます。
須田:ゲーム部分以外は随時ブラッシュアップ予定です。Unity で作っていたので、Android
版と iOS 版を作り、同時にアナログ版も作りたいと思っていましたが、いつしかまったく
違うゲームになっていったので、その構想はなくなりましたね(笑)
『クラッシュヒーローズ』=『カルドセプト』と同じ変遷?
須田:神宮さんとご一緒して面白いと思ったのは、
『クラッシュ
~』も『カルドセプト』と同じような変遷をたどっていますよね。
クオリティは高いのだから、もっと多くの人に受け入れられても
良いと思う。
神宮:今回改めて、「自分がマスからずれているなあ」と思いま
した。でも、「クラッシュ~」はソーシャルユーザーにも理解し
やすいと思う。
『クラッシュ~』をやって楽しいと思った人が、
次は『カルド』をやってみようかな、となってもいいと思う。と
いうか、そうなってほしい(笑)
。最初は SNS ユーザーの視点を変えてやるぞ!と思ったり
もしましたが(笑)
。SNS 側からしたら、
「ゲームの主軸はそっちじゃないだろう」と思って
いるかも?
北脇:ランド・ホー!自体が、SNS とコンシューマの中間にいる会社ですしね。
須田:マスなものが作りたいですか?
神宮:そういうわけではないですが…何か作ったら、みんなで幸せになりたいですよね(笑)
。
あまりにもズレたものを出すと不幸になるので。プレイヤーだけでなく、もちろん作った
ものが認められて利益を出して、開発も営業も幸せになるというか。凝ったゲームだから
幸せになるというわけではないので。
須藤:大人の発言をするなあ(笑)
須田:稼げばいいというんだったら、人気のあるメジャーなゲームに似せて作った方が遊
んでもらえる可能性はあるかもしれないですよね。でも、敢え
てそちらの方向には行かなかったわけで。
塚原:2 匹目のドジョウを狙って、何かに似たようなゲームを
作り続けるのではなくて…神宮さんやランド・ホー!でしか作
れないゲームを作らないと意味がないですよね。
ただ儲けるため、ということではなくて…やりたいことを広め
たくて作っているゲームならば、いかに面白さをわかってもら
えるかを考えないといけないですね。
神宮:できたモノはいいと思うので、悪びれずに「これいいから遊んでみてくれよ」と言
えるので、地味に広めていきます。
『遊戯王』などカードゲームをやってきた人も多いと思
うので、そういう人達にも遊んでもらいたいです。
次回作は?
神宮:
『クラッシュ』は軽いものをサクっと作るつもりでしたが、結果としてはそこまでラ
イトなものにはならなかった。なので、もっともっとサクっとしたものを作ってもいいの
かもしれないなと思います。
-またソーシャルでやりたいですか?
神宮:やりたいというか、まだまだ達してないことが色々ありますね。
須藤:至らなかったことが色々見えたので、次回作にはもちろん学んだことを取り入れた
いですね。トレーディングカードゲームは同じ卓を囲んでいる人間が連帯感を持つけど、
ソーシャルは何千人何万人と連帯感を持つように作らなくてはいけないのが難しい。
神宮:
「こういう風にしたらユーザーが喜ぶんだろうな」というのをまだグリップできてな
い感じがします。
須藤:至らなかったことが色々見えたので、次回作に反映できればと思います。じゃあ、
企画書よろしく!(笑)