10回目

概要
遺伝子工学
ここでは、遺伝子発現の調節に関与する
エレメント(核酸塩基のシグナル)の基本構
成とその機能を解説し、そして人為的な遺伝
子発現制御の各手法を概説する
第10回、11回
遺伝子発現量の人為的制御
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10.1 遺伝子発現のための基本単位ー大腸菌ー
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DNAからタンパク質へ
大腸菌での外来遺伝子発現に必要なエレメントとしては、プロ
モーター、Shine‐Dalgarno(SD)配列、ターミネーター等がある。さ
らに、その発現を制御するエレメントとしてオペレーターなどがあ
る。
遺伝子によって、転写されるRNAの量が
異なる。当然、タンパク質への翻訳される
量も異なる。
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RNAの構造
RNAの構造2
アデニンとウラシルと塩基対
をつくる
RNAは1本鎖であるが、分子内で塩基対を形成して、特定の構造をとる
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転写に必要なエレメント
転写
プロモーターは、転写を開始する際に、RNAポリメラーゼが結合
するDNA領域をさし、一般に2対のエレメントをもつ。
5’‐TATAAT‐3’ (転写開始点から10塩基上流、Pribnow box)
5’‐TTGACA‐3’ (転写開始点から35塩基上流)
転写によって、DNAの一方の鎖に相
補的なRNAがつくられる
DNAをRNAポリメラーゼが転写する。
RNAポリメラーゼは、DNAに沿って少しずつ動きながら先
頭部分でDNAらせんをほどき、重合部分でDNA鎖を鋳型に
してRNA鎖にヌクレオチドを1個ずつ付加して行く。
RNA/DNA混合らせんは、9塩基間であり、RNAは、RNAポ
リメラーゼの出口から出て行く。
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プロモーターの働きは、その下流にある、オペレーター配列によ
り制御されることもある。オペレーター配列の多くは、20 bpの逆
向き反復配列で、これにリプレッサータンパク質が結合し、下流に
コードされている構造遺伝子の発現を抑制する。
また、ラクトースオペロンのCAPのように、プロモーターの80から
160塩基上流領域に転写を促進する因子が結合して、遺伝子発
現が向上する場合もある。
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原核生物の転写
RNAポリメラーゼに含まれるサブユニット、シグマ因子
がDNA上のプロモーターを認識してDNAに結合する。転
写が始まるとシグマ因子は離れ、RNA伸長反応がその
まま行われる。ターミネーターに出会うと、RNAポリメ
ラーゼは、DNA鋳型鎖とmRNAとを放す。RNAポリメラー
ゼは、その後、遊離のシグマ因子を結合して、別のプロ
モーターを探し、結合する。
遺伝子発現の調整
遺伝子となるDNAは、DNAの片方の鎖であるが、
常に同じ向きの鎖が使われるのではない。
真核生物の遺伝子発現は、いろいろな段階で調節できる
RNAポリメラーゼは、1種類
RNA転写エラー;1/104
DNA複製エラー;1/107
ニューロンとリンパ球は同じゲノ
ムを持つ
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転写調節因子
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オペレーターとリプレッサータンパク質
5つの酵素がそろって初めてトリプトファンが合成される。5つの遺伝子は、1つのオペレーターで制御
されている。
転写調節因子はDNAらせんの主溝に結合する
(A),(B) 真核生物のDNA結合モチーフ
(C)ジンクフィンガー、(D)ロイシンジッパー
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カタボライト活性化タンパク質(CAP)
転写に必要なエレメント
ターミネーターは、転写を終結させるための配列
ρ非依存性
GC‐richな反復配列の後にUが続く配列(Uストレッチ)が
必要、このGC‐rich配列がRNAとして転写されると、RNA
はヘアピン構造をとり、RNAポリメラーゼと相互作用して
転写をストップさせる。
環状AMP(cAMP)
ρ依存性
Uストレッチがない終結配列には、ρ依存的な転写終結
がおこる。ρはヘリカーゼ活性があり、Uストレッチがなく
てもDNA‐RNAハイブリット領域の解離を触媒する。
LacオペロンとCAPによる制御
ラクトースがあると、Lacリプレサーに結合して、Lacオペレーターに結合しなくなる。
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グルコースがない時には、cAMPをつくり、CAPがDNAに結合する。
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(2) 翻訳に必要なエレメント
翻訳を効率的に行わせるには、開始コドンAUG(まれにGUG、UUG)と
Shine‐Dalgarno(SD配列)が必要。
SD配列・・開始コドンから3~11塩基上流
5’‐AGGAGG‐3’
大腸菌リボゾーム30Sサブユニットに含まれる16S rRNA
の3’末端配列5’‐gaucaCCUCCUua‐3’と相補
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