利用価値の低い土地の実例 1.道路幅員が狭い土地 建築基準法第43条1項に定められた、「建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」とい うのが、いわゆる「接道義務」。接道義務を満たさないと建物が建てられません。建築基準法では、接面道路の幅員を4m 以上と規定しています。この規定が満たせない場合は、セットバックして接面道路が4mになるように自己の敷地を提供す る必要があります。最大の問題は、そのセットバックは、各建物の建替時になりますので、接面道路全体の幅員4m化は数 十年もの期間を要する場合もあり、その期間は、接面道路の一部または大半が狭いため、極端な例では、自動車の通れない 場合もあり、このような土地の利用価値は低いため減価が生じます。 道路幅員4m以上必要 対象地 2.高圧線下地 電力の送電線、特に特別高圧架空電線下の土地は利用が制限されます。具体的には 高圧線の使用電圧と高さによって、高圧線下の土地には建築制限が働きます。相続税 財産評価においては、一般に建物の建築がまったくできない土地については50%の 減価、建物の建築は可能だけれども建物の高さ制限や利用制限等が働く土地には 30%の減価が認められます。(この規定は、市街化調整区域内の農地や山林等、初 めから建物が建てられないことを前提に評価されている土地には適用できません)な お、利用制限の確認にあたっては、土地の全部事項証明書の乙区欄に「地役権設定」 との記載の有無、、「送電線架線保持に関する契約書」等の契約書の有無を確認して ください。 3.鉄道や高速道路等の高架下地 高架下地というのは、地上から高く支台を架設し、その上に敷設した鉄道または高 架道路の直下の土地のことをいいます。一般的には、高架下地は高架の所有者である JR、私鉄、公営鉄道、国土交通省、高速道路等が所有しますが、高架構造物の橋脚直 下地と隣接ずる橋脚直下地の「中間地」が民有地である場合があります。このような 「中間地」では、建物の建設及び利用に制限が掛かりますので減価が生じます。 また、鉄道や高速道路の隣接地では、騒音等により利用制限が掛かりますので減価 が生じる可能性があります。 4.地下鉄道上の土地 一般に土地所有権の及ぶ地上及び地下の範囲は、その権利行使の便益の存する限度 におけるものであり、権利行使には平成13年4月に施行された「大深度地下の公共的 使用に関する特別措置法」等の法令上の制限を受けます。 この土地所有権の権利行使の便益(利用)が制限を受けると減価が生じます。例え ば、山中のトンネルは、その山地全体の利用をほとんど損なうことはないと思われま すが、高層ビル街の中をよぎる地下鉄は、その深度が特に深いものではない限り、そ の土地の利用を著しく損ねるため減価が生じます。 5.地盤に甚だしい凹凸がある土地 地盤に甚だしい凹凸がある土地(右図)である場合には、凹凸の形状および規模により、容積率を十分に利用した建物が 立たない場合があります。その場合には、土地の造成又は擁壁の整備等による費用負担が生じるため、減価が生じます。 道路 道路 地盤に甚だしい凹凸がある土地 道路 道路 地盤に甚だしい凹凸がある土地 6.高低差が著しい宅地 高低差が著しい宅地は、階段の上り下りによる利便性の低下、擁壁の整備等の費用負担があるため減価が生じる場合があ ります。 高低差が著しい宅地 道路 高低差が著しい宅地 7.造成が必要な土地 傾斜角度が30度以上程度の場合は、がけ地として評価し ますが、30度以下程度の場合は、敷地を平坦にするため造 成が必要となる場合があります。この場合、造成費の負担が 必要となりますので減価が生じます。 8.土壌汚染地 土壌汚染対策法で規定された特定有害物質を規定以上含有した土地の他に、ガソリン等を含有した土地は、規定値以下へ 浄化又は拡散を防ぐ対策を行う必要があり、この対策費用の負担及びスティグマ(心理的減価)による減価が生じます。 土壌汚染地の具体例としては、工場跡地(化学工場以外の、電気・電子関連、機械関連、メッキ、自動車整備等の工場も 可能性があります)、ガソリンスタンド、クリーニング店、車両整備庫、ごみ捨て場、産業廃棄物処理場等が挙げられま す。また、埋立地や自然由来の土壌汚染地も対象となっていますので、港湾埋立地、温泉地区も注意してください。 9.埋蔵文化財包蔵地 埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地を「周知の埋蔵文化財包蔵地」といいます(文化財保護法第93条 第1項)。周知の埋蔵文化財包蔵地で土木工事等をしようとする者は、工事前に文化庁長官に届出をする必要があり、その 届出に対し、埋蔵文化財の保護上、特に必要があるときには、文化庁長官は工事前に、発掘調査等の指示することができま す(同法第93条第2項)。その発掘調査等の費用を負担する場合がありますので減価が生じます。 「周知の埋蔵文化財包蔵地」は、市町村の教育委員会が作成する遺跡地図および遺跡台帳において、その区域が明確に表 示されています。しかし公表されている遺跡の区域以外の土地であっても、遺物や遺跡が埋もれていることが認識されてい る土地もまた「周知の埋蔵文化財包蔵地」に該当するので、注意が必要です。 10.液状化地及び近隣地下に活断層がある土地 東日本大震災では、液状化による建物の不同沈下等、また活断層による建物の崩壊等が問題になりました。活断層の付近 では建物の建築は困難ですし、液状化地域では、地盤の改良が必要ですので減価が生じます。液状化地区及び活断層の所在 に関しては、自治体で詳細のマップを公表しておりますのでご確認ください。 東京の液状化予測 (http://doboku.metro.tokyo.jp/start/03-jyouhou/ekijyouka/index.htm) 横浜市の液状化マップ(http://www.city.yokohama.lg.jp/somu/org/kikikanri/ekijouka-map/) 神奈川県の活断層(http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f5152/) 11.市街化調整区域の雑種地及び条例等による規制(風致地区、緑地保全地域等) 市街化調整区域及び条例等による規制区域では、建物の建築及びその利用に制限がある場合があります。建物が建築でき ない等の利用制限があると、土地の利用価値が低下し減価が生じます。この様な利用規制に関しては市町村役場でお尋ねく ださい。 12.騒音・悪臭 騒音や悪臭は、生活の快適性に大きな負の影響を与えますので、減価を生じます。騒音の具体例としては、空港の周辺、 鉄道・道路の隣接地、工場の隣接地等、また悪臭の具体例としては、ごみ処理場、ため池の周辺等があります。 13.日照条件の悪い住宅地 住宅地は、住環境の良し悪しでその利用価値は大きく異なります。その住環境の中でも日照の良し悪しは、生活の快適性 に大きく影響しますので、日照条件の悪い場合には減価が生じます。 14.ビルの並ぶ大通りの奥に建つ一軒家 ビルの並ぶ大通りの奥に建つ一軒家は、敷地規模が狭小で単独では収益性を有するビルを建てることができない。また、 商業地であるため日照権も認められていないため住宅の建築も難しい。従って単独での利用には限界があるので減価が生じ ます。なお、隣接地の所有者に売却することが選択肢もありますが、一般的に足元を見られる場合が多いと思われます。 ビル地 ビル地 対象地 ビル地
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