鹿児島工業高等専門学校 研究報告 48(2013) 47〜48 高専・中学校の連携による環境気象情報ネットワークの構築 その2 武田 和大† 芝 浩二郎† 豊平 隆之† 瀬濤 喜信†† 前薗 正宜†† 樫根 健史††† 荒巻 勇輔†††† 永田 亮一†††† Development of an Environmental Weather Information Network on the Basis of the Cooperation between National Colleges of Technology and Junior High Schools - part2 Kazuhiro, TAKEDA Masaki, MAEZONO Kojiro, SHIBA Takayuki, TOYOHIRA Kenji, KASHINE Yusuke, ARAMAKI Yoshinobu, SETO Ryoichi, NAGATA Simplified weather observation systems were installed at Kagoshima National College of Technology (KNCT) and some junior high schools in Kagoshima prefecture. We checked the accuracy of the measurement data by comparing with the data measured by Kagoshima Local Meteological Observatory. The quality of the data of our system is good for educational use. The system supported a new kind of weather sensor. The new sensor is cheaper than that we used. And the accuracy of it is tolerable. In January, 2013, we started observation at Yuge National College of Maritime Technology (YNCMT). The Area YNCMT is located has Seto Inland Sea climate. Keywords : Weather Data, Meteorological Observation, Science Education, Computer Network, Web Service 1 に水平面全天日射量も加わる.観測開始が最も早いの まえがき は鹿児島高専で,およそ5年となる. 既報で統合型気象センサとインターネットを利用し た気象情報自動観測システムの構築についてその構成 3 観測値の確認 と稼働状況を報告した.本報では,システムで得られ 測定点の間隔を狭くする場合,近傍の測定点同士の た測定データと気象台の観測データを比較して,本シ 測定値が近い値となるため,より計器の精度が求めら ステムの観測値の実用性を確認する.また,これまで れる.測定誤差が大きいと,地点間の立地の差が測定 とは異なる気象センサへのプロトコルに対応し,使用 誤差に飲み込まれてしまい,地点間の正しい比較がで できる気象センサを増やした.さらに初の県外への設 きない.そこで,鹿児島地方気象台の観測値を用意し, 置をし,測定点に弓削商船高専を加えた. 鹿児島地方気象台から 200m 以内の立地である鹿児島 2 南中学校のデータと比較し,測定値の信頼性を確かめ 観測網 る.鹿児島地方気象台と南中学校の気温と湿度を図 1, 前報までに,鹿児島高専,霧島市立国分中学校,霧 気圧と降水量を図 2,風速を図 3,風向を図 4 に示す. 島市立霧島中学校,鹿児島市立南中学校,いちき串木 青色が気象台,赤色が南中学校である.南中学校のセ 野市立串木野中学校の5カ所で観測を行い,継続して ンサ位置は地上約 16m の校舎屋上(コンクリート),気 いる. 観測は1日に 288 回,5分間隔で行われており, 象台は百葉箱が地上 1.2m(芝地)であり, 気圧は 27.8m, 観測値はその都度鹿児島高専に設置したデータベース 風向風速は 40.9m の高さでそれぞれ測定している 1). 図より,気温はほぼ同じ値を取っているのがわかる. に蓄積されている.測定要素は,気温,相対湿度,風 向,風速,降雨量,気圧であり,鹿児島高専ではこれ † 鹿児島工業高等専門学校情報工学科 †† 鹿児島工業高等専門学校電気電子工学科 ††† 弓削商船高等専門学校電子機械工学科 †††† 鹿児島工業高等専門学校技術室 湿度もほぼ同じ値を取るが,昼間に南中学校が少し低 い値を示す.南中学校はコンクリートの屋上,気象台 は地上付近の芝地で計測している事を考えると,乾き − 47 − 武田 和大 芝 浩二郎 豊平 隆之 瀬濤 喜信 前薗 正宜 樫根 健史 荒巻 勇輔 永田 亮一 35 100 気温と相対湿度(9/20-9/22) 34 33 1025 16 気圧と降水量10分(9/20-9/22) 気象台気圧 南中学校気圧 90 32 気象台降水量 31 14 南中降水量 30 80 1020 29 12 28 70 27 26 25 60 10 1015 24 23 50 22 8 21 20 40 1010 6 19 18 気象台気温 17 30 南中学校気温 16 気象台湿度 15 4 20 南中湿度 14 13 1005 2 10 12 11 10 0 0:10 10:10 20:10 6:10 16:10 2:10 12:10 0 1000 22:10 0:10 10:10 図 1 気温と相対湿度 10 20:10 6:10 16:10 2:10 12:10 22:10 図2 気圧と降水量 風速(9/20-9/22) 6 区間移動平均 (気象台) 風向(9/20-9/22) 350 気象台 6 区間移動平均 (南中学校) 9 南中学校 300 8 7 250 6 200 5 150 4 3 100 2 50 1 0 0 0:10 10:10 20:10 6:10 16:10 2:10 12:10 22:10 0:10 10:10 図3 風速 20:10 6:10 16:10 2:10 12:10 22:10 図4 風向 やすい時間に南中学校が低い値をとる事は説明できる. し,正しく情報が取得できることを確認した. 気圧は,一定の差をもって同じ変化をしている.気圧 計設置高さを考慮すると両者の測定は一致していると 5 県外への設置 いえる.降雨は非常に短時間であったため,転倒升式 2013 年 1 月に愛媛県の弓削商船高専にセンサを設置し の気象台と衝撃感知式の南中学校で差が出ている.長 た.設置後は測定データが正しく鹿児島のサーバに送 時間の降雨については,この差は小さくなる.風速に られている.弓削商船高専は瀬戸内海式気候区であり ついても明らかに設置高さの影響が出ている.上空に 特徴のある気象データが期待できる. ある気象台の値が大きいが両者とも傾向は同じである. 風向はばらつきがあるように見えるが,気象台は 16 方位,南中学校は 360 方位で測定しているため,360 方位を 16 方位に丸めると,風向はほぼ一致する. また,図に示したものとは別のデータ区間でも同様 の傾向が見られた.以上のことより教育用として十分 な精度を持っていると結論づける. 図5 愛媛県設置のセンサ 4 異なるセンサへの対応 昨年までは特定のセンサのみに対応したシステムで 5 今後の課題 あった.そのセンサは精度は良いが,数多く設置する 現状の観測点では,太陽電池による電源の独立化の には価格が高いものである.今回,安価な別の気象セ 試みできているが,通信網が設置場所のネットワーク ンサにも対応した.新しいセンサもこれまでのセンサ に依存し,有線 LAN で接続している.今後はネット ほどではないものの,これまでのセンサに準じる精度 ワークの独立を含め,設置場所の制約を少なくするこ を予備測定で確認している.対応にあたって,センサ とを課題としたい. とのプロトコルやデータフォーマットが異なるため, これまでのシステムに対応させるよう変換接続プログ ラムの作成を行った.その後センサをシステムに接続 参考文献 1) − 48 − 気象庁:気象庁年報 2010 年号, 2010
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