Y 染色体にできること 染色体とは? DNAの凝縮の各段階: (1) 裸の二本

Y 染色体にできること
染色体とは?
DNA の凝縮の各段階 : (1) 裸の二本鎖 DNA
(2) クロマチンの鎖 : DNA (青線)とヒストン
(緑丸) (3) 間期の凝縮したクロマチン(青
線)とセントロメア(赤点) (4) 分裂前期の凝
縮したクロマチン (5) 分裂中期の染色体
染色体の構造
染色体 :
(1) 染色分体 : 染色体に
含まれる 2 つの同一の
部分のうちの片方
(2) セントロメア : 2 つの
染色分体が接合する場所で、
ここに微小管が結合する
(3) 短腕 (4) 長腕
DNA の複製過程
(生殖細胞)
染色体の数 (2n)
ショウジョウバエ 8
ライ麦 14
モルモット 16
ハト 16
食用カタツムリ 24
ミミズ 32
ブタ 40
コムギ 42
ヒト 46
類人猿 48
ヒツジ 54
ウマ 66
ニワトリ 78
コイ 100
チョウ 〜380
シダ 〜1200
ヒト染色体
性染色体
Y染色体
X 染色体
性染色体
Y 染色体の構造
性染色体の進化
性の決定機構
哺乳類:XX雌・XY雄
鳥類:ZW雌・ZZ雄
魚:ホルモン:成体でも性転換あり
爬虫類の一部:孵化温度 (例:クサガメ)
マラリア原虫:宿主の血液状態による
ショウジョウバエ:X染色体と常染色体の比 (1:雌 0.5:雄)
XとYのつじつま合わせ
今回の発見
ヒ ト Y 染色体にある男性特異的領域の詳細な配列解析
から、その領域はヒトの X 染色体、 Y 染色体の進化起源
である古い染色体の名残などを含む、反復配列入り交
じった複雑なモザイクであることがわかった。 X 染色体と
Y 染色体では全域にわたる生産的な「交換」すなわち「組
換え」は起こらなくなっているが、 Y 染色体 は、その大部
分を占める回文配列(左右対称な鏡像配列)中に多くの
遺伝子を配置することによって、遺伝子の完全性を保っ
てきた。この回文配列は、男性の一 世代あたり 600 塩
基対という高い頻度で互いに組換えを起こすらしい。ヒト
Y 染色体の配列とそれに相当する大型類人猿の配列と
の比較から、この回文配列の 多くは、 500 万年前にヒト
とチンパンジーとが分岐するよりも前に生じたものである
ことがわかった。この WEB フォーカスではこの成果を記念
して、 Nature 関連誌に掲載された関連論文、レビューを
公開する。
今回の発見
遺伝:ヒト Y 染色体の男性特異的領域は異なった性質の配列
のモザイクである
Y 染色体上にある男性特異的領域 MSY は Y 染色体の 95% を
占め、性差を生じさせる。本論文では、 MSY がヘテロクロマチ
ン配列と 3 種類のユークロマチン 配列( X‐ 転移配列、 X‐ 縮
重( degenerate )配列、アンプリコン配列)が入り混じったモザ
イクであることを報告する。これらの 3 種類の配列は既 知の転
写単位 156 個すべて含んでおり、 78 個のタンパク質コード遺
伝子がそれらの単位に含まれ、総計 27 種類のタンパク質を
コードする。 X‐ 転移配列は X 染色体と 99% の相同性を示す。
X‐ 縮重配列は、現在の X 染色体、 Y 染色体が進化するもとに
なった祖先常染色体の名残である。アンプリコン配列は大きな
領域を含んでおり( MSY ユークロマチンの約 30% )、そこでは
配列対は 99.9% 以上の一致を示し、頻繁な遺伝子変換(非相
互移動)によってこれが維持 されている。このアンプリコン配列
で最も目立つ特徴は 8 個の巨大な回文配列で、そのうち少な
くとも 6 個には精巣遺伝子が含まれている。
今回の発見
遺伝:ヒトと類人猿の Y 染色体にある回文配列の腕どうしの間で数
多く見られる遺伝子変換
ヒト Y 染色体にある男性特異的領域 MSY では、ユークロマチン DNA
の 4 分の 1 を 8 個の回文配列が占めている。そこには多数の精巣
特異的遺伝子が含まれ、 回文配列内での(腕と腕どうしの)配列の
同一性は、通常は 99.97% にもなる。この高い同一性は、これらの
回文配列が約 10 万年前に起こった重複を介し て生じたことを示す
証拠と解釈することもできる。本論文では、大型類人猿で配列比較
解析を利用し、これらの MSY 回文配列のうち少なくとも 6 個は、お
よそ 500 万年前に起こったヒトとチンパンジーの分岐よりも前から
存在したことを明らかにする。これらの回文配列の腕ではその後に
遺伝子変換が起こって、対応 する腕のペアが呼応した進化を遂げ
る原動力となってきたに違いない。実際、既存のヒト集団内で MSY
回文配列の変動を解析すると、ヒトで腕対腕の遺伝子変 換が再三
起こったことを示す証拠が得られる。最近の進化の過程では、新生
児男子 1 人あたり平均して約 600 ヌクレオチドで Y-Y 遺伝子変換
が起こってお り、これが MSY に見られる複数コピーをもつ精巣遺伝
子ファミリーの進化に重要な役割を果たしてきたと我々は結論する。