地域で暮らす精神障害者に対する 「ふまねっと」 運動を 用いた歩行機能

己
.
臨床縦神科作業療法研究・第8巻1号.2011年12月
器
園麺
地域で暮らす精神障害者に対する「ふまねつと」運動を
用いた歩行機能の改善と転倒予防への取り組み
一シングルケースデザインを用いた介入検証一
小松洋平・藤原和彦・上城憲司・青山宏
要旨
長期入院を経てグループホームで生活を営む統合失調症の60歳代後半の症例に対し,歩行機
能の向上や転倒予防を目的に,「ふまねつと」運動を週4回8週間の介入を実施した.介入効
果について,シングルケースデザインで検証した結果,TimedUpandGoTbst(TUG)時間と
ワーキングメモリーなどの認知機能障害について改善を認めた.その要因は「ふまねつと」運
動がもつ学習要素が要因と考えられる.
1.研究の背景と目的
わが国の精神保健医療福祉施策は,平成16年
9月に取りまとめられた「精神保健医療福祉の
改革ビジョン」に基づき,「入院医療中心から
地域生活中心へ」という基本的方策を推し進め
く,さらに地域においても,高齢者を対象に同
様の取り組みが実施されているが,不‘債れな
人。不慣れな場所に行くことは,難しい場合も
ある.
そこで暮らしている身近な場所で'慣れた人達
とともに運動に取り組むことで,継続的な支援
ており,最近では精神科病院からの地域移行だ
けでなく,地域で安定した生活を継続してでき
が可能もなるのではないかと考え,今回共同生
るよう支援に増えてきた.’)
そのために,精神科病院での長期入院を経て
地域での生活を営みはじめる高齢期の精神障害
活支援事業所(グループホーム,以下GH)の
共有スペースにおいて高齢期で歩行機能に不安
がある症例を対象に「ふまねつと」運動を実施
者も増えつつある.
した.
その場合,長期入院よる体力や運動器の低
下・統合失調症の疾病本態でもある認知機能障
害・抗精神病薬の副作用によるふらつきなどが
本研究では,その取り組みの参加者の中でも
最も歩行機能に不安を訴えていた症例につい
て,介入効果を把握するためにシングルケース
要因で歩行機能が低下していることがある.そ
のために歩行機能や認知機能障害の改善を図り
デザイン(A−B−A,型)2)を用い検討するこ
ととした.
ながら環境調整とともに転倒の予防に努める支
援が必要と考える.
Ⅱ、症例紹介
精神科病院では入院患者に対して運動やスト
都市部にあるアパート型のグループホームの
レッチを用いて,これらの改善を試みる取り組
みは多くなされ報告も多い.しかし地域で生活
する歩行機能に不安がある高齢期の精神障害者
の場合,精神科病院で実施されている転倒予防
2階(1階部分は店舗)で暮らしている60歳代
への取り組みに参加することは,本人の意欲や
通院距離などを考慮すると継続的な支援は難し
所属:西九州大学
後半の女'性である.
20歳代で統合失調症にて入院したことをきっ
かけに,その後父親(母親の存在は不明)がい
た自宅と精神科病院間で入退院を繰り返した.
症例は被害妄想が残存するものの陰'性症状が
前景にある精神症状であった.40歳代に入院し
て時に,父親が亡くなり弟がキーパーソンと
地
域
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暮
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す
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障
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介
入
検
証
3
9
なった.その後退院の機会がなくなり,本人は
退院の希望があったものの長期入院することに
なった.
後に,キーパーソンが弟から姉に変わったこ
とがきっかけで,退院の計画が進められ,,2年
ぶり(60歳代前半)に現在のグループホームに
退院をすることになった.
退院当初は,入院していた病院のデイケアに
週に2回利用していたものの,被害的な感情を
利用者に抱くようになったことや退院後に疲労
感が増加したことなどにより,デイケアに行く
ことがなくなり,グループホームにおいて自閉
的な暮らしをしていた.外出は世話人やGH内
の友人と近所に買い物に行ったり,外来受診を
2週に1回する程度であった.食事や入浴,掃
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除は世話人が援助していた.
しかし買い物のために外出時に疲労し途中で
帰宅できなくなったことがきっかけで,体力の
衰えや歩行機能の低下を訴えるようになり,そ
の後外出しなくなった.また3階の友人の部屋
へ行っていたが,階段で転倒しそうで怖いと機
会が減った.
Ⅳ、研究方法
1)研究のデザイン
A−B型のシングルケースデザインを採用し
た.A期はベースライン期,B期は介入期,と
した.A期は4週ありB期は8週である.B期
(介入期)には,上記の「ふまねつと」運動」
介入を週4回の頻度で継続して実施した.
2)独立変数と従属変数
独立変数は作業療法士による介入の有無とし
た.従属変数は,パフォーマンステストの1つ
であるTYmedUpandGoTbst(以下TUG),lOM
歩行時間,開眼・閉眼片脚立位時間,転倒恐‘怖
感の4項目である.A期では毎週土曜日に,B
期では各週における最後のセッションを終了後
に測定を実施した.
①TUG
椅子座位から立ち上げり,3m歩いて方向転
換し戻り,再び座位になるまでの動作をできる
だけ速く行った時の時間を計測した.
②10M歩行時間
加速と減速のために各2mずつ距離を取り,
間のlOmの時間と歩数を計測した.「走らず,
世話人が散歩に誘うがなかなか散歩には行か
なかった.そのときに筆者から「ふまねつと」
普段のように歩いてください」と口頭指示し
運動を提案した.
た.今回ではGH前の駐車場で計測した.
③開眼片脚立位
Ⅲ.「ふまねつと」運動について
北漂は歩行機能や認知機能トレーニングプロ
グラムとして「ふまねつと」を考案し,北海道
を中心に地域の介護予防教室,老人保健施設,
目を開けた状態で,片足だけで.どれだけ
立っていられるか時間を測定する.
④転倒恐怖感
×8の網状に配列している平たいゴム製ネット
TYnettiによって開発されたFallE缶cacyScale
(以下記S)の日本語版を用いて評価した.10
項目の生活活動について,転倒することなく遂
行する自信の程度をl∼10段階で調査するもの
を床に敷き,よく見ながらネットを踏まずに跨
で,転倒恐怖が激しいほど点数が高くなる.
ぎ越えながら歩き,マス目を組み合わせてつく
⑤介入前と介入最終週にAssessmentofCogni‐
精神科病院において実践している3)4).
「ふまねつと」運動は,50cm四方のマスが3
られたステップ学習するプログラムである.そ
の運動の特徴を活かすために,北津らは高齢者
の歩行機能に合わせ,様々なステッププログラ
ムを考案している.「ふまねつと」という名称
は「ネットを踏まないように歩く」という運動
に由来する.
高齢者を対象に,認知機能の改善効果,転倒
予防効果,心理的効果が実証され,他にも高齢
者の社会参加の機会の提供や地域コミュニ
ティー活性化などの社会学的効果も評価されて
いる3)4).
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下
B
A
C
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−J)5)にて認知機能障害を評価した.
3)介入方法
B期には,週4回「ふまねつと」運動を1回
につき30分実施した.セッションには症例のほ
かに,他の同性のGH利用者2名,世話人1名,
筆者の合計5名が参加し,筆者が運動指導を行
なった.なお筆者は事前に「うまれっと」運動
の指導者研修を修了している.
lセッションの内容は,①「ふまねつと」運
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臨床繍神科作業療法研究・第8巻1号.2011年12月
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表1:本研究における「ふまねつと運動」のステッププログラム
セッション
回
数
1
I
3
ステッブ(各ステッカ2回つづ実施)
週
各歩数
Dはじ伽1歩を右足力'ら始める。
01伽の1歩を左肋ら始める‘
Oはじ伽1歩を右足力'ら始める。両足揃った時に手拍子。
4
■■ロ
15
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0はじ伽1歩を右肋ら始める。
、切り翫ステッ充右足から姶脆
0切り蔀ステッ尤左剛ら始める
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時
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0切り翫ステッ充右足から紬る−−−−
、切り翫ステッ溢足力'ら始める
cijリリ翫ステッ充左足力'ら州る.耐前った時に手拍子。
、切り翫ステッ充右足力'ら始める。両踊った時に手拍子。「ぞうさんlを歌う
0切り首ZZザ唾墾力』ら拠る。−−‐
一
一
一
一
一
4
1
-スリーを左肋ら姶脆。
5
1
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1
7
1
8
1
9
1
、ワンツースリー祐足力'ら始める。「うみ」を同時に歌う。
D切り蔀ステッ尤右別ら始める。
、ワ辿言型=砿足力)ら紬る・
0匹ly=Z<リーを右足力'ら始める。各マスの最初0)足と同時│こ手拍子一
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2
2
3
2
3i7Zjl=スリーを銀力'ら姶脆。各マスの最削足と同時に手拍子
4
2
01フンツースリーを右肋ら始める。各マスの雛の足と同時に手拍子。「うみ」を同時に歌う。
5
2
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2
0切り翫ステッだ右足力'ら始める。
3ワンツースリーを右肋ら始める。
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ザ
ク
ス
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喧
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姻。
8
2
、ザクステッ尤足から始める。「赤とんぼ」を同時に歌う
6
2
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0
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1
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1
6
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2
回
1
6
歩
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2
回
1
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2
回
1
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2
回
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2
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2
回
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回
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2
回
1
6
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回
1
6
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2
回
1
6
歩
x
2
回
2
4
歩
x
2
回
2
4
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x
2
回
2
4
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x
2
回
1
6
歩
X
2
回
2
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歩
x
2
回
24歩x2p
2
4
歩
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2
回
1
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歩
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2
回
24歩x2回
2
4
歩
x
2
回
2
4
歩
x
2
回
1
6
歩
x
2
回
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2
4
歩
x
2
回
2
4
歩
x
2
回
Dはじ伽1歩を右跡ら紬る。
011リ翫ステッ遊右足から始める
0ワンツースリーを右助ら始める。
錨計
1セッション
合計歩数
2
3
2
3
2
3
1
2
8
2
3
2
3
2
3
2
3
1
2
8
2
3
2
3
2
3
1
2
8
2
3
2
3
2
3
8
4
8
4
1
7
6
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2
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4
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1
7
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2
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2
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x
2
回
2
4
歩
x
2
回
8
4
)
4
0リザ右剛ら蛾る‘「赤とんぼ」を同時に歌う。
2
4
歩
x
2
回
8
4
11︲■■■I︲01口1日■I日日Ⅱ■
動の説明②準備体操③スツテツプ運動4ステッ
1
6
0
8
4
プを各2回④整理運動である.各セッションの
化し,目視による判定を行なった.また,判定
の補助とするために,標準偏差帯法2)を用いて
ステップップ運動は表lに,各ステップ運動に
分析した.
ついて図lに示す.
標準偏差帯法とは,A期の平均値をB期に向
かって延長したものとおよび平均値−2標準偏
差とで挟まれる帯の内外でB期の測定値の数を
数えるものである.通常,B期の測定値が帯の
外側に2つ以上連続してあれば,対象者の測定
値に統計学的に有意な変化が生じたと推測され
4)倫理的配慮
A期の初めに,症例に対し研究について目的
と方法および個人情報の取り扱いには注意する
ことに加えて研究への参加は自由であり参加し
なくても不利益にはならいことを併せて文章で
説明し,その同意を得て研究を開始した.
ている2).
さらに各期の症例の変化,BACS-JのZ値の
介入前後の変化についても考慮した.
5)分析方法
BACS-J以外の評価の各項目の得点をグラフ
#
地
域
で
暮
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精
神
障
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者
に
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:...蕊...
;
』
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■
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■■■■■■
Z
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■
ワンツースリー
■■右足□
ジグザグステップ
左足最初の4マス目までを示した
図1:ステップの例示
JJIIl
I
臨床繍神科・作業療法研究・第8巻1号.2011年12月
4
2
V,結果
1)症・例の変化
当初,3階の友人部屋へ行くことが「階段で
「ふまねつと」運動は,ゆっくりとした動き
だが,網を踏まないように網と足の場所に注意
転倒しそうで怖い」と話しと友人の部屋へ行く
を配分・持続をしながら,同時にステップの規
則の記憶に従い,ステップを再現し手拍子をし
機会が減っていたが,介入1ケ月が経過した頃
たり歌うことが要求される.つまりゆっくりし
より再び友人の部屋へ行くことが増えた.また
た歩行と同時に複数の認知機能が要求される運
世話人が近所の大型ショッピングモールへの買
動であるために,それを反復して実施したこと
い物に誘うと行くことが出来,1時間程度買い
がその改善に繋がったと考える.
物を行なった.
また「ふまねつと」運動はゆっくりした歩行
「ふまねつと」運動のセッションでも当初は
であるために,左右への身体重心移動を学習す
ゆっくり恐々としたり,ウオーミングアップス
るといわれているため,TUGの改善にもつな
テップを2回しただけで,息切れし疲労を訴え
がったと考える.
また周囲から成功して賞賛されること,指導
ていたが,3週目よりそのような様子はなく
なった.また当初は間違いが多かったが,同じ
者や学生が失敗して笑ったりすることで生じる
ことを繰り返すことにより間違いも減った.
コミュニケーション,ステップを基本的ステッ
2)シングルケースデザインによる結果
プを中心に難易度を上げなかったことによる達
TUG,開眼片足立脚,転倒恐怖感尺度がベー
スラインの平均値±2SD以上のラインで2つ
以上の測定値の改善を認めた.
成感などによって症例も継続して参加できたと
考える.継続できたことによって,歩行機能が
向上し,歩行に対する自信が回復したことによ
3)BACS-Jの介入前後比較結果
動作性やロンドン塔課題(課題遂行機能)に
り,転倒への恐怖感も減ったと推測される.
改善を認めたが,他の認知機能障害には改善を
GHやケアホームに入居する人が多い.GHで
認めなかった.
は職員数も少なく専門職の配置も少ない.しか
長期入院を経て地域移行する精神障害者は
し,高齢の精神障害者は生活が身体機能の低下
Ⅵ”考察
症例はA期において,TUGと10m歩行の時
により,身近な場所・人からの支援が必要とな
間がほぼ同一タイムであった.TUGは目標を
が安く,自尊心も回復しやすい,指導も難しく
る.「ふまねつと」運動は効果が高く,コスト
回る,体を後ろに向きにして椅子に座るなどの
ないなどの長所があり,このような場所におい
姿勢変換を必要とする.この時には動的なバラ
て転倒予防を支援するときに有用な支援のひと
ンス能力や認知機能を要すため,症例は動的バ
つである.
ランス能力や認知機能が低下していたと推測で
一方本研究の結果は,対象とした症例に限ら
きる.これは,統合失調症の病態自体である認
知機能障害,肥満,さらに抗精神病薬の多剤併
用による副作用,長期入院による生活体力や歩
れるものであり,本研究のデザインでは介入終
了後に継続してデーターを検証していない.そ
行機能の低下が要因と考えられる.
否かや本研究の結果が一般的な傾向か否かは,
本研究の結果より,「ふまねつと」運動8週
間32セッションの介入によって,TUGとBACS
のため介入終了後どの程度効果が継続するのか
介入終了後のデーター収集や更なる症例の拡大
や比較対象研究が必要である.
−Jの作業遂行機能や動作性が改善した.地域
の高齢者を対象とした「ふまねつと」運動介入
文献
の比較研究においてもTUGと認知機能が改善
')厚生労働省:精神保健医療福祉の改革ビジョ
したという報告がある.さらに入院中の精神障
害者に週1回6週間「ふまねつと」運動を介入
ン.(オンライン),入手先<http://www,mhlwgo・
jp/topics/2004/09/tpO902-Lhtml>,(2010-02
した研究でもTUGが改善したという報告もあ
2
2
)
.
る.地域で暮らす精神障害者の高齢者を対象と
2)永井洋一,山田孝(編):事例研究シングル
した本結果においてもこれら先行研究と同様の
ケースデザイン,標準作業療法学作業療法研
結果が得られた.
究法,医学書院,東京,2007,87-103
3)北沢一利,介護予防運動の「量」から「質」
への転換∼「ふまねつと運動」の理論と指導法
∼,日本デイケア学会誌「デイケア実践研究」,
Vblll,NO2,p39-48,2007
イ)北沢一利,尚和里子,他:歩行機能改善と転
倒予防に「ふまねつと運動」をおすすめしま
す,精神看護,Vblll,NC4,p68-77,2008
5)兼田康宏,住吉太幹,中込和幸,統合失調症
認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J),Vbl
50No9号p,913-917,2008
6
41
21
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11
一繍棚畷IiIIlilllIIIIII
地
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ヘースフィン
介入期
図2:TUGタイムの経過
1
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一.…二二二r雪三重二二二二二蔓三三を三三ヨE室=三三=室
ベースライン期の平均
=
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三
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堂
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A-1A・2‐A・3’A-4
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図3:10m歩行タイム
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A-1A・2A-3A・4
R、1B-2B・3B-4B-5B・6B-7B・8
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1ベースライン期
図4:開眼片足立ちタイム経過
11
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9階
ベースライン期の平均
=一一一一一A一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一画一一一一一一==一一一一一一一=ーー一一一ー一一一一一ーーーー一一一一=一一一一ーーーーーーーー一一一−一一一一ー一一ーーーー一一一一一一一一=一一ー一一
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Ld
9
1
9
昭5
P血
B-1B,2B-334B・58.6B-7B・2
A-1A-2A-3A・4
介入難
ベースライン難
図5:FESの経過
0
5
0
■0
●1
■5
●0
あ5
●0
●5
●0
凸
0
﹄二1
一2
﹄2
一3
一3
一4
写
一一介入前
一一介入後
勺 。
〆/、、
冨宗、
、
、〃
、〃
総得点
ロンドン塔
号
コ
ア
ス
言語流暢性上
S
C
A
B
6
運動課題図
数唱
言語記憶
符