津久井やまゆり園事件に対する障神奈連の見解 7月26日未明、津久井やまゆり園において、死亡者19名 負傷者26名を出す残虐な事件が発生しました。 この事件に対する障害児者の生活と権利を守る神奈川県連絡協議会の障害当事者団体としての意見表明をしま す。 1. 今回亡くなられた19名の方に対して心よりご冥福をお祈りし、また負傷された26名の方の1日も早い 回復を願うとともに、ご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。 この事件の報に接したとき、死傷者数の多さとともに、容疑者が障害者の尊厳を否定する優生思想の持ち 主であることに、改めて考えさせられました。障害者は生きている価値がない、また、障害者に金を掛けて も無駄だなどという発言や、障害者を虐待するニュースは、普段より耳にしています。しかし今回、実際に 優生思想を表明し、多数の障害者を死傷させる行為に及ぶ事態に発展したことに、私たちは障害当事者の団 体として、深く衝撃を受けました。 一昨年、日本政府は、国連の障害者権利条約を批准し、さらに、この4月からは障害者差別解消法が施行 されました。施設福祉から在宅福祉へと障害者の人権保障が着実に前進してきているかのように見えます。 しかしながら一方で、 「障害者は役に立たない」「障害者に金をかけるべきでではない」というように、障 害者の尊厳を認めない優生思想が依然として存在していることも事実です。 2. 事件の原因究明や真相解明はこれからだと思いますが、真実を可能な限り詳しく明らかにしていただきた いものです。 この事件は、今後もテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディアが取り上げていくと思いますが、事件の本 質から外れたところで興味本位の取り上げ方をすることには慎重になっていただきたいと思います。今回の 事件の容疑者の主張を賛美し賛成する意見が、インターネットでは少なからず見受けられます。メディア等 におかれましては、障害者の人権を否定し優生思想を助長するような報道に傾くことのないよう、くれぐれ も冷静な対応をお願いいたします。 3. このような事件が発生すると、それを口実に医学的見地を無視して措置入院期間をいたずらに長くする議 論に傾くことが懸念されます。また、福祉施設の安全管理体制の強化のもとに、障害施設利用者の活動が制 限される議論に傾くことも懸念されます。政府は、プロジェクトチームを立ち上げ、今回の事件を受けて制 度改善への具体的な検討を進めるようですが、議論の方向を私たちは注意深く見守っていきます。 4. 私たち障神奈連は患者・障害当事者とその家族・関係者と一緒に手をつなぎ、県当局や各方面に対して生 活を豊かにしていく要求実現運動を行う活動団体です。障害のある人もない人も、すべての人が大切にされ る社会の実現に向けて、様々な活動を行っています。障害者の権利を守り、ひとりの人間として幸福に生き る権利を保障できる社会こそ、成熟した社会であると私たちは考えます。 今回の事件で被害に遭われた障害当事者とその家族そして施設職員を含めたすべての人が、元通りの生活 に復帰できるように応援し、手を繋ぎたいと思っています。 神奈川県民の皆様、人間の尊厳が最も大事にされる社会の在り方について、これからもともに考えあっていき ましょう。 2016年8月 障害児者の生活と権利を守る神奈川県連絡協議会 会長 清水 健男
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