Page 1 消費者被害を防止・救済する実効的な法制度の実現を求める

消費者被害を防止 。救済す る実効的 な法制度 の実現を求 める会長声明
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高齢化 が進 行す る我が国にお いて,65歳 以上の高齢者 の消費生活相談件数 は
,
平成 25年 度 では全 体 の約 3割 と大 きな割合 を占めてお り,平 成 20年 度 か ら平
成 25年 度まで の増加率は 6割 強 と,高 齢者人 口の伸 びを大きく上回るペ ースで
増加 してきてい る。悪質業者 が,独 り暮 らしの高齢者 な どを狙 つて ,突 然訪問 し
た り電話 をかけた りして,高 齢者 の判断能力 が低下 してい ることや断 りにくい状
況 にある ことにつ け入 り,不 本意 な契約 をさせ る事態は後 を絶たない。 こ うした
高齢者 な ど被害 に遭 いやす い消費者 が,被 害 に遭 うの を未然に防止す るとともに
,
被害 に遭 つて しま った場合にそ の救済 を図る ことがで きる,実 効性 の ある法制度
を実現す ることが急務 となつてい る。
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本年 5月
25日
,第
190回 国会 において,「 特定商取引に関す る法律 (以 下「特
定商取引法」 とい う。)の 一部 を改正す る法律」と「消費者契約法 の一部 を改正す
る法律」が可決 され ,成 立 した。
3(1)し か し,特 定商取引法 の改正 に関 しては,訪 問販売や電話勧誘販売 を事前に
拒否す る意思を明 らかに した者 に紺 しては働誘 を禁止す る制度 (具 体的には
,
訪問販売 に関 しては,お 断 リステ ッカー による事前拒否に法的根拠 を認 める制
度な どであ り,電 話勧誘販売 に関 しては,勧 誘 を受 けた くない消費者 が電話番
号 の登録 を行 い,登 録者 へ の電話勧誘 を法的に禁止 す る制度な ど)を 導入すべ
きか否かが議論 されたが,今 回 の法改正では見送 られてお り,未 だ消費者保護
の見地か らは不十分である。
12)消 費者 が望んで い ない にもかかわ らず ,突 然 の訪問や電話 で働誘 された こと
によ り,高 齢者 な どを中心に,断 りきれずに不本意な契約 を して しま うことが
少 な くな く,消 費者 トラブルの温床 とな つてい る。事実 ,全 国消費 生活情報ネ
ッ トワー クシステ ム
(PIO‐
NET)に 登録 された相談件数 をみ ると,訪 問販売全
体 では近年減少傾 向にあるが,家 庭訪販 につい ては増加傾 向にあ り,電 話勧誘
販売 について も増加傾 向にあつて,訪 問や電話 による不意打ち的な販売行為 に
よる消費者被害 が後を絶 たない状況 が うかがえる。
また,近 時 の消費者庁 の調査 によれ ば,消 費者 の 96%以 上が訪 問勧誘 ,電
話勧誘 を 「全 く受けた くない」 と回答 してお り,消 費者 が望まない訪問や電話
による勧誘 は,消 費者 の私生活 の平穏 を害す る迷惑なもので ある ことは明 らか
である。
よつて,消 費者 の私生活 の平穏 を維持す るとともに,不 本意な契約 を締結 し
て しま う危険 か ら高齢者 をは じめとす る消費者 を保護す るため,訪 問販売や電
話働誘販売 を事前に拒否す る意思 を明 らかに した者 に対 しては初誘 を禁止す る
制度 を速やかに導入す べ きである。
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また,こ の制度 は,あ くまで事 前 に初誘 を望まない意思 を明確 に した者 に対
す る訪問や電話 による働誘 を禁 止 す るもので あるか ら,こ の制度 を導入す る こ
とにより,事 業者 の事業活動に何 らか の影響 が生 じるとしても,そ れは必要最
小限の もので ある。 む しろ,事 業者 にとつて も,事 前に勧誘 を拒否す る意思を
示 してい ない消費者 のみを対象 に して勧誘活動 ができるので,よ り効率的な営
業活動 ができるとい うメ リッ トもある。
さらに,現 在 は,高 齢者 を中心に,迷 惑な初誘 を受けた くない との思 いか ら
,
敢 えて電話に出なかつた り居留守 を使 つた りす ることが あ り,そ のため,地 域
社会にお いて高齢者 の安否 を見守 る活動 を してい る人たちか らの電話や訪問 に
も応 じない といつた事態が生 じてい る。 この制度 が導入 された場合 ,そ ういつ
た一切 の電話や訪 問に応 じない 消費者 が減少す ると考えられ るため,地 域社会
にお ける高齢者 の見守 り活動 も,よ り効果的 に行 えるようになる ことが期待 で
きる。
4(1)ま た,消 費者契約 法 の改正に関 しては,加 齢や認知症等 によ り合理的な判断
をす る ことが 困難 な事情 を利用 して契約 を締結 させ る不当な働誘類 型 について
消費者 の取消権 が新 たに導入 されたものの,過 量契約 (事 業者 か ら受 ける物品
,
,
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,
権利 ,役 務等 の給付 がその 日常生活にお いて通常必要 とされ る分量 ,回 数又 は
期 間を著 しく超 える契約 )と い う限定的な範囲 にとどま ってお り,未 だ消費者
保護 の見地 か らは不十分である。
2)認 知症 あるいは軽度認知障害にある高齢者 は,平 成 24年 の統計 で約 820
万人 とされてい るところ,平 成 26年
数 は,わ ず かに約
12月 末段階での成年後見制度 の利用者
18万 人 と,全 く追 いついてい ない状況 にある。
こ うした 中,成 年後見制度 を利用 していない高齢者 が,判 断能力 の不足につ
け込まれ ,執 拗な働誘や粗野 。乱暴な言動 による働誘 を受けて,不 必要な契約
を締結 させ られた場合 ,現 行 の消費者契約法には こ うした不当な初誘 を受けた
ことを理 由に取 り消す ことがで きる規定 がないため,高 齢化社会 の 中で,被 害
を予防す る ことや事後的に救済す る ことが十分 できない状況 にある。
高齢者 をは じめ とす る判断能力 が不足 している消費者 は, どのよ うな初誘 を
受 けた のか を消費者 自身 で再現す る ことが難 しい ことや ,被 害 に遭 つた ことに
気づい て も ど うした らいいか分 か らなか った り,他 人 に知 られた くない とい う
思いか ら誰 にも相談できない まま時間が経 って しま つた りす る ことも少な くな
い。 さらに,消 費者 に とって不利益な契約条項 が契約書 に盛 り込まれてい る こ
とも重な り,消 費 生活相談 の現場 での封応 が 困難 であることはもちろん,裁 判
によつて も被害 を救済す ることが極 めて 困難 である。
儡)よ つて,消 費者 が合理的な判断を行 うことがで きない状況を利用 して締結 し
た契約 につい ては全面的に取 り消す ことがで きる規定を導入 して,執 拗 な勧誘
または威迫す る働誘 に より締結 した契約 を取 り消す ことがで きるよ うにす ると
ともに,消 費者 の利益 を一方的に害す るもの として無効 となる契約条項 をさら
に明確 にす る こと,な どの改正 を行 うことによって,被 害 の救済 が実効的 に図
られ るよ うにす る ことが必要 である。
こ ういった被害を救済す るための法制度 を充実 させ る ことは,悪 質業者 を市
場 か ら排除 して,事 業者 による初誘方法や契約条項 を見直す こ とを促進す るこ
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と,ひ い て は ,消 費者 被 害 を未 然 に 防 止 す る こ とは もち ろん ,国 民経 済や 地域
社 会 の健 全 な発 展 に もつ なが る もの とい え る。
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以 上 の 理 由に よ り,消 費者 被 害 を防 止
。救 済す る実効 的 な法 制 度 を実現 し,も
っ て 高齢 者 をは じめ とす る消費者 の 安 心 安 全 な生活 を確保 す るた め ,上 記 の 特 定
商 取 引法 及 び 消費者 契約 法 の 改 正 で 見送 られ た事 項 に つ い て ,時 間 をお く こ とな
く速や か に法 改 正 に 向 けた検討 が 再 開 され るべ き で あ る。
以
2016(平
成
28)年
8月
愛媛 弁護 士 会
会長
4
宮
部
高
至
24日
上