受難の主日礼拝アウトライン 日曜日朝だけで受難週の典礼を守るために はじめに 日本キリスト教団の「4 年サイクル聖書日課」が受難週のために提示している聖書日課は、伝 統的で、リタージカルな礼拝を想定しています。これらを用いた、しゅろの主日、洗足木曜日、 受難日、復活日(第 1 礼拝)のリタージーに参加すると、意義ある受難週を過ごすことができ ます。 ところが、日本のプロテスタント教会においては、週日の集会への参加事態が困難である場 合も多く、ほとんどの出席者は、日曜日の朝の礼拝にだけ集っています。かつては「受難週祈 祷会」という習慣もありましたが、それが行われている教会も少なくなっています。その結果、 イエスの受難を、個人としては聖書を読み、黙想しているとしても、教会として、礼拝におい て記念することが、実際は行われていないのが現状かと思われます。 このアウトラインでは、そのような日本のプロテスタント教会の現状に鑑み、復活前第 1 主 日(しゅろの主日)だけで受難週の典礼に参加したことになるような礼拝を計画するための案 を提示しています。あくまでも、受難週の典礼に参加することが難しい人が多くあることへの 牧会的配慮として考えています。この礼拝をしても、受難週週日(洗足木曜日、受難日)の礼 拝や集会を行うことは差し支えないと思いますし、それらの礼拝や集会への橋渡しとなればな お素晴らしいと思います。 従来は、復活前第 1 主日は「しゅろの主日」と呼ばれてきました。それは、イエスのエルサ レム入城を記念して、「しゅろ」の葉を持って行進が行われたからなのですが、そのようなリタ ージカルな場面も日本のプロテスタント教会では経験することが少なく、また、エルサレム入 城だけでなく、その後の 1 週間のイエス歩みをふり返る礼拝をしとうとしていますので、この 日を、カトリックの伝統から借りてきた「受難の主日」と呼んではどうかということも提案し ています。 本来なら数回に分けて行われるリタージーを一つにまとめることになりますので、時間的な ことを考慮する必要があります。普段の日曜日よりは長くなるにしても、適切な長さ(教会に よって異なると思います)を保つ必要はあるでしょう。賛美の選び方、聖書箇所、とくに受難 記事の朗読の選択、また、説教の有無と長さなど、よく計画する必要があると思います。 いずれのアウトラインでも、「とりなしの祈り」で礼拝を結ぶようにしていますが、これは、 受難日の典礼が、派遣と祝福などを含まない伝統に則っています。結びの祈りという形で礼拝 を締めくくるのがいいかもしれません。 また、献金をする場合は、どの箇所でも可能ですが、受難記事朗読の緊迫感を大切に考える なら、それまでに、例えば、《み言葉》の部分の最後にするのがいいかもしれません。 受難の主日礼拝アウトライン 1 共観福音書(A〜C年) 以下の聖書箇所を中心に、賛美、祈り、交読などを組み合わせて、式順を組み立てる 《招かれて集う》 エルサレム入城の記事(A年:マタイ 21:1〜11、B年:マルコ 11:1〜11、C年:ルカ 19: 28〜38)を朗読して、入堂する ※ 宮清めの記事(A年:マタイ 21:12〜17、B年:マルコ 11:15〜19、C年:ルカ 19:45 〜48)を朗読に加えることも可能 《み言葉》 聖書朗読:その年の「4 年サイクル聖書日課」復活前第 1 主日、洗足木曜日、受難日の聖書日課 (ヘブライ語聖書、使徒書)から、選ぶ ※ 説教をする場合は、礼拝の時間を考慮する必要がある 《感謝》 最後の晩餐の記事(A年:マタイ 26:17〜30、B年:マルコ 14:12〜26、C年:ルカ 22:7 〜23)を朗読して、記念の食事を祝う 《受難》 その年の福音書の受難記事(A年:マタイ 26:36〜27:56、B年:マルコ 14:32〜15:41、 C年:ルカ 22:39〜46)を朗読する ※ 礼拝の時間を考慮して、朗読箇所を短くすることもできる ※ 登場人物によって朗読者を分ける「ドラマティック・リーディング」をすることもできる ※ 場面毎に黙想、応答の祈り、賛美を加えることもできる 《結び》 とりなしの祈りを捧げる。主の祈り、結びの祈りを加えることもできる ※ 受難日の典礼と同様に考えるなら、通常の礼拝のような「祝祷」、派遣を省くことも考えら れる 2 ヨハネによる福音書(D年) 以下の聖書箇所を中心に、賛美、祈り、交読などを組み合わせて、式順を組み立てる 《招かれて集う》 エルサレム入城の記事(ヨハネ 12:12〜19)を朗読して、入堂する 《み言葉》 聖書朗読:その年の「4 年サイクル聖書日課」復活前第 1 主日、洗足木曜日、受難日の聖書日課 (ヘブライ語聖書、使徒書)、あるいは、ヨハネ 12〜17 章から、選ぶ ※ 説教をする場合は、礼拝の時間を考慮する必要がある 《感謝》 洗足の記事(ヨハネ 13:1〜15)を朗読して、洗足式を行う ※ ヨハネによる福音書には「最後の晩餐」の記事はないが、ここで、イエスの死と復活を記念 する感謝の食事を祝うこともできる 《受難》 受難記事(ヨハネ 18:1〜19:37)を朗読する ※ 礼拝の時間を考慮して、朗読箇所を短くすることもできる ※ 登場人物によって朗読者を分ける「ドラマティック・リーディング」をすることもできる ※ 場面毎に黙想、応答の祈り、賛美を加えることもできる 《祈り》 とりなしの祈りを捧げる。主の祈り、結びの祈りを加えることもできる ※ 受難日の典礼と同様に考えるなら、通常の礼拝のような「祝祷」、派遣を省くことも考えら れる 受難の主日礼拝(例) 《招かれて集う》 前奏 聖書 マルコ 11:1〜11 賛美 「ダビデの子、ホサナ」(『讃美歌 21』307) 《み言葉》 ヘブライ語聖書 イザヤ 50:4〜7 詩編 24:1〜10 使徒書 フィリピ 2:5〜11 祈祷 賛美 「栄えの主イエスの」(『讃美歌 21』297) 説教 祈祷 《感謝》 賛美 「痛み、傷つき」(『みんなで輝く日が来る』) 献金 聖書 マルコ 14:12〜26 記念の食事(聖餐あるいは愛餐) 《受難》 マルコによる受難物語 朗読 マルコ 15:1〜20 賛美 「見よ、十字架を」(『讃美歌 21』295)1, 2 節 朗読 マルコ 15:21〜41 賛美 「見よ、十字架を」(『讃美歌 21』295)3, 4 節 朗読 マルコ 15:42〜47 賛美 「見よ、十字架を」(『讃美歌 21』295)5, 6 節 《結び》 とりなしの祈り 結びの祈り (沈黙の内に散会) ⓒ2012 水野隆一
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