新生産システムモデル地域事業報告会の報告要旨

新生産システムモデル地域事業報告会の報告要旨
新生産システムモデル地域事業報告会を 20 年 2 月 21 日(木)スクワール麹町で開催。
全国 11 のモデル地域の担当コンサルタントが地域の木材安定供給や林業再生のための合意
形成や体制の確立の取組み状況、課題などについて報告。以下はその報告要旨。
鹿児島圏域
国立大学法人鹿児島大学
○鹿児島圏域は、山側の部分が非常に多く、それで加工が少ないというのが特徴。17 年度
の素材供給量 317 千㎥をシステム事業体の増産により、5 年後には 470 千㎥まで増加させ
る。また、協定量は現状 の 14 千㎥を 5 年後には 91 千㎥にする。
○18 年 3 月末に立ち上がった鹿児島県原木流通情報センター(県森林組合連合会)が個別
ソート販売を開始、原木需要者の個別ニーズに合致した規格材を定期・定量に供給するシ
ステムを構築。
○森林・所有者情報データベースは、19 年 9 月に 11 件のデータを公開。12 月現在で売却
までは進んでいないが、3 件について対応。
○18 年度から島津興業、いずみ森林組合が林業経営担い手モデル事業体を実施。これに加
え、県主導で集約化の間伐生産のモデル事業を 5 地区で実施し、年度末に向けて生産材を
出荷の予定。
○森林整備コスト削減のため、かごしま森林組合、姶良西部森林組合、北姶良森林組合及
び曽於地区森林組合の 4 システム事業体が路網整備、高性能林業機械による間伐コストの
低減を図る取組みを実施。また協栄木材(株)及び上野物産(株)の 2 システム事業体が
育林コストの低減を図る取組みを実施。
○ 流通コスト削減のため、薩摩東部森林組合が「山土場及び新生産システム用の土場を活
用した選別・輸送コストの削減による新たな流通システムの実証」の実証事業を実施。
○山佐木材(株)が 19 年 9 月から自力で加工施設を新設、10 月から本稼働へ移行。なお、
(株)野元が撤退し、新たにワイテック及び南薩加工センターの 2 システム加工事業体が
参加。
○山佐木材(株)の事業拡張に伴い、平成 19 年 8 月に「システム事業体間の素材の安定供
給促進会議」を開催し、山佐木材(株)から原木購入協定価格の提示があった。協定量に
よる供給は、県森連系統ルートが 10 千㎥、システム事業体系統ルートが 4 千㎥を実施。
○システム事業体間に先進的取組みを率先して行う事業体と取組みを逡巡している事業体
との格差がみられる。今後は、先進的な取組みを実践している事業体を核としたコスト削
減策等の普及を推進。また、森林整備及び生産流通における革新的な取組みでは、若干の
コスト削減に成功している例があるが、まだ森林所有者への大幅な利益還元の成果は見出
されていない。このため、コスト分析をきちんとした事業実施で成果を出していく。
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宮崎
株式会社日本能率協会コンサルティング
○19 年は 1~3 月が材不足で原木高騰、4~6 月が材の供給過剰により価格の下落。その中
で KD 材だけは比較的堅調に売れている。大ロット需要の引合いもある。また、再造林へ
の要請が強まり、主伐低減・間伐増加の方向と素材生産現場が変化。
○宮崎地域としてはどれだけ求めているものが出せるか、それを見極めることが重要。宮
崎県における KD 材の供給能力の把握と間伐方向設定のための伐採能力の把握の調査を実
施。
○KD 材供給能力の把握の調査では、新生産システムにおける製材品販売の核となるスギの
KD 材の供給能力を把握するため、県内の乾燥設備保有事業体、50 事業体に対する FAX に
よるアンケート調査、10 事業体に対するヒアリング調査を実施。
○調査では、現状の KD 材供給能力が 195 千㎥で、今後は 2010 年に 241 千㎥、2012 年に
270 千㎥と向上が見込まれていること、また、設備稼働率・歩留り率改善により、現状で
57 千㎥(+30%)
、今後見込みで 2010 年 71 千㎥(+29%)、2012 年 74 千㎥(+27%)の
能力向上の余地が存在することが分かった。
○間伐方向設定のための伐採能力把握の調査では、間伐比率の向上による素材の必要量確
保及び安定供給が可能かどうかを調査し、調査結果を踏まえた素材生産の方向性を設定す
るため、新生産システム参加の 5 素材生産事業体に対するアンケート調査を実施。
○調査では、現状の主伐・間伐比率は大体 7:3、これを前提とした場合には投入人工数も
しくは生産性を現状比で 18%向上させることで、新生産システムの目標素材生産量(2010
年 650 千㎥)を確保できる。新生産システムで目標としている間伐比率 40%を実現するた
めには、投入人工数もしくは生産性を現状比で 34%向上させる必要があることが分かった。
○今後の課題は、製材事業者は、KD 材増産分について安定的な取引が可能な大手需要家の
開拓・確保。また、調査した事業体によって品質基準の内容や測定方法に差異がみられ、
今後、複数事業者による協同マーケティング・出荷の推進には品質基準の統一を進め、共
同品質保証体制の構築が必要。さらに山元・素材生産事業者には、目標とする素材生産能
力確保に向けた素材ロットの確保、森林 DB 活用、高性能林業機械導入等が求められる。
大分
特定非営利活動法人森林誌研究所
○大分地域の特徴は、素材生産のコストダウン、原木市場・森林組合共販所の流通改革、
これらを通して製材加工事業体による大分方式乾燥材のコストダウン、それを行っての安
定供給システムの構築。
○施業の集約化及び伐採ロットの確保のため、久恒森林が林業経営担い手モデル事業に取
組む。また、日田市森林組合等の森林組合が周辺山林の団地化・伐出ロットの拡大等に努
め、成果を上げている。
○森林整備コストの削減ため、久恒森林が疎植及び帯状間伐による天然下種更新作業に、
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後藤國利が高密路網の整備と高性能林業機械の導入等に、九州木材市場(株)がシカ等動
植物の食害防備に取組む。
○林業生産・流通コスト削減のため、久恒森林が高性能林業機械を活かしきる作業マネジ
メントに取組む。また、日田市森林組合は、特に協定取引日を月 1 回もうけ、事前に価格
を決め、椪積み・競り売りを省いた製材加工事業体への直売を行う。
○18 年度に施設整備を行った 6 加工事業体は、生産の拡大、木屑ボイラー導入による乾燥
コストの削減が顕著にあらわれ、大分式乾燥材の供給量も着実に増加。
○需要先の確保のため、北部九州及び阪神・中京におけるスギ材市場の動向を調査と販売
戦略を検討。消費地の建築用材市場はプレカット等との関連で集成材指向を強めているが、
大分方式乾燥材は圏域産材の販路確保の重要な手段と考えられ、大分県とも連携して取組
む。
○大分圏域は、原木市場流通が 9 割以上を占めているが、原木市場の集荷圏は大分、熊本、
福岡、宮崎が中心で、大分県内の分は 40%程度しかない。協定材は県内森林からの生産材
に限るという現在の協定取引の定義では、協定取引の実行は非常に難しい。現在協定取引
に類する取引形態の調査・分析を実施、新しい協定取引の定義を提案する。
○大分圏域の安定供給モデルは、製材加工事業体の施設整備、森林組合林産事業の拡充、
森林組合共販所原木市場の流通改善、素材生産事業体の新規参入等によって確立の方向に
ある。
○今後、製材設備整備による需要量の拡大を上回る素材生産量の拡大のため、伐採箇所の
集団化による伐採ロットの適正化が必要で、作業路の開設、林業機械の整備等、システム
の改善、作業員の養成・確保などのコスト削減、森林経営者の手取り収入の増大、こうい
うことを目指し国・県の事業と連携し取組む。
岐阜広域/高知中央・東部地域
株式会社富士通総研
○岐阜広域と高知中央・東部地域の両モデル地域を担当しているが、コンサルタントの役
割は,全体のコーディネートと木材の安定供給体制のサポ-トと認識。
○基本コンセプトは、地域森林全体の管理能力、これが大前提。それによって路網整備、
林業機械の効率的な利用、それによる木材の安定供給。それと長伐期・非皆伐施業。
○地域全体を一括して取りまとめていくには施業の集約化が不可欠。そのための能力をど
うやってつけていくか。それと森林組合と民間事業体との連携と役割分担。これの実現に
は森林組合の経営能力が不可欠。
○18 年度は現場での技術サポートが中心であったが、森林組合が経営能力のない状態での
個別現場サポートは、効果が少ない。それを改革していこうとすると森林組合の経営改革、
これと不可分。
○研修では、地域森林の全体設計、林分調査、路網、作業システム、コスト計算、コスト
見積等をどのようにやっていくかを実施。それを受け各地域で実際に実践をサポート。
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(岐阜広域地域)
○岐阜県森連がシステム販売を 3 年前から実施しており、それに加え直送体制を構築して
いこうという試みを実施。
○加工事業体は、飛騨高山森林組合と親和木材で、飛騨高山森林組合の製材工場は、なか
なか体制自体の問題があったが、最近いろいろな方々の努力によって大分、改革の兆しが
見られるという話を聞いている。また、飛騨高山森林組合は自分で素材生産を行っており、
直送で実施。親和木材もほかの森林組合等と直送体制の構築に向けて努力中。
○岐阜県は、19 年度から「健全で豊かな森林づくりプロジェクト」を始め、それと新生産
システムを融合させつつある。このプロジェクトは 500ha ぐらいの集約化を前提に基本コ
ンセプトをつくって提案してもらうもの。19 年度 5 事業体を採択、その多くは 18 年度革
新的施業及び林業経営担い手モデル事業の実施者で、うち 2 つは森林組合と民間事業体と
の連携モデル。
○路網に対する必要性というか、これからきちと路網をやっていこうと大橋慶三郎氏に依
頼して路網研修を実施。飛騨高山森林組合は、18 年度の林業経営担い手事業で集約したと
ころを 19 年度施業しているが、高密路網で作業道の開設能力も高い。
○森林組合と民間事業体とのジョイントベンチャーが二つあるが、そこでの役割分担とか
契約とか力関係等々、これをきちんと整理することが必要。役割分担して外注するという
も、これが単なる丸投げでは全然力がつかない。
(高知中央・東部地域)
○高知県で新しいのは、住友フォレストが土場をつくって、そこで買い取りすることを始
めた。そのこと自体は大変歓迎。高知県森連の役割にも期待。両方で競争してより高い価
格で買ってもらえないか。
○銘建工業が新工場の建設を諸般の事情から延期を決定。
○研修は、革新的施業及び林業経営担い手モデル事業の実施事業体、6 森林組合と 1 民間組
織で実施。一番効果があったなと思うのは本山町森林組合。
○本山町森林組合のやり方は、基本的には高密路網で、対象林分は ha 当たり 800 ㎥、40
年~50 年生。劣勢木間伐で、歩留まりも低かった。使用機械は古い大型のプロセッサであ
ったが、7.3m3/人・日の生産性で、これを直接市場までミニダンプという 2 トンダンプで
運ぶやり方で 5.58m3/人・日である。ミニダンプも 4 トンにすれば、プロセッサももっとき
ちっとしたものを使えばもっと生産性があがった。今回のところは路網密度が 200mを越え
ており、これから材が太くなってくればどんどん生産性は上がっていく。やはりこれが長
伐期のよい点だ。ここで実は 3 回、現地研修を実施。日吉町森林組合の湯浅さんにアドバ
イスをいただいている。
○全般としていえるのは、まだまだ問題が多い。年間の事業計画の策定があいまい、コス
ト計算の理解の度合いもさまざま。路網についてもまだまだ問題である。
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○スイングヤーダ=列状間伐が定型になっている。長期的にどのような山にしていくのか、
その目標林型との考え方がないまま、列状間伐が行われている例が依然として多い。
○一つどうしてもやりたいと思うのは、本山町森林組合の取組はかなり発展の可能性が高
くて、それをどうやって 20 年度につなげていくか。現状の問題は、ここは残念ながら資本
力がないということ。
○木材供給量の抜本的な拡大には、今のやり方を全部つぶしていかなければ駄目。やはり
モチベーションが非常に大きい。危機感のあるところほどモチベーションが高い。国有林
や公共事業等の仕事がいっぱいあるところはモチベーションが本当に低い。森林組合に専
属チームを設置し、民有林しかやらない、搬出間伐しかしない、独立採算でやるというこ
とで、とりあえずその中で一つの仕組みができるのかと思う。
○今の日本の林業機械はこのままでは本当に駄目。現状の機械・価格で採算性を合わせる
ことは困難。欧州並みの林業機械を導入し、生産性が抜本的に上がれば、目の色も変わる
し、モチベーションが高まる人がいっぱい出てくる。
熊本
特定非営利活動法人森林誌研究所
○熊本地域は、銘建工業(株)
、熊本県森連、森林組合、木材業者、木材市場、これら核と
した大規模製材工場の新設。それで安定供給システムを構築するのが特徴。
○新設工場への原木調達は、県森連が納入量及び価格を調整し、森林組合が材を供給する
形であったが、それでは材が集まらない。素材生産業者を大量に動員せざるを得ない、市
場の協力も必要ということに変わってきた。
○施業の集約化及び伐採ロットの確保のため、小国町森林組合、阿蘇森林組合が林業経営
担い手モデル事業を実施。
○森林整備コストの削減のため、天草森林組合が大型機械の導入、壊れにくい集材路の作
設、集約化による列状間伐を実施。泉林業(株)が伐出作業と地拵えなどの一体的作業に
取組む。
○林業生産・流通コスト削減のため、(株)松島木材センターが「製材工場から見た低コス
トによる素材生産と流通システム」)、泉林業(株)が「山土場にて長径別仕分けによる直
売先への直送」を実施。これらについては 3 月の推進協議会で報告し、普及を図る。
○19 年度、
(協)くまもと製材が工場施設の新設に着手、工場棟が完成し、製材機械などの
搬入をまつ段階。また(有)清水、天草森林組合、
(株)松島木材センター、坂田製材所が
経営診断を実施、20 年度に施設整備に取組む。
○(協)くまもと製材の原木消費量は当面 5 万㎥、22 年度には 10 万㎥を予定。20 年度早々
の本格操業を目指し 1 月から原木調達を開始。価格設定を工場着で 13,500 円としており、
素材価格が下落する中で、集荷は順調。一方、既存の流通ルートの取扱量は大幅に減少。
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○既存の製材工場と熊本県市場連盟が協定取引の協議を行い、協定取引の文書の交換、協
定取引の担保(請求書に協定取引と記入)を決め、価格の上積みについての一定の合意が
できた。
○(協)くまもと製材は、生産量全量を銘建工業が引き取ることになっており、販売問題
はない。既存の加工事業体の場合、県内プレカット業及び工務店への販売が主流だが、北
部九州の市場・阪神・中京圏の市場への出荷を検討。
○今は木材市況が悪化し、流通量が非常に縮小しているが、素材需要量の増大に対応する
ため、素材生産量の拡大が必要。そのため、伐採箇所の集団化、作業路の開設、林業機械
の整備等、システムの再編、それから作業員の養成・確保等を行うことが必要。また、間
伐の拡大とともに主伐(皆伐・択伐)の拡大が必要で、伐出と一体となった再造林・保育
技術開発の開発が不可欠。
四国地域(中予山岳地域)
(株)愛媛地域総合研究所
(四国地域)
○四国地域は、徳島東南部、中予山岳、嶺北仁淀・東予、四国中東部の 4 つの地域で構成。
徳島東南部は、その中に木頭林業という古い林業地も含まれ、板製材の産地のイメージの
強いところ。また、米松を中心とした製材団地が形成されてきたところ。中予山岳は、久
万林業という形で戦後「造林地の雄」と一時言われた地域。嶺北仁淀・東予は、戦後の新
興林業地で新たな加工体制の構築に今動いているところ、四国中東部は、住友林業系列が
中軸と成りながら組織化を進めているところ。
○基本的な共通認識としては、四国を一本化した規模ではじめて国際商品としての木材製
品の供給体制の確立が可能となることを共有。その上で当面は 4 地域が独自な展開を行う。
(中予山岳地域)
○中予山岳地域は、古い林業構造をまだ多分に持っている地域。森林組合の父野川事業所
が乾燥材を入れる先駆的な加工体制をとったが、それに対する木材供給システムがまだ十
分に機能していないのが現在の状況。
○川上対策の基本方針は、施業・経営の集約化、立木購入の促進、施業放棄森林の更新促
進と低コスト林業の実行、素材生産協同組合の設立と民間認定事業体の育成。
○林業経営担い手モデル事業と林業活性化プロジェクトの推進で、累積 869ha の団地化を
実施。
○森林整備革新的取組支援事業で「放置林対策のための更新手法と保育管理のための長期
森林管理技術の開発」を実施。植栽本数 2 千本、それと併せて自走式チッパーによる枝条
とか残材の粉砕散布で下刈の 2~3 年の削減を目指す。
○20 年度は、素材生産協同組合の設立、林業経営担い手モデル事業・森林整備革新的取組
支援事業への応募、活性化センターと森林組合の連携強化による経営の集約化、データベ
6
ースの一体的・一元的運用、林研グループの活性化に取組む。
○川中対策の基本方針は、協定取引・直送の実現と定着化、域外木材流通業者との協定取
引の実施、合理的な価格形成機能の確保。
○林業生産流通革新的取組支援事業で「立木購入方式の導入による新たな素材流通システ
ムの構築」を実施。成果は昨日の事例発表会で報告。
○住木センターの「木材トレーサビリテイに関する地域研修会」を開催。
○20 年度は、素材生産業協同組合の結成と中間土場方式での販売をセットに積極的に取組
む。また域外・域内の木材流通業者との協定取引を試行。
○川下対策の基本方針は、製材加工場の2シフト化と設備増設・更新、商品(部材、キッ
ト、住宅)のコンセプトの明確化と新商品開発及び生産体制の検討、販売窓口の設置、プ
レカット加工の内部化。
○父野川事業所に 18 年度導入したバーカーが本格稼働を始め、月間原木消費量 5 千㎥、年
間原木消費量 60 千㎥の目途がほぼついた。また、父野川事業所への乾燥機、バイオボイラ
ー等の導入に対する経営診断を実施。
○20 年度もほぼ同じ内容の取り組み。製材品流通の整備、市場開拓のため四国地域として
の特性を生かした対応と地域内部に販売窓口を開設。
四国地域(地域)
徳島県木材協同組合連合会
○徳島東南部地域の検討事項は、大きくは原木供給体制の整備と加工体制の整備。原木供
給体制の整備では、生産材を A、B、C 材別に区分し、それぞれの供給量の拡大と流通改善
を図ること、加工体制の整備では、製材の生産性の向上とプレカット向けに必要な柱や梁、
桁等の構造材の生産を増加させること。
○県の進める「林業飛躍プロジェクト」と連携して高性能林業機械の駆使により素材生産
量を増加させる。18 年度実施した森林整備革新的取組支援事業で小型ロングアームグラッ
プルによる集材を取入れ、既存の集材システムを上回る 7m3/日の生産性を確認。
○19 年度は、徳島県森連がロングアームグラップルでの集材・仕分で、山土場仕分の作業
の効率化や一部直送を実施。また、徳島県林材業協同組合が山元土場での仕分と中間土場
での仕分を組み合わせて、山元土場から合板工場への直送、中間土場から挽材の異なる複
数の製材工場への直送の実証を実施。なお、B・C 材の山元仕分は比較的容易だが、A 材に
仕分は製材の挽材の施工に応じた質の選別が重要。
○製材工場はプレカット工場に向けた供給増加を目指し、需要に対応できる乾燥精度と寸
法精度向上のための施設導入が多くを占める。プレカット工場は加工単価の縮減に応える
効率のよい施設等を導入。
○19 年度製材施設の整備を行った(有)中千木材がプレカット部材の供給を試験的に開始。
また、プレカット加工施設の整備を行った(株)シンサンが那賀川すぎ共販協同組合が取
扱う「板倉の家」という在来工法の家のプレカット加工を試験的に開始。
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○データベースは、20 年1月から試験運用。システム参加の素材生産事業体にウェブ上で
パスワードを発行してロングインする方法で公開。森林調査は、美馬地域で 120ha を計画
し、説明会と調査は完了。
○19 年開催の東京ビッグサイトでの「ジャパンホームショー」に、表面塗装を施した加工
塗装板、新商品の「レックスボード」を中心に徳島スギの住宅部材を出展、PR を実施。そ
の成果として 2 社との取引を新たに開始。出展者は県木材協同組合連合会、那賀川すぎ共
販協同組合、(株)アルボレックス。
○20 年度の重点事項は、①データベースの本格活用とロングアームグラップル導入等によ
る生産性の向上と素材生産の増加、②プレカット工場の需要とのミスマッチの解消のため
の1万㎥規模の構造用製材施設の追加、③プレカット工場の国産材使用率向上のための間
柱や垂木などの羽柄材加工の施設の追加。
四国地域(高知県嶺北仁淀・東予地域)
高知エコデザイン協議会
○19 年度の目標はソニアの製材工場のサプライチェーンの圧縮と総原価の低減、技術革新。
具体的には原木直接調達比率の 90%への引上げ、直接販売比率を 65%、設備稼働率は 90%
台、操業時間は 16 時間を前提に三直操業への移行可能性の検討、付加価値の高い住宅産業
への参入戦略の検討。
○素材生産は、伊藤林業、新居森林組合、ソニアの伐採部隊が担当。伊藤林業は、施業委
託契約締結による団地化と 3km の路網作設に取組む。ソニアへの出荷は 10,000 ㎥。新居
森林組合は、データベースの作成と公開に取組み、18 年度 1,500ha,19 年度 1,200ha を登
録。ソニアの伐採部隊の生産量は、18 年度 5,400 ㎥で確実に伸びている。年間 10,000mの
作業道作設と高性能林業機械による作業、従事者 3 人×3 チームで、5 ㎥/人日の生産性を確
保。
○ソニアの製材工場は、18 年度乾燥機と木屑炊ボイラーを導入し、間柱と柱を中心に製造。
素材投入量が 40 ㎥/日から 100 ㎥/日ぐらいになって、生産性は 2.9 倍ぐらいなった。原木
の直接仕入れ比率は 60%台をキープ。直接販売比率も 60%台以上をキープ。
○「エコハウス」という住宅の仕様で実証住宅をつくり、住宅産業へ参入。また、新商品
としてエコハウス用の防火・耐火壁、床パネル、玄関ドア、それから 5 寸角柱をつくり、
大都市圏へのエコハウス提案としてジャパンホームショーへ出展。
○19 年度は住宅の規制強化、申請方法の変更により住宅着工数が落ち、木材需要が低迷す
る中で、ソニアは乾燥材の出荷率が高いため需要も減少することなく推移。
○ソニアの従業員が 13 人から 39 人に増加。19 年度 5 人が新たに結婚し子供も 7 人生まれ
るなど、この新生産は地方の雇用増と人口増加に貢献。伊藤林業では、社長の孫が入社し、
後継者を確保。
○需要が増え 2 交代で設備が稼働すると、トラブルが起こった場合の回復時間が問題。ま
た、加工時に品質の問題があっても十分に判定できず、乾燥工程など後工程での不具合の
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顕在化があって、品質の良い製品を安定して大量に生産するための体制の構築が課題。
○20 年度は、現体制でのボトルネックの解消と不良品が出ない体制、安定操業体制構築を
目指し、まずは素材投入量 120 ㎥/日を目標。また、
「梁桁材」などの新たな商品開発、関東、
関西での現地工務店と連携による住宅建設に取組む。
四国地域(四国中東部地域)
(株)愛媛地域総合研究所
(住友林業フォレストサービス株式会社)
○四国中東部地域の特徴は、製材メーカー主導でないことと大量かつ安定的な需要者がい
ること、そして素材集荷仕組みの構築を第一義と考えていること。
○19 年度の目標は、新しい素材集荷のプログラムの実行、保続可能な林業経営の実践、新
商品の流通販売スタートの 3 点。新商品は原料の安定供給と品質の問題で取り組みが少し
停滞。
○四国の東南部は、素材生産量が 100 万㎥ぐらいのわりには県森連、森林組合の共販所、
民間の市場等の市場が多い。また製材工場は過去 5 年間減少しているが、1 工場当たりの出
力数は増加傾向で 1 工場当たりの需要量は確実に増加。この中で新しい販売機能をもった
集荷拠点をつくることにした。
○中間土場では、簡易な仕分と大口の取引主体の仕分けを実施、出荷者に対して事前に買
取価格を提示、直と小曲は同じ仕分で仕分を簡単にする、一つの椪は大体トレーラー2~3
杯ぐらい、それから需要者には安定供給を約束するということで実施。
○また、スギ 50 年生の 6ha の皆伐で、合板優先、3m 用材優先、元玉合板のそれぞれ造材
を試算。元玉合板の造材の場合が造材歩留も高く、販売額も多い。利用材積を増やして収
入を増やす工夫があってもよい。
○中間土場は、最初は合板用丸太の集荷のために作ったが、出荷者から A 材も引き取って
欲しいとの要望があり、そのうちパルプ材もとエスカレートしてきた。この仕組みでの実
施で、流通の簡単な見直しで原木の流れが変わることは分かったが、地域の素材生産量が
増えることにはならなかった。原木市場に流れていたものがただ中間土場に流れてきただ
け。
○造林未済地対策として低コスト造林に取組んだ。伐跡地の 7 割だけを植栽、残りは広葉
樹林へ誘導。植栽は 1,500 本植えで、大苗を買って、支柱のかわりにヘキサチューブを立
てた。これで下刈りを省略できる。高知県では 1,500 本植栽が補助対象にならないのが悩
みの種。
○20 年度は、丸太が集まる仕組みは分かったので、今度は素材生産を増やす仕組みを考え
る。団地化、長期施業委託、林地の流動化あるいは金融商品的な発想など、ロットをまと
める仕組みが必要。
○また、所有者の伐採の促進手法が民間主導でできないか、森林組合の足りない部分の補
完を考える。地域の核になる素材生産事業体にコスト意識を根付かせる、力からを出し切
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ってもらうことに取組む。
岡山地域
三菱 UFJ リサーチ&コンサルテイング株式会社
○岡山地域の概況は、面積ベースでヒノキの方が圧倒的に多い。台風被害の災害復旧が 19
年度まで、早く処理が終わって素材生産の方をやってほしいと思っている。また直前に森
林組合の広域合併があって、新しい事業を進めていくのに懸念が多い。
○流通については、原木流通量が大体 96%が市場経由。市場を使わない直送と市場経由の
直送の共存ということで、少し方針転換。それに伴い原木市場の参画を促している。
○製材については、院庄林業の取扱い樹種がヒノキ 95%、そして院庄林業の強力な販売チ
ャンネルがある。こういう強みを生かしながらトップランナー方式でやっていく。
○岡山高次木材加工協同組合の施設が、この3月に竣工、稼動が始まる。中小の製材工場
のグリーン材をここで加工して付加価値を高め、院庄林業の販売チャンネルを使って販売。
○スギの取り扱いをどうするか、B・C 材の取り扱いをどうするかが問題。新生産の場合、
A 材だが B・C 材がはけないと全体としての素材生産量が増えていかない。
○データベース事業は、森林組合の営業活動に一環として考え、とにかく説明会の開催を。
森林所有者は自分の山の状態を知りたいというニーズが大きい。データベースの登録公開
はこの 3 月から。50ha 程度を登録。
○造林のコストダウンのため、前田林業がコンテナ苗による造林費の低減に取組む。19 年
度は種を植えたが、この結果は未だでていない。20 年度以降、コンテナ苗を植栽する。
○流通コストダウンのため、前田林業が山での仕分と電子端末を使用した仕分及び輸送ト
ラックの大型化によるコストダウンの調査を実施。この仕分コストが 1,200 円/㎥までで済
んでいる。
(株)戸川木材が造材時におけるマーキング仕分けを実施。仕分造材と検知コス
トで 800 円/㎥ぐらい。山土場直送で大体 2,600 円から 2,800 円のコストダウンができるめ
ぼしがついた。
○院庄林業のヒノキの柱材の受け入れが 19 年度始まった。ヒノキの協定取引開始で 1 ヶ月
間の価格協定で実施。また、国有林のシステム販売を落札。山土場直送が国有林を含めて
2,700 ㎥。
○今後の課題は、データベース事業の推進、協定量の拡大と価格協定の長期協定化、革新
的施業成果の地域への波及、スギ材、B 材、C 材のシステム内流通。
奥久慈八溝/中日本圏域
株式会社山田事務所
(奥久慈八溝)
○奥久慈八溝地域は、福島県と茨城県の二つの県にまたがっている。地域内の市場は奥久
慈木材流通センター、茨城県森連大宮共販所の二つで、年間取扱量は全部で 10 万㎥か 11
万㎥。買い方に(株)トーセン、協和木材(株)
、渡辺製材(株)の大手がいて、流域内原
木市場からの素材原木の供給では不足。
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○協和木材の工場は、3 千坪で日本で一番大きい。ここで 2 交代・フル操業で 12 万㎥を年
間消費。需要が停滞している今も 2 交代で順調に動いている。
○協和木材は、大規模森林所有者と周辺の林家から間伐材を立木購入し、協栄会が伐採・
搬出を実施。自分の伐採の仕組みの中で製材をしていくという形を 20 年かかってつくった。
○林野庁の広報誌に載っているが、50 年生スギ人工林面積 10,000ha を 10 年サイクルで毎
年 1,000ha の間伐で 7 万 m3 の素材原木を供給し、間伐後 10 年間で元の蓄積まで戻ると
いう「間伐による持続的な素材安定供給システム」ができるような典型的な山は極めて少
ないことが調査で分かった。
○また、製材工場の立場でみて利用できる山というのは大体 50~60%しかない。あとはチ
ップとか合板工場向け。B 材が出た場合、協和木材が商流の荷受になり、石巻の合板工場に
今現在、大体 600 ㎥/月入れている。20 年度は 1,000 ㎥/月を超えるんではないか。地域の
中小の素材生産業者から物流で送ってもらい、商流は手立てをしていく。協和木材(株)
が地域で 15 万㎥も使うとなると、地域全体のことを考えてもらうことが大事ということで
お願いしている。
○協和木材では、山側で営業する者が 7 名、プレカット工場を含め営業する者が 8 名いる。
営業と製造部門の社員研修、山林部社員の現場研修を実施。
(中日本圏域)
○中日本圏域は、三重県、愛知県、岐阜県のまたがっており、製材工場は西村木材店の 1
社。
○岐阜県は、岐阜県森連が中心になってツケ売りで供給。システム販売という名前で 4 年
前ぐらいから実施している。地元では 6 万㎥しか消費できないので、余った分をシステム
販売で特定の工場に売る仕組み。現在、スギ並材は飛騨高山森林組合と親和木材工業に、
ヒノキ並材を西村木材店へ供給。
○愛知県は、愛知県森連のホルツ三河がツケ売りで供給。ホルツ三河が商流を担当し、津
具森林組合、豊田森林組合、新城市森林組合の山元から直送で西村木材店へ供給。22 年度
には 6,000 ㎥の予定。また、津具森林組合の森林施業現場で列状間伐等の現場研修、新城
市森林組合で地域の森林林整備の研修を実施。
○三重県は、吉田本家、山一企業、速水林業、田中林業等大規模森林所有者からスタート
し、それから松坂飯南森林組合が動き、それで三重県森連が動くというようなことでやっ
ている。県内の森林組合員への新生産システム事業の説明会を行っているが、実は意外と
末端までは理解されていない。いろいろ話をする機会をつくっている。
○西村木材店は、ヒノキ柱角、土台角専門工場だが、販売についていろいろ工夫していろ
いろなものをマーケットに置いている。OEM 生産で、飛騨高山森林組合製材工場、三重県
の通柱専門工場、ウッドピア松坂流通検査協同組合の商流と技術支援を行い、大量需要家
のニーズに対応。また通柱、スギ小屋組材、スギ小屋梁桁材等の新しい仕様へも対応。
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○木材を取り巻く環境が変わった。A 材と B・C 材があるが、A 材は新生産の場合、大量に
消費する製材工場で大量に消費する住宅関係者に供給する仕組み。その考え方は B 材、C
材についても共通に起きている。山からの出材、A・B・C 材を効率的に配分していけば、
相当事業的には山元に返す余裕が出てくる。
○協和木材が 12 万㎥、西村木材店が 8 万㎥の原木を消費するという時、安定供給は可能か
ということで山の状況を調査。利用間伐を繰り返しで、循環的に使用できる林分は 60%ぐ
らいで、大体 40%ぐらいは間伐が十分行われていない不良林分という調査結果が出た。普
通、間伐は劣勢木、副林木を伐採して径級分布の集中化を促進するということだが、列状
間伐では残存木の径級分布は変わらないということを問題視したい。
秋田
秋田県立大学木材高度加工研究所
○秋田地域の場合、森林所有者という形では森林組合が県下の 12 森林組合、素材生産者が
県森連の傘下の 12 森林組合、県素生連の傘下の 4 事業体、協同組合、なによりも加工事業
体が 10 社入っている。複数の事業体の方が、時には仲間であり、時には競争相手だったと
ころが一緒に事業を推進していこうというのが一つの特徴。
○秋田地域の将来に向けた戦略、短期のアクションプランと中長期に向けての戦略性を考
えていくため、アミタ持続可能経済研究所の力を借りて、原木需給、製材流通の実態調査
等を実施。
○データベースは、県森連において運営・管理。18 年度の 2 森林組合実績で 100ha の情報
があり、それを情報公開。19 年度は 250ha を調査済みで、随時開示。
施業集約化供給情報集積事業でデータベースのようなものを作ろうとしている。秋田で
は両方の事業をやっている森林組合がある。別々のデータベースを立ち上げているようで
は駄目で、工夫が必要。
○担い手モデル事業は、白神森林組合で実施。20 年度以降の手を挙げているところがなく、
一生懸命に掘り起し中。
○革新的取組事業は、森林整備が3件。白神森林組合が「傾斜地に応じた最適な素材生産
(列状間伐)システム」
、鹿角森林組合が「高密度路網を利用した高性能林業機械による定
性間伐の実施と新規植栽後の保育管理提言を目指した植栽方法の確立」
、山一林業株式会社
が「高性能林業機械と残存木防護具による列状間伐後の定性間伐」を実施。現地検討会で
は、列状間伐をしたら OK みたいな非常に安直な考えではなく、きちんとしたストーリー
を森林に対して持たないと駄目だと言っているが、なかなか共有できない。
○加工施設の整備は、19 年度沓澤製材所が製材ラインの整備・調整、乾燥機の導入を実施。
また、秋田製材協同組合が 20 年度の施設整備に向けての経営診断を実施。
○課題としては、内的なものは、素材の確保・流通の最適化でログソーターを利用したシ
ステムの構築。協定量の確保では、基本となる協定書(例)の作成・提示。また、相互信頼関
係の構築で、商売あるいは原木をやり取りする間柄での透明性の向上、数値化を徹底。さ
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らに事業の速効性の確保では、トップダウン方式(キーパーソンの明確化)を導入。中・
長期的視野を持った戦略をコンサル+秋田県で総合的な戦略の策定。
○外的なものは、国有林のシステム販売材の確保。システム販売材には B 材、C 材が含ま
れる。これらを扱える他の製材業者・他業種(合板等)との協調的な関係をつくっていく
仕掛けの構築。
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