介護サービス事業者における高齢者虐待防止について

講義2及び演習
介護サービス事業者における
高齢者虐待防止について
(公財)東京都福祉保健財団
高齢者権利擁護支援センター
センター長 川端伸子
1
本講義の流れ
高齢者虐待の実態
 高齢者虐待のとらえ方(演習)
 「外鍵」について(演習)
 「もしも起こったら?」に備える(演習)
 高齢者虐待防止に向けた取り組み

2
高齢者虐待の実態
3
「養介護施設・事業所」と「従事者等」の範囲
養介護施設
養介護事業
老人福祉法
による規定
•老人福祉施設
•有料老人ホーム
•老人居宅生活支援事業
介護保険法
による規定
•介護老人福祉施設
•介護老人保健施設
•介護療養型医療施設
•地域密着型介護老人
福祉施設
•地域包括支援センター
•居宅サービス事業
•地域密着型サービス事業
•居宅介護支援事業
•介護予防サービス事業
•地域密着型介護予防サービス
事業
•予防介護支援事業
養介護施設
従事者等
「養介護施設」
または「養介
護事業」の業
務に従事する
者
(出典:厚生労働省老健局『市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について』,2006)
4
痛がるイボ押して口開けさせる
・・・グループホームでの虐待認定

入所者に対する虐待が行われている可能性がある
として、長崎市内の認知症対応型共同生活介護施
設が長崎市の特別監査を受けた問題で、・・・市は、
40代と20代の男性職員が認知症の女性入所者に
食事をさせる際、耳のイボを押して痛みで口を開け
させていたことや、40代の職員が別の入所者2人
の身体介助の際に、衣服の襟を強く引っ張って体を
引き起こしていたことなどを確認、いずれも「虐待」
行為に当たると判断した。 ⇒その後「暴行罪」
平成23年9月15日 長崎新聞
5
「冗談が通じる間柄だと思っていた」


60代の女性職員が、ベッドに寝ていた80代(当時)
の男性入所者に「昔、悪いことばかりしていたけん。
見てんしゃい、こがん体になって」と言い、衣服を首
までめくり上げた・・・。
町は入所者と特別養護老人ホーム側への聞き取り
やアンケート調査から心理的虐待があったと認定。
女性職員は「昔からの知り合いで冗談が通じる間柄
だと思っていた」と話したという。
平成27年10月佐賀新聞より
6
大阪市の「高齢者向け賃貸住宅」での虐待

大阪市が、介護スタッフが常駐し金銭出納管
理等のサービスも提供していた西成区にある
高齢者向け賃貸住宅に対して、改善指導を行
った。(平成25年12月24日報道発表より)
 虐待があったと判断したもの42名(65歳以上37名
65歳未満5名)
分離・保護 10件(老人ホームへの措置入所7名、入院
中で退院後は施設入所が必要と判断3名)
 成年後見市長審判請求 11件
 社会福祉協議会日常生活自立支援事業利用 16件
 ケアプラン見直し等のケアマネジャーとの協議 11件

7
 経済的虐待・・・36件「明確な理由がないにもかか
わらず不当に引き出した事実」をもって金銭搾取を
判断

金銭管理担当者が、上司の指示により入居者36名の
口座から7,690,000円を引き出し、当該出金状況が記
載された通帳を破棄し、各入居者の金銭出納簿にも記
載せず、現金を紙袋に入れて持ち歩いていた。市の調
査において、出金した金銭の使途を尋ねても十分な説
明が得られなかったことから、不適切な出金と認定し、
本市の指導により入居者各人の口座に同額を返還させ
た。
 身体的虐待・・・1件

入居者1名を居室内に閉じ込め行動制限を行っていた。
内側からドアを開けることができない状況下で入居者1
名を居室内に閉じ込めていた。
8
 ネグレクト・・・12件
パンフレットやホームページで「24時間介護スタッフ常駐
」と広告し、要介護度が高い高齢者を受け入れていたに
もかかわらず、12名の入居者について十分な世話がな
されていなかった。
 各居室には壁にインターホンが設置され「ナースコール」
と称しているが、寝たきり状態の入居者は手が届かず助
けを求めることができない状態に置かれていた。
 おむつが汚れた状態で放置、爪が伸び放題、室内の不
衛生、シーツの不衛生、異臭など。



高齢者虐待防止法、障害者虐待防止法に基づいて、
改善指導を行われた。
虐待の判断について、事業所名、代表取締役名を含
めて報道発表。
9
悪質な虐待

「住宅」+ケアマネジャー、ヘルパー常駐
 生活保護、高い医療依存、身寄りがいない、認知症
 「金銭預かり」と限度額いっぱいの同サービス
 経済的虐待、放棄放任、心理的虐待
 身体拘束

現在は、未届有料老人ホームとして虐待対応されてい
るとともに、ケアマネジャー、ヘルパーによる虐待とし
ても対応されている。
10
報道されている虐待事案での対応
傾向

虐待認定 + 行政による処分
 「人格尊重義務」はすべての介護保険施設・事業所
に対して課せられており、「人格尊重義務違反」とし
ての処分を課す自治体が出始めている

虐待行為だけでなく、専門職としての責任や管
理責任を問う対応
 虐待行為の放置を「職務を著しく怠る『放棄・放任』」
ととらえる事案が出ている
11
東京都における養介護施設従事者等虐待の状況(1)
年度
平成18年度
平成19年度
平成20年度
平成21年度
高齢者虐待が認
められた件数
4件
3件
5件
6件
• 介護老人福祉施設
3件
• 介護老人福祉施設
2件
• 介護老人福祉施設
1件
• 介護老人福祉施設
1件
• 認知症対応型
共同生活介護 1件
• 有料老人ホーム 1件
• 認知症対応型
共同生活介護 2件
• 介護老人保健施設
1件
• 地域密着型介護老人
福祉施設 1件
• 認知症対応型
共同生活介護 2件
• 特定施設入居者生活
介護、介護予防特定
入居者生活介護 1件
• 特定施設入居者
生活介護 1件
施設・事業所の
類型
• 小規模多機能型
居宅介護 1件
•身体的虐待 3件
•心理的虐待 1件
虐待の種別類型
※1
•身体的虐待 2件
•心理的虐待 1件
•身体的虐待 1件
•心理的虐待 2件
•身体・心理的虐待 2件
•身体的虐待 4件
•心理的虐待 1件
•身体・心理的虐待 2件
「高齢者虐待の防止・高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」第25条に基づく、東京都における養介護施設従事者等による高齢者
虐待の状況の公表」を基に作成 ※1施設において複数の被虐待高齢者がいる場合、虐待の種別も異なる事例もあり、施設数と一致しない
12
東京都における養介護施設従事者等虐待の状況(2)
平成22年度
平成23年度
平成24年度
平成25年度
10件
17件
18件
23件
• 介護老人福祉施設
3件
• 指定介護老人福祉施設
5件
• 指定介護老人福祉施設
8件
• 指定介護老人福祉施設
10件
• 介護老人保健施設
2件
• 介護老人保健施設
1件
• 介護老人保健施設
1件
• 認知症対応型
共同生活介護 4件
• 認知症対応型
共同生活介護 1件
• 介護療養型医療施設
1件
• 認知症対応型
共同生活介護 1件
• 小規模多機能型
居宅介護 1件
• 特定施設入居者
生活介護 2件
• 認知症対応型
共同生活介護 3件
• 有料老人ホーム 2件
• 訪問介護 2件
• 通所介護 2件
• 通所介護 3件
• 短期入所 1件
• 有料老人ホーム 2件
• 通所介護 1件
• 特定施設入居者生活
介護 3件
• 特定施設入居者生活介護、 • 特定施設入居者
介護予防特定入居者生活
生活介護 3件
介護 4件
平成26年度
30件
• 介護老人福祉施設
10件
• 介護老人保健施設
4件
• 認知症対応型
共同生活介護 2件
• (介護付き)有料
老人ホーム 7件
• 居宅介護支援事業所
1件
• 訪問介護事業所 2件
• 訪問看護ステーション
1件
• 通所介護 1件
• 短期入所 1件
• 無届有料老人ホーム
1件
• 通所介護 1件
• サービス付き
高齢者向け住宅 1件
•身体的虐待 7件
•心理的虐待 5件
•放棄放任 2件
•身体的虐待 14件
•放棄放任 4件
•心理的虐待 5件
•性的虐待 1件
•身体的虐待 11件
•放棄放任 6件
•心理的虐待 10件
•経済的虐待 2件
•身体的虐待 15件
•放棄放任 6件
•心理的虐待 10件
•経済的虐待 3件
•性的虐待 2件
•身体的虐待 22件
•放棄放任 4件
•心理的虐待 15件
•経済的虐待 1件
•性的虐待 2件
「高齢者虐待の防止・高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」第25条に基づく、東京都における養介護施設従事者等による高齢者虐待の状況の
公表」を基に作成 ※1施設において複数の被虐待高齢者がいる場合、虐待の種別も異なる事例もあり、施設数と一致しない
13
高齢者虐待のとらえ方(演習)
14
15
①サービス提供中、利用者がケアに抵抗してこち
らの腕をギュッとつかんできたので、「そんな
ことばっかりしてると、家族に見放されるよ!」
と怒鳴った。
 これは高齢者虐待にあたると思いますか?
あたるとすれば、虐待の種別は?
 なぜ、起こったのでしょうか?どのように
したら防止できると思いますか?
16
②目を離した隙に利用者が転倒していたので、全
身状態を確認した。額が赤くなっていたが髪の
毛に隠れ目立たない場所だったので、特に報告
はせずそのままにしておいた。
 これは高齢者虐待にあたると思いますか?
あたるとすれば、虐待の種別は?
 なぜ、起こったのでしょうか?どのようにし
たら防止できると思いますか?
17
③最近元気がない利用者Aさんを元気づけよう
と思い、「でべそさ~ん」と呼びながらAさん
のおへそを押したところ、Aさんが嫌がった。
 これは高齢者虐待にあたると思いますか?
あたるとすれば、虐待の種別は?
 なぜ、起こったのでしょうか?どのように
したら防止できると思いますか?
18
④利用者家族に「日中寝ていると夜眠れなくなる
ので、太ももをつねったり、頬を叩いたりして
起こしてください」と言われたので、利用者を
叩いたりつねったりして、起こしている。
 これは高齢者虐待にあたると思いますか?
あたるとすれば、虐待の種別は?
 なぜ、起こったのでしょうか?どのように
したら防止できると思いますか?
19
虐待防止のためには
個人の意識改革と
組織的運営の見直しが必要
20
「不適切なケア」を底辺とする「高齢者虐待」の概念図
顕在化した虐待
意図的虐待
非意図的虐待
グレーゾーン
「緊急やむを得ない」
場合以外の身体拘束
不適切なケア
「高齢者虐待を考える」養介護施設従事者等による高齢者虐待防止のための事例集
(仙台・東京・大府)センターより)
(認知症介護研究・研修
「割れ窓理論」 犯罪学上の理論。割れた窓をそのままにした建物は、次々に窓ガラスを割られ、周囲に軽
犯罪が増え、重犯罪も増えていくというもの。
「不適切な行為」「反社会的行為」をそのままにすると、モラルの低下は拡大していくと考えることが必要。21
施設・事業所として知っておきたいこと

高齢者虐待防止法20条によって、個人ではなく、施
設・事業所に下記の責務が課せられている
 研修の実施
 苦情対応体制の整備
 その他の養介護施設従事者等による高齢者虐待防止の
ための措置

BPSD(特に介護への抵抗、攻撃的言動)が契機に
なり易く、個別ケアや認知症ケアについてのスキル
アップが鍵となる
22
21
厚生労働省の通知が示していること①
平成27年11月13日老発1113第1号
養介護施設従事者等による高齢者虐待の再発防止及び有料老人ホームに対
する指導の徹底等について(通知)

高齢者虐待の未然防止
①養介護施設等が自ら企画した研修を定期的に実施すること
②苦情処理体制が施設長等の責任の下、運用されること
③メンタルヘルスに配慮した職員面談等を組織的に対応すること
④業務管理体制を常に自主的に点検し、必要に応じ、体制の見
直しや運用の改善に努めること
23
厚生労働省の通知が示していること②
平成27年11月13日老指発1113第1号(指導監査担当課長宛)
介護保険施設等における高齢者虐待等に対する指導・監査等の実施について

1.高齢者虐待防止等に重点を置いた機動的な指導監査の実施
について
事前通告なしの監査や実施指導等の実施等、現場の状況に応
じた柔軟な対応を求めている
2.関連事業所も含めた重点的な指導・監査の実施について
高齢者虐待事案等問題のあった事業所に関連する事業所への
優先的な指導・監査、集団指導での要因情報の共有
3.自己点検シート等の活用について
4.業務管理体制の確認検査における事業者の虐待防止の取り
組みの確認について
24
「外鍵」について(演習)
25
ご自身の経験から考えてみましょう
大人になって誰かに縛り付けられて、身動き
が取れなくなったことはありますか?
 どこかに閉じ込められたことは?


そういう行為を誰かからされたら、どうします
か?
 監禁とは:本人の意思を無視し、一定期間、特定
の場所に閉じ込めること。
26
基本的人権の一つ「人身の自由」

憲法第18条(人身の自由)
 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。

憲法第31条(適正手続)
 何人も、法律の定める手続によらなければ、その
生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰
を科せられない。

身体拘束は第18条を侵す行為
 「法律の定める手続き」が必要
27
本人(79歳女性、アルツハイマー型認知症、ADL
自立、要介護2、デイサービスを週1回利用)は、同
居の次男(56歳、最近、経営していた工場をたたみ
無職になった)から介護を受けています。
 次男は預金を切り崩して生活していましたが、仕事を
探すために外出するようになりました。

次男の外出時に本人が一人歩きをし、警察に保護され
ることが、一週間の間に2度起こりました。
 今は、部屋の外から扉に南京錠で施錠、窓の外から板
を打ちつけた状態で、部屋を真っ暗にして外出してい
ます。
 ケアマネジャーは、デイサービスを増やすことを勧め
ましたが、「経済的に無理」と言います。閉じ込めら
れた後にたまたま訪問したところ、本人の顔には涙の
あとがありました。

28
 これは身体拘束に該当すると思いますか?
 気になること、感じることを話し合ってみま
しょう。
29
身体拘束の例 ポイントは行動の自由を制限しているかどうか?
①徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
②転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
③自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
④点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
⑤点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないよう
に、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
⑥車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や
腰ベルト、車いすテーブルをつける。
⑦立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
⑧脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
⑨他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
⑩行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
⑪自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
出典:「身体拘束ゼロへの手引き」(平成13 年3 月:厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」発行)
※部屋や家の外側から鍵をかけ、中から出られないようする所謂「外鍵」も該当する
30
 このままだと、本人にどのようなことが起こる
と思いますか?
 次男に「外鍵は身体拘束、虐待に該当する」と
伝えると、どのように感じるでしょうか?何が
起こると思いますか?
31
 現在の状況を解消していくために、どのような
ポイントを押さえたいですか?どのような支援
が考えられますか?
32
身体拘束と高齢者虐待との関係

「緊急やむを得ない場合」以外の身体拘束は、高齢者虐待に 該
当する。(養護者による虐待、養介護施設従事者等による虐待、ど
ちらも考えられ得る)
「緊急やむを得ない場合」とされる例外の3要件
1)切迫性
利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が
著しく高いこと
2)非代替性
3)一時性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること
上記に加え、適正手続きが必要
*個人ではなくチームでの判断
*本人や家族への説明(目的、方法、時間帯、期間などできるだけ詳しい説明が必要)
→「家族の同意」があれば、例外3要件が必要ないということはないので注意が必要
*観察と再検討による定期的再評価(尊厳への配慮)⇒必要なくなれば、速やかに解除
*記録の義務付け (2年間保存)
33
ケガの予防や認知症の行動障害の防止策と思われがちな「身体拘束」だが、問題となってい
る行動の目的や意味が理解されず、適切な介護や支援が行われないことで、高齢者本人の状
態はむしろ悪化し、心身に重大な影響が生じることが明らかになっている
・ベルト、柵、紐等による行動制限
・つなぎ服やミトン型手袋の使用
・立ち上がりを妨げる椅子の使用
・向精神薬などの過剰服用
・鍵付きの居室などへの隔離
筋力低下、関節の拘縮、心肺機能の低下
などを招く
身体機能
の低下
身体拘束
リスク
の増大
悪循環
周辺症状
の増悪
周辺症状
の増悪
リスク
の増大
さらなる
身体拘束
身体機能
の低下
不安や怒り、屈辱、諦め等から、
・ 認知症の進行や周辺症状の増悪
を招く
・ 意欲が低下し、結果的にADL
の低下を招く
拘束しているが故に、
無理な立ち上がりや、柵の乗
り越えなどにより、重大な事
故が起きる危険も
東京都「高齢者虐待防止と権利擁護」より引用
家族が「何に困っているのか」を具体的に尋ね、どうしたら身体拘束を外して適切なケアができるの
かを、チーム(地域包括支援センターを含むチーム)で考えていく必要がある。家族に「身体拘束は
虐待だ」と伝えることで家族の反発を招きやすいので、どのような伝え方をするかも含めて、地域包
括支援センターに相談を!
34
高齢者にとっての家族

「高齢者」と「家族」は、「成人」と「成人」の関係
 扶養義務と親権の違い

家族が高齢者の意向を無視して、当然のように本
人のことを決めていい【権限】は、法的にはない。
35
契約者は誰か?

介護保険サービスの契約の多くが、家族によって行
われているようにみえる。

しかし、被保険者が高齢者本人であるので、あくま
でもサービス利用の契約者は「本人」である。
 家族はサービス利用の契約者ではない。家族が行ってい
るのは、「代筆」「代行」。

本人にとっての「尊厳の保持」、そのための家族支
援(本人にとって良いことをしてくれる人、本人の大
切な人への支援)という視点での関わりが重要。
36
考えておきたいこと①

「外鍵」の状態の細かい確認
 いつから?どのくらいの期間・時間?どのように?何のため
に?何をきっかけに始めた?

本人の心身の状態の確認
 なぜ出ていくのか?どのような時に出ていくのか?(きっか
け)、どこに行こうとしているのか?
 何時位に、どのくらいの頻度で出ていくのか?
 そもそも、本当に外に出ていくのか?
⇒ここから他の解決方法・手段を考えてみる
「非代替性」の検討
⇒「一人歩き」のリスクが高い場合の見守りや
捜索方法の検討
37
考えておきたいこと②

外鍵で閉じ込められ続けることでの「緊急性」の見立て
 地震・火事の時に、本人を助けられるかの確認
 本人の思いの確認
 おびえ・混乱の確認
 家族が帰ってきた時の本人の状況、変化の確認

緊急性が高い場合の保護等の検討
 場合により、ショートステイや老人保健施設への一時的入所
や入院、「やむを得ない事由による措置」による保護・サービ
ス導入の検討が必要な場合もある
 処方内容の見直しや服薬管理により、混乱が治まる場合も
ある

医療による過剰な調整にならないように注意
38
考えておきたいこと③

外鍵をしないことによる「切迫性」を見立てる
 本人の「一人歩き」が及ぼす本人への危険性の見立て
 家族の思いの確認



外鍵に頼りたくなるような切迫した思い、介護状態(経済状態や
孤立した介護)の見立て
介護者の自殺、介護殺人、介護心中のリスク
たとえ、せざるを得ない時でも「一時性」を担保
 本来「絶対ダメなこと」と、共有する
 一日のうちでの一時性(必要最小限の時間)
 必ず解消することを目指す(これから一生し続けるわけで
はない)
39
家族の思いを一度は受容しなければ、外鍵
の解消について一緒に話し合えないこともあ
る(「ダメ」と言われることで、今までの介護を
全否定される思いをする家族もいる)
 家族の思いを受容し、時間をかけて外鍵の解
消について話し合っている「時間の余裕」がな
いほど、本人が混乱しておびえている事例も
ある。
 そもそも、「外鍵」等の身体拘束によって自由
を奪われることは、本人の重大な人権侵害で
あり、絶大なる悪影響を与えるもの。

40
その状態に気づき得る介護サービス事業者
が見て見ぬふりをすることで、権利侵害は継
続し、本人の状態は悪化する。
 ただし、「だったら、契約を打ち切るぞ」と家族
に言われてしまうことは、結果的に本人のた
めにならない。
 介護サービス事業者だけで家族と話し合おう
とするのではなく、まずは地域包括支援セン
ターや区市町村に相談し、地域包括支援セ
ンター等を交えて、どのようなアプローチが
必要か、解消までのプロセスのあり方から検
討することが必要。

41
「もしも起こったら?」に備える(演習)
42
 ホームヘルパー(入職2年目)が単身独居の利
用者Aさん( 98歳女性・要介護3・認知症、
単身独居)宅を訪問し、生活支援中に着脱介助
を行っていましたが、利用者が大きな声をあげ
暴れることに腹を立て、顔を叩いてしまいまし
た。
 利用者Aさんは、午後に来た訪問看護師に「前
に来た人に、はたかれた」と話しました。
 確かに、左ほほに小さなミミズバレが出来てい
ましたが、医療機関の受診が必要な怪我ではあ
りませんでした。
参考:『市町村・都道府県ハンドブック 養介護施設従事者等による高齢者虐待
の防止と対応』(社)東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター、p.96~
97「虐待発生時の施設の対応と改善の取り組み」を参考に改変
43
 状況を不審に感じた訪問看護師は、この件に
ついてケアマネジャーに連絡、ケアマネジャ
ーからヘルパー事業所に連絡が入り、管理者
(サービス提供責任者)が事態を把握しまし
た。
あなたの事業所で、このように「虐待」
と思われる事態が起こったことを知らさ
れた場合、ここで何をしますか?
44
45
利用者の不安解消と安全確保
•
二次被害の防止
–
–
•
心身の状態の確認
–
•
解離状態・パワレス状態への理解
「そんなことを言って恥ずかしくないの?」「そんなことが起
こるわけない」は禁句
複数人、複数職種での状態確認
記録
–
本人の状態や言葉をできるだけそのまま残す
46
「パワレスの状態」
差別
競争
比較
【被害者の心理】
恐怖と不安
個性
美
可能性
⇒安心ではない
感性
生命力
無力感
⇒自信がない
能力
無視
選択肢がない
⇒自由でない
過剰な期待
暴力
二次被害に注意!
※森田ゆり『エンパワメントと人権』(2005)を参考に作成
 管理者はすぐに、ケアマネジャーと共に利用
者宅を訪問し、利用者の心身の状態の確認と
聴き取りを行いました。
 その中で、利用者の心身状態に特に異変はな
いこと、受診の必要性はないということが確
認されました。
 利用者は重度の認知症であったこともあり、
訪問した際には、本人からこの件についての
具体的な聴き取りはできませんでした。
48
47
 管理者は、改めてホームヘルパーの当該女性
職員を呼び出し事実を聴き取ったところ、
カッとして利用者を叩いたことを認めました。
 着替えさせようとすると、利用者が「痛い痛
い、やだやだやだ」と大声で騒ぎ暴れて、着
脱介助がなかなかさせてもらえないことに腹
が立ったということでした。
もしもご自分がこの事業所の管理者だった
としたら、この後何をしますか?
49
50
職員からの聴き取りの姿勢

虐待を疑われたことで、職員からの信頼を失うので
はないか?職員が辞めてしまうのではないか?
↓

いつも原則に立ち戻る
 尊厳保持、利用者本位の業務と責任
 虐待は法令違反

迅速で適切な対応をとることは利用者を護ること。
最終的には職員を護ることにもつながる
 そのままにすることで人権侵害は拡大する
 甚大な被害が出る前に防止するためには、「すぐに」「しっ
かりと対応する」ことが必要
51
聴き取りの際の注意事項

「誘導質問」とならないように、聴取対象者からの自発的な自
由報告を得る。(「無理やり言わされた」とならないため)
 オープンクエスチョン(自由回答ができる質問)から始める。
 「直近で利用者Aさん宅に訪問した時のことについて、最初
から最後まで全て話してください」





「情報を出さない」→「頬に傷を作ったのはあなたなの?」
「解釈しない」→「カッとして思わず手が出たってことね?」
「コメント、評価しない」→「してはいけないことだって言ってあったで
しょ」
「受容、共感しない」→「大変なのはわかるわ」
できるだけ自発的に話をしてもらう方が、得られる情報が多い統計
データがある。エピソードを話している時に、質問で邪魔をしない。
 最後にクローズドクエスチョン、5W1H質問へ(はい、いいえ
などで回答できる質問へ移行していく)

「あなたがAさんを叩いたの?」は最終手段。
52
自由報告を聴取の仕方(司法面接を参考に)

聴取者は、「言いづらいことは聴かれなければ話さない」という前提
をもつ


例えば、着替えの介助の前にAさんをののしっていたとしても、聴かれなけ
れば話さない。
エピソードをまず「最初から最後まで全部」聴き取り、詳細はそのあと
に聴く
≪誘い掛け質問≫エピソードを時系列で聴き取る
 「頬にみみずばれができたときのことについて、何があったか最初から
最後まで全部話してください」
 ≪時間分割≫「AしてからBまで」というように時間を分割して聴き取る
 「『Aさんの着脱介助をした』と言っていましたが、〇〇してから着脱介助
に入るまでの間のことを全部話してください」



基本的には「虐待を受けたと思われる高齢者を発見した」場合には、
行政に通報して、細かい聞き取りを行政に任せることが大切
犯罪に該当する場合は、警察へも通報
53
事実確認・実態把握

客観的事実の確認⇒最終的には、原因究明
のための調査
 利用者からの聴き取り
 職員からの聴き取り
 医療関係者からの聴き取り
 家族からの聴き取り
 記録の確認
※何が起こったかだけでなく、なぜ起こったかを分
析する情報を集めていくことになる
54
 以下を確認しました。





当該女性職員より「どのように介助をしていた
(しようとしていた)のか」
利用者の記録(ケアプラン、介護計画、介護記録
等)
利用者の日ごろの様子についての聴き取り(他の
ヘルパー等の介助の際も怒鳴ったり暴れたりして
いるのか等を、他のヘルパー等から聴き取る)
当該女性職員の勤務の様子
当該女性職員の書いている記録
55
 これらの調査を踏まえ、介護の稚拙さに腹を立
てて暴れている利用者を、当該女性職員が叩い
てしまった事実があると判断し、事業所の幹部
会議で報告しました。
 会議では以下を決定しました。



当該職員に二度とこのような行為を行わないように
指導すること
速やかに本人・ご家族への説明・謝罪を行うこと
自治体の所管課へ事故報告を提出すること
56
 管理者より利用者本人へ、事実関係の報告と謝
罪を行いました。利用者は内容を理解している
かどうかはわかりませんでしたが、笑顔で「あ
あ、そう。それはそうね」と応えました。
 また、利用者のご家族宅(遠方に在住)へ電話
をかけ、事実関係の報告と謝罪をおこないまし
た(後ほど文書も送りました)。
 ご家族からは「母親はわがままなところがある
から気にしないように」との話があり、「今後
もよろしくお願いします」との話を受けました。
57
本人・家族への説明と謝罪

本人への説明・謝罪
 認知症であったとしても、原則実施
 後見人等がいる場合には、後見人等にも説明し、
謝罪する
家族への説明・謝罪
 今後の方針も説明する

 そのためには原因究明も必要
58
 管理者は、当該女性職員を呼び出し今後はこ
のようなことを繰り返さないように話をしま
した。
 また、自治体に対して、事故報告書を提出し
ました。市からは、事故報告書提出後に電話
での状況確認がありました。
 事業所としてはここで対応が終結したつもり
でした。
59
通報について

保健医療福祉関係者には早期発見努力義務(第5条)

通報義務>守秘義務(第21条)
 通報義務は、業務上の守秘義務、個人情報保護義務等よりも
優先される
 「思われる」で通報できる(証拠、根拠は必要なし)

通報した者を特定させる情報は洩らされない(第23条)

通報等による不利益取り扱いの禁止(第21条7項)



通報等をしたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いを受けない
ただし、虚偽であるもの過失によるものを除く
「高齢者の権利を無視した行為の放置」は、養介護施設従事者等
による放棄放任にあたる可能性がある
60
通報先
•
養護者による高齢者虐待
地域包括支援センター・区市町村
•
養介護施設従事者等による高齢者虐待
その施設・事業所のある区市町村
61
<札幌市の特養「ルミエール」の入所者虐待問題>
介護職員の04年8月の内部告発で表面化した。施
設側は否定したが、札幌市は同12月、処遇に問題
があったとして改善命令を出し、入所者の家族が訴
えた訴訟でも職員の暴行が認定された。施設側は
告発した職員を相手取り名誉棄損訴訟を起こしたが
敗訴。札幌高裁は逆に告発した職員らに違法な嫌
がらせをしたとして、施設側に160万円の支払いを
命じる判決を出している。
(平成23年6月1日毎日新聞より一部修正)
虐待かもしれない・・・という時に
適切に対応することも大切
62
参考判例

施設には
 「虐待の真相を徹底究明する義務」
 「虐待の事実を告げた職員を守る義務」
 「職員が外部に通報した場合でも不利益を課さな
い義務」
の3つの義務がある
(ルミエール虐待2008年札幌高裁判決文より)
63
養介護施設従事者等虐待対応の流れ
①受付・・・区市町村
②事実確認・・・区市町村 区市町村が行う調査に協力
③個別ケース会議・・・区市町村が虐待の有無や改善の
必要性について判断
④事実が確認された場合 区市町村から事業者に対して
指導があり、事業者は虐待解消のための「虐待防止改
善計画」を作成し提出、計画にそって改善し報告
⑤区市町村は都道府県へ報告を行い、都道府県は公表
64
 事業所としては、本件についての自治体等へ
の対応は終結したものと考えていました。
 しかしその後、市から「事故の件について詳
しく話を聴きたい」という連絡があり、市職
員が来訪した際には「高齢者虐待防止法の
『養介護施設従事者等による虐待』に該当す
る可能性があるため、事実確認調査を実施し
たい」ということで協力を依頼されました。
65
養介護施設従事者等による虐待対応の目的

高齢者の権利擁護
 高齢者に対して行われている今現在の権利侵害
から、高齢者を救済しその権利を護ること

虐待の再発防止
 虐待をした職員の個人的問題としてだけとらえる
のではなく、研修体制、利用者対応、運営体制と
いった事業所運営としての問題としてとらえ、虐
待を起こさない体制づくりや、ケアの質の改善を
目的としている
66
自治体による事実確認のための調査

高齢者虐待防止法第24条に基づく事実確認
調査

介護保険法・老人福祉法に基づく実地指導・
監査
67
 市は、事業所で職員からの聴き取りを実施、
さらにさまざまな記録等の確認を行いました。
(利用者宅で利用者の状態確認や聴き取りも
実施していました)
 調査の終了時、市から「事故報告にあがった
件は『養介護施設従事者等による身体的虐
待』に該当していること」「改善すべき点に
ついては、今後改めて伝えること」が告げら
れました。
68
虐待をした職員への対応

虐待をした職員への対応は、基本的に雇用契
約・就業規則に基づいて対応

民事上、刑事上の問題は、その事案ごとに考
える
69
組織運営の見直しによる改善

虐待をした職員個人の問題として処理するの
ではなく、虐待を許してしまった組織的要因を
分析し、取り組んでいく必要がある

区市町村からは、虐待が認められない場合
でも、改善すべき点について提案されること
がある
70
区市町村による報告と都からの公表
虐待の事実がある場合、区市町村より東京都
に報告
 都は、高齢者虐待防止法第25条に基づき公表

 トップページ
> 高齢者> 認知症対策> 養介護施
設従事者等による高齢者虐待の状況 (被虐待者
の属性、虐待の種別、事業者の種別、虐待者の職
種を公表、事業者名・施設名の公表は無い)
 運営上の問題が大きい場合は、都道府県により介
護保険法上の勧告が出されることもある
71
 事実確認調査からしばらく経って、市から、
改めて以下の指摘を受けました。

「事故」として処理されていたものは、「身体的
虐待」に該当していること

今後は、このような事態を防止するために、次の
点について改善に取り組むこと
72
 新人職員が相談しやすい体制を整備すること

当該女性職員が、利用者Aさんへのケアについ
て誰に相談したらいいのか分からずに悩んでい
たことからの指摘でした。
73
 職員が、ケアについて相談することができる
環境を整備すること

「当該女性職員が利用者Aさんとのコミュニ
ケーションをうまくとれていないこと」が、記
録を読めば明らかであるにも関わらず、誰もそ
れをサポートできずに放置していたことが、虐
待を防止できなかったことの要因として指摘さ
れました。
74
 職員全員が倫理や高齢者虐待防止法について
の研修を受けられるようにすること

虐待防止法について詳しくは知らない職員が
事業所の中に多いことが、聴き取りの中で明ら
かになっていました。
75
市からの指摘を受けて、このあ
と、どのように改善に取り組み
ますか?
演習資料(「事例の概要・ワー
クシート(改善計画書)」)を
記入してみましょう。
76
 新任職員が相談しやすい体制

相談タイムの導入


管理者が職員からの相談を受け付ける時間(い
つでも相談は受け付けるが、特に相談専用の時
間)を週に1回1時間程度設け、その時間は必ず
管理者が事業所にいるようにしました。
新任職員は入職後定期的に(初回訪問後、1ヶ月
後、3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、1年後まで)
この相談タイムに来所し、管理者と職員とで話
し合いながらスキルアップできるようにしてい
きました。
77
 ケアについて話し合い、サポートすること
ができる環境の整備

介護記録に管理者への相談・報告欄を追加


サービス担当者会議で話し合ってもらいたい事
項や、管理者に相談したい事項等を書き込める
欄を介護記録に設け、内容に応じて管理者から
職員に適宜連絡をするようにしました。
サービス担当者会議の充実

上記記録や職員からの相談内容により、サービ
ス担当者会議でケアの課題を話し合えるよう、
サービス提供責任者よりサービス担当者会議へ
働きかける。
78
 倫理・高齢者虐待防止法の研修の開催

高齢者虐待防止研修の実施



管理職が高齢者虐待防止法の研修を受講し、
施設内で伝達研修を実施しました。
全職員が受講できるように、同じ内容の研修
を複数回実施しました。
倫理研修(演習)の実施

外部から講師を招き、倫理について考える演
習を実施しました。
79
高齢者虐待・不適切なケアが起きたらどうするか
•速やかな初期対応
利用者の不安解消
→安全安心の回復・権利侵害からの回復 •正確な事実確認
•情報を隠さない
通報(保険者への連絡)
事実確認
→当該職員からの聴き取りと裏付け
組織的な情報共有と対策の検討
本人・家族への説明や謝罪
原因分析と再発防止の取り組み
→個人レベルではなく組織レベルへ
(認知症介護研究・研修(仙台・東京・大府)センター「高齢者虐待を考える」養介護施設従事者等による
高齢者虐待防止のための事例集を参考に一部改変)
80
高齢者虐待防止に向けた取り組み
81
家族
<世帯>
頼れる家族の不在
家族からの虐待
不適切なケアの要求
経済的困窮
本人
<本人>
BPSD等
<保険者>
研修機会の
保険者
提供や集団
指導の不足
従事者
<介護保険のチーム>
情報共有の不足
コミュニケーションの不足
アセスメント不足
チームメンバーの不足(医療連携等)
利用者・家族との不適切な関係
管理者等
<職員個人>
虐待・認知症ケアの
知識や技術の不足
倫理の課題
ストレスマネジメント
<組織>
虐待に関する認識不足
職員を支える体制の不足(研修受講、相談等)
報告・連絡・相談の課題
苦情対応体制の課題
組織としての理念とその共有の課題
82
組織風土の課題
虐待を防止するために
~一人ひとりが取り組むこと~
高齢者虐待とは何かを知る
 認知症ケア等についての知識・技術を高める
 怒りのコントロール

 怒りを意識化し、コントロールする

ストレスマネジメント
 自分なりの充電方法を・・・
 「ストレスケアブック」(山形県福祉人材センター)

倫理観を高める
83
虐待を防止するために
~組織として取り組むこと①~



職員の知識・技術の習得を支援する
 外部の研修に行くことができる体制、報告と共有
高齢者虐待についての認識を共有する
 虐待の芽チェックリスト、セルフチェックリストの活
用、話し合い
職員の働きやすさを支える
 報告・連絡・相談ができる体制、仕組みづくり
 例えば、記録に気になること、相談したいことを
書く欄を設ける等
 一人ひとりとの面接をとおした組織の課題把握 84
虐待を防止するために
~組織として取り組むこと②~

風通しのよい組織づくりを心掛ける
 情報をできるだけ公開する
 他の事業所との交流

苦情対応体制の見直し
 本人・家族からの相談を適切にキャッチし、応える
仕組みづくり
ヒヤリハット・事故報告の分析
 高齢者虐待防止・対応マニュアルの作成

85
虐待を防止するために
~チームとして取り組むこと~

アセスメントに基づく個別ケアの推進
 適切なプランニング
 しっかりとした情報共有、コミュニケーション
 困りごとの共有
適切なチーム編成
 家族との適切な関係構築

※困難な場合には、地域包括支援センターへ
相談を・・・
86
成年後見制度活用による虐待の防止

訪問するサービスにおける不適切ケアの特徴
 家族が望む不適切ケアを提供してしまう
 経済的虐待・不適切ケアをしてしまう
「預かる」ことについては、事業所内でしっかりとしたルー
ルの確認を。
 「もらう」「貸す」「借りる」は厳禁という確認も。


「人権」「高齢者虐待」や「権利擁護」について正
しく理解した上で、成年後見制度の活用の必要
性に気づくことができる力をもつことも大切
87
虐
待
防
止
虐待防止を目的として取組むのではなく、「その人らしい
イキイキとした生活への支援」のプロセスとして虐待防止
をとらえ、組織として取組みを行う。
その人らしいイキイキとした生活への
サポートをするケアの提供
尊厳の保持
高齢者虐待防止に取り組むことは「私たちが『尊厳保持』
を支える専門職である」という誇りを取り戻していくこと
88
参考資料・参考文献




厚生労働省老健局『市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護
者支援について』平成18年4月
厚生労働省 平成18年度~23年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者
に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果
認知症介護研究・研修仙台センター「介護現場のための高齢者虐待防止
教育システム」,2009
認知症介護研究・研修仙台・東京・大府センター「高齢者虐待を考える 養
介護施設従事者等による高齢者虐待防止のための事例集」,2008

東京都『高齢者虐待防止に向けた体制構築のために ―東京都高齢者虐
待対応マニュアル―』平成18年3月

(社)日本社会福祉士会編『市町村・都道府県のための養介護施設従事者
等による高齢者虐待対応の手引き』平成24年3月
89
MEMO
90