性的虐待及び心理的虐待の対応と支援

平成27年度青森県障害者虐待防止・権利擁護研修
性的虐待及び心理的虐待の対応と支援
~性的虐待を中心に~
青森県社会福祉協議会障害者権利擁護センター
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この資料は、8月11日から12日に
かけて、公益社団法人日本発達障
害連盟が実施した「平成27年度厚
生労働省 障害者虐待防止・権利
擁護指導者養成研修」の資料を基
に作成しています。
性的虐待の定義
反応を面白
がってやる
• 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をして
わいせつな行為をさせること。~障害者虐待防止法条文
• 本人が同意していない性的な行為やその強要(表面上
は同意しているように見えても、判断能力のハンディに
付け込んでいる場合があり、本心からの同意かどうか
を見極める必要がある。)
~千葉県障害者虐待対応マニュアル
• 子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る
又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など
~児童虐待防止法についての厚生労働省解説
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性的虐待の状況
• 平成25年度の厚労省による全国調査では、
性的虐待の対応は99件。
全体の3.8%
障害者虐待防止法にもとづく対応状況(平成25年度)
1,116
身体的虐待
99
性的虐待
心理的虐待
558
ネグレクト
333
449
経済的虐待
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性的虐待の状況
• 平成25年度の全国の児童相談所の対応状況で
は、年間1,582件。
全体の2.1%
年々増加
男児の被
害も多い
児童相談所における対応件数(平成25年度)
1,582
24,245
身体的虐待
19,627
28,348
性的虐待
心理的虐待
ネグレクト
• 養育者以外の人からの性的虐待は、「ネグレクト」と
して取り扱われる。
養育監護できる人が
きちんとできていない
とされる
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刑法の強姦と強制わいせつの規定
判断能力が13才以下
の場合は準わいせつ
行為とされる。
姦淫=SEX、性器
挿入を伴う行為
• 刑法第177条(強姦)
暴行又は脅迫を用いて 13歳以上の女子を姦淫し
た者は、強姦の罪とし、2年以上の有期懲役に処す
る。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
確信犯は、刑を軽
くするため、こちら
を選択する
性器をいじる、触る
、性器外への挿入
の場合を含む
• 刑法第176条(強制わいせつ)
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いて
わいせつな行為をした者は、6月以上7年以下の懲
役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな
行為をした者も、同様とする。
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「しあわせなみだ」HPより転載
出典:平成25年度犯罪白書 7
性暴力は身近で起こっているが、
顕在化しづらい
• 性暴力に遭い、被害を届け出る女性は、わずか13.3%というデータがありま
す(法務総合研究所「第3回犯罪被害実態(暗数)調査」より)。 これに当て
はめると、強かんは9,323件、強制わいせつは54,609件、合わせれば
63,932件という大変な数となります。 1日あたりに換算すると、強かん26件、
強制わいせつ150件、合わせて176件です。
• 内閣府3年に1度行っている「男女間における暴力に関する調査」の2011年
度の調査では、女性に、異性から無理矢理性行された経験をたずねたとこ
ろ、「あった」と回答した人は7.7%にのぼっています。そして、性暴力に遭っ
たことを「相談した」のは28.4%にとどまり、「相談しなかった」は67.9%となっ
ています。「警察」に相談したのは、わずか3.7%でした。
• 日本性科学情報センタ-がまとめた「子どもと家族の心と健康」調査報告書
によると、小学6年生までに、6.4人に1人の女性、そして17.4人に1人の男性
が、性虐待に遭っている、という結果が出ています。
「しあわせなみだ」HPより転載
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具体的な事例から
会社から帰ると
母が繰り返し聞
当然、刑事罰が
障害者110番
シャワーを浴び
き、婦人科へ受
生理不順
与えられた
へ相談
るようになる
診
• 20代・軽度脳性麻痺の女性・雇用主から
• 小学生・知的障害の女児・学校の教員から
女児は、上手く伝えることができず、発覚が遅くなった。
• 40代・知的障害の女性・親族から
5歳児程度の判断能力
元旦那の父親が支援を
母子家庭で、生活保護
その関係から、虐待が
を受給している世帯
始まった
していた
の女性
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具体的な事例から
→ 性的虐待は、より密室化されたなかで起きる
(口止めや脅し、虐待に「協力」させる)
→ 心理的虐待や身体的虐待をともなう場合が
多い
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性的虐待をどう捉えるか
• 遊び・添い寝・入浴などの日常行為は?
• 被虐待者の発達的段階及び社会的状況から
明らかに過度の性的刺激となる行為、あるい
は、虐待者が性的満足を得るための行為(意
識、無意識を問わない)
~奥山眞紀子医師による
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性的虐待のサイン 年少児
• 器質的サイン 性器裂傷、膣感染、性病
• 性的な行動化 性的な質問、自慰(自分や他
人の身体の一部を使う、直接性器に手をや
るなど)、他人の性器をさわりがたる、など
• 身体化 頭痛、腹痛、など
• 不安 夜の不安、トイレへの不安、排泄への
不安、夜驚、不眠、衣服を脱ぐ不安、など
• 退行・分離不安・易興奮性 開示以後増加
~奥山眞紀子医師による
性的虐待のサイン 年長児
小学校高学
年、IQ70程度
知的レベルが
高い
• 器質的サイン 妊娠、STD、性器・肛門外傷
• 性的行動化 無分別な性行動、自己破壊的
性行動
• 逃避 家出、徘徊
• 自傷 リストカット、危ない遊び
• 依存 薬物、買い物、過食、その他
• 感情の障害 うつ、自殺企図
~奥山眞紀子医師による
気づきにくい虐待とわかりやすい虐待
はつながっている
異性介助を仕方が
ないと片づける
異性介助が特別な
ことではなくなる
身体を必要以上
に触る、脅して秘
密にさせる・・・
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虐待はいくつも絡み合って起きる
叩く、蹴
る
役立た
ずと罵る
猥褻な行為を
する
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虐待はずっと続き、どんどん悪くなる
小突く、つねる、
ごまかす、必要以
上に顔を近づけ
る・・・・
叩く、馬鹿にする、
着替えの時に胸に
触る・・・・・
殴る、蹴る
猥褻な行為をする
・・・・・
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虐待される側の心理
• 信じてもらえるか?
• 馬鹿にされないか?
• 噂にならないか?
• 話すこと自体が恥ずかしい
性をタブーとする空気
• 話したらどうなってしまうのか?
• 虐待者にバレて更に虐待されないか?
安心できる環境で話して貰うた
めにはどうするか考える。
最近では児童相談所では、「疑い」
の段階で保護をする。
虐待を潜在化させる「内的な障壁」
• 加害者の支配(意識)
家族や介護者への依存、限られた人間関係
支配するために無
力化させる。
• 仕返しの恐れ
無視、嫌がらせ、さらなる虐待
• 虐待の否定と自己責任への転嫁
虐待ではないかもしれない、悪いのは自分と思い込む
• あきらめと無力感
何をしても無駄、誰に言っても仕方がない
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虐待は、個人と社会を蝕む
• 本人、家族への影響
・自尊心の低下(心が削られる→自分を憎む)
・他者への信頼の低下、喪失
(人を信じられなくなる→人を憎む)
・社会への信頼の低下、喪失
(あきらめてしまう、生きる意欲を失う)
・回復には、とても長い時間がかかる
・自分が受けていたのと同じ仕打ちを、大切な人に無意識の
うちにしてしまう(虐待の連鎖、拡散)
• 社会への影響
・障害者の価値を歪めてしまう(差別や偏見の助長)
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「性的虐待」の背景→予防もこの柱で
①ジェンダー(性差)の問題
~社会や文化のなかでの「男性」と「女性」
②異性介助の問題~事業所で、家庭で
過度の刺激、親子
間でも
③職場内のコミュニケーション
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性的虐待を防ぐために
同性介助の原則の確認
プライベートゾーン(水着を着用するときに隠
れる場所)の意識化。同性介助でも、接触に
は配慮が必要
パーソナルスペース
を設ける
「空間」「距離」を尊重する。伝える
団体距離 45㎝以上
社会的距離を保つ
密接距離
45㎝以下
120㎝以下
「手つなぎ」は何のため?
介助行為や声かけの意識化、職場でのふり
かえり
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まとめ
• 「性」は「生」そのもの。
かけがえのないその人を尊重する
• 障害のある人の「性」をタブー視しない
• 不健康な意識や空気が、「性」を歪める
話す時の
バランス
• 答えの見つからないこともある。けれど、考え
続けることが重要
• 性虐待にはチームで取り組む
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