フランスの子育てと働き方

2010.4.18
フランスの子育てと働き方
関西学院大学 西村智
出生率の推移
日本
フランス
出所:社会実情データ図録
フランスの労働力率
子ども1人はほとんど影響がない。
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
子
ど
も
1人
子
ど
も
な
し
(三
子
歳
ど
未
も
満
一
)
人
(3
子
歳
ど
以
も
上
2人
)
(3
歳
子
...
ど
も
2人
(3
子
歳
ど
以
も
上
3人
)
(3
歳
子
...
ど
も
3人
(3
歳
以
上
)
夫
妻
enquête emploi 2007 より作成
日本女性の労働力率(1)
平成21年度労働力調査より作成
18
歳
15
~
17
13
~
14
10
~
12
7~
9歳
4~
6歳
0~
3歳
こ
ど
も
な
し
(2
544
)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
日本女性の労働力率(2)
(25~44歳)
100
80
子ども1人目から大きな影響
60
40
20
0
子どもなし
子ども1人
うち週35時間以上
平成21年度 労働力調査より作成
子ども2人
子ども3人以上
うち週35時間未満
出産とキャリアはトレード・オフ?
仕事も
子どもも
仕事か
子供か
出所:平成17年厚生労働省職業安定所資料
フランスで出生率が回復した理由
(1)積極的な家族政策
人口政策+
ジェンダー政策
3歳~
99%の3歳
児が通う
(2)母親学校(école maternelle)
(3)仕事と家庭の両立
子どもを
持つなら
2人
(4)フランス人の家族に対する価値観
4つの分類は、Dominique Méda and Ariene Phaihé (2008) “Fertility: Is
there a French model?”, The Japanese Journal of Social Security Policy,
Vol.7, No.2, pp.31-40による。
フランスの家族政策(1)
• 19世紀後半、人口減少国力強化のための家族政
策(政府) → 現在でも国民のコンセンサス
• 20世紀初め、企業による家族手当、補償金庫
→これが、現在の(家族手当の支給の実施機関)全
国家族手当金庫(CNAF)の原型
• 80年代、多くの女性が労働市場へ参入、家族政策
(政府)の拡大 (ジェンダー政策の視点から)
• 政策的関心は、人口政策から仕事と家庭の両立へ
と徐々にシフト(母親の自由な選択を妨げない)
フランスの家族政策(2)
子ども2人のケース
(第1子2歳、第2子0歳)
日仏間で年間約59万円の差
神尾真知子(2006)「紹介 フランスの企業と「少子化対策」」『日本労働研究雑誌』No.553.
フランスの家族政策(3)
• 家族政策の新たな動き
2003年の家族会議(現在のHaute conseil de la
famille)は、民間部門への保育所プランを打ち出す。
これをうけて、
2004年~
子ども契約 contrat enfance jeunesse
保育施設を設置、あるいは外の保育施設で受け入れ枠
を確保した企業、自治体への助成。負担の55%を助成。
これにより、2006から2年間で4000件の契約が交わされた。
家族政策法人税税額控除 Crédit d’impôt famille
企業が従業員のために行った家族政策経費(年間)の50%(2009)を控
除。ただし、経費として認められる項目が決められている。
フランスの家族政策(4)
全国家族手当金庫の仕組み
目標・運営協定
拠出
個人
運営契約
資金提供
議会
意見
企業
全国家族手当金庫(CNAF)
政府
社会保障財政法
拠出(賃金支払の5.4%)
一般社会拠出金(CSG)
稼働所得の7.5%
家族手当金庫(CAF,各県)
代替所得の6.6%
資産所得の8.8%
CNAF
監査会議
Contrat enfance - jeunesse
各種手当
家族
保育施設設置、運営補助
自治体
保育園
企業
事業所内託児所
事業所内託児所の様子
先進企業ヒアリング分析*
*一部、未だ仮説の域を過ぎない部分が残されている(検証中)。
男女雇用機会均等度
IBM
France
テレワーク
短時間勤務
Air
France
短時間勤務
Areva
Steel
Case
Accenture
Total
L’oreal
コンシェルジュ
事業所内託児所
(あるいは、隣接)
WLB度
短時間勤務
(一般職に多い)
コンシェルジュ
相対的に経費が大きいWLB
相対的に経費が小さいWLB
事業所内託児所
(あるいは、隣接)
フランスの労働時間と生産性
• 日本に比べて労働時間が短いのになぜ一人あたり
の生産性は変わらないのか。
フランス16位、日本18位
• 管理職はなぜ7週間も休めるのか?
休暇マネージメントの事例(LVMH)
• 仕事と育児は両立しやすいフランスだが、女性の昇
進にはまだ壁があるのも事実。
フランスから何が学べるのか
• 仕事と家庭の両立政策
常にジェンダーの軸を忘れないこと。
• 自律性、オーガナイズする力、
選択する力を幼い頃から養う。