NU Tech ニュースレター 第 17 号 本 Newsletter は米国ノースカロライナ

NU Tech ニュースレター 第 17 号
本 Newsletter は米国ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク(RTP)に所在
する Technology Partnership of Nagoya University, Inc.(NU Tech)が、月に一度米国
の技術移転等に係る最新情報をお届けするものです。
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☆★☆目次☆★☆
1.イベント情報・活動報告
2.米国の技術移転に係る動向
3.技術移転に係る NC の動向
4.注目技術情報
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NU Tech Newsletter 第 17 号をお届けいたします。
1.イベント情報・活動報告
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NU Tech、ラウンド・テーブル-再生医療-を開催!!
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第二回 Roundtable for Regenerative Medicine、
日時: 10月6日午前8時より
会場: ノースカロライナ・バイオテクノロジー・センター(NCBC)
招待講演:
Tim Bertram 博士(Executive VP Science & Technology and CEO)、Tengion
社
協賛: Wake Forest Institute of Regenerative Medicine
ノースカロライナ大学チャペルヒル校
ノースカロライナ・バイオテクノロジー・センター
ノースカロライナ州 商務省
ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク(RTP)内ノースカロ
ライナ・バイオテクノロジー・センター(NCBC)にて 10 月 6 日(木)に、NU Tech 主催の
ラウンド・テーブル-再生医療-を開催します。再生医療の分野で世界的に有名な Wake
Forest 大学再生医療研究所(WFIRM)やノースカロライナ大学チャペルヒル校もこのイベン
トに参加し、これら三大学から6人の研究者達が講演致します。また、患者自身の細胞由
来組織や臓器の再生を行い再生医療分野をリードしている Tengion 社から、Tim Bertram 博
士を招待し講演して頂きます。
このラウンド・テーブル-再生医療-はRTP内の大学研究者、起業家、ベンチ
ャー企業、そして全国もしくは地域のヘルスケア・生命科学系会社のビジネスデベロップ
メントの方々が参加し、それぞれの枠を超えたネットワーク作りを強化することを目的と
しています。
参加のご登録、またはスケジュールや講演内容の詳細につきましては NU Tech
Website をご覧下さい。詳細が決まり次第、随時更新して参ります。
http://www.nutechtransfer.org/content/regenerative+medicine+roundtable/17185
2.米国の技術移転に係わる動向
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ヒト幹細胞研究:連邦裁判所が政府資金拠出差し止め命令を撤回
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昨年 8 月に政府資金拠出差し止めを命じた 連邦地方裁判所連邦判事 Royce
Lamberth は、高等裁判所の見解を受け、7月27日に差し止め命令を撤回した。今回の判
決は、米国政府がヒト胚性幹細胞の研究への資金援助を行うための権利を法的に有すると
断言するものである。そしてそれはこの裁判における原告 ―胚性幹細胞ではなく組織や器
官から分離した成体幹細胞を用いて研究しているマサチューセッツ州の Boston Biomedical
Research 研究所の生命工学研究者、James Sherley 氏とワシントン州シアトルで AVM
Biotechnology を運営している Theresa Deisher 氏― を大きく落胆させ、原告側弁護士の
Steven Adam 氏を「我々はこの決断を上告するための全ての手段を見直すつもりだ」と憤ら
せた。しかし法律専門者は原告によるどのような上告も却下されるであろうと予想してい
る。一方で研究助成金の差し止めを受けていた研究者達は、この撤回を諸手を挙げて喜ん
でいるわけではない。何故なら、この研究停止期間中の実験の遅れから回復するには数年
かかるであろうし、また、このせいで研究変更を余儀なくされた研究者が沢山いるからだ。
昨年差し止め命令を発令する際、Lamberth 連邦判事は「胚性幹細胞研究の公的助
成は 1995 年に施行された Dickey-Wicker 法(ヒトの受精卵を破壊する如何なる研究に対し
ても政府は資金を援助してはならないという法律)に違反している」と結論づけた。これ
までの三人の大統領政府は、
「研究過程で受精卵を破壊する研究」と「既に破壊された受精
卵を使用する研究」を区別し、後者に資金援助することは Dickey-Wicker 法に反しないと
解釈してきた。2001 年、George W. Bush 元大統領は特定の細胞株を使用する少数の研究の
みを援助対象とするよう公的資金の助成規模を縮小したが、Barack Obama 現大統領は 2009
年にこの拘束を緩めて 10 を超える新しい胚性幹細胞株の承認を急いだ。しかしこれが実験
に反対する団体による今回の裁判を引き起こす原因となった。
今回政府出資拠出差し止めが撤回されたものの、未だ胚性幹細胞研究は攻撃の対
象となり得る可能性がある。メリーランド州 Johns Hopkins 大学 Institute for Cell
Engineering の研究者である Candace Kerr 氏はこう述べた。
「この論争を止める方法はただ
一つ。治療成果を上げることだけだ。
」
http://www.nature.com/news/2011/110802/full/476014a.html
3.技術移転等に係わる NC の動向
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TearScience がドライアイ治療の FDA 認可を受ける。
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ノースカロライナ州モーリスビル拠点の医療機器会社、TearScience Inc.が FDA
より蒸発性ドライアイの治療法の認可を受けた。これにより全てのドライアイに関係する
瞼板腺の閉塞物を取り除く LiPiFlow 治療法が、限られた範囲ではあるが直ちに使用可能と
なった。TearScience 社の共同出資者かつ CEO の Tim Willis 氏は書簡において、
「LiPiFlow
が FDA により認可されたことは大変喜ばしいことである。」と述べた。ちなみに LiPiFlow
は、眼科医のオフィスにおいて約 30 分で済む外来患者用の治療法である。
32 人の従業員を抱える同社は 2005 年に設立して以来、これまでに$70M 以上の投
資を受けており、既にカナダとヨーロッパにおいてもドライアイ治療法を開始している。
また、同社は内科医がドライアイ患者を評価する際に使用する2種類の器具も販売してい
る。
「ドライアイ治療はグローバルマーケットにおいて$2.5 B 以上の売り上げがあり、その
市場は年間 10%の成長が見込まれている。」と同社広報担当の Mary Hecht-Kissell 氏。
http://www.bizjournals.com/triangle/news/2011/07/11/tearscience-wins-fda-approva
l-for-dry.html
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ノースカロライナ大学、AIDS 治療法研究の為に$32 Mを獲得
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ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC-C)の研究者は米国国立保健衛生研究
所(NIH)より AIDS 治療法研究の為に$32 M の助成金を得ることとなった。これは、世界的に
6 千万人以上が感染している AIDS の治療法発見のための5年間プログラムに与えられた総
額$70 M の助成金の一部で、UNC-C は米国内の他の研究機関と共に選抜された。
現在、AIDS Policy Project の報告によると、米国は$40 M から $60 M を AIDS 治
療法研究に費やしているが、その額以上の$564 M を予防のための AIDS ワクチン開発に費や
している。同 NIH プロジェクト主任研究員 David Margolis 博士は次のように述べている。
“AIDS の治療法を見つけることは現実的なゴールであり、かつこの病気の蔓延を止める
我々の計画の一部であるべきだと NIH も研究組織も話している。
”
この助成金は UNC 内の North Carolina Translational and Clinical Sciences
Institute によって管理され、9つの大学の研究者達に分配される。これにより、ウイルス
がどうやって不活性状態でかつ視覚化できない状態でいられるかの研究や、また感染済の
患者からウイルスを取り除く方法とその薬の発見のための研究などを含む12もの研究プ
ロジェクトが行われる。ちなみに Merck Reserch 研究所も企業パートナーとしてこのプロ
ジェクトに参加している。
http://www.bizjournals.com/triangle/morning_call/2011/07/unc-gets-32m-to-find-ai
ds-cure.html
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GSK が教育支援として$10M 寄付
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GlaxoSmithKline 社(GSK)が今後 5 年間にわたり科学技術教育のために$10 M を
寄付することを発表し、そのうちの幾らかがノースカロライナ州内の組織に渡ることを示
唆した。RTP に運営本部を置く GSK は過去にも STEM(Science, Technology, Engineering and
Math カリキュラム)と呼ばれるノースカロライナ州のプロジェクトに$840,000 寄付してい
る。また同社はノースカロライナ及びペンシルバニア州の小学生の教育の為に Science in
Summer と呼ばれる無料科学プログラムと、さらに$1 M の奨学金制度も行っている。
http://www.wgnc.net/index.php?option=com_content&view=article&id=19993:gsk-pledg
es-$10m-to-education&catid=82:nc-news-by-google&Itemid=241
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Duke Medical Center が RTP 内のトップに選ばれる。
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7 月 19 日付けの U.S. News&World Report による病院の総合年間ランキングおい
て、Duke Medical Center が RTP 内でのトップに選ばれ、かつ全米で 9 位となった。同時に、
同病院は 16 の専門分野別評価においても 9 分野で全米トップ 10 にランクインしている。
ノースカロライナ大学付属病院は Raleigh-Durham エリアにおいて 2 位であった。
専門分野別評価においても 5 分野が全米トップ 10 にランクインし、そのうち 3 部門が“高
評価”を受けた。Wake Med Health and Hospitals は国内ランキングには入らなかったもの
の、10 専門分野において“高評価”を受け、RPT 内では第 3 位に着けている。
RTP 内の病院ランキング 4 位以下は Duke 大学付属 Durham Regional Hospital,
ノ
ースカロライナ大学付属 Rex Health Care, そして Duke 大学付属 Duke Raleigh Hospital
となっている。
この病院年間ランキングは特殊技能を要求する入院患者の治療における専門的特
性度を評価したもので、それぞれの病院は 16 の専門分野でどれほどのパフォーマンスを行
ったかで評価される。ちなみに全米一位はボルチモアの Johns Hopkins Hospital で、次に
ボストンの Massachusetts General Hospital, ミネソタ州ロチェスターの Mayo Clinic と
なっている。
http://www.bizjournals.com/triangle/news/2011/07/19/us-news-world-report-names-d
uke.html
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ダーラム市拠点の Semprius、ヴァンス地区にて256名の雇用を予定
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ダーラムソーラーエナジー企業、Semprius は、州政府および地域行政から授与さ
れる$7.88 M の報奨金を受け、ヴァンス地区の新製造工場の為に 256 名の新雇用を予定して
いると発表。2005 年設立され既に 30 人の従業員を持つ Semprius の太陽光発電モジュール
は、エネルギーを発生させるセル上にレンズによって収束された太陽光を照射することで
発電効率を上げた画期的な物である。同社は、米国証券取引委員会のCベンチャーのため
のファンドレイジングを通して$21 M を得ており、先に述べた$7.88 M の報奨金と併せたこ
れらの資金は生産性向上のために用いられる。ちなみに、この報奨金の内訳は、今後11
年間にわたり州政府経済投資組織より支給される最高額 $3 M、OneNC Fund grant Program
より支給される $600 K、ヴァンス地区より$2.6 M、企業に特化したトレーニングプログラ
ム用としてヴァンス・グランヴィレコミュニティーカレッジより寄付される$400 K となっ
ている。
“米国と海外でのクリーンエネルギーへの移行およびソーラーシステムの需要拡
大により、業界は実用的な解決策のために Semprius のような発明者と NC のような画期的
なエリアに注目するであろう。
”と Semprius 社長兼 CEO の Joe Carr 氏は発表を締めくくっ
た。
http://blogs.newsobserver.com/business/semprius-to-create-256-jobs-in-vance-coun
ty
4.注目技術情報
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生きている細胞の RNA を強力な蛍光技術で観察
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Weill Cornell Medical College (WCMC)の研究者は、様々な形の細胞内 RNA の
あまり知られていない機能を追跡できる蛍光試料を開発している。彼らは 7 月 29 日発行の
サイエンスで、いかに緑色蛍光タンパク質の疑似 RNA を開発し、これがどうヒトの生命を
複雑に支えているかを解明してゆくかを報告した。WCMC 薬学科の Samie Jaffrey 助教授に
よると、彼らの技術は RNA の 3 次元立体構造を利用したもので、実験の目的は特異的な形
状を持つ RNA の合成と新しい RNA に結合し蛍光発色を行う小分子の決定であった。難点は
「この RNA が小分子を活動させること」と「小分子が研究者の望むときにオンになること
と細胞に対し無毒であること」であったが、最終的に GFP 自身が持つ蛍光体が解決策とな
った。Jeffrey 助教授らはまずこの蛍光体を元にした化学分子を作り、
“Aptamer”と呼ばれ
る GFP が蛍光体を保持するのと全く同じ方法を採る人工 RNA 配列を合成した。それは鮮や
かな緑色の蛍光発色から”Spinich(ホウレン草)“と名付けられた。引き続き彼らは異なる
蛍光色を持つ RNA 蛍光複合体を作成し、
その色にちなんで”
Carrot(ニンジン)
“や”Radish(ハ
ツカダイコン)“と命名した。この複数の蛍光複合体作成により、同時に幾つもの RNA を観
察することが可能となった。研究室では Spinich を使用して、細胞のストレスに対応して
塊を作る何もコードしていない RNA を既に観察しており、今後、いかに病気と RNA の誤制
御が関連しているかを明確にするかに焦点を当てる。
http://www.healthcanal.com/medical-breakthroughs/19247-Weill-Cornell-Researchers
-Develop-Powerful-Fluorescence-Tool-Light-the-Way-New-Insights-Into-RNA-Living-C
ells.html
###編集後記###
個人的に興味を持った記事は、7月17日付の日本経済新聞の「コンピューター
のハードディスク(HDD)の容量を無限大に出来る可能性をもつ新しい物理現象」を紹
介した物でした。九州工業大学の岸根 純一郎 准教授とロシア・ウラル州立大学のアレキ
サンダー・オブチニコフ 准教授らにより発見されたこの新技術は、特殊な磁気構造の材料
に外部から磁力を与えると磁力の増加に伴い電気抵抗が増減するというもので、応用次第
では容量無限大のHDDが実現されるかもしれないとのこと。既に材料となるらせん状結
晶構造・カイラル磁性結晶は合成済みなので、あとはこの理論の実証実験を行うのみだと
か。技術はどんどん進歩してHDDの容量は飛躍的に増えてゆくのに、自分の脳のキャパ
シティーが増えないのは何故だろうと汗を拭いながら思う今日この頃です。
(安座間)
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Technology Partnership of Nagoya University, Inc. (NU Tech)
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NU Tech は名古屋大学の海外との産学連携活動を強化するため、米国ノースカロライナ州
(NC)
リサーチ・トライアングル・パー ク(Research Triangle Park: RTP)に本拠を置く NPO
法人として設置され、2008 年 1 月より活動を開始いたしました。RTP 地区にはバイオテク
ノロジー関連企 業 520 社が集積し、同分野では NC は全米で 3 位にランキングされていま
す。また、全米大学ランキングでも上位に登場する ノースカロライナ大学チャペルヒル校、
ノースカロライナ州立大学、デューク大学が密接に位置し良い競争関係にあります。NU Tech
は 3 拠点大学の技術移転局と連携しつつ、また、各 種起業支援機関の協力も仰ぎながら、
名古屋大学や中部地区関係大学の技術・特許に係るマーケティング活動を RTP 地区で展開
しております。
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連絡先
Technology Partnership of Nagoya University, Inc.
One Coplay Parkway, Suite 305 Morrisville, NC 27560
TEL: 919-535-8724 FAX: 919-535-8726 Email: [email protected]
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