解会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会回 介 介 介 介 介 介 介 介 介 介 介 介 介 介 西部 忠 [北海道大学大学院経済学研究科/助教授] 介 介 塊会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会会壊 地域通貨ネットワークの進 化と道内広域地域通貨構想 背景・目的 1990年代以降、地域通貨は、地域経済を活性化し循環型 経済を築くための経済的メディア、 あるいは、 グローバリゼーショ ンや国内不況の影響で衰退する地域コミュニティを再建する ためのコミュニケーション・メディアとして広く注目されてきた。 その 背景には、長期化する不況による地域経済の空洞化や失業・ 倒産への不安、景気対策としての金融・財政政策への失望、 グローバリゼーションによる国民国家、地域、学校、家族などコ ミュニティの弱体化、金融的投機による実体経済の破壊への 反発、高齢化社会における年金や介護への不安といった諸 問題がある。本研究は、各地域ごとに行われている地域通貨 がいかにしてネットワークを形成していくか、 そして、道内におけ る広域地域通貨がいかに構想されるかを考察することを目的 とする。 内容・方法 従来の地域通貨研究の多くは、 地域通貨の歴史・理論や実 践例の紹介や、 その意義や可能性の一般的説明にとどまって いる。本研究は、地域通貨を、伝統的経済学における政策手 段 (ツール) ではなく、 進化経済学の立場から経済社会システム を内在的に調整し、望ましい方向へと進化的に誘導するため の戦略的な制度設計媒体 (メディア) と捉える。 つまり、 特定の目 標を達成するための目的合理的な「ツール」の有効性ではなく、 人々の関係や意識を根本的に規定する 「メディア」の進化的 特性に注目する。地域通貨とは、 貨幣と言語が統合された新し いタイプのメディアであり、個々の地域通貨は価値や関心の共 通性を基盤に形成されるバーチャル・コミュニティに独自なメッ セージを転送する。 こうした地域通貨のユニークな特性は、従 来の経済学の手法や分析では十分に理解できないため、本 研究は経済学だけでなく、 経済思想・哲学、 社会学、 認知科学、 言語学、 コミュニケーション論などを取り入れた学際的・総合的 なものになる。 また、 広域地域通貨の実行可能性を示すために は単なる計量分析ではなく、 定性的な分析と評価を行う必要が ある。 そのためには、 コンピュータ・シミュレーションを採用し、 エー ジェントペースのシステムを構成してその複雑な挙動を観察し ながら考察する。 結果・成果 今後は、地域通貨の数の増大だけでなく、 その目的や仕組 みの複合化や多様化が進むことが予想される。 インターネットの さらなる普及と相まって、 地域通貨の電子マネー化が進む。 そう なると、地域通貨が基盤とする 「コミュニティ」や「ローカリティ」 も従来の血縁・地縁でなく、 何らかのテーマや関心を中心とする バーチャルな性格を持つものになるはずである。地域通貨のた めのプラットフォームがインターネット上に形成され、 テーマやシス テム仕様を初期設定すればだれでも気軽に始められるようにな れば、 地域通貨の運営・管理コストは引き下げられるため、 その 数や種類は激増するだろう。 すべてのLETSはプラットフォーム を共有しつつも、 それぞれがシステムや目的・テーマによって区 別される個性を持つ。 これが共通プラットフォーム上のMultiLET Sである。参加者は自分に合ったシステムやテーマの LETSに加入すればよく、 どんな種類の複数のLETSに参加し ているかが、 その個人の個性を表現する。地域通貨の電子マ ネー化が進めば、複数の地域通貨をリンクすることは容易にな るし、 各個人はいくつもの地域通貨に参加することができるので、 バーチャル空間上に相互リンクする地域通貨のネットワークが 出現する。 自分の個性や価値観に応じて、 さまざまな地域通貨 に所属し、 それらを時と場所、 相手に応じて使い分けることがで きるようになれば、相異なる目的や特性を持つ多数多様な地域 通貨が大きさの異なる流通範囲のレベルに−町村レベルから 市、 都道府県レベルまで−存在することになる。 このように、 地域 通貨のネットワークが低レベルから高レベルへと多層的に形成 される。 以上の地域通貨の進化的シナリオは次のようにまとめられる。 1)地域通貨の多数化と多様化 2)地域通貨の電子マネー化とコミュニティのバーチャル化 (テーマ化) 3)地域通貨の多数化・多様化・多層化による個人の複数地 域通貨への多元的帰属 4)地域通貨のネットワーク化や広域化 北海道広域地域通貨「LETS Do」は、 以上のシナリオの到 達点として初めて達成されうる。 「LETS Do」のコミュニティは、 地理的・行政区的な地域ではなく、 ある種のバーチャル・コミュニ ティである。 「LETS Do」構想は、 「LETS Doファンド」 と 「コミュ ニティ ・ウェイ」 を同時に採用する。 こうすると、市民はNPOに対 して、 ボランティア活動やDoで寄付することもできるし、 あるいは、 円でDoと兌換することもできる。 また、企業も 「LETS Doファン ド」 と 「コミュニティ ・ウェイ」のどちらかにDoを寄付することができ る。寄付の形態がより多様になり、円のDoへの交換を実現し、 Doの循環が円滑になる。他方、Doの円への換金は不可なの で、道外へのDoの流出を防いでいる。行政は現金による二種 類のマッチング助成を行い、公的事業を行うNPOを寄付額に 応じて支援する。 「LETS Do」は、 あくまでも、 経済活動を刺激し、 循環型経済 を作り、 コミュニケーションを活発にし、 豊かな文化やコミュニティ を創生するためのツールにすぎないが、 それは「北海道」 という コミュニティに集う人々の意識や価値観、 企業や行政やNPOな どの組織・団体の目的やあり方、 そして人間関係や社会的構造 の全体を大きく変える可能性も持っている。 そうなれば、 それは オルタナティヴな未来へ向けての社会の変革へとつながるは ずだ。 コンピュータによるマルチエージェント ・シミュレーションは、黒 字合計の逓増や消費支出の刺激、制度設計の可能性などを 明らかにした。 今後の展望 地域通貨の影響は、経済的データだけではなく、倫理的な 価値観の変化や文化・コミュニティにも現れる。道内広域地域 通貨は、 自治体が上から計画し実行するものではなく、地域通 貨のネットワーク化において自己組織的に形成される秩序であ る。 その過程で、 自治体や企業の組織体質や市民の意識・行 動が変化するはずだ。 また、 NPOが中心となって経済社会を牽 引していくことで、 ビジネスとボランティアの区分、人々の利己心 と利他心のあり方も影響を受ける。 いわば地域通貨という 「鍼」 を患者の体内の各所に挿入することで、免疫・神経系全体を 賦活し、 体質改善を進めることが狙いである。遅効的な地域通 貨にはこうした長期的な制度設計が求められる。 ― 10 ―
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