水道ホットニュース - 水道技術研究センター

第512号
(公財)水道技術研究センター会員 各位
JWRC
平成 28 年 4 月 28 日
(公財)水道技術研究センター
水道ホ ット ニュース
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カナダの水道における
煮沸勧告の発出と解除に関するガイダンス
-カナダ保健省(2015 年 1 月)-
(その3)
B 編.カナダにおける煮沸勧告の傾向
煮沸勧告は重要な公衆の健康保護の手段であるが、煮沸勧告はしばしば予防手段として用いられる
ことから、煮沸勧告の発出は水の安全性に係る指標ではない。すなわち、設備や運転上の問題による
ものであったり、飲料水の安全性と直接リンクしない水質指標に基づくためである。カナダ公衆保健
情報ネットワーク(CNPHI:Canadian Network for Public Health Intelligence)の一環である飲料
水アプリ(DWA:Drinking Water Application)は、飲料水に関するデータ(主として飲料水に関す
る勧告)を全国規模で収集するリアルタイムのウェブ上のアプリである。2010 年から 2012 年の間に、
飲料水アプリで記録されたデータには、14 の管轄地域のうちの 6 地域から発出された 1,690 の煮沸勧
告が含まれている。これらのデータの推移は、煮沸勧告の特徴やカナダの飲料水システムにおける課
題について洞察を与えている。
B.1 煮沸勧告を発出する理由
カナダにおいて、2010 年から 2012 年の間に、煮沸勧告の大きな割合を占めたのは水道配水システ
ムの問題によるものであった(図 B.1)
。これらの勧告は、管路の破損及び水圧の損失に関連するもの
であり、主として、破損した水道管、停電又は配水システムの更新や拡張のための計画的な整備作業
によるものであった。これらの煮沸勧告のほとんどは予防措置であり、修復や整備が完了した時に解
除された。
逆に、煮沸勧告の割合が比較的少ない(6.8%)のは、健康に関して懸念がある飲料水サンプルにお
ける大腸菌の検出によって発出されたものである。煮沸勧告がもっと多いのは大腸菌群の存在(14.8%)
や容認できない濁度(7.6%)に基づくものであった。これらの 2 つのパラメーター自体は人の健康リ
スクの増大を示すものではないということを考えれば、本質的に、これらの煮沸勧告は予防措置であ
ると考えられる。これらの煮沸勧告の発出の根拠は、煮沸勧告が公衆の健康目的に役立っているのか
どうかを判断するため、定期的なレビューがなされるべきである。
2010 年から 2012 年の間に発出された全ての煮沸勧告の約半分は計画的なシステムの維持管理、設
備の不具合又は停電に関連したものであり(図 B.2)、インフラへの投資及び支援、カナダの水道シス
テムの維持管理の重要性を浮き彫りにしている。
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水質上の理由
逆流が疑われる又は確認されたクロスコネクション(0.1%)
不十分な水量(0.6%)
水道水質基準最大許容濃度の超過(0.7%)
環境の状況による原水水質の重大な劣化(2.0%)
水道水中における大腸菌の検出(6.8%)
浄水における許容できない濁度又は粒子数(7.6%)
運転上の理由(水質上の理由ではない)(9.3%)
汚染の疑い(12.1%)
水道システムにおける大腸菌群の検出(14.8%)
配水システムにおける管路の破損又は水圧損失(46.1%)
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単位:%
図 B1. 2010 年から 2012 年の間に発出された煮沸勧告における水質上の理由
運転上の理由
無資格又は訓練不足の運転員(0.3%)
正式稼働前の浄水場(0.3%)
報告に関する要求事項に不適合(0.5%)
井戸の部品の損傷(0.9%)
地下式又は地上式の貯水槽の損傷又は不十分な維持管理(1.4%)
モニタリングに関する要求事項に不適合(2.2%)
浄水施設における不十分な消毒(3.0%)
原水水質の重大な劣化に対処できない浄水処理(3.1%)
建設、修理又は運転の間における汚染(4.0%)
最低限の浄水処理/設計の要求事項を満たしていない(5.4%)
配水システムにおける不十分な残留消毒剤(5.9%)
水道施設の稼働開始(6.2%)
特定されていない汚染源(6.7%)
水質上の理由(運転上の理由ではない)(10.3%)
システムの水圧損失又は浄水貯水量の減少を生じた停電(13.6%)
浄水処理/配水設備の不具合又は損傷(17.9%)
計画的なシステムの維持管理(18.3%)
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単位:%
図 B2. 2010 年から 2012 年の間に発出された煮沸勧告における運転上の理由
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50
B.2 煮沸勧告と小規模市町村水道
2010 年から 2012 年の間に発出された煮沸勧告の大部分は小規模水道システムに対して発出された
ものであり、煮沸勧告の 98.5%は給水人口 5,000 人以下のシステムで発出されており、また、煮沸勧
告の 88.5%は給水人口 1,000 人以下のシステムに適用されたものであった(B.3)
。小規模市町村水道
は数で他の水道を圧倒しており、また、小規模市町村水道は煮沸勧告に至る運転上の課題や設備の不
具合をより経験しがちであることを考えれば、これは驚くことではない。小規模市町村システムは、
インフラの更新、設備の向上、運転能力及び訓練された職員の保持について支援したり投資すること
をより困難としている独特の課題を経験している。長期的な煮沸勧告の最大の割合も小規模水道シス
テムに関連しており、これらのシステムにおいて煮沸勧告を撤廃するために必要な是正措置、改善及
び修理作業を完了するにはより長期間を要することを示しているのは当然の結果である。
水道システムの給水人口
5000人超(1.5%)
1001-5000人(10.0%)
501-1000人(10.1%)
101-500人(32.1%)
0-100人(46.3%)
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単位:%
図 B3. 2010 年から 2012 年の間に発出された煮沸勧告(水道システムの給水人口規模別)
―――――――
(以下、略)
C 編 意思決定体系図、参考文献及び追加の情報源
C.1 意思決定体系図
C.1.1 地方自治体規模システムの定期微生物学的試験の意思決定体系図
C.1.2 専用水道規模システムの定期微生物学的試験の意思決定体系図
C.2 参考文献
C.3 追加の情報源
-3/4-
(文責)センター専務理事
安藤
茂
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