第105回汽水域懇談会 魚食魚とダフニアを用いたバイオマニピュレーションによる湖の水質 改善;日本の湖での結果 話題提供者:河鎭龍(島根大学汽水域研究センター) 日時:2012年6月28日(木)17:00-18:00 場所:汽水域研究センター2階セミナー室 バイオマニピュレーションは湖の水質改善のための有効な手法の一つとして、世界中の多くの湖で取り入れられている。バイオマニピュレー ションでは、プランクトン食魚の積極的な捕獲、もしくは魚食魚を湖へ放流することによりプランクトン食魚の数を減らす。その結果、優れ た濾過摂食者である大型枝角類のダフニアの数が増加する。そして、最終的には、増えたダフニアが藻類の現存量を減少させ、湖の水質が向 上する。2000 年、日本の湖として初めて白樺湖(人造湖で標高 1416mに位置し, 36ha の湖面積を持つ)でバイオマニピュレーションが行われ た。この湖ではプランクトン食魚(主にワカサギ)の個体数を減らす目的で、魚食魚(ニジマス)が放流された。また、この湖にはダフニアが生 息していなかった為、日本の湖で一般的な大型枝角類であるカブトミジンコ(Daphnia galeata)を放流した。バイオマニピュレーションの湖 への影響を評価するためにバイオマニピュレーションを行う前のデータ(1997 年から 1999 年まで)とバイオマニピュレーションを行った後の データ(2000 年から 2006 まで)を分析した。その結果,バイオマニピュレーションの後、ワカサギの激減と共にカブトミジンコの増加および 小型ミジンコとワムシの減少が見られた。湖の透明度は,バイオマニピュレーション以前は約 2m ほどであったが,バイオマニピュレーショ ン後は植物プランクトンの減少によって 4m 超まで増加した。透明度の上昇は,沈水植物(Elodea nuttallii)の分布拡大につながった。全リン 濃度もこの期間に減少した。これらの結果は、白樺湖で行われた魚食魚とカブトミジンコを用いたバイオマニピュレーションが,湖の水質を 改善することに成功したことを示している。 キーワード : バイオマニピュレーション、ダフニア、魚食魚、水環境改善、動物プランクトン
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